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煙草死番虫の巣窟を家の中で確認したことが4回ある。この夏、単独飛行している死番虫を5回ほど確認しているから、また家の中に巣があるに違いない。なかなか見つからない。ヒュミドール等を注意深く開け閉てする日々が続く。
4回中もっとも巨大な巣は、賞味期限切れのスパイスの小壜にあったもので、半分ほど残った状態で長年戸棚の奥で放置されていた。カレーにありったけの香辛料を入れようと棚の奥を探り、「へへえシナモンか」などと笑いつつ、半開き(?)の蓋を開け、何しろ古いから一旦手の平に振って味見してみようと振った時、死番虫の死骸(?)が十ほど手に乗って吃驚したのである。危うく死番虫カレーになるところであった。味見してみようと思わなかったら気づかなかったであろう。(知らずに死番虫カレーを食されているご家庭もたくさんあると思います。)吃驚後、スパイスなのか虫なのか色合いが曖昧で、目を凝らすと、スパイスはほとんど消え失せ、死番虫の死骸(生体?)のみで小壜があふれんばかりになっていた。これに気づく以前は、「最近の黄金虫はずいぶん小さくなったものだなぁ」などと呑気に構えて、「昔はこんな赤ちゃん黄金虫見なかったけど可愛いもんだからまあいいか。でもなんでこの数年こんな虫が家の中を飛ぶのだろう、不思議だなぁ」などとも思っていたのである。この頃はまだストックするほど葉巻を持っていなかったし、煙草死番虫という虫も知らなかったのではなかろうか。壜を処分して以降、小さな黄金虫をすっかり見なくなった。
もう一つは、ポルトガルを巡った際に愛用していた紙巻煙草の最後の一本を記念に取って飾っていたのだが、十何年かぶりに箱を開けてみると葉はすっかり跡形なく喰い尽くされ、穴が無数に開いた巻紙とフィルターのみの蛻の殻となり、死番虫の死骸もなかった。スパイスの小壜よりも先にヤられたのかもしれないが、これに気づいた時には死番虫というものを知っていた。死番虫はやはり煙草が好きなのだと悟ったのである。
もうひとつは蜜柑で、鏡餅の上に乗せていた形の良い物をいっそ完全乾燥させてしまえと思って五年ほど飾っていた。ある日何かの拍子にそれを落下させてしまい、するすると死番虫の死骸がまろび出た。よく見ると1ミリ大の穴が2つ開いており、穴を下に向けて蜜柑を振ると、穴からどんどん死骸が転がり出てきた。虫も通れないような小さな穴であるのに、打ち出の小槌の要領で面白いように出てきたのである。煙草虫の死骸も乾燥して縮むらしい。
(蜜柑の左肩に一つ穴が開いているのが見えます)
その他、葉巻に被害を受けたことはほぼないのだが、アメリカから来たシングル買いダビドフの個包装のビニールの中で巣食っていたことがある。被害は一本に止まった。
4回中もっとも巨大な巣は、賞味期限切れのスパイスの小壜にあったもので、半分ほど残った状態で長年戸棚の奥で放置されていた。カレーにありったけの香辛料を入れようと棚の奥を探り、「へへえシナモンか」などと笑いつつ、半開き(?)の蓋を開け、何しろ古いから一旦手の平に振って味見してみようと振った時、死番虫の死骸(?)が十ほど手に乗って吃驚したのである。危うく死番虫カレーになるところであった。味見してみようと思わなかったら気づかなかったであろう。(知らずに死番虫カレーを食されているご家庭もたくさんあると思います。)吃驚後、スパイスなのか虫なのか色合いが曖昧で、目を凝らすと、スパイスはほとんど消え失せ、死番虫の死骸(生体?)のみで小壜があふれんばかりになっていた。これに気づく以前は、「最近の黄金虫はずいぶん小さくなったものだなぁ」などと呑気に構えて、「昔はこんな赤ちゃん黄金虫見なかったけど可愛いもんだからまあいいか。でもなんでこの数年こんな虫が家の中を飛ぶのだろう、不思議だなぁ」などとも思っていたのである。この頃はまだストックするほど葉巻を持っていなかったし、煙草死番虫という虫も知らなかったのではなかろうか。壜を処分して以降、小さな黄金虫をすっかり見なくなった。
もう一つは、ポルトガルを巡った際に愛用していた紙巻煙草の最後の一本を記念に取って飾っていたのだが、十何年かぶりに箱を開けてみると葉はすっかり跡形なく喰い尽くされ、穴が無数に開いた巻紙とフィルターのみの蛻の殻となり、死番虫の死骸もなかった。スパイスの小壜よりも先にヤられたのかもしれないが、これに気づいた時には死番虫というものを知っていた。死番虫はやはり煙草が好きなのだと悟ったのである。
もうひとつは蜜柑で、鏡餅の上に乗せていた形の良い物をいっそ完全乾燥させてしまえと思って五年ほど飾っていた。ある日何かの拍子にそれを落下させてしまい、するすると死番虫の死骸がまろび出た。よく見ると1ミリ大の穴が2つ開いており、穴を下に向けて蜜柑を振ると、穴からどんどん死骸が転がり出てきた。虫も通れないような小さな穴であるのに、打ち出の小槌の要領で面白いように出てきたのである。煙草虫の死骸も乾燥して縮むらしい。
(蜜柑の左肩に一つ穴が開いているのが見えます)
その他、葉巻に被害を受けたことはほぼないのだが、アメリカから来たシングル買いダビドフの個包装のビニールの中で巣食っていたことがある。被害は一本に止まった。
