×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
|TUR JUN 08|6 2/5 x 42|cigarOne|$215/25|重量:+1|算出:+4|香味:+3|
丁度今朝方、原動機付自転車を漕いでいると、今秋の木犀が肌寒くも爽やかな風に開花していて、この箱も緘の下段に火の舌を出してしまった。下段だけは長期熟成させようと軽くは思っていたのに、三ヶ月目でもう14本目になる。もう十四歳になってしまった気分だが、最近はモンテクリストを燻らせてもあまり木犀を感じない。No.1はそういうものなのかもしれない。はじめて木犀を感じたのがモンテクリストだったという理由だけで下段の緘を解きモンテクリストを燻らせたのである。
No.1はモンテクリストの中ではやはりハーブ寄りだと思う。土っぽい濃厚なナッツに青緑色の芳香が絡む基本的な香味は共通している。甘さはあるが、まろやかさはあまりない(。No.シリーズを詳らかにしないが、まろやかさはNo.4のほうがありそう)。なんと、木犀もやっぱりあまり感じない。去年は葉巻ばかりに木犀を感じて葉巻ではない木犀がかえって感じられなくなってしまったが、今年は葉巻ではない木犀に木犀を感じる事ができたらしい。どちらが嬉しいかといわれれば、後者の方が嬉しい。去年よりも今年の方が嬉しいのである。これは愛煙家失格を意味するだろうか。
この一本は有り難く、これまでの14本で一番美味しいというか美味しそうなのだが、残念ながら吸い込みが少々悪い。それでも段々と木犀は薫ってくる。当初の期待が叶ってくる。歳時記を熟読しているのでもないので億劫ではあるけれど、熟読している人でも木犀は目立って秋だろうとは思う。しかし毎年思うが、木犀とトイレが直結せずにすれ違うのは秋の不思議である。
キューバでも木犀は咲くのだろうか。この愉しみ方は日本的な愉しみ方なのか。
丁度今朝方、原動機付自転車を漕いでいると、今秋の木犀が肌寒くも爽やかな風に開花していて、この箱も緘の下段に火の舌を出してしまった。下段だけは長期熟成させようと軽くは思っていたのに、三ヶ月目でもう14本目になる。もう十四歳になってしまった気分だが、最近はモンテクリストを燻らせてもあまり木犀を感じない。No.1はそういうものなのかもしれない。はじめて木犀を感じたのがモンテクリストだったという理由だけで下段の緘を解きモンテクリストを燻らせたのである。
No.1はモンテクリストの中ではやはりハーブ寄りだと思う。土っぽい濃厚なナッツに青緑色の芳香が絡む基本的な香味は共通している。甘さはあるが、まろやかさはあまりない(。No.シリーズを詳らかにしないが、まろやかさはNo.4のほうがありそう)。なんと、木犀もやっぱりあまり感じない。去年は葉巻ばかりに木犀を感じて葉巻ではない木犀がかえって感じられなくなってしまったが、今年は葉巻ではない木犀に木犀を感じる事ができたらしい。どちらが嬉しいかといわれれば、後者の方が嬉しい。去年よりも今年の方が嬉しいのである。これは愛煙家失格を意味するだろうか。
この一本は有り難く、これまでの14本で一番美味しいというか美味しそうなのだが、残念ながら吸い込みが少々悪い。それでも段々と木犀は薫ってくる。当初の期待が叶ってくる。歳時記を熟読しているのでもないので億劫ではあるけれど、熟読している人でも木犀は目立って秋だろうとは思う。しかし毎年思うが、木犀とトイレが直結せずにすれ違うのは秋の不思議である。
キューバでも木犀は咲くのだろうか。この愉しみ方は日本的な愉しみ方なのか。
PR
|6.25 x 44|AtlanticCigar|$7.42|算出:−1|香味:0|
甘いチョコのような苦い芝生、着火前も着火後もそうである。チョコが苦く、芝生が甘い。
これ以上何も言わせない。段々不味くなったのでハズレたけれど、出だしは悪くなかった。私は胡瓜が嫌いなのだが、何故かそれっぽい匂いがある。
これで三種類買ったイリュージョンを三種類試したが、一番小さい物が一番良いような気がする。外れてもあまり残念ではないし、イリュージョンには全体的に茶飯事のような取っ付き易さがある。強いのだが、飽きが来ない。
取り留めのない気分でこんな事を書いていたら、終盤やや復帰した。それで、サー・ウォルツという、クミンかコリアンダーの香りがかなり利いた、薬草酒にしては珍しい無色の酒を開封して併せたら、当然何も言わせない葉巻にも複雑さが増した。この酒は葉巻ではヴェゲロスに近い。
Country Of Origin: Nicaragua
Wrapper Type: Nicaraguan Habano
Color: Colorado Maduro
Binder / Filler: Nicaraguan / Nicaraguan
甘いチョコのような苦い芝生、着火前も着火後もそうである。チョコが苦く、芝生が甘い。
これ以上何も言わせない。段々不味くなったのでハズレたけれど、出だしは悪くなかった。私は胡瓜が嫌いなのだが、何故かそれっぽい匂いがある。
