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  源氏物語「葉」
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|6” x 52|Atlantic Cigar|$17.86|重量:+1(16.20g)|算出:+7|香味:+5|計13点|

 黒ダビドフ第二弾。
 新しい古畳の香り。新しい畳でもないし、古い畳でもない、香りは古畳なのに新畳の香、この頭ではこうとしか判断できない。プーロドーロの延長線上かと思っていたが、あのように甘く熟した香辛料はないと思える着火前。
 着火するとしかし、知っている味、プーロドーロ。
 ところが激しいタバコ感(灰色の辛味)が間も無く強烈に出、知らないダビドフの一面で面食らう。ややもすると草花が吹き出す。変化が急峻で、崖のよう。崖の草花が長く続くはずもない。またも登攀が困難な激しい崖。
 灰が脆く、2センチも進まないうちに肩から崖崩れを起こす。灰が根元からポロリと落ちるのではなくて、片側の灰の角がごっそり落ちる、危険な崖。これはこの崖の常態なのではないか。ダビドフの安定品質を鑑みれば、脆いものはたまたま脆いのではなくて全て脆い。吸い込みすかすか気味にしてきちんと重量もあり、脆さは巻き方と相関がなく、単にこの美味しい葉がそういう脆い性質なのだと思う。
 灰が崩れない方が良いという神話は、もともと味の良さより、巻きの良さぐらいの話だったかもしれない。灰を落とす前後で味が変っても、灰を落とさなくったって味が変るのだもの。
 なんだこれ、突然目茶苦茶美味い。木が突然深く熟してきたなと思ったら、追い討ちをかけて熟した木を金木犀汁で煮詰めたようになって、これはもう過去最高の一口で、もう金木犀の「香」というより金木犀の「味」がする。金木犀の味から金木犀の香りが口いっぱいに開く。やばい。花が久方ぶりに濃すぎる。
 熟した木と相まった一口が続いた方が良いものの、寄り道し、所詮ちゃんと甘いそれが戻ってくる、大量の花をかき分けて。これは初心者が吸ったら天国行きかもしれないです。おめでとうございました。さようなら。あちら側で会いましょう。
 ローズマリーかわからないが、香草が天国に水を差し、金木犀もやや地上のものとなる。

 ぱつんぱつんの『Limited Edition 2008 Reserva12』だとか脆脆の『山さ』だとか、色々な変な物があってダビドフは意外とダビドフらしくなくて面白い。ダビドフらしさなんて半分は世の倣いの思い込み、大体思い込みなんて半分は当たっているのである。

 序盤の終りから中盤の中程にかけてまこと美味しさの天国で、こうなれば序の口の崖も趣深く、終盤の緩徐的想い出的な部分も雅やかで、そこで序盤をも振り返る事になる。ただ、最盛期は経験時にしかない。序盤と終盤がその一時へ寂しく空回る。空回りつつよく考えてみると、異様に熟した木の感覚からはカラメリゼした香ばしい甘さも導き出される、サンマルクと命名されたケーキの想い出だったかな。空回りにも、最盛期の残り香は微かにある。
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|5" x 50/61|Atlantic Cigar|$17.58|重量:+1(15.10g)|算出:+5|香味:+4|計10点|