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|cigarOne|$122/10|arr 2017/12/2|
|EOT DIC 16|6.1 x 50|17.71g|香:2.0~2.8 ave2.3|残0|
南に窓の空く部屋にては、夏は煙が篭る(冬は自然と煙が抜けてゆく)。冷房器具を停止し、扇風機をベランダへ向けて回転させ、着火する。
夏が葉巻に悪さをするのか、お盆前後、八月中旬を通して、どうも不味い葉巻ばかりで、これは三歳未満の葉巻であるにもかかわらず二十年選手のように枯れている。若いので、枯淡の境地というのは憚られるが、不味いわけではなく、ひたすら枯淡だった。
最後の一本なので、ひととき箱の中で寂しく過ごした葉巻ではあるが、残一本たちが集う箱に移住させたから、そう寂しい期間は長くはなかったはずである。葉巻は寂しいと枯淡が早まる、という現象がもしやあるにせよ。
酷暑に原因を求める他なかった。(重量オーバーで鼻詰りを疑わせるほどのドロー難でもあったが)
『MONTECRISTO sublimes EL 2008』は真夏に美味しかった記憶がある。ELがなべて水の気配を纏うからだろうか。水風呂のような。
ダビドフ7のみは別格にして暑さに負けなかったものの、概して今年の夏はショートフィラーの葉巻の方が活躍した。(旅行先にて地ビールと併せて活躍)
※昔訪れた城崎温泉街は別格(?)として、最近の旅館は地ビールを取り揃える処が多く、今回、禁煙旅館の暖簾の前にて、とりわけIPA麦酒と葛コイーバの組合せを絶妙に感じました。
なお、ダブルエドムンドの前に着火したレイエンダもまるで奮わなかった。
一つ発見したのは、モンテクリストのバンドが樺細工に染み込むということであった。
|EOT DIC 16|6.1 x 50|17.71g|香:2.0~2.8 ave2.3|残0|
南に窓の空く部屋にては、夏は煙が篭る(冬は自然と煙が抜けてゆく)。冷房器具を停止し、扇風機をベランダへ向けて回転させ、着火する。
夏が葉巻に悪さをするのか、お盆前後、八月中旬を通して、どうも不味い葉巻ばかりで、これは三歳未満の葉巻であるにもかかわらず二十年選手のように枯れている。若いので、枯淡の境地というのは憚られるが、不味いわけではなく、ひたすら枯淡だった。
最後の一本なので、ひととき箱の中で寂しく過ごした葉巻ではあるが、残一本たちが集う箱に移住させたから、そう寂しい期間は長くはなかったはずである。葉巻は寂しいと枯淡が早まる、という現象がもしやあるにせよ。
酷暑に原因を求める他なかった。(重量オーバーで鼻詰りを疑わせるほどのドロー難でもあったが)
『MONTECRISTO sublimes EL 2008』は真夏に美味しかった記憶がある。ELがなべて水の気配を纏うからだろうか。水風呂のような。
ダビドフ7のみは別格にして暑さに負けなかったものの、概して今年の夏はショートフィラーの葉巻の方が活躍した。(旅行先にて地ビールと併せて活躍)
※昔訪れた城崎温泉街は別格(?)として、最近の旅館は地ビールを取り揃える処が多く、今回、禁煙旅館の暖簾の前にて、とりわけIPA麦酒と葛コイーバの組合せを絶妙に感じました。
なお、ダブルエドムンドの前に着火したレイエンダもまるで奮わなかった。
一つ発見したのは、モンテクリストのバンドが樺細工に染み込むということであった。
|NextCigar|$144/20|2019/6/24・arr 7/3|
|—|4 1/2 x 41|重量:--g|香:1.4~2.6 ave1.9|残16|
最初の一本には、こちらの高揚もあれば一本に向かう真剣さもあり、不慣れゆえに気付く微々たる美しさもあり、ここまで悪いとは思わなかったが、さらに3本ほど試してみて、この葉巻はいずれも
「出涸らしの鰹節を柿渋でさらに苦くしたもの」
であると判明しつつある。何かの間違いなのか、メーカーに送り返して検品してもらうべきか(しないけれど)。元々小サイズのダビドフに対して良い記憶があったわけでもないのにシングル試しもせず箱で買ったのが間違いではある。
しかし蟹が鰹節で猿の柿を殴ったみたいなこんなブレンドがありうるのかな。五年ぐらい寝かせて変るのか、手に取りやすいので不味くてもどんどん消費してしまいそうである、どうでも良い時などに。
|—|4 1/2 x 41|重量:--g|香:1.4~2.6 ave1.9|残16|
最初の一本には、こちらの高揚もあれば一本に向かう真剣さもあり、不慣れゆえに気付く微々たる美しさもあり、ここまで悪いとは思わなかったが、さらに3本ほど試してみて、この葉巻はいずれも
「出涸らしの鰹節を柿渋でさらに苦くしたもの」
であると判明しつつある。何かの間違いなのか、メーカーに送り返して検品してもらうべきか(しないけれど)。元々小サイズのダビドフに対して良い記憶があったわけでもないのにシングル試しもせず箱で買ったのが間違いではある。
しかし蟹が鰹節で猿の柿を殴ったみたいなこんなブレンドがありうるのかな。五年ぐらい寝かせて変るのか、手に取りやすいので不味くてもどんどん消費してしまいそうである、どうでも良い時などに。
|Atlantic Cigar|$270.75/10(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|5 1/2 x 48|重量:13.20g|香:2.9~4.8 ave4.3|残8|