これで三種類買ったイリュージョンを三種類試したが、一番小さい物が一番良いような気がする。外れてもあまり残念ではないし、イリュージョンには全体的に茶飯事のような取っ付き易さがある。強いのだが、飽きが来ない。
取り留めのない気分でこんな事を書いていたら、終盤やや復帰した。それで、サー・ウォルツという、クミンかコリアンダーの香りがかなり利いた、薬草酒にしては珍しい無色の酒を開封して併せたら、当然何も言わせない葉巻にも複雑さが増した。この酒は葉巻ではヴェゲロスに近い。
Country Of Origin: Nicaragua
Wrapper Type: Nicaraguan Habano
Color: Colorado Maduro
Binder / Filler: Nicaraguan / Nicaraguan
|MUA NOV 09|4.5 x 26|Cigars of Cuba|$160/25|+3|+2|
やっぱり黒い。バラツキなのかもしれないが、この箱の物はマデューロシリーズぐらい黒く見える。
今年の1月に購入したものを、昨夜丁度八ヶ月で失った。細いからといって品質が安定しているという訳はない。細さの所為か大ハズレという物も感じにくいが、当りは少なく、+1が八割を占める。二割のうち二本はより不味く、三本はより美味しい。当たりの三本にしても初回の感動はなく、期待に満ちていた所為かかろうじて最初の一本が上質のココア粉を炙ったような風味に感じられて美味しかった。
全体的に香ばしさが頗る濃く、小柄な凝縮感が味わえるし、さすがにコイーバクラブに比べるとクラブがただの藁束に思えるぐらいだが、どうしてか奮わない。パナテラというのはこの程度のものなのか、好きなサイズなのでむしろ保管が悪かったのであってほしい。パナテラレゼルバでも出れば良いのだが、そんな小粋な事は無いだろう。
レゼルバが出るという事はこの葉巻が本気ではないという確証のようなものだけれど、レゼルバが無いという事はパナテラはこれで本気なのか。思えば日本酒だって全てが大吟醸ではないのだし、下手な純米吟醸も頻出するし、大吟醸が外れる時には本当に吃驚する。この葉巻はたぶん純米酒のように嗜むものなのだと思う。昼に珈琲と合わせるのが最良だけれど。
全部当りなら毎日3本ぐらい吸いたくなるような夢がある。稀に吸うにはあまり適さない。毎月三箱買い、稀にロブストエクストラに着火する、それで良い。
1本目
よく焦がした木(苦味)にココア。強く吸うと花が滲み出す。甘くはない。薄い草。「葉巻を吸っている、コイーバを」という実感が常にあり、余情がない。最終盤では木犀が濃厚な焼きたて(必ず焼きたてなんでございますの)バタークッキーになる。
21本目
久しぶりのやや当り。一瞬洗剤だが、洗剤が美味しいというか、洗剤もやはり葉巻らしさではあるのだろう。独特の香ばしさの原料は麦で、麦は焼きたてのフランスパンの皮。チョコではなく、フランスパンと洗剤というあまり美味しくなさそうな組み合わせなのだが、美味しい。甘い蜂蜜が二つをべったり繋いでいるのかもしれない。煙らしさが極まって、味のないコクも感じる。
やっぱり黒い。バラツキなのかもしれないが、この箱の物はマデューロシリーズぐらい黒く見える。
今年の1月に購入したものを、昨夜丁度八ヶ月で失った。細いからといって品質が安定しているという訳はない。細さの所為か大ハズレという物も感じにくいが、当りは少なく、+1が八割を占める。二割のうち二本はより不味く、三本はより美味しい。当たりの三本にしても初回の感動はなく、期待に満ちていた所為かかろうじて最初の一本が上質のココア粉を炙ったような風味に感じられて美味しかった。
全体的に香ばしさが頗る濃く、小柄な凝縮感が味わえるし、さすがにコイーバクラブに比べるとクラブがただの藁束に思えるぐらいだが、どうしてか奮わない。パナテラというのはこの程度のものなのか、好きなサイズなのでむしろ保管が悪かったのであってほしい。パナテラレゼルバでも出れば良いのだが、そんな小粋な事は無いだろう。
レゼルバが出るという事はこの葉巻が本気ではないという確証のようなものだけれど、レゼルバが無いという事はパナテラはこれで本気なのか。思えば日本酒だって全てが大吟醸ではないのだし、下手な純米吟醸も頻出するし、大吟醸が外れる時には本当に吃驚する。この葉巻はたぶん純米酒のように嗜むものなのだと思う。昼に珈琲と合わせるのが最良だけれど。
全部当りなら毎日3本ぐらい吸いたくなるような夢がある。稀に吸うにはあまり適さない。毎月三箱買い、稀にロブストエクストラに着火する、それで良い。
1本目
よく焦がした木(苦味)にココア。強く吸うと花が滲み出す。甘くはない。薄い草。「葉巻を吸っている、コイーバを」という実感が常にあり、余情がない。最終盤では木犀が濃厚な焼きたて(必ず焼きたてなんでございますの)バタークッキーになる。
21本目
久しぶりのやや当り。一瞬洗剤だが、洗剤が美味しいというか、洗剤もやはり葉巻らしさではあるのだろう。独特の香ばしさの原料は麦で、麦は焼きたてのフランスパンの皮。チョコではなく、フランスパンと洗剤というあまり美味しくなさそうな組み合わせなのだが、美味しい。甘い蜂蜜が二つをべったり繋いでいるのかもしれない。煙らしさが極まって、味のないコクも感じる。
