忍者ブログ

  源氏物語「葉」
++葉巻++シガー++レビュー++個人輸入++ブログ

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

|7 × 47|Cigars of Cuba|$59/3|重量:+1|算出:+7|香味:+5|

 コイーバの岩が尊く熟してキャビンの香りが漂う、あるいはキャビンの豊富な香りに隠されて尊い岩が垣間見える(キャビン参照123)。香味は全然違うがはじめてダビドフNo.2を燻らせた時の鞣しすぎた革の優しすぎる感触に似た滑らかさを感じる。旨味やミルクのまろやかさなどは控えめで、プレミアムらしいおとなしさで香ばしさが漂っている。
 栗やキャビン(あるいはダージリン)や岩なのだが、ハバナ葉にしてハバナ葉らしさが一番奥に仕舞われているというか、逆かもしれない。優しさで表面を磨き上げて、シガリロっぽさが一番奥に記憶のように仕舞われているのか。どんなにアンバランスに迫り出しても岩のように腰が据わり、太いのに気品がある焙煎香が晒されている。香って吹くのは煙のほうだが、煙のほうが吹かれているような。揺らがない煙突の味わいというか。こうやって論理を掻き混ぜたくなる若干の恍惚感がある。
 はじめから岩にポツポツと咲いてキャビンに混じってはいたが、びっしりと花が咲き始める。花の戻香がとてつもなく厚くなる。まだ中盤の序ノ口なのだが、何かは大丈夫なのだろうか。あんまり美味しいと副流煙まで鯉の滝登りと吸い込んでしまうので咽の怨みは早い。
 甘さは蜂蜜ではなく一輪のささやかな蜜が滴りもせずに広がっている。
 まだロブストぐらい残って、この先どうすれば良いのだろう。美味しすぎるとかえって手持ち無沙汰になってしまう。もともと身の置き場というより精神の置き場が無いので吸い始めたが、鼻歌にもこういう片手が空くような仕組みがあるだろう。中盤以降重厚にして単調になるのでその間に新古今の秋歌を二三首読む(本当は春歌を四首読んだ)。記念日太郎になりがちだが、この葉巻はただ秋に合う。午後二時半に着火して、空が曇っているのも丁度良い。晴れていれば外に行きたくなるだろうから。
 終盤になってこんな和歌にならない文章を書き始め書き終えて終えた。逆に葉巻に翻弄され、煙なので安心して駄文を書けるのだが、この体たらくが何時クリアになるのか。一冊の本を書けるぐらいの文学上の技法が煙の中から見つかるはずなのだが。

 コード不明の三本パックで一年弱自宅で寝かせた物。吸い込みも完璧で煙も頗る多く、三本のうち一本しか当たらなかったが、父エスプレンディドスは結局コイーバいちの化物だった。かなりキャビン寄りなのがコイーバにあって独特だけれど、個体差もありそうだし、熟成の方法や期間等に因るのかもしれない。
PR
|TUR JUN 08|6 2/5 x 42|cigarOne|$215/25|重量:+1|算出:+6|香味:+4|

 STONE BREWING社のRuinationという麦酒を一口飲んで、強烈な芳香と苦味に少し驚き、これに対抗できる葉巻としてモンテクリストしか思い浮かばなかった。美味しいか不味いかは兎も角凄い麦酒。ホップがほとんどトイレの芳香剤ほども香り、苦味指数(IBUなる指標)は100を超えるという。今日は先に酒がある。
 この箱も早17本目だが、着火してみると、しっかりとアタリらしいのはこれがはじめて。なんとこんな変梃な麦酒にモンテクリストが平然と拮抗している。No.1はけっこう書いたので特に付け足す事もなく、ただ平然とした優しい表情が凄い。濃くて芳香も豊かなのに爽やかで。互いに高め合いも潰し合いもせず、飲物と煙が夫々勝手に知らんぷりで薫っているところにかえって阿吽の呼吸を感じる。
 終盤で木犀が吹き出すと別の様態の阿吽の呼吸となる。
 最近あまりモンテクリストが好きではなかったのだが、ここまで大量の木犀が吹き出すと問答無用に美味しいといわざるをえない。端から美味しく、変化も予測ハズレの完璧さだった。
 問答無用とは言うものの、明らかなドンシャリで、コクはラムネ菓子っぽく、芋のような粘りは終始無い。それでも美味しいが、好き嫌いが割れるのはここだと思う。香味は全然違うけれど、最近サンルイレイにも同じ傾向を感じた。
「バーは行きません。人がやっているからです。もし人がやっていなければ行くでしょう。ああ、喫茶店は人がやっていれば行くでしょう。」
|EMA OCT 07|5.5 x 50|coh-hk|$198/10|重量:0|算出:+3|香味:+3|

