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  源氏物語「葉」
++葉巻++シガー++レビュー++個人輸入++ブログ

|MUR MAY 13|5.6 x 46|cigarOne|$94/10|重量:0(12.54g)|算出:0|香味:+1|計1点|

 昨年十二月二日の、一本買いしたこの葉巻の美味しさが、結局連続で裏切られた。重量過多が原因らしくもあるが、お菓子のない荒野が広がる。しかも荒野が狭く広がる。広く広がる荒野なのに。
 一本買いの時のお菓子王国はなんだったのだろう。残8本あり、今後が心配になる。
 重量過多に吸い込みの悪さをば敏感に感じなかったが、実は味の受け方には敏感に反映されているのかもしれない。煙の量が実は少なくて、その少なさが煙を鼻に到達させなかったのだとも思う。無理して〈鯉の滝登り〉などをしてみると、金木犀が紛々と咲いたが、そうでもしなければ花など一向に咲かなかった。煙の量がすんなり多ければ、自然そんな風に鼻に届く。先ほどの事にして、あまり記憶にないが、雑味なども出そうで出ないような、いじらしい意地悪なものだった。

 前回のspecially selectedもお菓子感はそう分厚くなかったし、ラモン=お菓子というのは間違いかもしれない。ラモンというものは、存在感があるのでもないし、ないのでもない、不味さがなく、たぶん全体的に美味しい。なのに存在の仕方に評価しえないものがある。ラモンに対して、世界全体が評価に迷っているような心地がする。私が世界ではあらねど。
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|箱不明|4 4/5 x 50|cigarOne|$11|重量:0(10.72g)|算出:+3|香味:+3|計6点|

 一口目からかなり美味しい。「なんだこれ」と思う。羽目が外れそう。
 甘辛く、重軽く、芳しいのに香が出ていない。
 草花がはっきり見えてくるが、基礎が曖昧で、ニカラグア寄りのような。ニカラグアだとしてもハバナ寄りの最上級の物。
 焦茶が湿っぽくなく乾き、焦茶なのに黄土色で、金木犀並の甘味を蔵する菊の草。なんともおかしな話なのである。
 ともすると藁や農具に陥りそうだが、その豚臭さが、完全な深みとして隠れ仰せて片目を光らせている。葉巻と私の、どちらが明るく、どちらが暗いのかもわからない。お菓子にしては、渋く辛いが、苦味にしても、甘味を閉ざすことがなく、カラメル風味を残したりする。
 美味しいのに何故か味がわからず、わからない方が美味しいようなものである。飛び抜けた美味しさというより、的はずれな美味しさ。
 カスタードの風味が無いのにカスタードであったり、全体がそんな、無いもののみを有するようで、経験則が翻弄される。味というより、言葉として。新しい訳ではないし、ほとんど伝統の風格で落ち着いているのだが、個性が薄く、個性的である。これでこそラモンアロネスという感覚はある。
 カレーの香味はないが、喩えとして、黄色いビーフカレーと茶色いチキンカレーを混ぜたような。黄色がチキンで茶色がビーフなのに、両方を混ぜて、茶色いビーフと黄色いチキンを混ぜたような。相対的にはこんな事になる。ラモンが基礎の人はこんなことにはならない。が、絶対にこのような変な味ではないかとも思う。
 菊は始終なかなか濃厚で鉄分を多く含んで春菊になることがある。
 ビーフはハバナ、チキンはニカラグア、黄色はハバナ、茶色はニカラグア、しかしハバナ百パーセント。下手なハバナよりも美しいが、ニカラグア物ではない。
 色々な葉巻を思い出しうるのだが、どれにも落ち着かずにふわふわ彷徨う。当て嵌めたはずの欠片がやっぱり悉く違って合わないパズルなのである。「ファモソスの中盤」、「パルタガスの終盤」、似ているが、でも違う。しかもラモンを思い出す事がない。
 「茶色いロメオ」といっても、この茶色が個性を失わせている。といっても他にこの茶色を見いだせない。これはやはりどこかお菓子なのだが、ミントも添えず、春菊が渋い。
 もっと意味不明な事が伝わるように書ければ良いのだけれど。しかも美味しそうに。
|MUR MAY 13|5.6 x 46|cigarOne|$94/10|重量:−1(10.57g)|算出:0|香味:+1|計0点|