一口目から本物のダビドフの味がして、滞留の箍が外れている。まだ花も何もなく基準の葉が香るのみのところ、もう美々しく単なる葉に何か加えものをしているような、本当のところ葉を二重三重に用いていても、しかし一塊の味がする。
二口目で辛味、三口目でかすかに花が乗る。
一口目でもう十分堪能し終えているのだが、途中、藁っぽくなったりもし、いがらっぽさも出てくる。それでも一口目の風味は持続して、ふんふんふんと燻らせていると、突如金木犀の枝に桃が熟す。瞬殺である。極上とはいえ葉しか無かった景色に金と桃の二つが一緒に咲き実る。「咲き実る」という、秋と夏で、盆と正月が同時に来たのか、別次元の慶賀の感覚である。
ふわっふわでジューシーな金木桃の八切れに青いスパイスのごとき青い果実がよぎる。麗しい青の正体はわからないが、桃の正体はどうやらカスタードらしく、外貌は極上品としての桃へメタモルフォーシスを遂げている。白桃が青桃へと化したのか。(弊社では、数多の花の名は勿論、果実名や樹木名などの名詞の羅列を忌避し、極力金木犀のバリエーションや土のバリエーションなどに意を注ぐのが常であるのに、)桃はどんなに強調しても嘘にならない優しい濃さで滴り、果汁が上方に滴る。この桃は、既出のカスタードでもココナッツでも化粧パウダーでもない、おそらく成分においてそれらの亜種に他ならないが、奇跡的な分子結合・配合を遂げた桃である。
やっべ、なんだこれ。
異常なブーケ。1本目のみ当たるのかと疑っていたところ、一本目と拮抗している。
一本目にしても、天国へ昇る階段の終点付近に迫ったのはそう長い時間ではなかった、それは今回も同じ。それでも時間は短すぎはしない。扉の前でそう長く佇んではいけない。天国からの階段を降りようではないか、とまるで英断して去る。英断にも見えるが、天国に恐れをなして退散しているのである。ブーケというよりブザーが鳴ったんだもの。
白い石の味わいがある。白石はコイーバの茶瑪瑙を芯に秘め、完全に白く包んでいる。
白さが灰色を帯び、羽化するもののごとくひび割れ始めると、茶色が諌めるように溢れ出す。その物体ははっきりすると、茶瑪瑙ではなく最初の一口目の茶なのだと気づかせる。
葉巻なのに出てくるのが花ばかりではつまらない、何より葉の味が欲しいと思うことがよくある。7は葉らしい葉の味が濃い。
白バンドのロイヤルサロモネスに比べると、茶色い成分において、高貴さの代わりに親しみやすさ、親しみの根にどうしようもなく盛る記憶の奔流を感じる。忘却の彼方から逆行してくる。白ロイヤルにはこみ上げない懐かしさなのに、どうしてか懐かしさを感じないほど新鮮でもある。たぶん走馬灯なのである。死に瀕して、役に立たない記憶たち。記憶たちが一つに合わさった甘美の塊。ロイヤルに茶色成分でも劣らず、他色成分では7の方が優っている。
雑味がやや頻繁に邪魔しないではないから(極上であるだけに余計目立ってしまう)、天国は粗い写真の中に仕舞われがちにもなる。それでもこの2本目は終盤前に激しく死ぬこともなく、初回よりやや平均点を上げている。しかし最後、残5センチほどで潔く完全死する。やや早死である。
灰は2センチ半程度で常にポロリする。不思議と床は綺麗で、いずれも灰皿に安置している状態にて自然落下してくれる。
次回も天国の扉の前まで至るのならば、二箱目を買わなければならなくなる。もうあまり寝かせる暇はなさそうで、売切れ前に3本目に着火しなければ。
|—|5 1/2 x 48|重量:13.20g|香:2.9~4.8 ave4.3|残8|
一口目から本物のダビドフの味がして、滞留の箍が外れている。まだ花も何もなく基準の葉が香るのみのところ、もう美々しく単なる葉に何か加えものをしているような、本当のところ葉を二重三重に用いていても、しかし一塊の味がする。
二口目で辛味、三口目でかすかに花が乗る。
一口目でもう十分堪能し終えているのだが、途中、藁っぽくなったりもし、いがらっぽさも出てくる。それでも一口目の風味は持続して、ふんふんふんと燻らせていると、突如金木犀の枝に桃が熟す。瞬殺である。極上とはいえ葉しか無かった景色に金と桃の二つが一緒に咲き実る。「咲き実る」という、秋と夏で、盆と正月が同時に来たのか、別次元の慶賀の感覚である。
ふわっふわでジューシーな金木桃の八切れに青いスパイスのごとき青い果実がよぎる。麗しい青の正体はわからないが、桃の正体はどうやらカスタードらしく、外貌は極上品としての桃へメタモルフォーシスを遂げている。白桃が青桃へと化したのか。(弊社では、数多の花の名は勿論、果実名や樹木名などの名詞の羅列を忌避し、極力金木犀のバリエーションや土のバリエーションなどに意を注ぐのが常であるのに、)桃はどんなに強調しても嘘にならない優しい濃さで滴り、果汁が上方に滴る。この桃は、既出のカスタードでもココナッツでも化粧パウダーでもない、おそらく成分においてそれらの亜種に他ならないが、奇跡的な分子結合・配合を遂げた桃である。
やっべ、なんだこれ。
異常なブーケ。1本目のみ当たるのかと疑っていたところ、一本目と拮抗している。
一本目にしても、天国へ昇る階段の終点付近に迫ったのはそう長い時間ではなかった、それは今回も同じ。それでも時間は短すぎはしない。扉の前でそう長く佇んではいけない。天国からの階段を降りようではないか、とまるで英断して去る。英断にも見えるが、天国に恐れをなして退散しているのである。ブーケというよりブザーが鳴ったんだもの。