 昨夜の一本なのだが、とろける感触が忘れられず、今夜もう一本どうしてもとろけたいところを我慢して、フォンセカを燻らせながら回顧している。

 さすがに箱を開けると美しかった。一瞬茶色のバンドが黒地に見えたほどで、コイーバのエスキシトスなんかは箱を開けた直後に不穏な空気を感じたものだった。細部を虫眼鏡で覗くよりもパッと見の印象のほうが情報量が多い事は確か。
 はじめてのERなのに吸い込み難のものに当たる不幸。少しだが、吸い込みは少したりとも硬くてはいけない。
 カカオ混じりの土のコクに揮発性の木。この土のコクはロバイナ農場の精髄だと思わずにいられないが(ロバイナ農場の葉100%なのかわからないけれど)、煙の量が少ないまま火種だけが巨大化する悪寒がし、揮発性の木が最後までコクを負かして居残る気がする。
 このままでは不味いと思い、フィラーの中の一番太い葉脈をピンセットで抜こうとしたら三センチほど抜けて切れた。途中で切れた場合吸い込みが改善されないはずだが、やや改善された。着火後に抜くとかえって雑味が増して不味くなる危険もあるが、そうもならなかった。
 完璧なドローとは言えないが、美味しくなった。

 意外にレギュラー品と変わらない香味である。ERは底上げの価格で、高みの価格ではないのか。ハズレが一本も無いならそれはそれで価値があるとは思うけれど。
 でもやっぱり、どことなくとろけるように旨いなぁ。普通のロバイナなのに、味覚では表せない脳に直接浸透する恍惚成分が仕込まれているらしい。吸い込みさえ良ければとんでもなくとろけたかもしれない。
 「ロバイナのコク」は凄く、薄くても凄い。揮発性の木などとっくの昔に草の中の一片になってしまった。飲物を黒ビール(グリーンフラッシュ社のダブルスタウト)に変えたからかもしれない。
 チョコで燻製した木粉を衣に天麩羅した草。というと草が主役のようだが、衣が主役である。衣が全然油っぽくない。そういえばバターなどの油けをまったく感じない、衣なのに。クリーミーでもなく、栗や芋もない。草も木も結局土に還るのだと思う。こんな普通の環状世界で大丈夫なのかと疑うが、何故かとろける。そういう幻灯のような土の味がする。甘さなどは始終忘れていて最終盤で甘さが乗って来て漸く甘さを思い出したのだが、甘さが要らないほどの不思議なコクなのである。味のあるフィナーレのほうがむしろ凡庸で、木犀などもフィナーレまでは一輪たりとも咲かない。
 四年で枯れ始めている気がしなくもなく、今が頃合いなのかもしれない。
 結局根本まで雑味も出ないので、フィナーレこそ美味しいともいえるし、兎に角優良品らしい。ただ全体的に力を隠したように静かだった。静けさを憎めるはずもない。

 こういうものを二万箱も作ればレギュラー品の質が落ちるのは当然だと思うけれど、そうならないような進化をキューバ側が一人でしているのなら実に有り難い。
 レギュラーのベガスロバイナを磨き抜いただけの物といってしまったらそれはそうで、これこそを求めていたのか、更に特殊な香味が欲しいのか、よくわからない。よくわからないとろけ具合が不思議な美味しさなのである。久しぶりに根本を捨てるのを惜しんだが、どことなく物足りないのは吸い込みの所為か、到着日の一本目だし、我家に落ち着いてどうなるか怪しいものではある。しかしこのとろける怪しさが+5を突き抜ける妖しい化物を秘めているような。
 どうしてだろう、普通のさらっとしたコクと香ばしさしか感じないのに。麻薬でも混入しているらしい。期待が麻薬化した可能性もある。そんなに脳天気ではないつもりだけれど。
|LOT MAY 10|4.5 x 36|cigarOne|$71/25|重量:−1|算出:+5|香味:+3|

