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  源氏物語「葉」
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|Neptune Cigar|$230/10(+¥900/1)|2023/1/5・arr 1/25|
|—|6 1/2’ x 48|--g|香:-- ave --|残?|

八月の葉巻。
これほど深いモグラは初めて。中心のみ空気が通る設計(巻き方)だったのだろう。パリィナのゴールディーでも、あるいは高名なトルセドールが巻いた葉巻でもこういう事は起こる。いやだなぁ。



この後も大苦戦で、救いのような微かな芳香こそ感じた。救いも序盤の井戸の口に居た頃の思い出ではあった。夏の思い出にはなった。
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|Neptune Cigar|$230/10(+¥900/1)|2023/1/5・arr 1/25|
|—|6’ x 38|8.16g|香:4.5~4.7 ave 4.6|残8|



 早速2本目。
 ラギート1の時と同じように、今回も早めの2本目にして早くも大当たりが出た。長く休ませる必要はないというのか、ゴールディーは10日程度休ませたあたりが一番美味しいかもしれない。ラギート1にしても5本燻らせて2回目が一番美味しかった(保管の問題なのかもしれない、しかし10日目あたりがこんなに美味しくて保管に問題があると言えるだろうか。私は10日目に一番美味しくなるように保管設備を構築しているのに違いない。)。旅をさせよ。
 一口目からほんのり甘い香水、ほんのり、圧倒的説得力。香水に幻惑されてしまうが、よくよく嗜むと葉巻味の葉巻としての説得力がしっかりしている。ダビドフの最小葉巻、エスキシトスに似ている。ということはラッパーの風味が分厚く立っているという事になるだろうか。細ければ細いほどラッパーの比重が重くなる。
 かと思えばやわらかく美味しい麦に変わり始める。さほど甘美でないはずの麦さえ甘く美味しく食べさせてしまう。ダビドフで言えばクラシックNo.2に寄った形だが、それに比べてしまうとこちらの方がずっと濃くて強い。それでもフルボディにはまったく感じさせない清らかなところがある。清らかさばかりがある。香り自体がもう濃密に清らかさなのである。
 香りはだんだん花の形を取り始めるものの、依然なんの花なのかわからない。緑っぽさが増したのかもしれない。強いて言えば薔薇らしい。ブルガリアンローズの蜂蜜なども思い出させる。
 金木犀の砂。
 40分程経過、天寿全う60分として、急に夭折するも潔い。
|Neptune Cigar|$22.5(+¥900/1)|2023/1/5・arr 1/25|
|—|6 1/2’ x 52|19.28g|香:2.7~3.5 ave 2.9|残1|



 ゴールディー等の肖像画と異なるスモーキーなラベルが珍しい。
 味は、ドライなゴールディーに比べると、明らかにマデューロ以上の黒さの味で、しっとり甘い方向へ行きたがっていると思える。果たして、大抵のマデューロはそうは問屋が卸さず、乾いた藁がわんさか出てくるような事態に陥りがちである。藁束飛び交う一大珍事をも楽しめる劇場なら良いのだが。
 煮詰まった筑前煮のタレのような旨味が美味しいもののずっと吝嗇で単調で煙少ない。ズバリ藁はタレを吸う麩なので、麩を食べれば美味しいが、麩が吸ったタレは何処へやら、宇宙的な麩が居るのである。ダテに麩は真ん中に穴を開けておらず、その穴から宇宙の別次元へタレを放出していて結果筑前煮全体を乾かしてやまない。
 微かなタレになぜか花や果実も混じってきはする、それでも煙が少ないせいか依然単調に感じる。そもそもドローがキツすぎるのである。宇宙に繋がって息が苦しいのだろう。もしマデューロ殺しの麩が出現しなかったらと考えると大変美味しそうではある、お麩が。スキヤキを生かすも殺すもお麩次第なのであるから。
 スキヤキも筑前煮も焼鳥タレもほぼ鰻のタレに似た話、どうして筑前煮にしたのだろう。どことなく微妙に筑前煮の野菜の旨さを帯びていたのだろうか。違うような。
 パリーナとして高価な部類なのに、この価格帯でもドロー難の物がある、実に良くない知らせである。コラボめいた事をして、自社のプロが巻いてはいないのかもしれない。
|Neptune Cigar|$230/10(+¥900/1)|2023/1/5・arr 1/25|
|—|6 1/2’ x 48|13.80g|香:4.0~4.7 ave 4.5|残9|

