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  源氏物語「葉」
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|EMA OCT 07 (19444/20000)|5.5 x 50|coh-hk|$198/10|重量:+1(14.66g)|算出:+5|香味:+4|

 昼にあんまり調子が良かったので、夜もロバイナを。しかも限定品最後の一本。何が偉そうに「限定品最後の一本」かとも思う、しかしそう思わねばならない力が何処からか働いているよう。これを美味しく思わせる力でない事は確か。しかし葉巻を持ったり抓ったりして鄭重に弄んでいるとかつて無い感触の弾力の良さ。
 着火すると草かロバイナか。今日の昼にあった木とロバイナはなく。草と。すぐさま青い豆。豆の白さが何故か青いので、つまり白い旨味もあるのだろう、草の強さに隠れて。中身の白さに、豆と云うには豆の殻も薫るらしい。しんしんと積らない小雪のような儚げな甘さ。雪の積らないアスファルトの苦味。ちなみに明日は晴。その晴の予報がこの葉巻に今夜雑味を加えているようにも思う。雪よ降れ。
 雑な苦味も段々風格を帯びてくる。購入当初は透明感ばかり感じたが、そのヴェールが剥がれて、強くなると同時に枯れてもいるよう。しかし透明由来の優しさも残している。そこに忘れていた金木犀。花を忘れるほど質朴な序盤の玄妙があったのだろう。
 金木犀はモンテクリストでこそ完璧な金木犀で、他銘柄では別の花に喩えたいが、花の香を知悉せず、恥ずかしながら金木犀の亜種のようにしか思えない。たまに草が強いと菊などが浮かぶが、しかし大体実際にそのような亜種のようである。これも割と菊に近いが、何故か菊感がない。チョコの所為だろう。昼に比べてチョコ自体が安っぽくなくて高級カカオのようだが、深いより先に薄いものではある。昼の安っぽさにしても、合成にすら思える甘味がそうさせているに過ぎなかったのではある。とはいえこれが甘味に乏しい事もない。安っぽさも葉巻から出て来れば思いがけない美味しさで、甲乙はつけ難い。
 これも草が強いものの木は潜んで、落葉の土に混じる最期の一瞬がほとんど常に落着いて閃いて、より苦味が強い為に美味しい土のコクのよう。煙の苦味の粒子と土の苦味の粒子はどちらが細やかかな、廃れてこそ活きたミネラルを感じる。全く廃れた家屋などはなく、自然が白粉を塗ったような。としたらそれこそ幽霊みたい。そんな幽霊、此処には居まい、此処にしか居なくとも、だからこそ幽霊は此処にしか居まい。
 と無理矢理幽霊化してみるほどの明るさがこの翳りの土と火種にはあるのであった。夕方は泉鏡花「草迷宮」の終盤を読んで居て、これは家に人が居ない一人の時には読めないと怖れをなした経緯もある。「高野聖」などとは違う、本物の幽霊譚らしい幽霊譚であるのに怖れをなした。夜に人が居る時よりも、昼に人が居ない時の方が夜伽は恐い。と云って昼に怖くて外に退散するでなく、夜に散歩に行けば、この身こそ幽霊かとも思う。というほど、中盤以降安寧に安定して進み、幽霊は何も怖れず、何も無く美味しく終りを迎える。味が変わって怖いというのも恐ろしいほどありえない話だが、こういう余裕の身にこそ幽霊は来るべきなのだろう。
 もう一箱買う物でなく、十本で丁度満足を覚えたのはどういう完璧さだろう。これを想い出にしたいと云う、撮った写真のような、しかも傑作写真のようなものか。しかも映像に残らないのだから、見るともなく憶え切った写真なのだろうか。
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