 初の黒ダビドフ。「黒ダビドフ」というのはバンドが黒い「エスクリオ」「ヤマサ」「ニカラグア」の三シリーズの総称(以前は白ダビドフばかりであった)で、3種を2本ずつ買ってみた。
 まず本体までもが黒いエスクリオに着火。3種あれば、なんとなく白っぽい物から行きたいが、どれも黒っぽくはあるのだし、エスクリオのみ同一シェイプのものを購入したので。
 着火後急激に甘辛く煮付けたダビドフ葉巻の味がする。全くもって事前の印象そのままか、印象そのままの味が出るわけがないと事前から思っていたので事前の印象と逆というべきか。
 甘さが強く、辛さも強い、その甘辛のコクの質が高く、そこへ従来の白ダビドフ味を忘れず巻き込んでいる。
 エスクリオというのはオスクーロのもじりなのか、とすればマデューロシリーズよりも黒いシリーズとなる。芋の煮転がしのように白ダビドフを煮転がしたようで、砂糖と醤油の代わりに〇〇醬を使用しているのだが、そこへスパイスなども投入されて複雑化=一体化していて正体はわからない。標高の高い烏龍茶には高山香(?)のようなものがある(?)けれど、そういうものに似た、意味不明な初の香気である。
 葉巻にコーヒーの味を感じることはあまりないし(コーヒーの実物に慣れすぎているからかもしれない)、ラッパーが黒いだけでつい香味までコーヒーと言いたくなる気持ちが働くのではないかとも思うのだが、熱い火種が目の前にあることもあり、焼きたてのコーヒーの香りはする。これは焙煎中の香りではなくて、焼きたてのコーヒーを淹れた時のコーヒーの味わいから、焼きたて以外のコーヒーの要素を除いたようなものである。つまりは焼きたてならなんでもよくて、実際、この葉巻は時間の経過に伴い色々なものを焼きたてで供してくれる。焼栗は常識的だが、そのうち甘い草を苦い飴で炒ったものなど、注文していないものが続々と出てくるのである。花を飴で炒ったものはやはり常識的だが、ベネズエラを黒い人体で巻いたものなどの香りもしてくる。ベネズエラを巻くとはどういうことかというと、普通ベネズエラはベネズエラの人体を派手な布や香水で巻くことを指すが、カリフォルニアロールのように、これは布や香水や変な豆や肩に担いだ茎束や酸味の高いカカオ豆を中に入れてベネズエラ人で巻いてある。人体に黒いカカオを塗ったものが黒い人体であれば、中身は白人かもしれないし、そもそもベネズエラ人はもともとここでいうほど黒くないかもしれない。ヂンタイ・デ・マイタから香る様々な気配は、思えばチョコレートを思わせるばかりにかえって甘さが極めて控えめに感じられ、にこりともしない純度95度ぐらいの高貴なカカオ増・チコ・レートを思わせる。以上を一言で言えば「ベネズエラの雑踏」である。そこにはベネズエラ市一の高級食材が並べられてもいる、商人の町でもある。このヘンテコな形の山は、登り始めてすぐにも進む足が遅くなり、やっとの事でたどり着く中盤(山頂のリンゲージ60地点)で、かなり苦味が増す。山頂の景色は突如無念にどんよりかすみ、下山が億劫になる。するとベネズエラが消えて花の匂いが誘い始める。下山道はどうもにこやかな花盛り。降り始めると、笑顔が消え、街でみたカカレートの原生物などがおどろおどろしく首を垂れて、周りの湿った草が鼻奥を突く。降下口付近の花が頭の後ろに漂って髪を引っ張る。また山は突如、視界が開けて、花や草が抜けて、木が現れる。生い繁る熱帯の山にこんな裸の木があるのか、熟成した樫の皮を剥いたような。あとは木の腹に抱かれたまま苦くも甘い思い出が続く。最後に、火種のますますの接近により、焼きたてのコーヒー風味に戻り、ココハドコ、全てはテーブルのうたた寝のうちだった、という風にけりがつく。大したことのない夢だったが、どこかで、かなり美味しい部分があった夢だった。全体的にも、美味しいような夢ではあった。それから本当の実際に本物のコーヒーを啜る。
 コーヒーとの微妙な差異によるのか、単純にコーヒーが合う、ミルクコーヒーならもっと合うかもしれない。また、今日は真夏だが、このシェイプと色合いは、冬に暖をとるにも最適のような気がした。ホカロン代りに握り易い。
 消火直前で実際のベネズエラ人が扉を叩く。ドアを開けると全く夢の通りのベネズエラ人だった。話してみると国籍はエクアドルだということである。なお、母はブラジル、父は行方不明だということである。おとうさんはベネズエラに行っちゃったんじゃないかね?

 日本価格(4800円)も納得の味わいで、それを払えばより美味しく感じられた気もする。
|--|--|ANAインコチ付近|¥2500/10|重量:−2( ?g)|算出:+1|香味:+1|計0点|

