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  源氏物語「葉」
++葉巻++シガー++レビュー++個人輸入++ブログ

|coh-hk|$173/25|arr 2017/11/18|
|SLE JUL 16|5 x 48|8.80g|香:3.9~4.3 ave4.1|残4|

 初っ端から甘い木造船の味と匂いが充満する。木造船というのは難破した船のようなものであるから、投げ出される海は冷たければ冷たいほどよく、この葉巻は冬や雨や夜に大変合う。そして何故か暖房の風味がある。
 今、冬のように寒い秋の、雨の夜である。難破して救われて暖められているような。
 木と木をこするような、重心の低いうなりが軋み、船を軽くするために積荷の草花を海に投擲している。人体を海に投げ出しても花に縋れるほど海一面に放ったが、花の色は暗く見えない。不規則な波に阿呆みたいに揺蕩して響く軋み音が船体の木材を粉にし、その粉がまさに音の耳に入るていで忙しく口に入り、驚くほど美味しい。玉蜀黍か、バーボンが染みたような味わいである。
 沈没したのは朝鮮由来の船だったろうか、船員が何者であるのかは沈没に際してどうでも構わなかったが、懐かしいような、朝鮮人参の深い苦味が走る。この時、もはや海に投げ出されていたのか、海面に漂うているであろう花が塩味を無にするほど大量に口に飛び込んできた。なんと苦く華やかで甘い災難であろうか。少し甘いのである。塩は代りに若干の酸っぱさとなって感じられる。
……
 この箱、21本目にして初めてファモソスに期待していた木造船を味わわせてくれた。少なくとも三年以上の熟成が必要と言えるのかもしれないが、かつてシングル買いで木造船を幾度か体感したとき、あれらは何年物だったのだろう? とりわけファモソスにおいては、木造船に加えて朝鮮人参が出てしかるべきと思っているが、朝鮮人参も今日ようやく掘り出され、そのほか朝鮮人参に気脈を通じるコクも花も何もかもが暗さを甘美に彩った。酸味などの、どちらかといえば雑味のようなものも、此処にあっては正しく難破船の味わいである。
 芳醇にして暗色で、割に軽い。重たい味こそ軽くなければならぬ。金木犀の木が、大量の気泡を含んで波に浮く。
 最後には夜海の闇に超絶の金木犀がライトアップされる。そのライトアップというものも、エジソン以降の人工の電球でなく炎による。木造船が燃えて海面を照らしていた。木造船が火の勢いで沈まずに浮き上り、それを暖房として寒さ冷たさを凌いでいたのである。未だ救われていなかった。
 ファモソスという葉巻の限界はこの辺りだろうと思う。
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|coh-hk|$173/25|arr 2017/11/18|
|SLE JUL 16|5 x 48|--g|香:3.0~3.5 ave3.2|残6|

 うら若き山椒活動の名残を曳きつつお菓子学科を経て、この博士、ふんわりした木造船にレモン粕を搾った天日砂をかける、塩づくりのように。博士自身がロバイナ翁であるかのごとくいつもロバイナを銜えて、もう見える景色も煙色のロバイナだけなのだが……ロバイナといえば夜であり、ファモソスといえば朝鮮人参の苦味が効いたサングラスフルボディー、これまでのこうした印象たる経験から最近の木造船はやや離れ、朽ちており、これまで通り暗くも、軽くて、落ち着きなく揮発する木質を顕にしている。木造船がアルコールのように日々揮発し消滅しつつある。どうにかして人参を呼び戻したいと思うのだが、馬の鼻面にぶら下げるようなもので、嘗ての馨しさ無ならずも微妙に遠い。
 しかしこの日はようやく望む木片に、まだ遠くも近づいてきた。(コイーバやモンテ並みに)特異なる我がロバイナ香が我が筋肉に細く通っているし、それに力を得て、かすかに人参の土っぽさの落ち着きと苦味も細い筋肉に満ちる。お菓子化や花化もほどほどに抑えられ、我がロバイナ香がやや太い。とはいえお菓子化や花化がそれをより太くするのだったか、この天日干しの木造船のせいでもうあまり覚えていないが、そうだったかもしれない。木造船にも水を差すのが雑草だが、雑草は雑草のわりに急成長しないでくれる。
 浜辺をしばし徘徊すると木造船は朝霧に隠れ、全盛期の我がロバイナ農園が復刻される。まだ遠いが、序盤の夜半に期待しながら諦めていた黎明ならぬ逆回転の夜が、自転する地球が、まざまざと期待してよいような路線に変り始める。
 お菓子学科のカスタードに甘味なし、苦味が来れば万事良い。甘くなければカスタードは入用で、苦いカスタードというのは、それはそれは甘美だったはずなのである。バニラかもしれない。雑草に紛れてニラの苦味が来ないことを我々は祈る。誰が祈るのか。
 祈りはなべて届かぬことを前提にしていることを知っている。それながら祈りは長く根元まで続きえた。根元に特有の苦味と朝鮮人参の苦味とは全く違うのであったが、祈りがはや座礁するより、祈りは長く続く方が良い。
|SLE JUL 16|5 x 48|coh-hk|$173/25|重量:0(?g)|算出:+2|香味:+2|計4点|