白い石の味わいがある。白石はコイーバの茶瑪瑙を芯に秘め、完全に白く包んでいる。
白さが灰色を帯び、羽化するもののごとくひび割れ始めると、茶色が諌めるように溢れ出す。その物体ははっきりすると、茶瑪瑙ではなく最初の一口目の茶なのだと気づかせる。
葉巻なのに出てくるのが花ばかりではつまらない、何より葉の味が欲しいと思うことがよくある。7は葉らしい葉の味が濃い。
白バンドのロイヤルサロモネスに比べると、茶色い成分において、高貴さの代わりに親しみやすさ、親しみの根にどうしようもなく盛る記憶の奔流を感じる。忘却の彼方から逆行してくる。白ロイヤルにはこみ上げない懐かしさなのに、どうしてか懐かしさを感じないほど新鮮でもある。たぶん走馬灯なのである。死に瀕して、役に立たない記憶たち。記憶たちが一つに合わさった甘美の塊。ロイヤルに茶色成分でも劣らず、他色成分では7の方が優っている。
雑味がやや頻繁に邪魔しないではないから(極上であるだけに余計目立ってしまう)、天国は粗い写真の中に仕舞われがちにもなる。それでもこの2本目は終盤前に激しく死ぬこともなく、初回よりやや平均点を上げている。しかし最後、残5センチほどで潔く完全死する。やや早死である。
灰は2センチ半程度で常にポロリする。不思議と床は綺麗で、いずれも灰皿に安置している状態にて自然落下してくれる。
次回も天国の扉の前まで至るのならば、二箱目を買わなければならなくなる。もうあまり寝かせる暇はなさそうで、売切れ前に3本目に着火しなければ。
|coh-hk|$38/5(+¥3600/15)|2019/8/1・arr 8/8|
|—|6 x 52|重量:13.74g|香:2.5~3.7 ave3.3|残4|
5本入りの箱は極めてデザインに疑問がある。ダサいを通り越している箱の姿は、どことなく、どこかしらアレルギーが発症する類である。
箱はともかく、一本取り出してみると、初見から何か違うなと思ったら、個包装のビニールがオレンジ色だったのである。それだけだが。
葉巻をビニールで個包装する際、ヘッドからビニールに入れて、フット部分の余ったビニールを折り曲げて、シールで封印するのである。吃驚したのは、ビニールの封印を剥がし、折り曲げられた部分を伸ばした途端、そこは無色透明だったのである。てっきりビニールがオレンジ色だと思っていたのに、オレンジ色はビニールの色ではなかったのである。過加湿状態で保存されたのか、葉巻が芬芬と色素を外に放ったか、かほど濃く着色されたビニールは見たことがない。何れにしても中長期熟成された葉巻であることは確かだろう、短期ではこれほどビニールは色づかない。長期でもこれほどには色づかない。いわば前菜からして特別感があるのである。
ドローはスカスカで、着火前の空吸の香味は海老煎にそっくりである。海老煎というのは妙を得ている。手前味噌なる文字列ながらこの妙言は珍しく自慢して良い。なにしろバンドもオレンジ色だし、バンドがオレンジだからビニールもオレンジだと思ったわけなのかビニールもオレンジだし、全ては海老に通じている。このエビは、赤ではなくオレンジである。
ロッキーパテルの最高級品はエビである。しかしながらバンドのオレンジ色は、まるで高級品に見えない。よくよくバンドを触ってみると、ヘビ皮のようなエンボスが施されていて高級らしいが、もっとも実際はヘビでなく単純な格子のエンボスである。
最初の一口のみ焼海老(殻ごと焼いた)の味がし、二口目からタバコの辛味が海老を消す。晴れた日の高波のように襲いかかり、ハムレットシリーズの強い物よりも強く感じる。それにしても、昨日の丸いグランレゼルバとは違って、スクエアプレスのロッキーには吸う人を落ち着かせる青い効能がある。青だからエビとは正反対の特質である。四角は青い。青いエビも焼けば赤い。此処にはオレンジへと向かわせる黄色が抜けている。
藁というより麦芽といったほうが良い藁の味。ほんのり甘い麦芽。甘い米のように噛んで嗜む類の甘味。花かと思うもミントのような何かがよぎる。正体不明のそのミントもどきは、かき氷の氷のように半ば無色で色を吸い、宙を浮き、清純にして隠微な香りを楚々と放ち、知る限りこの世の果実ではない果実の香を滴らせもし、無重力の遊びでそっぽを向く、清涼感を伴いつつも甘くふくよかなる感触に、薄く肉付いたわたくし13歳だった少女の、風呂上がりの臍の周りを偲ぶ。正体は、当然のように、平凡な「臍と肉と花」に変わったのである。
よくある美しい花が見える。黄色い。黄色を獲た画家の喜びよ。
強さは消え、けろりロッキーパテルらしい軽さが不敵だが、この軽さに優しそうな膨らみがか細いながら添うている。かすかな膨満感は果実が含む乳系の成分で、植物系のみが有する香である。(この葉巻の翌日、夫の朝食がわたくしの母乳であるという幻想を味わいました。夫は毎朝、母乳を飲んで眠気一転となり、出かけてゆくのです。)熟した樹皮と金木犀が軽やか。不思議と旨味の欠如は感じない、旨味がほぼないのに。だんだん湿ってきたようである、湿ったら旨味は要らないか、いつの間にか草が霧雨に湿って、そこへの金木犀の取り合わせは出臍も凹む素晴らしい景色である。舌は凹にホールインワンしようと夢にもがいているようである。いったい凹に何があるというのかね?
