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  源氏物語「葉」
++葉巻++シガー++レビュー++個人輸入++ブログ

|6 x 52|AtlanticCigar|$25.80|+1|+2|

 かなり臭い匂いがあり、酸っぱさまで感じる。ラッパーは極めて脆いらしく、気にならない程度だが脆さが露呈して少し破れがある。
 吸い込みはやや緩い。
 着火した途端、煙量豊富で極めて辛い。これでパドロンヴィンテージは5種目だが、群を抜いてパワフルな出だしで、緑色のまま乾燥した草や麦の殻やパンが燻っている。パドロンという一枚の葉のような、突出した点の無いシンプルな味わいはほぼそのまま、だがこれは強さが全然違う。
 火種が落ち着きつつ染みた花の香がクロスフェードして、2センチほど進むと辛味がほぼ消えるが、依然強烈フルボディ。大変滑らかになるのだが、それが嘘のように強い。
 品質の安定度も群を抜いているっぽいけれど、味わいが朴訥としているので、各所での高評価をアテに濃密な美味を想像したりすると肩透かしを食らうかもしれない。頬を落としたりする珍味の類ではなく、「どれだけ真っ直ぐ歩けるか」という葉巻選手権でもあれば優勝しそうな感じ。歩く姿が遠離るにつれて異常に滑らかになっていくのである。そんなものを遠目に見ながら序盤の名残で既にダウンしそうになっている。吸う前の体調はいつもより良かったはずなのに。
 こうなるとウイスキーは合わず(モノにもよるかもしれない)、黒ビールの方が優しくて美味しい。旨味を黒ビールが補うし葉が柔らかく薫るようになる。木質もはっきりしてくる。木目が花の形を描くような花の咲き方、つまり染みた花の咲き方で、木には嫌味がなく、材木店にいるような穏やかさ。パドロンなので高級家具屋と言った方が良いかもしれない。あるいは紙。
 パドロンが全体的にそうだと思うけれど、素朴で端正なモノを好む人の内でもこれはとくに強者向けだと思う。ハバナっぽさはほぼ無い。

 5本吸ってみてやっとわかったが、私にはパドロンは向いていない。たまにどうしてもパドロンを吸いたくなる事はあるのだが、美味しくても+3止まりになるはず。今回のモノが今まで試した中で一番大きく、滑らかさは抜群だが、大きくなっても優しくはならず、もっと小柄なビトラで十分だった。喉と胃と肺だけでなく頭も辛い。これほど苦しみながら書くのは初めてで、高価なのでなんとか吸い切ろうとしたが、残7センチで死亡。無理して吸っても良い事はない。と思ったが死者が残5センチまで吸い切った。
 死者となってみればなかなか美味しかった。葉巻に殺られたというよりウヰスキーに殺られていたのかもしれない。
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|5 1/2 x 52|AtlanticCigar|$16.70|+4|+3|

 乾いていて艶もない、いかにも高そうな質感のラッパーはいつみても美味しそう。極短い産毛が無数に生えている。
 吸口を小さくカットしてくれといわんばかりの窄め方がしてある。カットすると目測五ミリぐらいだが、吸い込みは大丈夫なのだろうかと思うのも馬鹿らしいほど風通しが良い。葉巻自体四角いし絞りも変形だが、トルペドの見本のような口径の小ささと吸い出し具合。
 のっけから落ち着いた苦味に、薄らと木花の風味。草を焼いたような緑の香りも、焼け野が焼き畑だったような平静さ。木花からはバターの旨味がくすんでいる。ボディは軽く、濃い味もないが、中が抜けたようではなく、薄さが落ち着きになっているというか、濃い落ち着きというか。派手でもないし素朴でもない。穿き馴れた革靴が景色を包んでしまったような。特別柔らかくもないし若干辛味があるぐらいなのだが。キューバモノのナッツのような風味は限りなく薄い。薄いばかりで無くはなく、バターか花かと揺れるような風味がそれを時々濃くする。マデューロほどではないが、中盤に入ると辛さが山椒や白胡椒と混じる。
 惹き込む魔力は無さそうなのに、もっとも飽きにくい葉巻かもしれない。葉巻とともに窶れた人はこういうものばかり吸っていそうな。葉巻に窶れた人はいつまでも魔力を求めるはずで、これは休憩の一本なのだろう。長い休憩をしたくなるような魔力があるけれど。
 香りを吸い込んでなんだか懐かしいなぁと思っていると、水飴の湖に睡蓮が咲いているような景色に吃驚する。しかも水の香りの薄さで。一瞬の思い込みに香りが癒着した出来事だった。

 酷似してはいるもののマデューロとの違いは正直よくわからないが、絵具風味は出なかった。香味が爆発することなどありえず、残り四センチほどまで生きていた。日が暮れるのを待つような静かな味わいで、日が暮れるのを待ちうるテラスが自宅にあれば良いのに。テラスも無いし、軽いので油断して終盤で急いでしまったら、しっかりと吸いごたえがあったらしく、終いには体調不良になった。
|4 3/4 × 50|AtlanticCigar|$12.70|+4|+3|