 一年ぶりの箱買い、到着日に一本のテスト。
 匂いがあまりない。表現が悪いが、かすかに胃の香。
 吸い込みはスカッと晴れている。
 ひと口、前回の軽さとは別物の、荒いハバナの風味。辛味もかなり。吸い込みが良すぎていつもの調子で吸うと煙がぼうぼうと燃え過ぎるのかもしれない。けれど甘やかさがすぐに乗ってくる。でもお菓子までにはならず、また荒野まではいかずに、ハバナの佳い風味がプンプンとはしている。
 弱くそそっと吸うほどにお菓子感は少し大きくなる。甘いたまごボーロの風味。強く吸うと、菊のような、緑がかった花、春菊。
 イボコロリのような灰ポロリとともに金木犀が噴き出す。やや菊感を残しつつ。床に落ちた灰を掃除する。
 鉄分がかつてなく強い。
 全体は、血を混ぜた苺と花の香りの春菊を練り込んだパウンドケーキといったところ。上手にこんがり焼けている。血まみれというほどではないが、なかなかそれに近い。

 これはこれで美味しいような気がするし、日本で寝かせれば日本の味になってしまう気がするし、こちらが蔵出し直後の本来の味わいに近いかもしれなくて、結局ハバナにもスイスにも行ったことがないのだから、まるで夢遊病のようなテストなのである。

  ちょうど一年前に購入したボリバー・リベルタドールと同じ工場の同じ年の同じ第二バンドの物。
|箱不明|5.6 x 46|cigarOne|$14|重量:−1(10.06g)|算出:+5|香味:+4|計8点|

 ふっと甘やかでどことなくミルキーなフルーツに始まる。おっとりしていて柔らかく、ひと口目からして完成した美味しさ。そこから始まる限りない想像が束の間に枯れつ萎みつ、やがて味気ない藁束のみになる。しばし。
 や・やがて金属質の金木犀を不気味な錫杖のようにキンキンと鳴らしながらもふっとひと口目に近づき、金属が優しく鳴り止むとともに本当にひと口目の甘美が復活するのである。甘く、軽く、ほんわかして、フルーツを盛ったクレープみたいな、ほとんどお菓子の味。生クリーム、カスタードクリーム、生地にこんがり香ばしい焦げが付き、砂糖を焼いたような風味、そこに今度は木質の木木犀がチョコバナナにふりかけるカラフルな仕上げのチョコスプレーのようにこんこんと横から降りかかってくる。ところがチョコスプレーはまるで茶色のチョコ味がせず、見た目にも嬉しいオレンジ一色の金木犀味であり、この時、クレープを食べ進めた果ての三角の根元にはそのオレンジ色しか詰まっていないように思えるが、食べてもなかなか減らないこの巨大なクレープの、お菓子官能は長い。豊満なのに味が甘すぎず煙のように軽やに膨らむので、煙なのに煙らしからず紅茶の香味を邪魔しないので、クレープが紅茶に合うのとやや同じ調合が起る。紅茶を飲んでいる。
 根元に近づくにつれ、金木犀の中に、ハバナ葉巻らしい風合いを覚える。それでもミディアムボディ程度。そうなる前は、本当にお菓子としか思えない、ヘビーにしてライトな不思議さなのである。
 や・や・やがてやや草っぽさが出てくる、残6センチ程度。この辺りでやめるのが毒ではないのだが、それでもまたクレープがほんのりすっきり香ったり、また軽くなったりして、急に新鮮で美味しいのである。ここにきて金木犀も一瞬絶妙な調合を見せ、その彩りに目を回しているうち、金属がまたキンキンと鳴り始め、この辺りでやめるのが毒ではないのだが、この先を知りたくなる。そこは地獄かもしれないよ。

 どうも売れ残っているような雰囲気があるのだが、そう高価でもないし、クレープとしては小一時間強の巨大なサイズも魅力で、箱で買っておくのも悪くなさそう。

 やっぱりロメオに似ていると思う。
|4 4/5 x 50|cigarOne|$11|重量:0( 11.04g)|算出:+6|香味:+4|

 一通り葉巻を吸って、なんだか倦きて、ラモンアロネスのようなブランドが気になってきた。
 若干木のような感じと酸味が立っているが、芋ともいえそうな旨味が充実しており、パルタガスを全体的にもう一枚煎ったというか、珈琲の薄皮(の雑味)を足したような物なのかと思う。ラッパーなども見事に薄く、褪せた黒のような、白い、葉巻の死体のような色をしている。単なる苦みがあり、この苦みが木と木から咲く花を引き締めている。
 引き締められてなお膨らむ木と花が優しい。男らしいブランドだと思っていたが、又この梅雨に、かえって秋になって日焼けの跡が残る褐色の少女という感じを受ける。嫁は要らないが娘は欲しいというような純粋な男らしさなのである。娘ほど男の中で優しく膨らむものもあるまい。
 終盤、カスタードのように甘い草が薫る。この終盤が比類なく美味しかった。ホットケーキの素に卵やミルクやバニラエッセンスを加えて練った、焼く前のホットケーキの味にやや似ている。そこに何か香草が加わっているのである。つまり焼かずに生なのだが、ロメオをこんがり焼いたようなフルーツタルトの浮遊する風味がしなくもない。ホットケーキなのに、煙の効果で、一流パティシエが作ったケーキのように美味しい。消火が迫ってむしろ軽やかでまろやかで、酸味の僅かな痕跡もなく、木がより褐色を帯びて凛々しくなる。最後にちょっと木犀が咲く。
|4.3 x 42|cigarOne|$6|+3|+2|

