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  源氏物語「葉」
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ファビコン完成



元の「葉」は源氏物語より

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|La Couronne| ($496+$36.84+¥10,700)/8=¥8,700|2020/1/17・arr 1/28|
|ATE SEP 19|6 1/8 x 55|重量:17.31g|香:4.1~4.6 ave4.5|残7|

 今年最初の購入品。高かった。
 某葉巻屋のお知らせで正体不明の一目惚れをしてしまい、あまりに高額だったため、安く売る店を探した。レマン湖の畔に二割五分引きの品を見つけたものの、いろいろな加算で結局のところ高額な物は高額である。
 写真で見る華美な箱の中身はチャーチル系に毛が生えた程度の物なのかもしれないと怯えつつ、意外や写真ほど華美に感じなかった箱を開けて着火してみると、美事、最初の千里眼、一口目で甘さ滴る。

 若々しい辛さもありながら、甘さも辛さもクリスタルの湖のように純で、果てしなく、小舟の揺れに身を任せつつろくろっ首のように舟縁から顔を覘かせたりしていると、底知れぬ底辺りに花の揺らいだのが見えたりする。湖面が細やかに揺れて花を切る。このままドボンして湖底探検に至るとあれば常套すぎる。
 そのはず、クリスタルの表面は人の侵入を阻害し、甘さ既に湖面上にあって湖面上に金縛る。硬質に切り切りした辛さは沈まず、ハバネロを立てる湖の同じ表面に、葉の形も純で、半永久に凍結しようとする眠たげな落葉が無理に解凍され目覚めた鮮度を感じ、未だ焼けず氷に篭ったままとも見える美しさである。
 辛さが丸く切れると、前後してインカの湖のスパイスが香り、一刹那の間に甘露を吸収して心地よく甘たるいスパイスとなる、と矢継ぎ早に純生クリームが相乗する。
 湖辺から香るのか、木犀は赤みのない黄色で、純生クリームをカスタードに変える卵は黄身が白い。グラス草は窒素冷凍の速さでもとより蜂蜜化とクリスタル化をして饗される。兎に角、ここまで、甜菜糖を焼いて融かしたシロップが、うっすら雪景色のように満遍なく積もったようである。温かみのある雪の甘さが不思議で、焦げを知らないようで、いつまで焼いても只管融けるだけで透明なままの甘さ。湖天は晴れて甘雪。
 この得体の知れない甘雫は次第次第「驚」に変るほど安定しているものとわかり、透明さゆえ不審な点が一切見当らず、なにかで濁るとも、濁りもみな透明な甘さを湛える。濁りも明るく透過し、粉を覚えず、形を崩さず、鮮明で、氷の中のように新鮮である。これは濁りなのか。
 灰は脆く笹くれ落ちて舟底をよごすものの、灰の美しさなどもとより不要なのであったろう。「灰」の美しさというのは、灰ではない物の美しさの喩えなのであったろう。
 もし1ポーションのフレッシュクリームがこの湖に渦巻けば架空のポポーが完全に実りそうである。
 水筒の中身は緑茶。いつもは、緑茶にしても、増して紅茶など、イガイガしさを増やすばかり(ダージリン好みなら尚更)だが。飛魚が舟に跳ね入るわけもなし、肴は疾うに論外として、今日はアルコールもいけない。香味の強い液体を純な湖に垂らせば混ぜるな危険をおかす愚の骨頂となり陶酔に自ら水を差す行為である。水を飲むのは良い。それでも、薄薄危険とは思いつつも、ちょっとした好奇心で美酒を垂らしてしまうものなのである。そろそろ好奇心を消し去っていて良い頃合いに居たのではなかったかと自戒するが、不思議な湖が存する限りまた同じ過ちを犯すだろう。アルコールの物理的な酔いも悪く余計な陶酔をもたげる。しだらない朦朧体より、正気に見る幻影が艶やかである。アルコールはその苦味が白鳥を食う烏のように目立ってしまいもする。
 重い物が浮く幻影なら知っていたが、今日は軽い物が重さを重ねるように感じる。ようやくの湖底探検に至って舟ごと湖底に沈むのか。重さの姿は消えている。
 衰え兆すも船酔いなく景色明媚なまま。
 この馥郁たる甘露は異常世界よりも白昼の妄想によく似ているのである。