|5.5 × 50|AtlanticCigar|$9.25|算出:0|香味:+1|
$9.25のマデューロをカートに入れたが品切で$9.50のナチュラルを$9.25で入手できた。そもそもナチュラルを買おうとして品切だったから仕方なくマデューロをカートに入れたのである。
巻きはぼそっとしている。ナチュラルとはいえあまり明るいラッパーではない。
昨日のイリュージョンに比べるとこのホンジュラス産葉巻は随分藁っぽい。花のような旨味が滲むが、藁がカラカラに乾いていて辛い。強い。でも味はまあしっかりある。西部劇に出てくるバーで吹かすような味(南米中南米は勿論アメリカにも行った事がないのでよくわからないが)。芋が乾き、肉が乾いている。だがビーフジャーキーや干芋というよりただの芋味である。干してビタミンが増したような味はしない。どちらかといえば洗濯物を干したかのようである。石鹸は香料を加えていない昔の石鹸。昔の石鹸というのはあまりいい匂いではない。但し、洗剤の味はまったくせず、救われる(葉巻というものはたまに洗剤の味がするからね)。
中盤以降、最終盤で味が消えてしまったパルタガスのような感じがずっと続いている。そこにコイーバマデューロの雑味と、若干渋い木の酸味を加えたような。いずれにしてもあまり良い事はない。
最近葉巻に甘味を感じなくなっている。毎日葉巻の甘味を感じているから麻痺しているのだろうか。はじめて葉巻の甘味を感じた時の感動はついぞない。
Country Of Origin: Honduras
Wrapper Type: Honduran Corojo
Color: Colorado
Binder / Filler: Honduran / Honduran
$9.25のマデューロをカートに入れたが品切で$9.50のナチュラルを$9.25で入手できた。そもそもナチュラルを買おうとして品切だったから仕方なくマデューロをカートに入れたのである。
巻きはぼそっとしている。ナチュラルとはいえあまり明るいラッパーではない。
昨日のイリュージョンに比べるとこのホンジュラス産葉巻は随分藁っぽい。花のような旨味が滲むが、藁がカラカラに乾いていて辛い。強い。でも味はまあしっかりある。西部劇に出てくるバーで吹かすような味(南米中南米は勿論アメリカにも行った事がないのでよくわからないが)。芋が乾き、肉が乾いている。だがビーフジャーキーや干芋というよりただの芋味である。干してビタミンが増したような味はしない。どちらかといえば洗濯物を干したかのようである。石鹸は香料を加えていない昔の石鹸。昔の石鹸というのはあまりいい匂いではない。但し、洗剤の味はまったくせず、救われる(葉巻というものはたまに洗剤の味がするからね)。
中盤以降、最終盤で味が消えてしまったパルタガスのような感じがずっと続いている。そこにコイーバマデューロの雑味と、若干渋い木の酸味を加えたような。いずれにしてもあまり良い事はない。
最近葉巻に甘味を感じなくなっている。毎日葉巻の甘味を感じているから麻痺しているのだろうか。はじめて葉巻の甘味を感じた時の感動はついぞない。
Country Of Origin: Honduras
Wrapper Type: Honduran Corojo
Color: Colorado
Binder / Filler: Honduran / Honduran
|5.62 x 46|AtlanticCigar| $7.20|重量:0|算出:+5|香味:+3|
illusione は68をこれまで三本消費したのみで二本は不味かったのだが、これはまた出だしから固く美味しい。本当は三ヶ月は寝かせたかったけれど、試しに一本買いしたようなものなので小手調べである。
基本的な質感はほぼ68と同じと言って良いと思う。微妙な差異を言葉にできるほど精通していず、精通してもやっぱりこれはイリュージョンだと思うに違いない。ニカラグアのコイーバという感じの。ハバナっぽさがあるからコイーバなのか、ハバナの中で特徴的なコイーバのようにニカラグアの中でコイーバのように特徴的なのか、半々だと思う。
ラッパーの印象そのままか、皮が黒くて強い味がする。その黒く強い陰に佳きコクが平然と充満しているのである。つまり陰が表で、裏が明るみなのである。陰と黒さの、黒さは太陽を燦々と浴びた黒んぼの黒さだし、陰は反対に木陰の貴婦人かもしれない。芋ほどのコクがあり、花がそこから充溢している。それでもむろん柔軟ではなく、強くて辛い。
勿論、香味の差異こそ定かではないものの、68と比べれば性急ではなく、緩慢過ぎもしない。実に気の合うテンポ。
灰はかなり崩れ易い(灰のように崩れ去りたいと思う歳は疾うに越したが、私はむしろ崩れ易い灰に好感を持つ)。