 到着十日後に早六本目。二〜五本目は少し美味しくなかったのだが、この六本目がなんだかとても美味しいのでメモしてしまう。
 こういうものがあると、悟りを開くも閉じるも、「輸入後一ヶ月休ませる」ような姑息な算段が個体差に比べてあまりにも微妙過ぎる差異に固執しているとしか思えなくなる。長期熟成は別として、湿度を69%から72%に上げたのが即効したとも思えない。
 香味の印象は一本目と大差なく、率直なハバナ葉らしい香りがする。一本目に比べると咽に怨みはあまりなく、花ばかりだったものにバターの旨味が乗っている。そういう風味にも荒さを残し、単純でこそハバナの基調を体現している。似通った価格帯のラファエルゴンサレス・パナテラエクストラとは比べるべくもなさそうなロングフィラーである。
 その後、七本八本と燻らせてみて、大ハズレもないし、アタリが多い。アタっても一本目の印象と大差はないが、どうも濁っていた飛行機雲が沈殿して、切り出したばかりの様な木がはっきりと落ち着いて見えてくる。小ぶりの物らしい辛味に濃い香ばしさが効いている。軽さも湛えているのだが、逆様の世界のようでそんなに軽い物でもない。甘さもまろやかさもある。このサイズの安物として非の打ち所がなく、気負わない、驚きに満ちた、純情なハバナの味がある。シガリロが嫌いなシガリロ好きにはもってこいの逸品だと思う。
 調子に乗って狸の皮を冠って言うのだが、財力があるのにこんな安物を即刻五箱も買うような人がいたらセンスの良さに脱帽してしまう。JFKのアップマン・ペティコロナの逸話が政治家らしいセンスの悪い笑い話にしか思えなくなる。むろん政治家はセンス悪くあらねばならないとは思うけれど。
 何処に煙が立つのかわからないが、JFKは「1000本では足りなかった」と悟った日に殺されたのではなかったか。要するに倍の2000本を用意したサリンジャーの阿諛も虚しく、1000本で足りたのである。煙の中から銃弾が飛び込んでくるというのはよくある事だろう。葉巻は実業家の厭世のものなのだから。私は愛煙家が挙って最近死んだロバイナ翁を偲んでいるらしい時にも追悼なぞしなかった。

 葉巻と音楽とは全く合わないが、「完全にJFKのように死にたい」とjesus and mary chainが歌っている。
 つい先日「綿芋」と書いて、これは「新造語を使ってはいけない、それは無学の証明のようなものだ。良く読書をし、少なくとも三回読んだ事がある言葉を使うべし」と昔の文豪に怒られるに決まっているのだが、しかし「煙」をどうしろというのだろう。『尾崎翠/第七官界彷徨の構図その他』を読んでいて再度釘を刺されたのだが、『第七官界彷徨』には「煙の詩人」についての叙述がある。ドイツ語かフランス語圏の人らしいが、誰なのかわからない。著者の韜晦で実は著者本人なのかもしれないけれど。
|POL ENE 11|7.2 x 57|cigarOne|$178/10|重量:+2|算出:+3|香味:+3|

 蓋を開けたらそこはハバナ、という箱庭を期待したが、箱の中はスカスカで葉巻がコロコロしており、あまり香りも立たない。「みっちり」や「むわぁ」という凝縮の語感が微塵もない。一本取り出して嗅いでみると若さに因るのか便所臭いし、そうなのだが、着火するととても美味しいのである。クァバのサロモネスとD4のハイブリッドのような、まだ臍の部分3ミリしか進んでいないが、端から辛みもなく、そこはシガリロっぽさがあった方が嬉しいのだが、既に高級なのである。
 小さめにカットして、吸い込みもなかなか良い。ハバナ葉特有の旨味と、ふわふわする体の軽さと、胡椒らしきスパイスが静かに燃えている。新製品なのでP2寄りかと思ったが、D4寄りで、純情タイプのパルタガスっぽく、笑ってしまうほど優しい。天の邪鬼なのでP2にあるような要らない特徴が欲しくなるほどである。キャラメルでもなく木でもなく土でもない、粉のハバナ葉の旨味に黄色い花が乗っている。旨味も甘味もなよやかだが、自然らしい味がして都会的ではない。プレシデンテのような激しさが欲しくなる。
 静かなまま、最序盤から急な四十五度の角度を登りすぐに山を通過してしまう、こんな馬鹿な形、誰が考案したのだろう。誰であろうと真ん中に山がある方が恰好悪いが、中盤に山があった方が期待できる。さにあらず、実は序盤の山は思わせぶりなフェイクで、根本近くも案外太い。それに、リカットという手段を忘れてはいけない。
 リカットするとルシタニアスの全盛を思わせる煙量と香味がいきなり出た。
 はじめから思い切り良く切るべきかは難しい問題なのだが、いずれにしてもカットなど大した問題ではない。これを大した問題としないと愛煙家失格になるかもしれないが、兎に角美味しくなった。不完全燃焼の雑味が後を引き、少し酸味も出ているが、煙が膨らんだ。芋が綿飴のように爆発しそうである。そして飲物をペドロヒメネスに変えて甘味がまったく判らなくなった。ついでに雑味も酸味も消えて綿芋に落ち着いた。この綿芋がえも言われぬ黄色い花の香をそよ風に乗せているのである。
 芋と芋とを掛けて飲物を芋焼酎に変えたら木になった。甘味は形を潜めたまま芋も形を潜めてしまった。木に花が咲いている。実に普通である。普通に美味しいが、早々芋焼酎は飲み干してしまいたい。パルタガスはやはりヴァイツェンビールが最良の友に違いない。だがそんな物を都合良く在庫している家などあるものか。
 終に、酒に飽きて飲んだ麦茶が一番合った。最終盤の香ばしさにつきまとう辛味を清涼な麦が香ばしく洗い流してくれる。