 ロメオの持ち味を殺さずに最良化された、ロメオ版のBHKのようだった。ハバナではここまでの高価さを信じて良いらしい。

 思えばレマン湖の畔から取り寄せたのであった。事前にGoogleマップで探索すると、風光明媚な場所にある夢のような店舗で、どうしてもこの店で買いたいと誘われた。路地を挟んで向かいのホテルに泊まりたいとも誘われた。バーコードのところが切り取られていたり、記載悪で税関で箱を開けられたり、箱が大きすぎて緩衝材の処分が大変だったり、誰がやったのか箱がテープでミイラ化されていたため開梱に30分を要したり、数々問題もあるのだが、葉巻の品質には美しい湖を感じるばかりなので、後日さっそく2回目の注文をした。注文番号の差から単純計算すると、毎日かなりの個数を捌いている世界的に人気の店舗らしい。
|COC|$125/5|arr --|
|VEL MAY 01|9 1/4 x 47|重量:16.49g|香:4.4~4.4 ave4.4|残0|

SANCHO PANZA sanchos

 棒の如く来年までつづくお正月気分をふと『サンチョス』で締めようという気になった。

 来年の黄金週間まで待てばちょうど二十年物に達するというのに、今この希少品に着火してしまって良いのか。しかしふと思い立った時というのはたいてい当りを引く。気分が味を左右しているのか、不明である。昼の15時40分まで寝てしまったので、今日は夜が長いというのもある。

 奇蹟じみた吸い込みの良さ。気分が味を左右するというより、オカルト的にかヒュミドールの中から私を呼んだだけのことはある。どうして呼ばれるのか、声に神経を尖らせていたのか。オカルトならずに神経=感覚というものは自分で思っているよりも情報が豊富で、さりげなくも膨大に沈潜する記憶からふと閃光のように呼び声が来迎する、一年に三回ぐらいはこういう光が見えても良い。1時40分に着火。

 ライトでふくよかなハバナの風味、なぜか美味しく何か非常に懐かしい、サンチョパンザといえば胡麻団子だったろう。火種が遠い感じはそのままするものの、香味が弱い感じはない。遠いのに、物足りなさは満たされて、香味ふくよかにして涼しさを感じるのが不思議である。パイプでも煙道が長いと煙が冷えて良いという(ベテランは短いパイプばかり持っている気がするが)。短い葉巻では温かい空気を吸っていたのだなとAに寄り掛って初めて気づく。

 (左のサンチョをクリックすると)サンチョではサンチョスの記事ばかり書いている。サンチョスの記事はこれで六回目。今日を含めて10本目のサンチョスの灰。

 過去を振り返りつつ、14分経過時点で灰ポロリを喰らってしまう。灰は25ミリ程度で落ちてしまうようである。

 微かだった花がしっかり匂い始める。

 まだまだ長いが、だんだん短くなっていく涼しさが惜しい。灰が二回も落ちればダブルコロナよりも短くなってしまう。

 Aのリンゲージは47なので、意外やダブルコロナよりスマートだ。

 サンチョスは2001年と2005年の物を箱で買っていて、2001年のこの箱は購入日の記録がない。このブログを始める以前、2010年以前に購入した物と思われる。あの頃はCOCをメインに使っていた。

 いろいろなことを振り返っている。

 元々荒さを感じた覚えもないし、サンチョはサンチョスに限らずいつも弱々しいので、荒さが年月に削ぎ落とされたわけではないと思うものの、かえって少しピリッとしたところが出てきたのか、元が枯淡ならこのコタンをどう言えば、不老長寿のお茶を飲み始めて三年というところだろうか。ハバナにして中国に似た趣きも、中国茶に合う趣もある。ほかの銘柄の葉巻に中国を覚えることはほとんどないと思う。

 長いのに、変化云々よりも、単にサンチョの葉の持ち味を心ゆくまで香り尽くすもの。

 終盤というか中盤に、中華饅(餡子入)が墨汁で温かく描かれる。煤を練り上げたような焦げの風味が餡子に作用している。

 インパクトがないので、先日のインヘニオスに続けてこれもまたベテラン向きというべきか。中国の宿、忙しなく名所廻らず、引篭って、縁から景色を眺めて見飽きない人向きかもしれない。水墨画の景色は絵に描いたように刻々と変らず、いつまで眺めていても小さな発見しかない。景色に花がないわけではない。花が主役でもない。それが極上である。陽が落ちてもこの景色目を離れず、中国片田舎の薄荷湯に浸かる。