辛味は雑味とも捉えられるが、とくに嫌味はない。それはずっと続いて、花と芋がまろやかに混じってきても続いている。焼芋の皮が焼芋の半分近くを占めるような印象である。ハバナ葉の枯淡っぽさはさすがにないが、元気でもなく、哲学者でいえばヴィトゲンシュタインのような、精悍な皺と落ち着いた焦燥が見える。パイプを燻らせるデリダならまだしも、ヴィトゲンシュタインには怒られるかもしれない。ともあれヴィトゲンシュタインには葉巻と喧嘩する余裕はないだろう。
これより大きくなって優しくなっても辛味(ニカラグアらしい辛味?)は消えそうにない。これぐらいのサイズのものを十分に寝かせるのが一等良いような気はする。この微かな灰のような苦味を伴う辛味はいずれ珈琲のような香ばしいコクに回収されるはず、という希望的観測である。液体の珈琲にしても雑味が完全に消える事は珍しい。
Country Of Origin: Nicaragua
Wrapper Type: Nicaraguan Habano
Color: Colorado Maduro
Binder / Filler: Nicaraguan / Nicaraguan
illusione は68をこれまで三本消費したのみで二本は不味かったのだが、これはまた出だしから固く美味しい。本当は三ヶ月は寝かせたかったけれど、試しに一本買いしたようなものなので小手調べである。
基本的な質感はほぼ68と同じと言って良いと思う。微妙な差異を言葉にできるほど精通していず、精通してもやっぱりこれはイリュージョンだと思うに違いない。ニカラグアのコイーバという感じの。ハバナっぽさがあるからコイーバなのか、ハバナの中で特徴的なコイーバのようにニカラグアの中でコイーバのように特徴的なのか、半々だと思う。
ラッパーの印象そのままか、皮が黒くて強い味がする。その黒く強い陰に佳きコクが平然と充満しているのである。つまり陰が表で、裏が明るみなのである。陰と黒さの、黒さは太陽を燦々と浴びた黒んぼの黒さだし、陰は反対に木陰の貴婦人かもしれない。芋ほどのコクがあり、花がそこから充溢している。それでもむろん柔軟ではなく、強くて辛い。
勿論、香味の差異こそ定かではないものの、68と比べれば性急ではなく、緩慢過ぎもしない。実に気の合うテンポ。
灰はかなり崩れ易い(灰のように崩れ去りたいと思う歳は疾うに越したが、私はむしろ崩れ易い灰に好感を持つ)。
辛味は雑味とも捉えられるが、とくに嫌味はない。それはずっと続いて、花と芋がまろやかに混じってきても続いている。焼芋の皮が焼芋の半分近くを占めるような印象である。ハバナ葉の枯淡っぽさはさすがにないが、元気でもなく、哲学者でいえばヴィトゲンシュタインのような、精悍な皺と落ち着いた焦燥が見える。パイプを燻らせるデリダならまだしも、ヴィトゲンシュタインには怒られるかもしれない。ともあれヴィトゲンシュタインには葉巻と喧嘩する余裕はないだろう。
これより大きくなって優しくなっても辛味(ニカラグアらしい辛味?)は消えそうにない。これぐらいのサイズのものを十分に寝かせるのが一等良いような気はする。この微かな灰のような苦味を伴う辛味はいずれ珈琲のような香ばしいコクに回収されるはず、という希望的観測である。液体の珈琲にしても雑味が完全に消える事は珍しい。
Country Of Origin: Nicaragua
Wrapper Type: Nicaraguan Habano
Color: Colorado Maduro
Binder / Filler: Nicaraguan / Nicaraguan
|VEL MAY 01|235㎜ x 47|COC|($125/5)|重量:+2|算出:+5|香味:+4|
中秋の名月の日の昼が今日ほど濁りない快晴だった事はない。いつも曇るばかりか空気も澱んでいたはずで、だから中秋の名月というのは非常にどうでもよい日だと侮っていたのだが、黄昏の反対側に実にまん丸く昇っている。ふと団子のようでもあり月に似て打ち上がる花火でもあるサンチョスを思い出した。夜に入っても月はほとんど霞もしないで、かえって朧の方が趣があったかと余計な事を考えてしまう。葉巻の煙で朧にはなる。今、隣家の瓦が月に輝いている。
十年物で、匂いがほぼ消えているので心配だったが、着火すると極端に優しくあるばかりで、サンチョスが確実に息衝いている。味は濃い物が薄まっている様子で、薄いものが薄いのではない。それが静かで、ハバナ葉らしい枯淡の風味だと感じ、老いた淡白さはあまり感じない。この中庸が、サンチョスの序盤にしてはむしろ濃い。雑味のような苦味があるが、これはいつもサンチョパンザらしい深く煎ったゴマやゴマ団子の中華餡の風味を醸すものである。それから和風の小豆。こうしてキューバ産ながらも和中折衷であるサンチョス並の序盤を一通り堪能すると、爽やかな草に軽やかな花が咲いてくる。軽い甘さで、花よりも軽い花。薄いゴマ団子が薄いながらにしっかりと土壌を固めている。その土壌から木が生えて、花が木に染みる。非常に品質の良い軽い木。この木の落葉は拾いたくなるほど丁寧で大きい。色合いも茶から黄や赤である。落葉にコクがあり、まだ晩秋ほどがさついていない。