ブツリ。
終盤は何も良いように変化しない。美味しいような不味いような苦味が増し、減り、増し、減り、増し……増すも減るも減衰の一途を辿る。ほぼ全体が良かれ悪しかれ淡く薄い。最後の最後は猛烈な苦みで「いやや後生ですから」と言ってはっきり死ぬ。葉巻を投げ捨てる。しかし灰皿からの捨てた燻煙が香ばしい。
総じてプラチナムを箱で買えばよかったという結論である。あと4本あるので、臍をじくじくと経過観察しようと思う。
|—|6 x 52|重量:13.74g|香:2.5~3.7 ave3.3|残4|
5本入りの箱は極めてデザインに疑問がある。ダサいを通り越している箱の姿は、どことなく、どこかしらアレルギーが発症する類である。
箱はともかく、一本取り出してみると、初見から何か違うなと思ったら、個包装のビニールがオレンジ色だったのである。それだけだが。
葉巻をビニールで個包装する際、ヘッドからビニールに入れて、フット部分の余ったビニールを折り曲げて、シールで封印するのである。吃驚したのは、ビニールの封印を剥がし、折り曲げられた部分を伸ばした途端、そこは無色透明だったのである。てっきりビニールがオレンジ色だと思っていたのに、オレンジ色はビニールの色ではなかったのである。過加湿状態で保存されたのか、葉巻が芬芬と色素を外に放ったか、かほど濃く着色されたビニールは見たことがない。何れにしても中長期熟成された葉巻であることは確かだろう、短期ではこれほどビニールは色づかない。長期でもこれほどには色づかない。いわば前菜からして特別感があるのである。
ドローはスカスカで、着火前の空吸の香味は海老煎にそっくりである。海老煎というのは妙を得ている。手前味噌なる文字列ながらこの妙言は珍しく自慢して良い。なにしろバンドもオレンジ色だし、バンドがオレンジだからビニールもオレンジだと思ったわけなのかビニールもオレンジだし、全ては海老に通じている。このエビは、赤ではなくオレンジである。
ロッキーパテルの最高級品はエビである。しかしながらバンドのオレンジ色は、まるで高級品に見えない。よくよくバンドを触ってみると、ヘビ皮のようなエンボスが施されていて高級らしいが、もっとも実際はヘビでなく単純な格子のエンボスである。
最初の一口のみ焼海老(殻ごと焼いた)の味がし、二口目からタバコの辛味が海老を消す。晴れた日の高波のように襲いかかり、ハムレットシリーズの強い物よりも強く感じる。それにしても、昨日の丸いグランレゼルバとは違って、スクエアプレスのロッキーには吸う人を落ち着かせる青い効能がある。青だからエビとは正反対の特質である。四角は青い。青いエビも焼けば赤い。此処にはオレンジへと向かわせる黄色が抜けている。
藁というより麦芽といったほうが良い藁の味。ほんのり甘い麦芽。甘い米のように噛んで嗜む類の甘味。花かと思うもミントのような何かがよぎる。正体不明のそのミントもどきは、かき氷の氷のように半ば無色で色を吸い、宙を浮き、清純にして隠微な香りを楚々と放ち、知る限りこの世の果実ではない果実の香を滴らせもし、無重力の遊びでそっぽを向く、清涼感を伴いつつも甘くふくよかなる感触に、薄く肉付いたわたくし13歳だった少女の、風呂上がりの臍の周りを偲ぶ。正体は、当然のように、平凡な「臍と肉と花」に変わったのである。
よくある美しい花が見える。黄色い。黄色を獲た画家の喜びよ。
強さは消え、けろりロッキーパテルらしい軽さが不敵だが、この軽さに優しそうな膨らみがか細いながら添うている。かすかな膨満感は果実が含む乳系の成分で、植物系のみが有する香である。(この葉巻の翌日、夫の朝食がわたくしの母乳であるという幻想を味わいました。夫は毎朝、母乳を飲んで眠気一転となり、出かけてゆくのです。)熟した樹皮と金木犀が軽やか。不思議と旨味の欠如は感じない、旨味がほぼないのに。だんだん湿ってきたようである、湿ったら旨味は要らないか、いつの間にか草が霧雨に湿って、そこへの金木犀の取り合わせは出臍も凹む素晴らしい景色である。舌は凹にホールインワンしようと夢にもがいているようである。いったい凹に何があるというのかね?
ブツリ。
終盤は何も良いように変化しない。美味しいような不味いような苦味が増し、減り、増し、減り、増し……増すも減るも減衰の一途を辿る。ほぼ全体が良かれ悪しかれ淡く薄い。最後の最後は猛烈な苦みで「いやや後生ですから」と言ってはっきり死ぬ。葉巻を投げ捨てる。しかし灰皿からの捨てた燻煙が香ばしい。
総じてプラチナムを箱で買えばよかったという結論である。あと4本あるので、臍をじくじくと経過観察しようと思う。
|coh-hk|$56/10(+¥3600/15)|2019/8/1・arr 8/8|
|—|6 x 52|重量:16.93g|香:2.4~3.5 ave3.0|残9|
ラッパーが妙に美しいし、きちんと丸いし、高級そうな外観はもう、ほとんど嘘くさいほどである。ドローはむっしり完璧で、トルセドールの腕を見せつけるようである。
煮詰めた草のような滑り出し。草から黄の色素が出て、やがて茶色に煮詰まっていく、それが遡行し、二口三口進めると草が緑化する。ハバナ感あり、と思うが早いか今更急激に序盤らしい胡椒の辛味が噴出し、胡椒の香りもして、かすかに花を伴う。実物を見たことも嗅いだこともないが「胡椒の花」とはこういうものだよねと妙に納得してしまう。
バンドがばかにでかいが、それが絶妙に3本の指にフィットする。ふつう指はラッパーを触ってしまうのに、バンド前面に人差指と中指、後面に親指でOK、そう、その持ち方が正しいです、というロッキーの顔が意外や真剣だ。
昔から知っていたロッキーパテルとはだいぶ違い、ハバナ感のものである。ハバナのどの銘柄を表すかとなると何も浮かんできはしない。アップマンだったろうか、トリニダッドのきな粉豆も出ているような。もっと安っぽいフォンセカだったか。