 湯上り、ペティコロナの灰が一度落ちる頃、あとは眠るという雑務と雑味があるばかりだ。

 混凝土の住人が愉しむこれと、中国の現地の人(想像の人だが)が愉しむこれに、違いがあるのだろうか。煙に見る景色が克明であるほどに差は縮まるはずで、景色が煙る水墨画そっくりともなれば、差はさらに縮まると思うのである。

 もうこれを楽しむことはない。さようなら。




|Atlantic Cigar|$270.75/10(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|(DAV LE 2019 ROB US)|5 1/2 x 48|重量:12.79g|香:3.0~3.5 ave3.3|残7|

 残7本かと思って箱を開けたら8本あった。2本しか吸っていないのにあたかも3本も吸ったかのように思わせる桃の心地とはいかなるものか。
 物理的には1本得したような気がする。
 今回美味しかったら、もう一箱買おうという算段で、やや早いペースで試験的に消費している。買う場合、市場から消える前に買わなければならない。(とはいえもう前回から4ヶ月半も経ったのか。あれは夏だったのか。急いでいたから、秋ごろに、もう一本試した気になったのかもしれない。)

結果
 桃の奇蹟は3本はつづかない。荒く、辛く、きつい。軽さはどこ吹く風で、かなり峻厳である。
追加購入せず、残7本をゆっくり消していこうと思う。(この葉巻は冬に合わないのかもしれない)

 しかしどうも様子がおかしい。足に帽子を穿いた(ヘッドとフットを間違えた)ような味がする。これまでは序盤に桃が滴り、後半は荒くれたのだったが、今回は前半で荒くれて後半は急に優しくなった。「桃の滴り」まではいかないものの、ダビドフの葉の香味を堪能できるまでにはなる。特別複雑にして一塊となったブレンドの妙も多少感じられる。後ろに桃があるとして、後ろに後ろが逃れえぬ疲れを重ねて桃の邪魔をするのか。
 前後を間違えてはいないだろうし、そもそも前後がないのかもしれないし、間違えたところで変らないはずであるかもしれない。この辺り、製造ラインに詳しい人からの教えを待つしかありません。
|cigarOne|$202/12|arr 2011/1/24|
|PUB OCT 07|6.4 x 42|13.03g|香:3.7~4.2 ave4.0|残1|

 前回()から四年以上経っている。
 トリニダッド全体を白米に見立てると、インへニオスはお焦げの部分に相当する。香ばしさの中に焦げきらない瑞々しさを蓄えている。おしなべてEL物は「水っぽい」と思っている(何度もそう書き続けている)のだが、此処では今やそれが熟成の円やかさと妙に調和して、「単なる優しさ」として現れるようである。透明だった水が柔和な薄茶色を帯びたような。味わいはまさに米粒の旨味を覘くようで薄いながら逞しく、吟醸酒となる芯の部分に木犀などの花が咲いている。
 優しさに荏苒と弛まず、剥いだ籾殻がお焦げに混じってコイーバのエスキシトス並に香るのが面白い。コイーバに居る栗が居ないから、白米との対比で面白い。
 十二年というのは枯れ感を出す年月ではないらしい。至って溌剌として、人間で言えば24歳ぐらい、壮年期、ようやく吸い頃を迎えたという感じがする。
 籾殻やナッツ殻の荒々しさ、無味(かつての無味)を思わせる独特の滑らかさ、かつて同様にこの二つが同時に来るが、荒さはより猛り、滑らかさは水ならず優しい旨味を乗せている。猛るにも、美味しげな香ばしさが猛るのが良い。

 特別おすすめできる物ではなくて(どんどん消費したくなるような美味しい物ではなくて)、ベテランが気長に放っておいて、存在をすっかり忘れた頃に見つけて変化を楽しむ類の、そういう面では極めて面白い逸品であるかもしれない。と、今日気付く。購入当初は損をした気分だったが。こいつのお陰で、今日をもってベテランの仲間入りを果たした、といえなくなくなくなくない。
 あるいは今こそ初心者も皆でシングル買いすべき葉巻である。

 中盤からとても美味しいココナッツミルクが芯の金木犀の養分となる。このミルクめいた芳醇の極みは長くはつづかず、またともすると静かに揺れる水面を思わせる滑らかさを得る。なんかやっぱり奥義を極めた老人みたいだな。時には若者より華やかに装い、乳房すら湛え、顔面、皺の刻が深い。その心知られずとも、いずれにしても変人である。