 揮発性の高い香り。嗅いだ事のない花の香料(ラベンダー?)のような。漆を一回塗った感じのラッパーから受ける印象に酷似していて、若いのか、痩せた樫の木のような固い雑味がある。ツンとした中に、ツンとしていなかったら相当美味しかったはずの美味しい喫味がある。色々なのだがなんだか一つの懐かしさになっている。懐かしいのに懐かしいものが別々には出てこないで、何が懐かしいのかわからず、葉巻全体が懐かしいような感じ。何かに似ているはずなのだが、まったく見当たらない。この懐かしさは実は新鮮さの事なのかもしれない。もしくは懐かしいものを新鮮な樫材でキツく巻いたのか、キツさが懐かしいのか。木は樫だし、花は木犀ではなく甘ったるいラベンダー、この二つだけでも随分異質なのに、さらに林檎のような変な揮発性があったり、どこを切っても異質に感じられる。
 このサイズのものを熟成させるには物忘れの激しさが必要そうだが、熟成がまったく足りない気がする。エル・プリンシペに、またはパルタガスのセリーPに少し似ているかもしれない。
|7.6 x 49|cigarOne|$15|+2|+2|

 葉巻臭さの中に甘いチョコが見える。
 一口目から優しい柔らかい芳香。葉巻の落ち着き。吸い手よりも葉巻の方が落ち着いている。ほんのりと木と鞣革が漂って、ミルクチョコに草をまぶしたような甘い味がある。喫味は薄らとして、やや吟醸感がある。金木犀に揮発性と甘さがある。けっしてバターには至らない粉の美味しさを保っている。
 独特な風のような芳香があるのだが、風が運んでくるので正体が分からない。正体が分からないから風が運んでくるのか。ややミントがかった、草に停まりそうで停まらない蝶のような甘い芳香なのである。それにカカオが振りかけられている。カカオの粉も風に紛れている。時々葉巻っぽい味が出て気分を葉巻らしさに引き戻すのだが、この差引が軽妙で心地好い。かと思うと乾いた木に取り憑いた花から蜜が滴るのである。花に浸けた木のようでもある。
 味はまったく違うけれどラモンアロネスとパンチは位置が似ている。パンチの白いスパイスをお菓子の茶色で置き換えたような双璧で、コイーバとダビドフとのような高い双璧とは違う双璧なのだがどちらもなんだか立派に感じる。
 傷んだコーヒー豆のような雑味が始終微かにちくちくしていた。それさえなければというところなのだけれど、それを消す熟成方法などあるのだろうか。
 随分吸ってもロブストサイズぐらい残る。ロブストの強さはないので咽には余裕があるが、終盤早々煙の通過が蓄積されたような味がする。少し冗長気味。終盤が苦手なだけかもしれない、どの葉巻にしても。
|4 4/5 x 50|cigarOne|$9|0|+1|

 ロブストなのに着火口に向けて口径が広がっている細長い台形。どうせ不味いのだろうなぁと思って吸い始めたのだが、一口目ですぐわかる円熟した香味。クリーミーな草の薫りがする。けっこう甘さを感じるようになってくると草から木に変わっていく。幹から草が生えているような感じ。思い出しているのだが、川端康成の『古都』を思い出すほどではない。ミディアムぐらいだが、イガイガしさがあるのか少し強く感じる。悪くはないが、特別美味しくもない。少しだけ美味しいような感じが安定して続いている。
 中盤に入るとストンと味が抜けた。以降、ほとんど煙たいだけ。
 と思ったら盛り返してきた。ほんわかと乾いた木の風味。甘味と草が消えている。クリーミーさは復活し、薄いクリームにスパイスが加わる。乾いた味だが、味が薄いので水っぽく感じる。自動販売機で買うココアにも似た不味さ。稀に木が小便を漏らすような旨さもあるのだが、葉巻本来の欠点を曝すような薄さである。
 終盤、薄いまま嫌味が出てくるが、たまに熟れたフルーツのようでもありながら木が熟れたものであるに違いない甘い良い香りが漂う。
 品質は悪くはなさそうだが、納得しかねる一本だった。これがラモン・アロネスかぁという影もなく、美味しいかもしれない部分も平凡だった。これを三本吸うのだったらコイーバのロブストを一本吸って失敗した方が有り難いに違いない。

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