花が木から分離し、落葉の上を蝶のように可愛く飛んでいる。不器用に飛んでいる。もう花は濃い。落葉混じりの土もうまい。詩人臭くなるのも嫌なので、落とし穴が欲しくなるほどである。だがあろうことか、更にモンテクリストの2008にあったようなココナッツの白い花が咲く。気持ち悪いほどまろやかな乳のようである。
実に完璧に出来ている一本だった。終盤がおとなしく、死相が隠見し、三年早く打ち上げてしまった方がより佳かった気がしなくない。それにしても実に長い十五夜だった。変梃ながら、この葉巻は中秋の名月に確実に合う。冬を思わせるオリオン座をはや見た。
交互に三本ずつ経験したけれど、モンテクリストAよりサンチョスの方が三回とも美味しく感じた。
抹茶か、抹茶のリキュールと合わせてみたくなるが、そろそろ栗を思い出す。
中秋の名月の日の昼が今日ほど濁りない快晴だった事はない。いつも曇るばかりか空気も澱んでいたはずで、だから中秋の名月というのは非常にどうでもよい日だと侮っていたのだが、黄昏の反対側に実にまん丸く昇っている。ふと団子のようでもあり月に似て打ち上がる花火でもあるサンチョスを思い出した。夜に入っても月はほとんど霞もしないで、かえって朧の方が趣があったかと余計な事を考えてしまう。葉巻の煙で朧にはなる。今、隣家の瓦が月に輝いている。
十年物で、匂いがほぼ消えているので心配だったが、着火すると極端に優しくあるばかりで、サンチョスが確実に息衝いている。味は濃い物が薄まっている様子で、薄いものが薄いのではない。それが静かで、ハバナ葉らしい枯淡の風味だと感じ、老いた淡白さはあまり感じない。この中庸が、サンチョスの序盤にしてはむしろ濃い。雑味のような苦味があるが、これはいつもサンチョパンザらしい深く煎ったゴマやゴマ団子の中華餡の風味を醸すものである。それから和風の小豆。こうしてキューバ産ながらも和中折衷であるサンチョス並の序盤を一通り堪能すると、爽やかな草に軽やかな花が咲いてくる。軽い甘さで、花よりも軽い花。薄いゴマ団子が薄いながらにしっかりと土壌を固めている。その土壌から木が生えて、花が木に染みる。非常に品質の良い軽い木。この木の落葉は拾いたくなるほど丁寧で大きい。色合いも茶から黄や赤である。落葉にコクがあり、まだ晩秋ほどがさついていない。
花が木から分離し、落葉の上を蝶のように可愛く飛んでいる。不器用に飛んでいる。もう花は濃い。落葉混じりの土もうまい。詩人臭くなるのも嫌なので、落とし穴が欲しくなるほどである。だがあろうことか、更にモンテクリストの2008にあったようなココナッツの白い花が咲く。気持ち悪いほどまろやかな乳のようである。
実に完璧に出来ている一本だった。終盤がおとなしく、死相が隠見し、三年早く打ち上げてしまった方がより佳かった気がしなくない。それにしても実に長い十五夜だった。変梃ながら、この葉巻は中秋の名月に確実に合う。冬を思わせるオリオン座をはや見た。
交互に三本ずつ経験したけれど、モンテクリストAよりサンチョスの方が三回とも美味しく感じた。
抹茶か、抹茶のリキュールと合わせてみたくなるが、そろそろ栗を思い出す。
|5.5 x 43|AtlanticCigar| $7.98|重量:0|算出:+4|香味:+3|
さすがにオーパスⅩよりもハチミツシナモンバタートーストの香りは薄い。着火前はそうだが、着火するとオーパスⅩにはない安心の優しさがある。厳めしい樹皮の香味も柔らかい。ツンとしたところが皆無ではないが、ハバナに劣らないねっとりしそうな旨味も漂っている。序盤から花が潜んでいる。木というよりも大木の樹皮で、その樹皮が鞣革のようにも香る。旨味はドミニカらしい粉の旨味であり、樹皮と混じってナッツのようでもある。
草が草にならずに薄荷のような爽やかさに覆われ、旨味を飽きさせない。なにか、同じではないだろうけれど、パルタガスD4で感じるような特殊な草花の芳香もある。フエンテのD4と言いたくなるぐらい。
どうもフエンテではドンカルロスが一番合うらしい。強さを求める時には向かないけれど、突き抜けそうな安定感がある。突き抜けそうで突き抜けない永遠の味であり、そこが良くも悪くも良さそう。
これがなんと、丁度真ん中頃に駄目になっていく。甘さが消え、ノイズが喚き、辛くて苦くて不味くなる。香りは悪くならないのが不思議で、旨味や甘味は馬鹿になる。さらに進むとこの辛味と苦味は無くなり、無くなれば無くなったで奇妙なスルスル感が気持ち悪い。かと思えば終盤、依然旨味は無くなったままであるものの、花が非常に濃く甘く豊かに香る。苦節はあってもえも言われぬ香りもずっと続いている。その香りは不明な花から段々草っぽさを増して不明な草に変わっている。優しさは消えているが、結局残二センチまで耐える根強い魅力があった。
終盤は抹茶オレとかカフェオレとか、そういうまろやかなものでコクを加えつつ咽を潤すと良いかもしれない。
因果はわからないが、サンルイレイを吸いたくなった。これが室内だか屋外だか中途半端で、自宅のベランダのような印象だから祖父の家の農具のようなサンルイレイを吸いたくなるのだろうか。祖父は農家ではなかったけれど、庭には南瓜などが植わっていた。あれば良いというものでもないけれど、ドンカルロスには季節感はないらしい。