 直近のゴールディを3種試した限り、同じ傾向の葉だとわかる。この優しい香水に相応しい形はラギートの2種だと思ってしまうし、併せる飲み物は黒っぽいものよりも色の薄いもの、珈琲より紅茶、紅茶は夏摘よりも春摘、ワインは赤より白、煎茶は深蒸より普通蒸だと思ってしまう。
 昼に普通蒸煎茶を丁寧に淹れながら、昨日到着後一晩しか加湿していないプロミネンテに着火した。茶葉は通常のおよそ2倍を使う。

 茶の繊細さと煙の繊細さがぶつかり、より分析不能な香水が頭の周りを廻る。ハテナが飛び交う。互いに持つ微かな甘味が甘味を相互補完して、それでもほのかに甘い。
 しかしラギートにない吸いごたえ、爆煙が香水を猛烈化し、もはや旨味の穴が埋まれば寂しいことは何もない。より美しくはないが、ラギートを超える。
 シナモンが! 香水からシナモンとは何事かとめまいを覚える。洗練されている。むしろラギートの方が荒い。シナモンが吟醸されたような高級感を放つ。それから金木犀に至る。
 昨日のラギート2もそうだったけれど、ゴールディーも金木犀に至るものらしい。ラギート1はひたすら香水を続ける。
 辛味や苦味の刺激はシナモンの心地よく細やかなスパイシーさだけ。このシナモンは吟醸によりホワイトペッパーを薫ずる。清酒の吟醸香が漂うのではなくて、ひたすら嫌味なく精製したシナモンの中、ホワイトペッパーがほどほどに炸裂する。
 金木犀の次にクリーム、昨日の変化過程と全く同じ。
 クリームから矢継ぎ早に藁。ここまで藁や小麦といったものを全く感じなかったのは昨日と違う。昨日は藁ではなく小麦やパンではあったものの、藁と小麦は同系で、しかも昨日は延々小麦を感じたものだった白ビールの酵母の美味しさではあったにせよ。となるとこれはやはり、知らぬ間に天上にいて、初めから天上にいたため、今更ようやく地に足ついたということになるようだ。それにしてもなんとふくよかな地上だろう。
 ゴールドラッシュ、金木犀ラッシュが続く。スパイス等も出たり入ったり渾然たる様相で、金木犀は樹皮を剥いだ枝木を現し、地肌が見えても金はまだ掘り尽くされない。春菊、緑が芽生えたのもここが初めて、葉巻に緑など要らないというか、天上に緑は生えなかったのだろう。
 終盤を告げるラッシュが始まってから酣になると、香水の残香を靡かせて徐々に減衰する去り際もまた美しい。
|Neptune Cigar|$230/10(+¥900/1)|2023/1/5・arr 1/25|
|—|6’ x 38|7.90g|香:2.8~3.8 ave 3.6|残9|

 送料・税金がおよそ一本あたり900円、購入時の円安を加え、結局1本4000円以上かかっている。アメリカ人はこれを高い高いと言いながらも日本の感覚で1500円ぐらいの痛手として味わう、こんな残念な勘定は予め無視していたけれど(勘定はごく自動的に行ってしまう)、このゴールディ、どうしてどのビトラも価格が同一なのだろうか。前回入手したラギート1も、今回入手したラギート2もプロミネンテも、どの販売サイトを見ても値引き等がない限り同一の価格を示している。ラギート2に比べたらプロミネンテなどは2倍の重量がある。重量としては軽くてもラギート系は特別扱いで高いのか、それにしてもラギート1と2が同一である事も腑に落ちない。「ゴールディーは全て同一価格」という崇高らしき理由でスッキリはする。ゴールディーは重量で価格を変えるようなチマチマした代物ではないのだろう。そこにも惚れ込んで購入に踏み切ったのであった。なによりもラギート1の超絶香水に惚れ込んで、その馥郁の香をふんだんに手元に仕舞い込んでおきたかっただけだ。