 とても浅い秋の深い香りがするので暖炉に火を入れられる心地になり、その薪の役も与えられそうだった。大地の味わいは薄く広大で、写真に収められるような気がするのだった。身近な感触なのに、遠景として思い出させるようなところがあるのだ。朝鮮人参だとしたらここに使用されている人参はケチな節約家も居ないほどだが、大地のふんわりした苦味が表面的な火山灰の茣蓙のように大地を覆っている。記憶としてはこの地とこの花は同居したためしがなく、まるでその地で他所から持ってきた花を蒸かしているみたいなのである。ここで紙巻きたばこに着火してしまいそうになるぐらい。これが葉巻なのだ、これが葉巻なのだ、といくら言い聞かせても、冷蔵庫の中に物を詰め込むみたいに纏められ分裂させられる。なにしろ一貫して珈琲どころか氷の詰まったストローを感じさせ、ストローを思わせるところが絶えない。スポンジでできたストローの事である。足足というより、逆立ちした足で、急に月から見上げた地球のアーシーの味がしたかと思えば、月の土の味がしたのかとも思う。
|箱不明|5 x 48|cigarOne|$12|重量:0(10.10g)|算出:+5|香味:+4|計9点|

 ファモソスはどうでしょう?
 ファモチャンペじゃないよ。私はねぇ、これを三兄弟と言っているんだ、二人は死んぢまったが。これは当たるんじゃないか。父母より三兄弟の方がいいんだよ、二人は死んぢまったが。ファモちゃんが一番しぶといんだろう、前回朝鮮人参の味がしたんだから。う、始まりはシャンプーだね、久しぶりのシャンプーだが、そういえばこういうこともあるんだと思い出しました、本当にお久しぶりです。すぐにガラッと変って強面の風味が出るね、土っぽい、さすが朝鮮人参です。そこに甘みが重なる、甘みが出ても苦みが消えないのが良いです。これはベリー複雑ですよ、ロバイナは木とか言ってましたけど、三兄弟は全部持ち味が違うんです。緑豆モヤシ、これは要りませんが、要らないと思うものは常に無常にひと口で消えてしまいます。シャンプーが花のように戻る、これは酸味の効いたシャンパンのようにも思えますね、土のお陰でしょうか。なんでしょう、かなり酸っぱいです。初めての酸っぱさです。でも全てにおいて土がしっかりしていますね、花が濃くなってもそうです。こ、これは凄いかもしれん。形が違うが、パルタガスの898といい勝負ができるんじゃないか、そうだろう? 同一ブランド内での存在の仕方が似ているだろう? というより味が似ている、うん、そうだな。そうだろう? わかっていると思うが、同じ味という意味じゃなくてね、別の食材を使った同じ料理って意味だ。まあ、食材と料理が逆でも構わんさ。そうだろう? こりゃ甘いし濃いし苦いし旨いよ。花もかなり土の養分を吸っているね。
 毎週だったら飽きるが、半年に一回ぐらいだったら毎回感動できるんじゃないか。重厚だが、うるさくない、静かです。味が丁寧です。ロブストは終売にはならないね。これはロブストの中でも一番ロブストのイメージに近いかもしれん。これに比べればお菓子の甘さだの芋の甘さだのちゃんちゃらしょぼい。大人と子供、こちらが大人。まあお菓子も好きだし、ちょっと酸っぱさが気になるところもあるが、酸っぱいワインでも呑んで誤魔化せばよろしい。酸っぱいモンラッシェでも呑ませろ。うむ、この店にはビールしかないのか。うん、でも、モンラッシェに合う気がするなぁ。切にするなぁ。呑んだことなんかないがね、それほどこの葉巻が美味しいということなんだろう、もしかしたらモンラッシェに似ているんじゃないか。え、そうだろう? 現に味わっていながらにして、その上を夢想させる味わいなんだよ、わかるだろう? だからモンラッシェより旨いかしれないんだ、でもモンラッシェのように最上ではない。まあちょっと、この葉巻は飲み物が要るよねぇ、まあビールでも十分か。「スペイン三ツ星レストランエルブジの天才シェフ、フェラン・アドリアが生んだ独創的なビール」だって、まあこれで許してやろう。三ツ星レストランでビールなんて呑むのかな。ひと口目は美味しかったけれど、二口目からは味がわからないビールだね、葉巻と一緒じゃ。おお、颯爽としたビールが濃厚になるほど濃厚にキャラメリゼされた花が来たよ。葉巻によってビールが美味しくなるなんて初めてだよ。おお、激烈! そこから煙が一気にノイジーに。ノイジー土キャラメル、ひゃっほう。なに、昨日開けた赤ワインがあるって? シャトープ・ピーユのファーストラベルか、まあいいだろう。いいじゃないか。シャトー・プピーユか。飲み物なんて不味くなければなんだっていいじゃないか。まあモンラッシェが一番合うんだろうがね。向こうを張り合うんだろうがね。
 でもなんでロブストなのにリンゲージ48なのだろう。10.10gなんて、いい数字だし、おちょぼ口にも銜えやすいロブストか。木もなければチョコもなし、しかしベガスロバイナ、どこかがベガスなのだが、どこか。三兄弟は絶妙に棲み分けて居たんだがなぁ。
 いやぁ、いい葉巻だった、危うく満点をつけるところだったよ。終ってみれば肺も胃も悪くならないし、重厚にして健康的な葉巻だな。
|箱不明|6.1 x 52|cigarOne|$16|重量:+1(15.37g)|算出:−1|香味:+1|計1点|