Country Of Origin: Dominican Republic
Wrapper Type: Cameroon
Color: Colorado
Binder / Filler: Dominican Republic / Dominican Republic
さすがにオーパスⅩよりもハチミツシナモンバタートーストの香りは薄い。着火前はそうだが、着火するとオーパスⅩにはない安心の優しさがある。厳めしい樹皮の香味も柔らかい。ツンとしたところが皆無ではないが、ハバナに劣らないねっとりしそうな旨味も漂っている。序盤から花が潜んでいる。木というよりも大木の樹皮で、その樹皮が鞣革のようにも香る。旨味はドミニカらしい粉の旨味であり、樹皮と混じってナッツのようでもある。
草が草にならずに薄荷のような爽やかさに覆われ、旨味を飽きさせない。なにか、同じではないだろうけれど、パルタガスD4で感じるような特殊な草花の芳香もある。フエンテのD4と言いたくなるぐらい。
どうもフエンテではドンカルロスが一番合うらしい。強さを求める時には向かないけれど、突き抜けそうな安定感がある。突き抜けそうで突き抜けない永遠の味であり、そこが良くも悪くも良さそう。
これがなんと、丁度真ん中頃に駄目になっていく。甘さが消え、ノイズが喚き、辛くて苦くて不味くなる。香りは悪くならないのが不思議で、旨味や甘味は馬鹿になる。さらに進むとこの辛味と苦味は無くなり、無くなれば無くなったで奇妙なスルスル感が気持ち悪い。かと思えば終盤、依然旨味は無くなったままであるものの、花が非常に濃く甘く豊かに香る。苦節はあってもえも言われぬ香りもずっと続いている。その香りは不明な花から段々草っぽさを増して不明な草に変わっている。優しさは消えているが、結局残二センチまで耐える根強い魅力があった。
終盤は抹茶オレとかカフェオレとか、そういうまろやかなものでコクを加えつつ咽を潤すと良いかもしれない。
因果はわからないが、サンルイレイを吸いたくなった。これが室内だか屋外だか中途半端で、自宅のベランダのような印象だから祖父の家の農具のようなサンルイレイを吸いたくなるのだろうか。祖父は農家ではなかったけれど、庭には南瓜などが植わっていた。あれば良いというものでもないけれど、ドンカルロスには季節感はないらしい。
Country Of Origin: Dominican Republic
Wrapper Type: Cameroon
Color: Colorado
Binder / Filler: Dominican Republic / Dominican Republic
|6 x 52|AtlanticCigar| $10.95|重量:+1|算出:+4|香味:+3|
白亜のお邸のような白い箱に入って、ピンク色のバンドとの対照が少女趣味っぽく、葉巻には珍しい色合い。箱が欲しくて箱ごと買いたくなる類。
ラッパーに黒人の肌のような質感がある。肌は柔らかいが、葉は分厚く硬い。かなり綺麗な丈夫なラッパーで、よれが一切ない。
吸い込みはかなりスカスカだが、一口目からはっきりと、以前何処かで吸った美味しい味がする。
「甘、草、苦旨珈琲豆」の香味が高級感を出している。高級といわなければ全然美味しくなさそうな「説明」なのだが、確かにその三つの味がする。オリヴァかパディラに似ているのかなと思いつつ非ハバナの記憶を探っていたが、どうやらパンチデルパンチに似ているらしい。このLe Bijouにもハバナっぽいところがなんとなくあるものの、デルパンチのハバナっぽくないところが似ている。あちらがニカラグアに似ていて、こちらがハバナに似ていて、金の鯱のように互いに擦り寄っていくらしい。
それで、デルパンチはハバナとしてあまり好感が持てず、こちらは非ハバナとして好感が持てる。
スカスカなのであまり落ち着きもせず、「花と春菊」の奇妙な取り合わせが顔を出す。味は甘辛く、煙は咽にかなり辛く当たる。悪くいえば雑味というか、雑味は雑味だが、良くいえば花と草で出来た(つまり自然の)心地好いハーシュノイズ(アナログテレビの砂嵐を鋭くした感じの煩い音)のような。
円やかさや膨らみがないのだが、あるといえばあるような気もしなくない。そもそも円やかさや膨らみは非ハバナではほとんど感じた事がないが、これはハバナに少し似ていて、その部分に円やかさと膨らみそうな旨味を感じるのである。それとは別に、時々、「カランコロン」と鳴る軽快な香りが膨らむ。黄緑色の花と桃色の果実を掛け合わせたような甘く爽やかな香りが。黄緑色の花というものは見た事もないが、確かに嗅いだ事のない香りがするのである。バンドを見てみるとバンドも黄緑色と桃色なのである。
こうした色が発現する頃から棘が形を潜めて柔らかくなってくる。しかし坦々と進んでいる。背の高い草原の中を、紙コップの珈琲を啜って進んでいる。右手には紙コップ、左手には花の蜜を持っている。小説ならこの先に落とし穴があるが、これはこのまま草原を進む物なのだろう。しかしお姫様の白桃色と褐色の肌とが相俟って変な物語が背の高い草の中で甘く匂い立っている。
