忍者ブログ

  源氏物語「葉」
++葉巻++シガー++レビュー++個人輸入++ブログ

|5 x 43|seriouscigars|$5.4|重量:−1(9.34g)|算出:+1|香味:+1|計1点|

 約2年半前に買った物なのに、4年前に買った物のような気がする。一本買いで放置しているとこのような時間感覚になるらしい。
 フィルムに包まれてか、まだ元気に匂っている。古畳というか熟成畳のような、この他に存在しない物の匂い。畳が一畳葉巻だったらどんなに面白いだろう。
 藁か草か、着火すると香はドライになるものだが、ほんのり湿度の高い熟成感をともなう甘さ。熟成と云っても葉巻の場合、ランシオ香を放つとか、自宅の熟成でそういう事は起らない気がするので、出荷時からこのような熟成感のある味わいなのだと思う。今までのオリヴァで一番良いかもしれない、しかし強い。いや、意外と強すぎない。
 甘さは伸びないが、花っぽさは出てくる。花も伸びないが。
 「美味しそうでありながら美味しくない」というのが今までのオリヴァ感(吸ってみると不味いという意味でなく、吸っている最中も美味しそうなのである)なのだが、案外オリヴァも悪くないな、という印象。今までのオリヴァ感を覆す物ではないが、巻きも美しく見えるし、このサイズが丁度良い。やっぱり美味しそう、吸っても、吸わなくても。
PR
|6 1/2 x 52|seriouscigars|$14.00|重量:+2(19.81g)|算出:+2|香味:+2|