 終盤、水が騒ぎ、焦げを突く。そのような音の味わいになる。

 ELの向かう先はERの明後日を向いている。元々の香味の特質もメジャーブランドとマイナーブランドで違いがあるので、推し進める方位も元々の香味に左右されてしまうのか。ELはラッパーをダーク化する傾きで、水を得た荒さがときに美しく際立つ、谷底には水。濃いのか薄いのかよくわからない感覚。旨味の欠如とも言えるかもしれない。濃くとも白米程度の旨みになる。ERは逆に明るくぼやけて元々のごつごつした荒野感を細やかに均した平面に多様な水彩画が描かれる、たぶん。
|cigarOne|181.90CHF/1|2019/11/16・arr 11/24|
|—|7.64 x 49|18.55g|香:3.2~3.9 ave3.5|残0|

 初グランレゼルバ、パルタガス・ルシタニアス。
 BHKは無臭に近づいていたが、こちらのラッパーはまだ匂いを残している。

 初っ端から物珍しい白い花が咲く。それから木が続く。
 吸い込みが昨夜に引き続き悪い。(そもそも名のあるトルセドールでさえ信用できないドローの世界なのかもしれない。彼らがどうやって名を高めたか、ドローの良さで高めることはない気がする。)
 幽かなエステル、ただし煙の味薄く、木が続く。木は揮発性を帯び、苦手な風味となる。木が消滅して白花のエステルのみ残る奇跡が起これば感無量だけれど、これを奇跡というのは、葉巻の場合はおよそ例外なく「揮発性の木」にしかエステルがつかないからである。
 何か思わしげなところがある、この葉巻。
 一度灰が落ちる頃、パルタガス山が噴火し始め、まだ細い火口からほの甘い化粧分を街の上空に散らし始め、麓の木がすっかり焼き払われるかに思える。木の焦げた匂い、花の焼けた香りが殊のほか天国行きか。焼けて天国。やはりこの花は新種で、滴る蜜も凛とする。カスタードを白粉化したかのような、純白の不思議なケーキを活火山の近場で味わう。ケーキの中には白花の蜜が点在するも、あまり数多くなく勿体ぶって、今に火口から甘さがふつふつ滾りそうである。
 パルタガスに木は珍しく、でもなんとなくパルタガスの味があるし、どうやら高級な手法でパルタガスを木化させたらしい。ただし木である。
 BHKやリネアの重厚な方向というよりER物の軽妙な方向へグランレゼルバは向っているように見える。火山不甲斐なく木が復帰して栄え、とうとう期待外れに終る。楚々としすぎているが、白い未見の花が強烈にして儚い印象の幻となった。

 久しぶりのダブルコロナ、意外や小さく見えるのは最近のずんぐり傾向と比べると細身だからか、それでも結局火持は長く、いつも以上に夜更かしさせられてしまう。「堪能」という言葉にちょうど良い長さ。ハズレが多いビトラである気もするけれど、当たった時の凄さは代え難いし、ダブルコロナを少々集めておきたくなる。価格からして今日のせこい香味は痛いはずであるのに、ダブルコロナを集めたいと思わせるほどの魅力があったのか、単に夜が明けるほどの長さを気に入っただけなのか……。

 実に謎である、白い花。もう存在しないかもしれないが、完璧な状態の物を燻らせたい。
|cigarOne|$508/10|arr 2012/5/24|
|MES AGO 11|6.5 × 56|24.60g|香:3.7~4.0 ave3.9|残2|

 計量するとこれまでの最高値よりも3gほど重い。重量を裏切らず吸い込みが非常に悪い。この太さでこの悪さは末恐ろしい。
 煙が全然立たないがそれでも重厚さとふくよかさを感じてしまう。香味は巻きたてのように新鮮で、全く衰えず、九年以上経過してますます昂っているように思う。最近エスキシトスばかりだったので尚更ふくよかさが嬉しく、膨らみが重厚さをも高める。重たるい分子は重ければ重いほど宙をさらに浮かさしめられる。
 こう美味しいと、ドロー難を放置すべきか、おそるおそる改善してみるべきか迷う。当然興味津々として改善してみる方向へ振れるのであり、パーフェクドローを取り出すも、相変らずこの機械は役に立たない。いつもながら味も悪いほうへ変ってしまった。(改善されたという報告はなんなのだろう?)
 その後、火種が根元にさしかかってもドローは改善されず、すると結局根元に(も)血栓があったことになる。真っ先にほじくりうるのが根元であり、そこをさんざん掘削したにもかかわらず機械はまるで効かなかったわけである。機械の悪さは追い討ちをかけ、火種がほじくった部分に達すると普通ではありえない辛みを出す。葉の粉を焼かずに舐めた場合の辛さに近い。
 何があっても美味しいというのがこの葉巻の凄さだが、コイーバの延長直線上の最高峰級であって珍かな香味はなく、シグロ6よりも軽く、クラシックよりも重い。焼栗を焼いている事がよくわかる黒い味わいが練り込まれている。負けじ栗の旨みも濃醇である。
 現在もっとも脂が乗った時期かもしれないという考えに、もしこれでドローが良かったらという考えを加え、残2本である事とを考え合せると、どうすれば良いのか今後の着火計画が全く立たない。
|gestocigars|(331.50CHF+ship36CHF)/20≒¥2000|2019/12/17・arr 12/27|
|UTL ABR 18|130mm x 49|12.55g|香:3.4~3.9 ave3.7|残19|