 到着初日だからか落ち着きなく辛さを処方してくる。その中に春摘ダージリンを香らせ、併せてそこはかとない茶葉の旨味を落としてくれるのは紅茶も葉巻もハッパだからだろうか、でも茶葉の旨味とは違う。
 この葉巻は序盤から入念に化粧をし、これから三つ星でディナーという風体だ。未だ家を出ず、にこやかに鏡の前に佇み、本当の楽しみは先にある。本当に先があるのか、というのも、この葉巻の変化の行方はお出掛けのように楽しみだけれど、この葉巻の今を評してそうなので、この葉巻がこれからレストランに連れて行ってくれるはずがない、決してレストランの皿に乗ったあれこれは出てこない。そもそも、くれぐれもレストランに香水をつけて行くなよ、ああ、香水ではなくシャンパーニュの香りか、という風なのだ。実際にこの葉巻をレストランで使うとしたら食後よりもアペリティフに合う気がしはする。
 辛さが収まると白ビールの酵母に似た湯気のような温かい旨味を現し、香りは撫子とも梔子とも木犀ともポンカンともつかない不思議な香水体験に更に近づいていく。
 酵母感は焙煎した麦ムギしさに。なべてパンに。みかんの爽やかな隠し味(どことなくマッタリともした)を効かせたパンなのか、意表を衝いてか、ジャムの代わりに甘い金木犀がぺっとり。
 スカトール由来と思しきこの急に濃くも可愛い金木犀はラギート1の純な香水とは違う、いわば他の葉巻からも頻出するもので珍しさはさほどない。
 麦は収まりつつ、むしろ何物かに変貌している。米のおこげに濃い味の付いた何か。野生味ありつつ、もっと上品な料理。アジアン、メキシコ、スパイス、香草、宮廷、コメならぬ米らしきものに絡みつく。
 皿が変わり、クリーム料理登場。
 結局レストランに来ていたのか……。

 以下、次の皿が続くようで続かない。皿の上に割れた皿を乗せて饗するようなレストランだ。

 終盤そうそうこの葉巻は死んだ。序盤、微妙に香水を燻らせるあたりはラギート1によく似ていた。落ち着けばどんどん似てくるだろうと思う。ただ、2の方が強さがある気がする。
|Atlantic Cigar|$207/10(+¥800/1)|2022/1/14・arr 2/4|
|—|7’ x 38|10.83g|香:4.5~4.8 ave4.65|残8|

 完全な香水、安定している。前回もこれと全く同じ香水だった。飲み物はシャンパーニュ以外にない(たまたま家にシャンパーニュがあっただけですが)。ブラン・ド・ブランの傾向。香水に胡椒が入ってくる様が泡立ちのようで実に美しい。前回藁っぽかった感じが今回巧みに消えて、高級煙草葉の深みがエレガントに香る。深々と沈む深みではなくて、香水のついでに香りを置くようでさりげない。ダビドフ702のラッパーの香味にも通じる。煙を顔に纏わせる仕方によっては金木犀が現れて香水と入り混じり官能の頂点を見る。頂点に登り切ってはいない。
 淑女の舌にクリームが乗る。スターアニスが乗る。とろけるよう、淑女と舌を交換してしまったよう。私は私から生えた淑女の舌を楽しんでいる。未来の社交、金持ちたちの新しい影の享楽。ビトラのせいか、舌が細い。細さこそ美しい、しかしこの細さが、天国への扉の鍵を閉める。
 細くも高貴さに圧倒されてしまう、異常な香り高さ。一本$300と言われても騙されてしまいそう。それぐらい違う。この香りをひと口でも知っていれば、一本まるまる楽しむために一生に一度はその金額を払うだろう。それが3000円とはまこと馬鹿馬鹿しい。その辺の葉巻によくある金額をつけてはいけない。

 他のゴールディが同一傾向なのかわからないが、コイーバがコイーバであるのと同じかそれ以上の存在感がある。さして大当たり感なく常然として、全てが上品に行われている。一番高価なハバナや一番高価なダビドフに果たしてこれほどの異様な香りが備わっているだろうか。思い返せばBHK52の一本目(金の筒)を燻らせた時に近いというか、どうしてあの時、金の筒にさほど官能を覚えなかったのだろう。金の筒は金管ビッグバンドみたいにゴージャスすぎて清楚さが見られなかったからかもしれない。ここに薫る香水は、繊細なすっぴん素顔であり、対蹠的などぎつい影の遊びと無縁のものを感じる。それゆえ未来感も背徳も増すのか、来ない未来なのでわからない。