 「安い・美味い・でかい」が身上のオリヴァは、いつも安いなりに美味しくなく、しかも美味しいと思わせる思わせぶりなところがいつもある。美味しいという人がいれば、思わせぶりなところに思わせられちゃったのであろうと思う。私も—初めての個人輸入でオリヴァを買って—馬鹿みたいに思わせられちゃいそうになったが、初心者ながらに何処か引っかかるところがあった。つまり初心者でもわかる引っかかりがあるのである。何か重要な部品が欠けているというか、要するに思わせぶりなだけだと。
 通常のVの焦茶色のラッパーと比べると明らかに明るく、所々に水分が染み出たような焦茶色。
 着火するとすぐさまふくよかな甘さと草。両窄まりの細さから、一瞬ハバナ葉の香(しかも高級そうなハバナ)がくゆり出されるが、間もなくニカラグアらしい枯芝が追ってくる。芝は乾いた汗のような臭さと紙一重である。
 最大口径に差し掛かっても、強くはならず、枯芝も深まらず、膨らみも膨らまず、なかなか脳天気で広大な原っぱである。そこで弁当箱からチョコを取り出したような。麦チョコなのか、しかしチョコは薄く、弁当なのだから菓子よりも麦や米のほうが強い。おにぎりの海苔をチョコで代用してしまったようなものである。もっとも米というよりは断然麦だが、あまりにも原っぱである為、日本の私はそれをおにぎりだと思うし、おにぎりに海苔を巻くようにしてパンにチョコを巻くわけにはいかない。架空の妙なこだわりである。それにしても素晴らしい原っぱで、茣蓙を強いて寝転んだかのように草いきれの匂いが安定している。
 通常のVにある、黒人の美しい肢体に映える思わせぶりな銀味は無い。醤油の風味というか、染みた味わいが少しある。その醤油の染みがあるいはチョコを排斥して米に近づけ、挙げ句の果てにはもっとも麦であるにして麦をも遠ざけるのである。この葉巻は麦に一番似ているのに、麦ではない。
 味は足跡だらけの原っぱだったが、葉巻を見ていると突如前人未到のモンブランが現れる。なかなかここまで美しい灰の落ち方と火種の美しさは見られない。ゆっくり吸っていたのにモンブランで、横から見ると鋭く、正面から見ると穏やかな形をしている、火種が。実際のモンブランの横の形がどうだか知らないが、兎に角火種がスクエアプレスを維持して見せる。灰が万年筆のキャップをポンと外すかのように真っ赤な火種を綺麗に残して落ちたのである。
 中盤に入ると典型というか典雅というか、花とカスタードが僅かに漂う。実に良く出来ていて、モデルさんが服を着こなすぐらい安定しているのだが、そのモデルさんはまさに高級なのだが、服がどうも三文会社の物のようだ。三文オペラというか、まさに三文字の店のスーツ。
 お前、馬鹿だろう。何で突然スーツなんだ。失笑してしまうね。大体あんたはスーツのイロハもわかっとらんだろうに。
 確かに私にはスーツがわかりません。まさか胸ポケットからハンカチが出過ぎていやしないでしょうか? 
 出すぎどころか、ハンケチが引っ込みすぎだというに。
 幾分安いスーツなので、安いからハンカチも引っ込み思案なのですね。
 ケチというんだ。しかしなんでスーツなんだ。
 こっちが知りたいもんですよ。なんでスーツを着て原っぱでネコロバニャならんのです?
 スーツはまだいい、ネコはいけない。
 ネコの味はしませんがね、でも、地があればでんぐり返しを打たねばならんでしょうに。むろんスーツの味もしませんや。
 じゃ私は消えるよ。じゃあね。
 一度目はモンブランが現れ、二度目は湖だった。波の一つもない、でんぐり返しの打てない早朝の湖。なんで火種なんかにいちいち景色を見てしまうのだろう。葉巻が不味いからだろうか。火種サイズのみみっちい景色なんか銅版画でも見られない。でも昔からみみっちい絵が好きだった。コピー機にしても縮小印刷機能ばかりに興味があった。
 尊大なみみっちさだな。
 リカット。
 最初に細く切っていた為、段々吸い込みが悪くなってきていた。吸い込みが素直になり、溜まっていた雑味が一度堰を切って噴出する。経験上それをやり過ごせる雑味だと知っていた。こうして玄人感に浸るが早いか、茨の土石流は確かに鎮まり、原っぱの緩やかな底にある小川が茶色く濁る程度になる。小川沿いには花が咲いている。うすら甘くて、濁った小川を飲み干したいような。なんといってもここは原っぱである。ラッパのマークの原っぱなのである。
 連歌の雅もなく、語感のみに突き動かされ、私はたちどころに嘯くように正露丸を欲した。しかし何も下るところは無く、だからこその陽気な正露丸であった。するとやって来たのであった。最終盤という、まさに最終盤そのものの風味でありながら、しかしかえって軽やかさ加わり、最終盤らしくない、とどのつまり変な刺激がやって来た。
 そのようでした、原っぱの上であるにもかかわらず、この上なく立派な紙巻煙草を吸っていたのでした。五十センチもの長さがある紙巻煙草で、嫌というほど堪能しました。その紙巻煙草が二十五センチで前触れもなく折れると、優しいクリームが香るではありませんか。しかもまたマッターホルンがほんわかと聳えているではありませんか。ええ、横から見ると峻厳です。しかもそのホルンの頂上には草が生えているのですよ、まったくただの草が。雑草といっても良いぐらいです、雑草にも花は咲きますでしょう。すると空が土石流なんですね。ああ、モンブランとマッターホルンとを取り違えてしまいました。ええ、喇叭のホルンの所為で。そもそもスクエアプレスを横から見るとモンブランがマッターホルンだといったではありませんか。馬鹿め! 一体馬鹿が誰なんだ。若布がバナナんだ。
 何という軽さだろう、土石流の不安のように空が茶色いというのに。茶色いというほど空は茶色くないのかもしれない。私は空よりも重い。空よりも重いという事だけが尊厳である! そうだよ、ケムリというのはこういう物だよ。ケムリというのは少しだけ頭がおかしいものなんだ。

 一口目が一番美味しかった、たとえそうだとしても、無理に期待させるところもなく、したがってか、けっして不味くはならなかった。良く出来た葉巻だと思うのだが、群を抜く香味には依然欠ける。期待させはしないが、安定感では群を抜いている気がする。当り外れなく、メラニオの全てがこのような物なのではないかと思う。
 少し関係がある気がするのだが、『カラマーゾフの兄弟』に「百姓なんかに葉巻を振る舞うな」と叫ぶ宿の主人がいる。この葉巻は貴族も羨む百姓用の高級品という感じなのだろうか。
 目の前の事すら見えなくなるケムリなんかにかかずらっていたら遠くなどまるで見えなくなってしまい、『カラマーゾフの兄弟』級のものは少しも書けなくなってしまう。
|5 x 54|seriouscigars|$5.80|重量:+1(14.55g)|算出:+3|香味:+2|