 木か革か土かといったら、基本的にロバイナは木ですね。ただ、その木に独特の風合いがあるというか、確かにその芳香は木から匂い立つようなんです。でも木だからやっぱり失敗しやすい、木というのは葉巻の中では危険なんです。揮発化したらもう美味しく感じられない。あとは子供の口臭とか、不味くはないが、そう美味しくもない浮ついたものばかり出てくるんです。とくに吸い込みが悪いとより酷いですね、そもそも吸い込みが悪いと揮発化しやすいのですけれど、雑味も多くなって口の中もやや火傷っぽくなるんです。ええ、これは吸い込みが悪いですね。それでも後半はピラミデらしく爆発するんですけれど、まあ、うん、美味しいです。そういえばすっかり花が咲きません、咲かない事に気づかないほど咲きませんでしたが、残り5センチで急に咲いてきました。ピラミデなのに吸い込みの悪さはヘッド詰りではないんですね。こういう経過は珍しいんです。おお、芳醇ですよ、明るい色合いなのに、暗い味わいなんです。これです、これですよぉ、木なのに、カフェモカの粉模様。それが花まみれ。金木犀とはちょっと違います、緑っぽい菊というとさらに違います、これはなんという花でしょうかねぇ。す、少し甘い。この少しの甘さが鍵なんです。扉なんかあるんでしょうか、扉があっても錠がない、いや、いやぁ、前半全てが錠だったんです。扉がないんですねぇ。少しの甘さが全体をしっとり落ち着かせてくれます。爆発もしましたが、最終盤でこれは珍しいですよ。まあ、でも、全然駄目ですね。
|EMA OCT 07 (19444/20000)|5.5 x 50|coh-hk|$198/10|重量:+1(14.66g)|算出:+5|香味:+4|