黄土色の乾いた味わいに肌理の細かいナッツ類の粉が振りかかって、どこか奥深くでは焦げ茶色に湿っていて、幽かに「新鮮な染み」、シャツにこぼしたての醤油のような味わいがし、色や香味から察すると醤油ではなく味噌かもしれない。
味はまさに薄い、だからハバナ感も薄い。しかし醤油が味噌に転化するのはハバナらしさの所為で、ニカラグアというよりも断じて薄いハバナである。薄さは昔知っていたロッキーパテルらしさかもしれない。
ハバナの風味にこの薄さが合うかというと巨大な疑問がつく。
元々奥にこげ茶色らしき何かがあったが、ようよう黄土色が樫色化し、樹齢高く木化する。花は粉っぽく味わわれる。きな粉の効能なのか、花粉を舐めるようで、きな粉も混ぜれば花粉は食べても美味しいということがわかりそうになる。その花はいまモンテ風の金木犀である。
香りはかなり濃く甘いのに、味は薄い。ダビドフクラシックを思い出そうとしてみる。薄さと花は符合する。
一体どういうふうにロッキーはニカラグアの地でこんな葉を育て、ブレンドしたのか。
ココナッツ化する。ここもモンテ、あるいはオーパスである。不敵にほくそ笑むロッキー。ちみたち高級ブランドが醸し出す香味は、実はもう平凡なものだよ、うちのはまだまだ薄いけれどさ、そりゃわざと薄くしてるんだ。濃いのがあまりすきじゃなくってね、知ってるだろ、そうさ、今は安く大きくだよ。これから密度を高めようと思っているよ、十年後かな。
もう随分時間が経つが、まだ序盤が終わったぐらい。四、五センチの灰が自然落下して、がらり味が変わる。不味くなる。と思いきや現れたる雑味すぐに収まり、元の延長に軌道を戻す。
ここまで薄いハバナはなかったろう。あるいはキューバンダビドフを思い出すべきなのだろうか。
ロッキーの野望は面白いし、葉巻も上出来だが、物足りない感覚はずっとある。アタリのハバナにはまるで及ばないが、下手なハバナよりはハバナの風味自体が良い。
中盤の中程から、滞り、雑味が掠りはじめ、味もより一層薄く消失気味になる。停滞の中、花は紫色のバイオレットが現れた。バオイレットなんて初めてかもしれない。ピコレットならこれまでにもあったと思うのだが。無論、バイオレットとピコレットは似ていて、ここはスミレと書いてはならない所である。
ヨーグルトを飲み始めたからか、葉巻に焦げの旨味を感じるようになる。浮かぶのはとうとうコイーバである。岩味こそないものの、もしやあるのかもしれない。幾多の花の微睡みにて判然としない。バイオレットは一瞬で消失したものの、花の種類豊富で、金木犀とは言い切れない香りにまみれ、花が濃霧のように目隠しを続ける。
飲物を清酒に戻しても印象は変わらない、終盤はコイーバ感である。苦みに独特のコクがある。やや薄いが、あまり気にならない薄さになっている。
根元を惜しむほどでなく、最終盤らしい辛味が出て、これはこれで終盤らしくて良いが、5センチ残して終わり。豚が出たから。
最近のパテル記事を読み返してみると、「Hamlet 25th Year」を滑らかにしたバージョンのようでもある。
|Atlantic Cigar|$13.85/1(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|5 1/4 x 52|重量:17.72g|香:2.4~3.6 ave2.9|残0|
シングルで買った物のうち、これだけビニールで個包装されていなかった。プラセンシアハバンドデザインガダサい。
マデューロ色をしたドライなラッパーが分厚いボール紙のようで、かなりみっしり葉が詰まっている。つまんだ感じではドローが悪そうだが、良好だった。
一口目で「マデューロはかくあるべし」という味に出会う。かくあるべしというか「マデューロの典型」で、蔕入苺ジャムを煮詰め、ほの焦げた要素のみ抽出したような味がする。
すぐに辛味が来てハードさをうかがわせる。ハードさは乾いた藁を伴う、ここも典型っぽい。舌の奥の両脇に刺さって絡みつくイガラっぽさあり。醤油の染みが、ドライなのかウェットなのかよくわからない。
併せた飲物の効能かもしれないが、イガラっぽさはしぶとくない。辛味がピークを過ぎると、一口目が蘇りつつ花を濃くする。風が強い日のように雑味が舞い上がってクリーンではないものの、ふわりとした優しさも垣間見える。味が甘やかに膨らんできている。
懐かしいようなそうでもないような、新しくもなく古くもないような、そうこう考えるうちに金木犀の季節がいつの間にか深まる。珍しいほど鮮明な金木犀である。これが懐かしさの正体か、繰り返す新しい息吹の正体か。どうもそうらしい。
その他、葉巻の中で似た記憶を探るにコイーバヘニオスしか見当たらない。あるいはコイーバのそれとパドロンのコラボのような。もっともコイーバはおろかハバナの味さえ一切しなくて、ただマデューロであることにおいてのみコイーバのマデューロによく似て(あるいは更に雑さにおいて似て)、またパドロンはほんの微かで、「安定のスラッシュメタル」というパドロン感はなく、味はパドロンよりずっと濃く、ずっとゆるいところがある。強さが出る時にもゆるいところがある。
3センチ進むとかなりお菓子化する。パウンドケーキとしてかなり濃密な部類。花、樫の木の蜜。
頑固な渋さがどことなく残るけれど、白ワインが不思議と殺されない、白ワイン(シャトードフュイッセV.V.2003)が強いのかもしれないが、飲物に対して優しさがある。
中盤、味が抜けてふぬけとなる。下手なコーヒーを思わせる雑な苦み。
少し復活するもそれからとくに何も付け加えない味のまま終る。
前回のデルカンポもそうだったように、表面的な特異さはあっても芯が平凡な印象を受ける。土壌が平凡なのか、熟成が平凡なのか、ブレンドが平凡なのか、デザインの平凡さが全てに現れているようで、いろんな葉っぱを作って色んな組み合わせをしてみて、そこには上出来な葉っぱもたくさん混じって濃い顔を出すのだが、全体として突出する面白みなく、極力良く言えば、三角だった富士山が頭を消ずられ台形になってしまったようなものである。君は今の富士山が憎いのか?