 一口目でわかる品の良さ。四角いがビリガーやロッキーパテル1992やトラノ1959などは思わせない。葉というよりも紙を燃やしたような良さで、葉のエグ味を悉く消している。エグ味は紙のエグ味で、まっ白な紙のような葉なのである。しかし紙は白ではなく上質の緑であったり上質の茶だったりしている。鼻というのはそういうものなのだろう。
 はじめて吸った時はなんとも思わなかったけれど、上品すぎてこれを異質だと気付かなかっただけかもしれない。序盤特別なものが香る事があって、それがなんなのか思い出せないうちに金木犀が咲くかと思えば見たことのない黄緑色の木犀が咲いている。しかし相変わらず驚きはない。旨味も甘味も稀薄。品が良いだけなんて、人間ではあり得ない事で、俄然植物的な良さがある。土や木というよりも程よく乾いた草の味。
 辛味は中盤過ぎまで少しあるけれど、スパイスなども穏やか(マデューロであることもこれに尽きるような)。強さも中盤過ぎまでかなりある。中盤を過ぎると緑の絨毯も脱穀されてくるのである。
 重厚なハバナだと良くも悪くも食事を無かったことにしてしまうから、良い食事の後にはパドロンが最適かもしれない。良い食事の想い出に浸りつつ美味しく吸っていられそう。パドロンに驚くには先ず食事に驚いている必要があったのかもしれない。または食事に興味のない人の食事として。
 質の良さは似ているもののダビドフともまた違って恍惚感もない。いちいち恍惚としているのが馬鹿らしくなってくるほど落ち着きがある。煙量やドローなども丁度良いとしかいいようがない。終盤は上品な葉巻にありがちな絵具風味で終わる。サイズもこれで丁度良かった。
|6 1/2 × 46|AtlanticCigar|$10.90|+2|+2|

 以前にこれとほぼ同じ口径でもっと短いプリンシペサイズのマデューロを吸った事がある。強く、旨味もないのに、落ち着いてじっくり趣かせるような細みの風格があった。特別旨いわけではないのに有無をいわせないのである。いえなかっただけかもしれない。確かに黙って吸っていたのだがね。
 着火口を見ると黒い葉と白い葉と茶色い葉がブレンドされているのがありありとわかる。香りはしない。購入したばかりの時は香りがあったが、香りが飛んでしまい易いようであり、買ってから熟成や休憩などさせずにすぐ吸った方が良いのかもしれない。マデューロも同じだった。
 思ったより軽く、ミディアムかそれより少し軽いぐらい。着火前には香りがなかったが、着火前に香りがある葉巻の着火前の香りがする。い草とかヨモギとか、そんな草の香の煙。旨味も甘味もないし特別良い芳香もないが、物足りなさを感じず、妙に腑に落ちる。紙巻きでも味わえそうな感じだが、気付かないだけで香りに恍惚成分が含まれているのかもしれない。精神安定剤だろうか。土地についてはよくわからないが、ニカラグアらしい芳香であるような気がする。確かにときどきふとさせるようでなんでもないような芳香が漂う。瞬間的にダビドフミレニアムのようでそうでもなく、確かこれと似た紙巻きをどこかで吸った事がある。ダビドフマグナムだろうか、違うような。ダビドフマグナムにしばしば合わせたダージリンに似ているのかもしれない。渋みのある紅茶の香りがそういえばする。ワインにリコリスを見た覚えは無論ないが、そもそもリコリスを知らないからか、これぞリコリスという味がする。香草のようではあるが、まったくスパイシーではない。豆とはかけ離れている。真ん中が燃え尽きにくいのか、灰を落とすと火種が槍状に尖った。
 大きな変化もなく着々と落ち着いて進行し、終盤に至ると木の染みの風合いが出てくる。他の高級な葉巻とはまったく別物の高級さなのだなと思っていたら凡庸な高級さまであるのである。私は凡人なので凡庸な方の高級さに惹かれてしまうのだが、これがパドロンなのだったら少し残念でもある。
 パドロンでは一番好きな形に違いないと思ってモナルカを購入したのだが、形としては大正解だった。角の取れた四角が小気味よく、口径は短辺によって長辺より細くなり、夜長に適した長さがある。
 柔らかさが旨さとなるような、ひたすら柔らかい苦みのようなものが始終あったかもしれない。灰に近い苦みが苦みを思わせないほど柔らかいのである。だから同じことだけれど、灰でも苦みでもないのだった。


〜〜〜参考〜〜〜
◆Padron 1964 anniversary Principes Maduro◆
 |4 1/2 × 44|PipesandCigars|$9.75|0|+1|
〜〜〜〜〜〜〜〜

 1ドルや2ドルの価格差だったら断然モナルカの方が良い。高い葉巻にはウィダーインゼリーのような短さは不要なのだろうか。ただ、高級高級と思っていたから、1964モナルカは案外安い。本当に高級な味があるのか、安いなりの旨さというものはなかった。

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