プレミアムの味がしない分、葉巻の味がする。豈図らずも葉巻の葉巻たる味が凝縮され、葉巻の割合が非常に高い。ごもっともプレミアムシガーも100%葉巻であるのだが、それを形容するには油断するもしないも葉巻らしからぬ色々な言語に導かれ果物なんかがわんさか犇いてしまう。ここにはそういう言語がない、所詮果物だもの、ただの葉巻があるばかり。とはいえこの傾向をさらに徹底したのがクラブなどとも言えて、ショートの方が若干プレミアムに近いとすれば、若干のプレミアム感が仇となるかもしれない。クラブの方が好き、という人がいたら、こういう意味である。プレミアムに期待できるスイカやイカの味わいにはまるで届かず、一転葉巻らしさをもほんの若干欠いている為、プレミアムに昇る一歩手前のごく短い階段にてこれは最高の葉巻となるはずのものである。ばかやろう。
それにしても、コイーバのショートなので、やっぱりコイーバの味がする。となると、ロメオのプレミアムよりもドライコイーバのショートの方が好き、とか、そういう嗜み方をするばかやろうもありえそう。コイーバのパナテラ等に特有の焦げの風味が練り上げた炭に昂じるような、BHK54にも似た柔らかい感触が、このばかやろうにはほんの少しある。焦げ自体は濃い。
味わい一本は、真夏の湿度の中でも乾いていて、この乾き感をドライシガーらしいと言えるのかどうか不明ながら、鶏舎感覚はばかにつきまとう。乾き感と鶏舎に因果があるのかばかに不明ながら、たぶんあると思うし、感覚上では非常にばかな因果がある。冬にくゆらせても「真夏の田舎の小屋」が浮かぶのではないか。そこは当然ばかなエアコンの効いた部屋でなく、むしろストーブのばかな残骸がある。味わいの乾きが、日本の夏を感じさせ、日本の夏は湿度が高いのだから、ばかである。
風の強い海とか、香る草原とか、埼玉県熊谷市とか、葉巻外の障壁などがばかに強いばかな場面で重宝しそうで、つまりプレミアムが凹む場面において味わいが三倍凸になるに違いない。
兎に角ちょいと加湿deヒュミしてみよう。(→五日後、結局加湿しないまま放置を続けている。ばかな葉巻だ。面倒臭い葉巻だ。)
|LOT JUL 10|4 4/5 x 50|coh-hk|$141.10/25|重量:0(?g)|算出:+7|香味:+4|計11点|

 そろそろだ、そろそろ来るのだ。9年も待った。ひたすら待ちつづけた。
 待ちつつ、ちょっとつまんだのか、6本しかない。
 本当は10年待たなければ待ったとは言えない、つまりまたつまんでしまうのである。
 もう一年ちゃんと待ったとき、5本しかないと言えるのか。
 まあ良いさ、ひたすらもう待ったのだから。待ち終えたと言って良い。
 粉に火をつけた。
 これは実に粉のような質感になっている。
 きな粉のように細やかな肌理の完全な木質。明るい白木でありながら軽く煎った風味と、甘味を抜いた黒糖の染みが隠れている。出てきなさいよ、草の中から。
 草の中から草が出てくるのかもしれないし、そもそも草は前景にはないのかもしれない。
 ベルギービール(アルヴィンヌ・ランド・ヴァン・モルターニュ)で甘味を補った途端、花が吹き出す。花と飲み物の因果は不明、ビール抜栓時にしばらく葉巻を放置した為に咲いたのかもしれない。
 染みは安っぽい味噌の染みか何かだし、甘味の不足等で味気ないが、木の質感が全てで麗しい。そこへもってベルギービールが不要とも超絶のマリアージュともいえる味を注ぎ足す。強烈に花も咲いて、それは桜や金木犀のように確固たる花ではなくて雑草どもの花かもしれないが、美事、壮観である。ホップ強烈系(デュベル・トリプルホップなど)のビールに合わせたら雑草感は別種の壮観を呈するかもしれない。
 次第に、花から蜜の甘さが滴ってくるような。
 待った甲斐がある。
 10年待って、無くなって……もう一度一箱買って10年待つというのは、滝行が霞むほどの地獄と見えて、もうこれを箱買いすることはないだろうと思うけれど。
 そうこうつまらない考えを弄するうちに花がポポーのバニラ風味を帯びて舌に嬉々と乗って来る。
 大吟醸以上に吟醸香が炸裂する吟醸酒、安いのか高いのかよくわからないおかしな酒に似ている。いかめしく老ねた枝垂桜を思わせる。
 大切に熟成させた物からは大切な味がする(クーラーボックスに入れていました)。人間だって寝るだけで深みが増す、経験なんて眠りのほかにいるのだろうか。夢しか知らないその人間の夢はどう成長するのか。
 煙は、吸い込んでも紙巻ホープほどの強さもない。それぐらい枯れているのに芳醇さはホープの50倍は軽い。芳醇といえば重い印象もあるのだが、ひたすら軽い。
 七味の味を解析するに、七味が見つかりました。最近買った京都の八味には十品目の原材料が書かれていた。ハバナ葉は結局一品目が見せる夢なのだろう。今日は素朴な夢だった。
 ビールの味は壊されていた気もする。
 9年と思っていたが、未だ8年だった……
|7" x 52|seriouscigars|$18.57|重量:+2(23.58g)|算出:+5|香味:+4|計11点|