 熟成が期待できるタイプか考えると、D4と同じくはじめから完成されていて、そうでもないような。そんなものが熟成したらどんなに美味しいのだろう。
 一度ルシタニアスで+5を出しているので、それがなかったらもっと美味しく感じたと思う。オーソドックスなパルタガスと言ってしまいたくなるが、比べる物が当りのルシタニアスや当りのD4なのである。それはそれで美味しいが、もっと激しく賑やかな味を想像していた。結局のところクァバのサロモネスと同じぐらい大人しい。好みによりけりというか、これは普通に美味しいだけであった。ルシタニアスとサロモネスとを聢と嗅ぎ分けるほど熟達せず、しかも形状にもあまり頓着しないものだから、このような不甲斐ない結果であった。誰が不甲斐ないのかわからない、実に煙たい結果であった。
 しかし十中の当りを求めるなら、ルシタニアスを選ぶ。ルシタニアスは嘗て1/8の確率で当り、これは1/1の確率とは言えぬ安定なのである。ずっと気になっていた葉巻だったから、こんな結果になった。あんまり気にしすぎてはいけない。どんな空想かは兎も角、今回は私の空っぽな頭のほうが勝った。
|LOT MAY 10|4.5 x 36|cigarOne|$71/25|算出:+3|香味:+2|

 「はじめての葉巻(シガリロ)を思い出す」という高評価要素が葉巻界にはあると思うのだが、これはそういう成分が濃いようだ。シガリロなど今試したらさほど感動しないと思うが、はじめての時が一番「葉巻らしさ」を濃く感じるのは道理で、カデテスはその葉巻の葉巻たる成分が何故か濃いらしい。だがどうも辛味や咽の怨みなども似ているのである。序盤は驚くほど軽いのに、吸い進めると咽にぐっと来る。超初心者の頃は何を吸っても咽が怨むものだけれど、最近はそんな症状はずっと出なかった。単にサイズの問題で、今でもシグロ1やセクレトスなら咽が怨むのかもしれない。シガリロでシガリロを思い出せないのも道理で、小さいプレミアムシガーは追憶の為にあるのかもしれない。「葉巻らしからぬ葉巻」という恍惚の高評価要素には照応しない。
 フォンセカはコイーバなどと比べて特異な香味がしないので、カデテスとなるとただただ追憶の為にのみあるようだ。雑味が雑でなくはなく、しかし雑な雑味が美味しいし、苦さやイガイガしさはないのでこれは雑味とはいわないのかもしれない。ロメオに似ているが、もう少し安っぽく単純で、葉巻らしさと花一本の甘さで押すようなところがある。一輪ではなく、花はばかに濃い。
 我家の葉巻は味が薄くなる傾向にありそうなのだが、本日到着したばかりのスイス蔵出し直後のこれは湿り気が多く味もしっかりしていた。湿度の問題かわからないが、ずっと69%だったから72%ぐらいに上げようかと思う。

 前回のフォンセカから一年も経っている。白髪が減るような恐ろしさ。正月好きの私はもう正月の大吟醸酒を物色したりしているので、本当は10ヶ月のところを1年といっても大袈裟ではないのです。確かに正月にフォンセカを吸った想い出がある。「去年今年(こぞことし) 貫く棒の 如きもの」という虚子の句と毎年対決している。
|6 × 52|AtlanticCigar|($99.99/20)|重量:+1|算出:+5|香味:+3|