花の出方や変化からしてハバナに遜色なく、「濃くも茶色く褪せたハバナ」という感じがする。草で肌が傷つけられるようなところさえ消えれば+4にはなる。一本試して、箱で買いたいという気は削がれない。
「カランコロン」が次第にのっぺりとしてきて、安定して最後まで続く。
マイファーザーの特徴がハバナと比べてしか掴めない。評価もどうしてもハバナ並というものになる。ニカラグア物をニカラグア物同士で比較するのは難しい。それほどハバナの印象は常に強烈なのだと思う。先ずハバナであって、それを経て漸く違いが生まれる事態は致し方ない事なのかもしれない。これは先ずニカラグアであり、したがって先ず違いはなく、次にハバナに似てしまう。それがなんとも美味しかった。ただ、トロサイズは凄いが、やや冗長としている。
Country Of Origin: Nicaragua
Wrapper Type: Nicaraguan Oscuro
Color: Oscuro
Binder / Filler: Nicaraguan / Nicaraguan
白亜のお邸のような白い箱に入って、ピンク色のバンドとの対照が少女趣味っぽく、葉巻には珍しい色合い。箱が欲しくて箱ごと買いたくなる類。
ラッパーに黒人の肌のような質感がある。肌は柔らかいが、葉は分厚く硬い。かなり綺麗な丈夫なラッパーで、よれが一切ない。
吸い込みはかなりスカスカだが、一口目からはっきりと、以前何処かで吸った美味しい味がする。
「甘、草、苦旨珈琲豆」の香味が高級感を出している。高級といわなければ全然美味しくなさそうな「説明」なのだが、確かにその三つの味がする。オリヴァかパディラに似ているのかなと思いつつ非ハバナの記憶を探っていたが、どうやらパンチデルパンチに似ているらしい。このLe Bijouにもハバナっぽいところがなんとなくあるものの、デルパンチのハバナっぽくないところが似ている。あちらがニカラグアに似ていて、こちらがハバナに似ていて、金の鯱のように互いに擦り寄っていくらしい。
それで、デルパンチはハバナとしてあまり好感が持てず、こちらは非ハバナとして好感が持てる。
スカスカなのであまり落ち着きもせず、「花と春菊」の奇妙な取り合わせが顔を出す。味は甘辛く、煙は咽にかなり辛く当たる。悪くいえば雑味というか、雑味は雑味だが、良くいえば花と草で出来た(つまり自然の)心地好いハーシュノイズ(アナログテレビの砂嵐を鋭くした感じの煩い音)のような。
円やかさや膨らみがないのだが、あるといえばあるような気もしなくない。そもそも円やかさや膨らみは非ハバナではほとんど感じた事がないが、これはハバナに少し似ていて、その部分に円やかさと膨らみそうな旨味を感じるのである。それとは別に、時々、「カランコロン」と鳴る軽快な香りが膨らむ。黄緑色の花と桃色の果実を掛け合わせたような甘く爽やかな香りが。黄緑色の花というものは見た事もないが、確かに嗅いだ事のない香りがするのである。バンドを見てみるとバンドも黄緑色と桃色なのである。
こうした色が発現する頃から棘が形を潜めて柔らかくなってくる。しかし坦々と進んでいる。背の高い草原の中を、紙コップの珈琲を啜って進んでいる。右手には紙コップ、左手には花の蜜を持っている。小説ならこの先に落とし穴があるが、これはこのまま草原を進む物なのだろう。しかしお姫様の白桃色と褐色の肌とが相俟って変な物語が背の高い草の中で甘く匂い立っている。
花の出方や変化からしてハバナに遜色なく、「濃くも茶色く褪せたハバナ」という感じがする。草で肌が傷つけられるようなところさえ消えれば+4にはなる。一本試して、箱で買いたいという気は削がれない。
「カランコロン」が次第にのっぺりとしてきて、安定して最後まで続く。
マイファーザーの特徴がハバナと比べてしか掴めない。評価もどうしてもハバナ並というものになる。ニカラグア物をニカラグア物同士で比較するのは難しい。それほどハバナの印象は常に強烈なのだと思う。先ずハバナであって、それを経て漸く違いが生まれる事態は致し方ない事なのかもしれない。これは先ずニカラグアであり、したがって先ず違いはなく、次にハバナに似てしまう。それがなんとも美味しかった。ただ、トロサイズは凄いが、やや冗長としている。
Country Of Origin: Nicaragua
Wrapper Type: Nicaraguan Oscuro
Color: Oscuro
Binder / Filler: Nicaraguan / Nicaraguan
|SUA JUN 01|235㎜ x 47|COC|($125/5)|重量:+2|算出:+1|香味:+2|
先日のparticulares(●)と同じく、ボックスコードに確証はないが、というとCOCに失礼かもしれないけれど、信じれば下記五本を10%引きで購入した。
2 x Sancho Panza Sancho VEL MAY01
2 x Montecristo 'A' SUA JUN01
1 x Hoyo Particulares ARA SEP02