 2012年11月購入

 強さに恐れをなして五年以上寝かせた。五年程度では逆に強まる物もあるのかもしれないけれど、少しは弱くなったようだった。
 湿ったシナモンの芳醇さがあるのだが、そこはやはりマデューロらしくーーさらに黒いオスクーロらしくーー乾いた藁の懐かしいつまらなさを伴っている。
 全体はハバナっぽいバランスで、ハバナの味はほとんどしないが、なによりまず変な味がない。花が楚々と吹いたり、甘さも仄かで、花の種類や甘味の種類、質が上品に感じられる。それが、想定外に濃密さを増していく。
 なるほど、ここからはその蜜がどこまで濃くなるのかという興味である。
 はやくもロイヤルサロモネス並みに濃くなる。しかし糖蜜の濃縮は次第に豊かに散る金木犀へ昇華され、ある境から濃縮されなくなる。その分、花がものすごい。境の濃さは維持しつつ。
 この持続もすごく、序盤からほぼこうなって、メリハリなしに中盤の終りまで変らない。
 終盤は流石に衰えて焦げの風味が出る。もっとももうたくさんで、根元まで美味しいというものを期待する気分はなくなっている。焦げと言って不味くなりすぎるようにもならず中盤の風味が盛り返す執拗さもある。
 全体の印象は堅い。持った感じも異様に重くて物理的にも堅いし、味はカーブもホップもしない豪速球が巨大な金木犀の木に投げつけられたふうだし、黒い鋼みたいである。
 依然猛者向きだが、慣れていない人でも美味しさを感じられはするかもしれない。

 5年前の同一銘柄のマデューロの記事を読むと、このオスクーロもほぼ同じようなものだったことがわかる。それはそうと、昔は随分真面目に味を記述していた、どうしてか5年後にはそのような執拗さの意気が消沈している。
|SLE JUL 16|5 x 48|coh-hk|$173/25|重量:0(?g)|算出:+2|香味:+2|計4点|

 とても浅い秋の深い香りがするので暖炉に火を入れられる心地になり、その薪の役も与えられそうだった。大地の味わいは薄く広大で、写真に収められるような気がするのだった。身近な感触なのに、遠景として思い出させるようなところがあるのだ。朝鮮人参だとしたらここに使用されている人参はケチな節約家も居ないほどだが、大地のふんわりした苦味が表面的な火山灰の茣蓙のように大地を覆っている。記憶としてはこの地とこの花は同居したためしがなく、まるでその地で他所から持ってきた花を蒸かしているみたいなのである。ここで紙巻きたばこに着火してしまいそうになるぐらい。これが葉巻なのだ、これが葉巻なのだ、といくら言い聞かせても、冷蔵庫の中に物を詰め込むみたいに纏められ分裂させられる。なにしろ一貫して珈琲どころか氷の詰まったストローを感じさせ、ストローを思わせるところが絶えない。スポンジでできたストローの事である。足足というより、逆立ちした足で、急に月から見上げた地球のアーシーの味がしたかと思えば、月の土の味がしたのかとも思う。
|TAU JUN 11|166mm x 52|シガーオンライン|$490/10|重量:+1( 15.92g)|算出:+4|香味:+4|計9点|