 昼にあんまり調子が良かったので、夜もロバイナを。しかも限定品最後の一本。何が偉そうに「限定品最後の一本」かとも思う、しかしそう思わねばならない力が何処からか働いているよう。これを美味しく思わせる力でない事は確か。しかし葉巻を持ったり抓ったりして鄭重に弄んでいるとかつて無い感触の弾力の良さ。
 着火すると草かロバイナか。今日の昼にあった木とロバイナはなく。草と。すぐさま青い豆。豆の白さが何故か青いので、つまり白い旨味もあるのだろう、草の強さに隠れて。中身の白さに、豆と云うには豆の殻も薫るらしい。しんしんと積らない小雪のような儚げな甘さ。雪の積らないアスファルトの苦味。ちなみに明日は晴。その晴の予報がこの葉巻に今夜雑味を加えているようにも思う。雪よ降れ。
 雑な苦味も段々風格を帯びてくる。購入当初は透明感ばかり感じたが、そのヴェールが剥がれて、強くなると同時に枯れてもいるよう。しかし透明由来の優しさも残している。そこに忘れていた金木犀。花を忘れるほど質朴な序盤の玄妙があったのだろう。
 金木犀はモンテクリストでこそ完璧な金木犀で、他銘柄では別の花に喩えたいが、花の香を知悉せず、恥ずかしながら金木犀の亜種のようにしか思えない。たまに草が強いと菊などが浮かぶが、しかし大体実際にそのような亜種のようである。これも割と菊に近いが、何故か菊感がない。チョコの所為だろう。昼に比べてチョコ自体が安っぽくなくて高級カカオのようだが、深いより先に薄いものではある。昼の安っぽさにしても、合成にすら思える甘味がそうさせているに過ぎなかったのではある。とはいえこれが甘味に乏しい事もない。安っぽさも葉巻から出て来れば思いがけない美味しさで、甲乙はつけ難い。
 これも草が強いものの木は潜んで、落葉の土に混じる最期の一瞬がほとんど常に落着いて閃いて、より苦味が強い為に美味しい土のコクのよう。煙の苦味の粒子と土の苦味の粒子はどちらが細やかかな、廃れてこそ活きたミネラルを感じる。全く廃れた家屋などはなく、自然が白粉を塗ったような。としたらそれこそ幽霊みたい。そんな幽霊、此処には居まい、此処にしか居なくとも、だからこそ幽霊は此処にしか居まい。
 と無理矢理幽霊化してみるほどの明るさがこの翳りの土と火種にはあるのであった。夕方は泉鏡花「草迷宮」の終盤を読んで居て、これは家に人が居ない一人の時には読めないと怖れをなした経緯もある。「高野聖」などとは違う、本物の幽霊譚らしい幽霊譚であるのに怖れをなした。夜に人が居る時よりも、昼に人が居ない時の方が夜伽は恐い。と云って昼に怖くて外に退散するでなく、夜に散歩に行けば、この身こそ幽霊かとも思う。というほど、中盤以降安寧に安定して進み、幽霊は何も怖れず、何も無く美味しく終りを迎える。味が変わって怖いというのも恐ろしいほどありえない話だが、こういう余裕の身にこそ幽霊は来るべきなのだろう。
 もう一箱買う物でなく、十本で丁度満足を覚えたのはどういう完璧さだろう。これを想い出にしたいと云う、撮った写真のような、しかも傑作写真のようなものか。しかも映像に残らないのだから、見るともなく憶え切った写真なのだろうか。
|BRU SEP 10|6 2/5 x 42|coh-hk|$184.50/25|重量:未軽量|算出:+6|香味:+4|

 今日は二十四節気の大寒に春のような心地がして、何故かこれを吸いたくなった。とくに春先に合う味と思った事はなかったが、感覚は正直というか、馬鹿正直で、そういえば雪解に合う味かもとも思うのであった。残雪あるも暖かく、雪ノ下から萌えいずる鮮やかな緑と半ば不似合いな温気のまろやかさ、しかしどちらかといえばこの葉巻には夜の難破船のような暗いイメージがある。
 三年熟成の効果か知らないが、ともすると木のえぐみが際立つのに、木は木でも巧く潜んで、綿のチョコのような風味風合に、その飴のような甘味。「どの葉巻が甘いか」という事には応えられないけれど、この葉巻もそうそう甘くないけれど、これは異常な甘味がした。とろりというより、飴玉を舐めたようにどっかりと。着香のような、着香以上の甘強い感覚で、それこそチョコ風味の安っぽい飴玉にそっくり。それでいてえぐくない木の軽さがあり、綿のようにも思う。
 毎回これぐらいだと終売を残念に思うし、もう一箱早急に買わねばと焦る。終売焦るといえど限定物にはない落着きや安心もある。落着かねば、饒舌必至でペラペラと書いてしまう。尤もべガス・ロバイナの葉の風味には薄らチョコとは別に落葉が土と混じる瞬間の落着きもある。落着きが常に閃いている。ああ、きっと我知らず、落着きの落と落葉の落が落ちで掛かっているらしい。饒舌に終るのも勝手に筆がペラペラと進むので。
|EMA OCT 07 (19444/20000)|5.5 x 50|coh-hk|$198/10|重量:+1(14.03g)|算出:−1|香味:+1|