香りはほぼせず、微かに薬膳っぽい。着火してもこの薬膳らしさがそよと吹くばかり。葉巻らしさもかなり落ちて、初冬の木が葉を名残のように僅かに留めるばかりになっている。それが味わい深いが、盛夏の方が良いと思ってしまう。無い物ねだりではなく、吸い込みがかなり悪い。
灰を落として驚く。灰がしばし黄色く発光して、火種も色が全然違う。オレンジ色が光っている。灰が白いのでいつもより発光して見えるのか。巻きが悪い所為かもしれず、見間違いかもしれない。
ずっと薬膳漢方薬方向の静かな風に、最後の葉が曝されるような葉巻の味わい。この味わいは古き佳きモンテクリストを髣髴させるものではある。古いは古いので、単に佳きモンテクリストを髣髴とさせるのかもしれない。
灰は磁器のように整った肌が白っぽく、ささくれず、吸い込みが悪いぐらいだから密度も高い。普段葉巻の灰に全く興味が湧かないのに灰に興味が行ってしまうぐらい、この葉巻には静けさがある。灰をつんつん突つくおもしろさを静寂が見出させる。
寂しく枯れているのだが、モンテクリストらしい青緑色の、新緑の芽生えも感じるのである。モンテクリストらしさというのは枯れても新緑らしい。すると段々吸い込みも良くなり、新緑も枯葉も増えてくる。若くなるはずもなく、年の功も比例するが、甘味が乗る。木犀も薄いが咲いている。薄く敷いた土に、根の無い樹木が生えている。土には薄いコクがある。木犀は木肌に描かれて黄ばみ、退色しているが、染みている。
寂しいが、確実に美味い。葉巻に寂しさを感じるような人間はそもそも寂しくないのだろうか。寂しくなりたいのになり切れないというか、これが本物の葉巻であってこそ偽の哀切を感じる。
終盤には、こなれた味わいをこれでもかと感じさせてくれるらしい。サンチョスの花火とは随分違う。床の間に花瓶を置いたような古拙で鮮やかな雰囲気である。靄がかって、あまりはっきりとした景色ではない。霧が茶室を侵している、その霧自体が茶室なのだが。
その霧にしても終局まで薄かった。したがって茶室も薄く、霧も薄く、何も無かったかのように終わる。『A』という物は最大に期待させておきながら、こういう風に終わるものなのだろう。だからこそ何もないどんよりと曇った日に何も期待せずに吸い始め、案の定こうなったのである。
先日のparticulares(●)と同じく、ボックスコードに確証はないが、というとCOCに失礼かもしれないけれど、信じれば下記五本を10%引きで購入した。
2 x Sancho Panza Sancho VEL MAY01
2 x Montecristo 'A' SUA JUN01
1 x Hoyo Particulares ARA SEP02
香りはほぼせず、微かに薬膳っぽい。着火してもこの薬膳らしさがそよと吹くばかり。葉巻らしさもかなり落ちて、初冬の木が葉を名残のように僅かに留めるばかりになっている。それが味わい深いが、盛夏の方が良いと思ってしまう。無い物ねだりではなく、吸い込みがかなり悪い。
灰を落として驚く。灰がしばし黄色く発光して、火種も色が全然違う。オレンジ色が光っている。灰が白いのでいつもより発光して見えるのか。巻きが悪い所為かもしれず、見間違いかもしれない。
ずっと薬膳漢方薬方向の静かな風に、最後の葉が曝されるような葉巻の味わい。この味わいは古き佳きモンテクリストを髣髴させるものではある。古いは古いので、単に佳きモンテクリストを髣髴とさせるのかもしれない。
灰は磁器のように整った肌が白っぽく、ささくれず、吸い込みが悪いぐらいだから密度も高い。普段葉巻の灰に全く興味が湧かないのに灰に興味が行ってしまうぐらい、この葉巻には静けさがある。灰をつんつん突つくおもしろさを静寂が見出させる。
寂しく枯れているのだが、モンテクリストらしい青緑色の、新緑の芽生えも感じるのである。モンテクリストらしさというのは枯れても新緑らしい。すると段々吸い込みも良くなり、新緑も枯葉も増えてくる。若くなるはずもなく、年の功も比例するが、甘味が乗る。木犀も薄いが咲いている。薄く敷いた土に、根の無い樹木が生えている。土には薄いコクがある。木犀は木肌に描かれて黄ばみ、退色しているが、染みている。
寂しいが、確実に美味い。葉巻に寂しさを感じるような人間はそもそも寂しくないのだろうか。寂しくなりたいのになり切れないというか、これが本物の葉巻であってこそ偽の哀切を感じる。
終盤には、こなれた味わいをこれでもかと感じさせてくれるらしい。サンチョスの花火とは随分違う。床の間に花瓶を置いたような古拙で鮮やかな雰囲気である。靄がかって、あまりはっきりとした景色ではない。霧が茶室を侵している、その霧自体が茶室なのだが。
その霧にしても終局まで薄かった。したがって茶室も薄く、霧も薄く、何も無かったかのように終わる。『A』という物は最大に期待させておきながら、こういう風に終わるものなのだろう。だからこそ何もないどんよりと曇った日に何も期待せずに吸い始め、案の定こうなったのである。
比較が段々まっとうになるという当然の事だけで、古い記事よりも新しい記事の方が信用できる。信用と恍惚とが反発している。
銘
囹
月