 出会い頭の草は黒ビールに感じる草(ホップ)の感覚に近い。黒さからは想像し難いところの意表をつく。それでも練り込まれた黒焦げの味わいが見たまま現れるのと同じで、モルトの焦げをキャラメルに置き換えつつ、舌ざわり土っぽいコクが現れる。
 「普通のモンテクリスト」ではないかと訝っていると、強さがすぐに来る。強さは荒れ、味わいを伴わないため、味の濃度は変らずも対照として薄くなる。
 以前2本試し買いして、デュマスとマルテスが荒く、レイエンダが落ち着いていたのでレイエンダのみ箱買いしたのだが、結局こうしてデュマスも箱買いしてしまったのである。案の定というか、荒さがある。試験は成功していたわけである。周りの評判が結構美味しそうなので私の方こそ試験に失敗したかと思って、周りを信じたばかりに、私の試験を責めたばかりに、また荒さを喰らった……というほど今日の一本は荒くない。
 試験時ほど荒くなく、ちゃんとモンテクリストの味もある。前はモンテクリストの味もあまり感じられなかった。ただし現在これを「凄いモンテクリスト」とは言えない。
 しかし、金木犀が匂った途端、「超絶美味」の片鱗×3のようなものが現れる。不思議、不思議でもなんでもないのかもしれない、まるで舌が馬鹿になったかのようにその途端の一口、たったの一口が美事に化ける。「変化」は今まで「一口目と二口目の香味が違う」という意味だった、これまで全てそうだった。今日は一口の内で化けた。煙を含み、ほろりと転がし、そうする最中にも徐々に口の外に煙が漏れる、そうこうする20秒程度の間に、阿修羅のようなすっかり違った三つの顔を見せられ、「超絶美味」と言ってしまう。一口で三口分は変化した。それも連続の三口というより、およそ十口ぶんの距離感のある。
 初めカスタードの居ない金木犀だったのが、煙を吐き終る頃にはたっぷりカスタード入りの金木犀に挿げ変っていた。というと大して凄くなさそうなのだが、この一口の間だけ何故か荒さがすっかりなりを潜めて、分厚い雲間に北極星のみが見えたような、葉巻の地軸に天国を見た思いがしたのである。天国を軸に荒さが回っていた。物凄く静かな美味しさだった。
 一口は長続きしないものの、北極星に薄雲が掛かるくらいで持続し、雲が厚くよぎればまた薄雲まで回復する。夜の雲を眺め続けている気分にさせられる。鮮明な一点の星のみを見つめつつ、その周囲に幽かに気を散らす。光は目に儚く映るも巨大で、葉巻という地球の産物にして太陽を無視するかの如くである。しかし北極星は「たまたま地軸の先にあっただけ」でありながら、「たまたま彼処にあっただけ」という物体の偶然性の鏡となれば、いわば人類の手垢を塗られた偶然であることをやめず、その一点は反射し翻って目の回るような太陽の瀟洒さへ落ち着くのである。
という感じの味がします。薄らまざまざとしてこの金木犀は瀟洒です。

お供:『ノースコースト オールド・ラスプーチン ロシアンインペリアルスタウト』(要するにアメリカの9度の黒ビール)