Wrapper Nicaraguan Habano
Binder / Filler Nicaragua / Nicaragua
Color Colorado Maduro
|—|5 1/4 x 52|重量:17.72g|香:2.4~3.6 ave2.9|残0|
シングルで買った物のうち、これだけビニールで個包装されていなかった。プラセンシアハバンドデザインガダサい。
マデューロ色をしたドライなラッパーが分厚いボール紙のようで、かなりみっしり葉が詰まっている。つまんだ感じではドローが悪そうだが、良好だった。
一口目で「マデューロはかくあるべし」という味に出会う。かくあるべしというか「マデューロの典型」で、蔕入苺ジャムを煮詰め、ほの焦げた要素のみ抽出したような味がする。
すぐに辛味が来てハードさをうかがわせる。ハードさは乾いた藁を伴う、ここも典型っぽい。舌の奥の両脇に刺さって絡みつくイガラっぽさあり。醤油の染みが、ドライなのかウェットなのかよくわからない。
併せた飲物の効能かもしれないが、イガラっぽさはしぶとくない。辛味がピークを過ぎると、一口目が蘇りつつ花を濃くする。風が強い日のように雑味が舞い上がってクリーンではないものの、ふわりとした優しさも垣間見える。味が甘やかに膨らんできている。
懐かしいようなそうでもないような、新しくもなく古くもないような、そうこう考えるうちに金木犀の季節がいつの間にか深まる。珍しいほど鮮明な金木犀である。これが懐かしさの正体か、繰り返す新しい息吹の正体か。どうもそうらしい。
その他、葉巻の中で似た記憶を探るにコイーバヘニオスしか見当たらない。あるいはコイーバのそれとパドロンのコラボのような。もっともコイーバはおろかハバナの味さえ一切しなくて、ただマデューロであることにおいてのみコイーバのマデューロによく似て(あるいは更に雑さにおいて似て)、またパドロンはほんの微かで、「安定のスラッシュメタル」というパドロン感はなく、味はパドロンよりずっと濃く、ずっとゆるいところがある。強さが出る時にもゆるいところがある。
3センチ進むとかなりお菓子化する。パウンドケーキとしてかなり濃密な部類。花、樫の木の蜜。
頑固な渋さがどことなく残るけれど、白ワインが不思議と殺されない、白ワイン(シャトードフュイッセV.V.2003)が強いのかもしれないが、飲物に対して優しさがある。
中盤、味が抜けてふぬけとなる。下手なコーヒーを思わせる雑な苦み。
少し復活するもそれからとくに何も付け加えない味のまま終る。
前回のデルカンポもそうだったように、表面的な特異さはあっても芯が平凡な印象を受ける。土壌が平凡なのか、熟成が平凡なのか、ブレンドが平凡なのか、デザインの平凡さが全てに現れているようで、いろんな葉っぱを作って色んな組み合わせをしてみて、そこには上出来な葉っぱもたくさん混じって濃い顔を出すのだが、全体として突出する面白みなく、極力良く言えば、三角だった富士山が頭を消ずられ台形になってしまったようなものである。君は今の富士山が憎いのか?
Wrapper Nicaraguan Habano
Binder / Filler Nicaragua / Nicaragua
Color Colorado Maduro
|Atlantic Cigar|$10.48/1(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|6 1/2 x 55|重量:20.78g|香:1.6~3.5 ave--|残0|
夏休みの初めに買って、夏休みの終りに燃やした、それぐらいの長い間隔しか眠らせていません。
トロとなっているものの、何故か吸口がベリコソ風に窄まり、またアンカットになってラッパーからフィラーがはみ出ているぶん長く、ふつうトロとされる物よりも巨大で太く黒々しているため、きわめて手強そうに見える。計量すると異常な重さであり、真っ黒な肌に筋肉が詰め込まれたガチガチの肢体で、ドローは悪い。
初っ端からかなり甘くて強い香草が来る。藁などは一切感じない。香草は深層で花のような洗剤のようなといった変身願望を沸々ともたげる。ラッパーが無い部分なのに、油で黒光りするラッパーを既に燃やしているような濃い味わい。
そろそろラッパーが来る。
茫茫とあちこちへ向いて分散してもいた濃密な香草の分子がすぅっと低空飛行の直線上に纏まる。先日のプラチナムに感じたミネラルによる抑揚に近い感覚である。風味はほぼ変らず、低空飛行に落ち着いただけで、特殊な香草はそれから延々と通っている。フィラーの香草成分がラッパーにたじろがないほど強靭ということだろうか。
ラッパーはコロラドとなっている。先日のプラチナはオスクーロとなっていた。プラチナも確かに黒かったが、どちらかといえばこちらがオスクーロに見える。実際の作業工程を知らずの目では判断できないということらしいのだが、このリベレイションの方がてらてら湿っているせいでより黒く見えるのかもしれない。リベレイションの方が赤みは強く、一方プラチナは均一色で斑のない乾いたラッパーだった。黒というよりもダークグレーのようで、油分を落としたオスクーロとでもいうものだった。コロラドとオスクーロの間がマデューロになるわけだが、味はリベレイションのほうがマデューロマデューロして、スパイスごとこってり煮詰めた味がある。しかも一切藁を感じない。ただしほぼ香草であり、たとえばデミグラスソースで煮詰めるに、煮詰められる香草ばかり山盛りで、汁が足りない。といって、乾いているわけではないのである。
中盤でドローが気になり始め、愈々葉巻掘削機パーフェクドロー(PerfecDraw)をスクリュー方式で使用したら、葉が必要以上にごっそり絡め取られて出てきてしまって、ドローは一発でスカスカに、味も訳がわからないほど激変してしまった。絡め取った際、火の点いた葉まで引き摺り出したものと思う。それで煙道が雑味だらけになったのかと。雑味の登場だけでなく、どうしてかそれ以前の風味が微塵も感じられなくなってしまった、ドライで荒くれた紙巻きたばこ味になった。更に悪いことに、燃焼がおかしく、葉巻全体が異常な熱を帯びるようになった。やや大袈裟に言って、葉巻を指で持てないほど熱い。
一気呵成にドローを改善したい気持ちもあるが、スクリュー方式で葉を絡め取ることはしない方が良いらしい。火種から遠い入口部分をちまちまと削り取るので我慢しなければならないらしい。
愈々駄目かと思い、5分ほど放置してみて(火種が消えない程度に)再度手に取ってみたら、マデューロ風味が復活してくれた。それでも、すでに終盤だし、中盤の人工的な嵐の名残とで、美味とはいかず、タバコっぽいまま、あの極めて特徴ある香草も消失している。