 ゴールディーの他のビトラを集め切らぬうちに新世界の闇を冒険する、たぶん無意味な事だ。
|Atlantic Cigar|$207/10(+¥800/1)|2022/1/14・arr 2/4|
|—|7’ x 38|9.17g|香:4.0~4.3 ave4.1|残9|

 ドローの心配がつきまとうが、「ラ・パリーナのゴールディだから平気」というあまり根拠のない理由で安心購入してしまった。ラギート1は価格に対してグラム数が少ない物ばかりなので損でもあるのだが、ラギート1にのみ開かれる悦楽は深い。
 アメリカの3店舗を利用した為、転送会社を挟んで長旅となった、それでも到着日に一本点ける。

 香水をふりかけた藁、強く顔面まで立ち昇る草。一瞬不思議な心地がする。美味しいのか不味いのか、美しさと醜さが共栄している。特異さは香水にあり、この馨しさ自体、葉巻として好ましいか否かわからない。藁や草は不味さ、香水は美しさと醜さ、かもしれない。
 或いは毒々しい色香で肢体をかえ、嬌態を示す。煙草葉であるとは信じられないような香り高さに着香を疑うほどだが、着火前に嗅いでもそんな香はなかった。香りに馴れたのかいつの間にか天女の舞うがごとく……まだ天女の足首が雑草に絡め取られている。
 またいつの間にか草が七色を帯び始める。草が光れば、天女は羽ばたかずとも天女なのか。
 香水の配合を精妙に変えつつ、香味がまとまる中盤、土の感触や乳や卵等のデザートが饗され始める。
 甘さなどはなかったが、味が薄くもまるでなく、花に到りそうで香水のまま不思議な香りを放ちつづける。

 藁や草などの雑味系が熟成により霧消するとしたら、大変な葉巻になりそう。極端に特異で、マジカルで。実際に中盤で草が土に返った時にはぞくっとした。土にこそ空を舞う天女が映りそう。またたとえ雑味を感じても、この香水を始終振りかけられてしまうと、高得点を付けずにいられない。

Wrapper: Ecuadorian Habano
Color: Colorado
Binder / Filler: Nicaragua / Nicaragua, Dominican Republic
Blender: Bill Paley
Manufactuer: El Titan de Bronze
Country of Origin: USA
|Atlantic Cigar|$11.48/1(+¥770/1)|2021/11/2・arr 11/14|
|—|6’ x 50|重量:14.91g|香:3.5~4.0 ave3.7|残0|



 パインやキウイのようなキンキンしたフルーツ、硬い黒っぽい高級木材、金木犀の蜜。
 終盤、硬質な木材がオーブンの中のパンのように膨らんでふくよか化するとともに、焼石に金木犀エキスが落ちてパッと蒸発して激しく香る素晴らしさ。この絶巓エレベーターに乗るまでの待ち時間が平板にして非常に長く、またその後は崖を転がり落ちるように短い。せっかくの皮の硬いフカフカのパンが瞬時にどろんこになってしまう。それでも、平板な部分もそれなりにずっと美味しく、わくわくとさせ、ラ・パリーナというブランドに惚れ惚れし始めてしまった。集めよう。

Wrapper Ecuadorian Habano
Color Colorado
Binder / Filler Nicaragua / Nicaragua
Blender Bill Paley
|Atlantic Cigar|$18.00/1(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|7 x 50|重量:15.79g|香:3.4〜4.2 ave4.0|残1|

 『Pasha Churchill』は二種類あり、この「Coffins LE」は一本一本箱入りで、箱の中で葉巻が杉に巻かれている。赤子をゆりかごと綿で包むような。丁重に取り出して杉を外すと、ラッパーのフットよりもさらに2センチほどフィラーが伸びて、だからか、どういう錯覚かわからないが、何故か思っていたよりも大きく見える。嗅ぐとブルゴーニュの石灰質の白ワインのような火薬香がして、他の臭気は杉がうまく吸収したらしく、あまり匂いがしない。
 フィラーがはみ出た部分を嗅ぐと藁や穀物の香り。はみ出つつもボサボサ頭(フット=足)が綺麗に切りそろえられている。