 オリヴァ・セリーVはフィギュラドを五本試した事がある。あまり葉巻慣れもしていない頃、約二年前の冬、雪が降っていた。

 雪に映えるような斑も油もない乾いた均一焦茶色の綺麗なラッパーで、かちりと重く巻かれて吸い込みが軽い。新鮮なのかアンモニア臭がある。
 着火すると驚くほど鮮度を感じる芳香、何物の鮮度か分からないがなんだろう、何処かで嗅いだ花か香水の匂いである。はじめから甘い。二口目からすぐに乾いた芝生や麦のようになってくる。汗臭さというか、疲れてしまうような、安っぽい葉の味である。
 火がフット全体に回った途端に途轍もないフルボディになる。辛いというより、重さによって辛味が出ている。味わいが重いのではない。
 ハバナにある葉巻独特の深みというものが一切ないが、新世界葉巻の一つの動かし難い結実なのだと思ってしまうようなところがある。ハバナの深みこそないが、ロメオのフルーツなどは序盤から出てくる。紅茶は安いものでも一応紅茶だが、喩えが違うが、葉巻はハバナだけが葉巻で、他は葉巻とは別の物に思えてしまう。どれかといえば紙巻の偉い物のようなものに思える。ハバナと紙巻はまったく別種だが、これはそうではない。
 外観から推察するようなほろ苦いカカオの香とコクもなくはない。そして理由は分からないがセリーVにはいつも何か銀色の煌めきみたいなものを感じる(この煌めきを初めて感じたのはダビドフミレニアムトロだった)。燻し銀なのか、確かに小学校でやった酸化銀の実験を思い出しもする。強さによって実験の危うさを感じもする。また危うさが寒い夜に合う。凍死のイメージかもしれない。
 中盤までは雑味も特にないし、優しい風味もなくはない。金木犀なども少し咲く。ただハバナのようにハバナ葉による統一感というようなものがない。したがって、それが無いだけで、落ち着きがなく感じられる。
 灰は白い銀色で、ラッパーに映えている。

 飽きて雑味を感じ易くなってきたところに、序盤のあの甘やかな香水が再びかぐわしく匂ったりする。終盤に突入するとまるでハバナのように全体が濃く激しくなり、かといってフルボディを今更強めるのでもなく、ハバナの風味なくしてハバナを吸っているようだった。おそらくハバナでお馴染みの草が効いてきたのである。
 なんだか美味しいのか美味しくないのかよくわからない物だった。微かにハズレではあるらしく、かといって当っても大当たりという事にはならないと思う。
 ほぼ二年ぶりに買ってしまったのも独特の燻し銀が忘れ難かったからだった。大当たりするのではないのに、また買ってしまうかもしれない。
|6 × 60|AtlanticCigar|$8.55|+2|+2|

 雪の白さにあうような褐色の肢体が美しい。雪の冷たさもあって、着火前に見ていた時よりも葉巻がホカロンのように温まってくるとさらに美しく見えてくる。褐色の脚に似ているのかもしれない。温度は脚に似ていると思う。
 他のフィギュラドとは一風変わったフィギュラドで、乳首によく似た先っぽから着火すると煙がその火山ではないところから漏れていてかわいい。よくある火山みたい。フィギュラドの出来は三流で、はじめ吸い込みが悪いがかわいい。三流なのでマグマが万遍なく山裾に至るまでには難渋する。そういうおもしろいような序盤を越えても、吸い込みが悪い事が多い。強烈フルボディにしては煙も少ない。
 香味は特別で、ダビドフミレニアムにも似た銀味がある。ダビドフより大分強いが。茶色く塗られた銀の風味はなんだか高貴な脚のように高貴で、還元したような燻し銀の味は特級の生地めいた外観からも漂っている。それから高級チョコ(カカオ95%)のようななかなか苦い風味。甘味はあったりなかったりで、せせらぎのように流れてきそうなのだけれど、濃密にして思わせぶりに終わる。ボディは強過ぎるが、品は厳しく揺るがず、甘味はチョコを生かすだけの極少量の匙加減でもあるのである。チョコが甘いというよりもチョコと甘味を別々に口に含んでいるような。
 五本しか試していないけれど、良くも悪くも灰とも草ともつかない風味も漂っている。紅茶を混ぜたようでもある。三本は強烈な煙草という感じが出てしまった。旨味とは正反対の性格で、口中が灰皿に似てしまった。
 まったく安さを思わせず本当に高そうな香りがするのだが、よく値段を見るとオリヴァなのにVはなかなか高い。
 私には強過ぎて気をつけて吸わなければすぐに咽もなにもかもがやられる。気をつける方法といえば、窓際で窓を開けて鼻を閉ざして吸わなければならない、寒い冬の日に。これは冬が旬らしいのである。夏に冬を懐かしがりながら吸えば良いのかもしれない。忘れられない美味しさがあるというか、実際に吸っている時よりも記憶の方が美味しいような。夏に吸ったものを冬に思い出せば良いのか。

忍者ブログ [PR]