以上が前半です。
以下後半。

 前半で終われば良い気持ちなのかもしれないが、気持ちを切り替えて、夜空を見上げないようにしたい。夜空を見上げる奴は馬鹿だ。

 だが、たいして付け足す事もない。そもそもこの葉巻は吸い込みが悪いのである。だから星が一つ見えたりするのである。一般的なモンテクリストの味で、それが濃醇化されてはいる。徐々に強さ荒さを制するほど味が濃くなっている。しかし煙道が細い。焦げの香ばしい風味が爆発しそうにもなる、それでも空気五分入りの風船である。パン、キャラメル、土、……今まで使ったことのない名詞はとくに出てこない。探せば見出せるのかもしれないが、そういう物を探す趣味もない。いつもより美味しいモンテクリストだった。にもかかわらず不発感が残る。爆発したとしても、目新しい言葉は出てこず、幻想の内容と感動の度合いが変るのみだと思う。要するに素晴らしいモンテ味で、モンテ嫌いな人は吸うべからずと言いたくなるところ、モンテ嫌いかどうかの最終判断として喫することをおすすめできる。モンテの粋を完備しているので、あんたがモンテだと思っていたものが此処には無かったり、あんたがモンテ以外のものだと思っていたものが此処に在ったりもするかもしれない。
 最後、味わいが薄荷様に白け、モンテらしい青緑(今日は此処まで忘れていた)を見出せる。夜明けの蒼天のような。明けるとかえって土色が見え難くなるのが葉巻の風情かな。土を想像のみの産物として。そう、地球には土なんか一粒も無い。土は夜の夢。
 地球が嫌いな人はひとまず葉巻を燻らせよう……夢みがちに嫌いな人は……地球を夢として好きになれるかも……すべては言葉でできている……言葉は夢しか見ない……
|coh-hk|$194/25|arr 2017/9/27|
|ALO OCT 16|6 1/5 x 47|--g|香:3.7~4.3 ave4.0|残0|

 この箱の最後の一本が終了した。25本を振り返ってみて、結局のところ傑作と感じる。

 とりわけ三年を経る頃になると、どっしりしつつも何処か枯淡であるような、歴然とするや否やのハバナの滋味深さを感じさせる。滋味を維持したまま中盤から終盤にかけて非常に安定した花が乗り、華やかさが長々つづき、しかもじくじくとクレッシェンドしつづけて花量を増やす。滋味枯淡でありながら分厚く密度も上がる。最終盤では潜伏していた豪傑のごとき強さ−−パルタガスを「パルタガスらしい」と言わしめるところの強さ−−が出て加勢し、その荒く覆い被さる波濤と飛沫が花を「波の花」に変えて終了する。花から波の花への変化は是非ご体感頂きたい。

 最後の5本ぐらいはほとんど以上のような感じであったと記憶している。過去の記事に違う香味が書かれていても( )、精髄を抽出すれば同上といおうか、記憶に残っているのは以上のような感じで、記憶が改変されているか否かは不明である。

 最後の一本、箱の中に寂しくとり残された為、良かれ悪しかれ枯淡が加速したのかもしれない。
|coh-hk|$133/20(+¥4800/20)|2019/11/20・arr 11/29|
|—|6 1/2 x 52|重量:A=16.39g, B=16.25g|香:2.4~3.0 ave2.7|残18|

1本あたり約1,000円。ロッキーパテルを箱で買ってもろくなことがない。
アトランティックでシングル買いして美味しかったので、COHで箱買いした。アトランティックのものはダブルバンドだったのに、COHはHP上でシングルバンドの画像を貼っていて、そもそも怪しんではいた。バンドが違っても中身が同じなら良いかなという安易な考えが不味かった。送料無料である事と価格の安さの魅惑に負け、結局は葉巻自体まるで別物ときて、思っていた以上の税金まで取られた。

着火前は甜麵醬風で美味しいのだが、着火すると延々「辛さ」や「えぐみ」や「味気の全くない強さ」が際立ち、シングル買いの物で感じた「スムース」な「チョコレート」の「あちら側」の「色気」めく「浮遊感」など微塵も感じらずに、その対極の雑味の重厚さで押してくる。寝かせるもなにもシングルバンドの物の方が古くから寝ている気がするし、到着直後とはいえ現在不味すぎるので今後もあまり期待が持てない。今後はコンゴを聞きながら燻らせるぐらいしか慰撫がない気がする。
製造年度が違うにせよ幾ら何でも味が対極すぎるので、COHへの不信感をプラスする。今までこの店に特別不満はなかったけれど、アメリカの店に比べてロッキーパテル愛があまりないのかもしれないなどと勘ぐってしまう。的外れの言いがかりの可能性が高いものの、ハバナに対しては一応気を使っているのではなかろうか。何れにしても兎に角安いので使える店である。

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