 八ヶ月ぶり。残二本の内、細い方を選ぶ。前回は三本の色が違うと書いているが、これは太さが全然違う。
 豚小屋というより鳥小屋、紙一重で良い匂いという事もあるけれど、これはそう良い匂いではない。しかし美味そうか不味そうかといったら美味しそうである。
 着火直後はキンキンして、程なく落ち着く。六年の加減らしい、そこから濃さに突入する事がない。一瞬チョコのそよ風がよぎったが、またキンキンした感じが戻ってきさえする。購入当初から淡い物ではあったけれど、これは草が強い。キンキンという金属音からすれば鉄分が豊富そうな味の春菊だが、この草には春菊の癖はなく、思えば草も淡くはある。当初のとろける甘味のような期待感はあまりなく、かろうじて残っている。要するに既に有り、減っている。此処から盛り上がる気がしないほど枯れている。枯れて分かり難いが元は「揮発性の木」という悪しきタイプかもしれない。細い一本にして吸い込みはさほど悪く感じないものの、重量は過多らしいし、吸い込みが悪いと捉えるべきなのかもしれない、微妙。あと一本しかないのにこんなもので終ってしまうのか。
|BRU SEP 10|6 2/5 x 42|coh-hk|$184.50/25|重量:未軽量|算出:−2|香味:+0|

 約一月前の前回にチョコ風味がほんわかとして美味しかった(未記述)ので三年近くの熟成が必要なのかなと思い馴れ馴れと今回も期待していたが、今回は悪寒が的中して揮発性の木が始終漂う煩い。どうもこの揮発性の木というものは三年弱では消えないらしい。前回たまたま当っただけのようで、この箱は今のところ三年経つまではハズレばかりである。今後永久に揮発性の木が残る気がしてならない。サンクリストバルじみている。
 当ればチョコ風味がほんわかとして美味しいのに。一体「揮発性の木」というものは何ものなのだろう。生産者に積極的に消去してもらいたい要素である。
 怖いもの見たさで熟成物のサンクリストバルに興味が涌く。
|EMA OCT 07 (19444/20000)|5.5 x 50|coh-hk|$198/10|重量:+1(14.59g)|算出:+5|香味:+4|

 なんだかほっとする味わい。淡くて味わい深い。ハバナ葉らしい藁の風味にほんのり薄くチョコがかかっている。……いつでも怖れずに手に取れる優しさなのだが、これが実は高級品なのである。貧乏人は怖れてばかりいなければならないのかと今日は思う。最近強い物を吸って食傷気味になっていたため—強い物を吸ったからって葉巻の他に良い事が起こる訳もなく—、尚且つ今年最後の一本となりそうなので、慎重に選んだが、結局静かすぎる物を選んだが、静かさが悪いはずがなく、正解でしかなかった。最初の一口で大正解だと知った。奥からバナナのような浮遊感が吹いてくる。ドラえもんの道具のように、葉巻の筒の向こうにキューバ以上のキューバがあって、その国の空気を筒を通して丸ごと吸っている。あちら側のただの空気だが、何故か丸ごとなのである。筒とか洞窟というものは元来こういうものである。間もなく来年というものへの不思議なトンネルを抜けるというのに濃厚である必要はない。
 花がキュンと染みてくる。おそらく木に花のエキスが染み込んでいるのだが、何故か恋情のように沁みてくる。するとふわっと真夏の分厚い空気に包まれる。放蕩に、染みを覆い尽くすほどのロバイナ農場の匂いである。分厚いが軽い、不思議な感触のチョコ。
 甘さは序盤からまるで呼吸のように出たり入ったりしている。大きな変化の中で、一つだけ1212の変化を繰り返している。かと思えば灰も縞馬色だった。甘さと灰の色に何か関係があるのだろうか。
 後は割と平凡な変化しかしないが、常に淡さ静かさが優っている。長々とした後半は、何か他の物事をしながらすいすい進む。したがって辛味の効く最終盤は只管心地よい。そこでもまだ静かなのである。まるで肌理細かなシャンパンのような薄いスタウト麦酒だった。

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