うむ、うむ、うむ、うむしか言わせない葉巻とはこれのことかね。う、うむ。
焼芋とは異なるコイーバの風味で有が、喩え有ば焼芋の皮だけ喰っているようで有。しかもその皮が奇蹟のお品のように濃厚で有。コクが無のに、コクを塗り潰すぐらいひたすら香が濃厚で有。この事はこれまで燻らせたELに共通の事で有、此処は極小ながら情報サイトとしても機能して有為、定期的に「ELにまったりとしたコクを期待して買ってはいけないので有、ELに期待すべきはラッパーに包まれたバインダーの中の水で有」と書いておかなければならないので有。それにしても濃厚な香りで有、今有がこの葉巻の濃厚さの全盛期かもしれないので有。凄みは有ものの、けっして美味しくは感じ無たもので有。有無、残二本で無で有。
|TEO JUL 17|4.88 x 50|cigarOne|$89/10|重量:0(11.76g)|算出:+4|香味:+3|計7点|

 数日前のこと、夕刻の無風が円やかで、体温よりは低温であるはずだが、その絶妙な温度から、身体と温気とが一体化し、身体が体外へ空に街に広がっていき、車やビルなどをも包み込むような心境を覚えた。
 ロメオに生える緑には、風のように心地よいものと、緑豆もやしでありながらもなにかピスタチオを練った濃厚な白いコクを期待させるものがある。ハバナ葉が均一に揃える風味もここでは風のように薄く、風というのは、気候変動でもなければ滅多に狂わない質の精度と、懐かしさと落ち着きがあって、なにより期待の感覚を齎す。中盤やや盛り上がり、終盤やや濃厚な秋に枯れ、味を欠くというほどでなく十分に美味しいが、風仕舞い。風流なもので、ロメオ一般としてこれで十分。(ダビドフと同じ点数だけれど、こちらの方がずっと好感触でした。蜂蜜不要なのがつまらない。)
 最終盤の猛り方は痩せたボクサーのように甘く、鉄をグローブに隠し、芳醇な木犀が血液のようにほとばしり、甘く感じますた。文字通り、ますたのです。増した、のでなく、増した、のです。増すたのです。さようなら。
|6" x 54|NextCigar|$159/10|重量:+1(16.66g)|算出:+3|香味:+3||好み:+1|計8点|

 意外、昨日の54よりも重い。調べると意外や意外、こちらの方がやや大きかった。ちゃんと思い出せばこれはプーロドーロの王者であった。昨日の王者感がでかすぎて不当に今日を貶めていた。(しかも何故か前回のプロドロの記事の物よりも今回は3グラム軽い)
 すごい。味はなかなか昨日と拮抗している。ハバナでは対しえないと思ってダビドフを選んで正解だった。
 だが1センチも進めば敗北が確定した。味が薄く変って酸味が回って、こんなもの? こんなものだったのかもしれない、ハズレと言い切れないとすれば。
 流石に盛り返すものの、いまいち熟度が足りず、せっかくのシナモンが乾いてしまっている。ラベイユのハチミツで甘味を補う。明るい『りんご』から暗い『樫の木』まで現在7種類所持。
 最初に選んだ『宮古島の花々』がドンピシャ、不明な浸透圧によって何がどちらともつかず混沌と重なり合う。次に面白いのは『レザーウッド』で、これを舐めた後にはなぜか葉巻から樫の木の風味が克明に揺蕩う。『樫の木』の蜂蜜はいまいち。三番目に良かったのは『りんご』の蜂蜜で、一体全体「花の香りの強い蜜が合う」らしい。とりわけ宮古島は蜜の熟度がこの葉巻に足りないシナモンの熟度を補っている。りんごとレザーは華やかながらやや明るさに偏りすぎ、甘く熟した味わいの深みを補完してくれない。宮古島の花々は昔からレンゲの蜜が備える懐かしい深みを忘れていなかったような気もする。だったらスーパーで買う安いレンゲの蜂蜜でよいのかも、あの染みた味わいで。葉巻があまり美味しくないので蜂蜜研究に寄り道しつつ、副流煙までもが昨日と打って変って煙たいばかりだった。

 ところで葉巻と同じく残念なのがシャーヴのワイン(『ファルコネ2010』)だったのである。
 昨日のボルドーと並べて比べると実に雑味のない純な味わいで、昨日のものが野暮で、シャーヴに軍配が上がりそうなのだが、単体で飲むと昨日の方が果実味も複雑さも豊富で、葉巻にも合っていた。シャーヴはこの上を求めると一気に『エルミタージュ』になってしまうので、この価格帯でもうちょっと頑張ってもらいたかったなぁ。3000円以下のシャーヴの方にむしろただならぬ妖気が感じられる。その妖気を推し進めていないワインだった。ハズレなのかな。
|MES JUL 11|5.6 × 54|coh-hk|$396/10|重量:+1(15.01g)|算出:+6|香味:+5|計12点|