 五本目。購入して半年以上経っている。大した月日ではないものの、全体的な趣は前回の四本目と同じものの、特別当たったのか、何故か調子の良い時のD4そっくり。
 確実に軽く、濃くもないのに、美味しさが強い。その美味しさも太鼓判の美味で、妖しいほど馥郁としている。一口目から美味しく、段々と量感を増し、半インチ進む頃にはもう爆発に近い。爆発してなお穏やかで、煙を肺まで呑み込んでみるとロッキーパテル特有の薬膳風の妖しさで全く咳き込ませない(言い過ぎだが)。えも言われぬ黄色い香りに、芋とチョコの間の子の旨味にも事欠かず、着火前の藁束っぽさを嘘に変え、額縁の木には香木の気品が漂っている。ハバナにはこんな額縁は無い。辛味も苦味も雑味もほぼ感じず、柔らかいが、柔らかいというよりも幽霊のように足が無くすぅーっとしているのである。美味の濃い幽霊で、ハバナには幽霊も居ない。
 さっきからずっと月を見ているのだが、薄い雲が過りまくって月が隠見しているのがこの葉巻に良く合う。木立の冷気の中で煙らせれば更に良いに違いない。月に必要なのは雲と木立だけで人けではない。隣の家が邪魔である。そのうち我家も邪魔になるだろう。
 時々衰えるかと心配になるが、はじめから幽霊の事、消えても良い。
 それがしばらく経っても衰えないらしいが、自宅では飽きが来る。特に序盤が美味しく、中盤で飽き易い香味に変わるのかもしれない。良くも悪くも強さは増している。もっとゆっくり強さが増せば良いけれど、まだ中盤の初頭である。実物はトロなのに、香味にはもっと細長い印象があり、それでトロがしつこさを感じさせるのかもしれない。この香味のままロンズデールやラギートになったらどんなに良いだろう。
 飽きるかと思わせながら草の爽やかさが効いてくるのが憎い。飽食した皿に胡椒をふりかけるような、あるいは青林檎のような感覚である。だが花はえも言われぬ黄色から凡庸な金木犀の色に変わってしまう。変わって悪いのでもなく、外で丁度木犀が咲いている時期に木犀を感じるぐらいだからかなり濃い木犀なのである。芋の旨味がどこかで花を黄に留めてもいるらしい。
 煙を評して「塗り重ねた油絵のようだ」といったら本当に幾度も塗り重ねている画家の拳骨を喰らうに違いないが、元々幽霊の絵なのである。だが本当は、幽霊というほどの妖しさはこの葉巻には感じない。案外平然とした煙たくもない旨さである。葉巻は元々実業家の物であり、芸術家の物ではない。
 ロッキーパテルが軽視できない銘柄である事は確か。
|5.87 x 50|AtlanticCigar|$14|重量:0|算出:+4|香味:+3|

 巻きはダビドフほど美しくはないが、簞笥に松茸が黴のように栄えている。吸い込みも完璧。着火すると花薫と朴訥な旨味がすぐに乗ってくる。ダビドフのようなシルク感はなくほろ苦さが効き、ダビドフのような強みはなくおとなしいが、安定してアヴォの限界のようなアヴォにしては濃い美味しさがある。しかも段々濃くなってくるような優しさがある。旨味は精米歩合60%程度の純米酒のような出方をしている。純米酒の傑作というものがもしあれば、確かにそれに似ている。錯雑錯雑、松茸の花が咲いている。煙に膨らみが増して柔らかくなってくる。パルタガスのような旨味の膨満感にまでは至らないが、至るはずもなく、アヴォとしては強いが、アヴォらしい軽さを保っている。
 仄かな経験だけれど、アヴォの中ではハバナ寄りのクラシックタイプではなく、ダビドフ寄りのドメインを再醗酵させたような印象がある。至極丁寧な出来なのだが、ダビドフに迫る価格を見ればこれは当たり前で、するといまいち恍惚成分が弱く甘味にも欠ける。終盤で更に旨くなる事もなく、終盤が不味い。
 飲物はデゥシャス・デ・ブルゴーニュだから悪いはずがない。この麦酒は地球の傑作みたいなもので、必ず麦酒の指折りに入らなければならない。日本の麦酒四社はどれか一つが残ればよく、だから全部消えても良いのである。なければないで困るけれど。

Country Of Origin: Dominican Republic
Wrapper Type: Ecuadorian Connecticut
Color: Colorado
Binder / Filler: Dominican Republic / Dominican Republic

忍者ブログ [PR]