 つまんでみると、非常に柔らかく弾力がある。ゴムボールのような、葉巻としてはまこと非常である。過加湿状態で蒸されたか、それでいてドローはスカスカでない。

 はみ出た部分の味わいからしてすでに美味しいのだが、少し物足りない。火がラッパーに達した時、どういう変化が起こるのか。もし変化がわからなかったらどうしようと思ったが、杞憂である。予想よりずっと分かり易く変化した。
 ラッパーが腰ベルトのようになり、急激にドローが引き締まると、煙が激減し、醸造のごとき奥深い甘味が一気に増す。微量の煙に濃く重々しくも膨らみをもって味が乗っている。重い気球が軽々しく持ち上がるような。序盤に存在した藁がどんどん消えていく。ボサボサ頭のダビドフのグランクリュ・フレッシュロールではあまり気にしていなかったので、ラッパーの役目を初めてまざまざと体感した。一瞬にして超絶美味に化けた。
 今日の昼のロッキーパデルに比べるとはるかに美味感が強い。甘納豆系の滋味深いお菓子。豆の風味を生かして殺さない餡の甘さ。
 タバコのきつさはごく薄く、味が濃い。
 ハバナ感はほとんどない、あるいはハバナ豆の芯の吟醸の部分のみを受け継いでいる。籾殻や渋皮や焦げの香ばしさが、キャラメルでなく、真白透明な吟醸であるにもかかわらず醤油や味噌、大徳寺納豆に近く、それでかなり甘い。ここまで甘いものは久しぶり。もし煙でなかったら嫌になるほどの甘味である。さらには塩っけが無く煙の柔らかさが心地よくふわふわしている。マデューロに生じるような乾いた染みの感覚がなく、芳醇な醗酵がかすかに白くしかし黒く潤っている。
 灰はポロリしない。
 で、ちゃんと金木犀が来る。ここでハバナの記憶とはっきり繋がる。ハバナに近しいものだったのだと。こう来ると、仕方なくハバナを離れたというより、よりよい美味を求めてハバナを去ったという趣がある。
 ロッキーパテルほどではないにせよ、エグミの類は少ないが、飲み物が欲しくはなる。こういう場合、紅茶など渋みの強いものはいただけない。ロッキーパテルなら紅茶でも行けただろう、丁度ダビドフの紙巻が紅茶に合うように。(ダビドフの紙巻は最近終売になりました。)
 偶然なのか、今日は飲み物としてジャン・コレのシャブリを用意している。この白ワインはこの葉巻の着火前と同じ火薬臭を発している。(ジャン・コレのシャブリは3,000円以下で買える白ワインのお買い得筆頭株です。特級もセラーに備えていますが、二級シャブリにこそこのドメーヌの妖しさがあります。初めてコレを経験した時、美味しいとは感じなかったのですが、わたしは眠りの夢でこれの絹の柔らかさに延々魘されて、悪夢としては心地良過ぎ、目覚めつつ眠りつづけました。翌朝、変な物を飲んだと悟ったのです。)
 後半は醗酵物がなりを潜める。入れ替りにハバナ感が増す。またエグミを伴う。
 エグミが消えてくれるとダビドフ化する。これはこれでまた上質なのだが、一本でアメリカとハバナとドミニカを漫遊するのだが、たぶん個性はアメリカにある。実際の使用葉のエクアドルとニカラグアがアメリカへ併合されている。漫遊して戻ってくるのがアメリカで、序盤がアメリカで、だから前半が特に良い。
 バターのしつこさ。
 バターはバターで頼もしいが、しつこさを持続させず、終盤スパイスや辛味が出て洗われる。それも雑味的な濁流でなく、丁寧な柔らかい旨味をぎりぎり維持して美味しい。
 矢継ぎ早にエグミが木に化する。「木」や「土」や「革」といったハバナの常套句をここに至るまで感じなかった。つまりはまたここでハバナに近づいたのである。

 ダビドフ7やBHK54にはこの毅然たる温和をもってしても及ばないのかもしれないが(この葉巻の標準の限界を思わせる美味しさによってダビドフやコイーバの特異さがより顕在化する)、「ファミリー」と銘打たれているママ、見事にほっこりとして美味しい温かみを深く感じる。普段感じていない当然のもの、その偉大さを感じる。母の手料理がここまで美味しかったら、と思うが、時折母はこれぐらい美しい味を醸す、極時折だが。これなら箱買いも躊躇しない。ゴールディーはこれよりも美味しいのだろうか。

Wrapper Type Ecuadorian Habano
Color Colorado
Binder / Filler Ecuador / Nicaragua
Blender Bill Paley

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