 午前一時過ぎ、月出。そして寒い。昼から寒く、何か無性に懐かしかったが、何が懐かしいのかわからなかった、肌寒さそのものが懐かしいというものでもないらしく、肌が秋を感じるのでもないようだった。秋を懐かしむにはあまりにも香りが欠落しすぎているのかもしれない。おとといの暑さと、今日これからの暑さに挟まれてはいた。
 昼からBHKを燃やすつもりだった。
 52、54、56と、蓋を全部開けてみて(厳重梱包なので結構大変)、全て3本ずつ残っていた。54だけ白カビ多発、保管条件は同じ。
 カビているから54に決めたのだが、いらぬ心配で、もうはじめから王者のコクがある。イカ墨スパゲティーなどの「黒い〇〇」が黒い味であることは絶対に(?)ないのだが、この黒色のない葉巻からは黒いコクがただならぬ雰囲気で漂う。焦げの風味でもなさそうだが、かすかに焼芋を連想させ、皮の風味の奥に、甘やかさがたっぷりと息づいている。
 ドローは軽々として、逆噴射で吹き矢が飛びそう。
 以前から「54は炭」と書いていると思う。素朴な炭にしては果実が爛熟し、花の派手さが増して来る。金木犀がラッパから底抜けに明るく響き出た初回の52を思い出すが、あれに黒さはなく新品の金管そのものだった。これも煌びやかに噴出しそうになるものの、黒いコクの層も厚い。花は地表の割れ目に光るマグマのように妖しいままである。
 黒さが茶を帯びてくると、判然コイーバ特有のナッツ盛りで、しかしコイーバ特有の草の緑が感じられない。酸味なども皆無で、王者の最盛期でしかなくなり、さらには王者が紅茶を嗜み始める。紅茶というのはあるいは緑の兆しなのかもしれない。それでもこの紅茶は紅茶と珈琲のブレンドである。なお紅茶にも珈琲にも合うお茶請けの味が濃い。むしろこれはお茶請けで、お茶請けが不在の紅茶や珈琲の幻を見せるのかもしれない。
 濃厚な焚火の美味しい香り。落葉が焦げている、やはり。52、56にはこの黒さがないように思っている、相変わらず。ナッツや紅茶にて56に、金の花にて52に、正体はかわらず54の炭らしい。極度にペーストされた炭。ねればねるほど色が変って今54は5256の利を奪いつつもあるという、三国志で言えばそうだなあ、そうそうだなあ。

 カルバドス(デュポン1977)は合う合わないといえば合うのかもしれないがちょっと味が分かりにくくなる。赤ワイン(ボルドー、シャトー・オー・カルル2012)の果実味は合う。葉巻がワインの渋みを和らげるほど柔らかく甘い。蒸留酒は2種類の花がせめぎ合ってしまう感じがした。赤ワインを殺さない、赤ワインに殺されないが、ハム(高級)やサラミ(高級)は殺していた。

 終盤そうそう、マグマではなく胡椒が噴出する。ハムに大量の胡椒をまぶしたからか。こうなると赤ワインが重要なつなぎ目を果たすようだ。
 最終盤、カルバドスのアルコールの辛味が胡椒をより心地よく引き立てる。渾然一体、引き立てつつ液体が辛味を和らげもし、香りの饗宴となる。ここに来て黒いコクもが丁寧ながらに暴れるのである。黒い黒いといってもマデューロ臭さからは程遠い、程よい湿感を保っている。(マデューロは湿気過ぎにして乾き過ぎの味をも伴う嫌いがあります。)
 ついに、これが煙であることを忘れていた。初心に帰れば「これが煙とは思えない」というところ、煙の意外さよりも、煙に抱く想像内の最上の味というほうが精妙な気がする。そのほうの極点に堂と座っている。

 サイズも春にしだる夜にちょうど良い。酔いがまわる頃に葉巻も終る。
 灰すら美味しいものに思えて、この灰を明日の朝食に混ぜてみようかと。ピーナッツバターに混ぜてパンに塗ると美味しいヨ。

 前回の記事を調べると2年2ヶ月ぶりだった。

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