ともあれ、ほじくった後はしばし休ませるべしではある。
おそらく、引きずり出した火種部分が煙道を焼いて行ったのではないかと思う。だから葉巻が熱くなったのかと。しばらく煙道に酸素を通さずに煙道の鎮火を待てば良いらしい。(本当にこうだろうか。引きずり出された数枚以下の僅かな葉っぱの火が煙道に着火するなどありえようか。その煙道も、スカスカとはいえ周りの葉で圧力が掛かっていないではないのである。しかしこうでなければ、葉巻全体が熱を帯びたことを説明できない。)
序盤の香草はとにかくたっぷりふんだんで甘く濃密で面白かった。思い返せばシャルトリューズ酒のようで、ドローがまともな物で再度試したい魅力あり、中毒性も存外高そうなのだが、やや天国感のあるプラチナムの優勢は揺るぎない。
Wrapper Type Ecuadorian Habano
Color Colorado
Binder / Filler Nicaragua / Nicaragua, Honduras
|—|6 1/2 x 55|重量:20.78g|香:1.6~3.5 ave--|残0|
夏休みの初めに買って、夏休みの終りに燃やした、それぐらいの長い間隔しか眠らせていません。
トロとなっているものの、何故か吸口がベリコソ風に窄まり、またアンカットになってラッパーからフィラーがはみ出ているぶん長く、ふつうトロとされる物よりも巨大で太く黒々しているため、きわめて手強そうに見える。計量すると異常な重さであり、真っ黒な肌に筋肉が詰め込まれたガチガチの肢体で、ドローは悪い。
初っ端からかなり甘くて強い香草が来る。藁などは一切感じない。香草は深層で花のような洗剤のようなといった変身願望を沸々ともたげる。ラッパーが無い部分なのに、油で黒光りするラッパーを既に燃やしているような濃い味わい。
そろそろラッパーが来る。
茫茫とあちこちへ向いて分散してもいた濃密な香草の分子がすぅっと低空飛行の直線上に纏まる。先日のプラチナムに感じたミネラルによる抑揚に近い感覚である。風味はほぼ変らず、低空飛行に落ち着いただけで、特殊な香草はそれから延々と通っている。フィラーの香草成分がラッパーにたじろがないほど強靭ということだろうか。
ラッパーはコロラドとなっている。先日のプラチナはオスクーロとなっていた。プラチナも確かに黒かったが、どちらかといえばこちらがオスクーロに見える。実際の作業工程を知らずの目では判断できないということらしいのだが、このリベレイションの方がてらてら湿っているせいでより黒く見えるのかもしれない。リベレイションの方が赤みは強く、一方プラチナは均一色で斑のない乾いたラッパーだった。黒というよりもダークグレーのようで、油分を落としたオスクーロとでもいうものだった。コロラドとオスクーロの間がマデューロになるわけだが、味はリベレイションのほうがマデューロマデューロして、スパイスごとこってり煮詰めた味がある。しかも一切藁を感じない。ただしほぼ香草であり、たとえばデミグラスソースで煮詰めるに、煮詰められる香草ばかり山盛りで、汁が足りない。といって、乾いているわけではないのである。
中盤でドローが気になり始め、愈々葉巻掘削機パーフェクドロー(PerfecDraw)をスクリュー方式で使用したら、葉が必要以上にごっそり絡め取られて出てきてしまって、ドローは一発でスカスカに、味も訳がわからないほど激変してしまった。絡め取った際、火の点いた葉まで引き摺り出したものと思う。それで煙道が雑味だらけになったのかと。雑味の登場だけでなく、どうしてかそれ以前の風味が微塵も感じられなくなってしまった、ドライで荒くれた紙巻きたばこ味になった。更に悪いことに、燃焼がおかしく、葉巻全体が異常な熱を帯びるようになった。やや大袈裟に言って、葉巻を指で持てないほど熱い。
一気呵成にドローを改善したい気持ちもあるが、スクリュー方式で葉を絡め取ることはしない方が良いらしい。火種から遠い入口部分をちまちまと削り取るので我慢しなければならないらしい。
愈々駄目かと思い、5分ほど放置してみて(火種が消えない程度に)再度手に取ってみたら、マデューロ風味が復活してくれた。それでも、すでに終盤だし、中盤の人工的な嵐の名残とで、美味とはいかず、タバコっぽいまま、あの極めて特徴ある香草も消失している。
ともあれ、ほじくった後はしばし休ませるべしではある。
おそらく、引きずり出した火種部分が煙道を焼いて行ったのではないかと思う。だから葉巻が熱くなったのかと。しばらく煙道に酸素を通さずに煙道の鎮火を待てば良いらしい。(本当にこうだろうか。引きずり出された数枚以下の僅かな葉っぱの火が煙道に着火するなどありえようか。その煙道も、スカスカとはいえ周りの葉で圧力が掛かっていないではないのである。しかしこうでなければ、葉巻全体が熱を帯びたことを説明できない。)
序盤の香草はとにかくたっぷりふんだんで甘く濃密で面白かった。思い返せばシャルトリューズ酒のようで、ドローがまともな物で再度試したい魅力あり、中毒性も存外高そうなのだが、やや天国感のあるプラチナムの優勢は揺るぎない。
Wrapper Type Ecuadorian Habano
Color Colorado
Binder / Filler Nicaragua / Nicaragua, Honduras
|Atlantic Cigar|$10.08/1(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|6 1/2 x 52|重量:17.41g (-0.70g)|香:3.6~4.2 ave4.0|残0|
葉っぱの味という分り難そうなものにして価格どおりの美味曲線を描くとなるとかえって異様にも思うのだが、他のロッキーパテルより明らかに一段美味しい。味が無味なミネラルの鉱物に守られているといおうか、膨らまずにそよ風低く浮遊して、厚いミネラル層を通して幽かに洩れ兆すのか、そもそも味が薄いのか、いずれにしてもその味が美味であり、薄さが美味でもある。それでいて透明な層のようなものが厚い気がする。
藁というお決まりの味も僅かにあるのだが、藁は串かつやフォンデュの要領で味を塗られ、お菓子化して素朴なつまらなさを逃れている。但し完全にお菓子化する前で止まって、ウェハース化のみ始めている。藁をもお菓子をも嫌う、こういう中庸の舌に近すぎず遠すぎず微妙な距離感を保って吸い付くのである。お菓子の美味しさは、お菓子ではない物によって確かめられる。
ウェハースを剥がすと、挟んでいたクリームなどが少しくっ付いてしまう。
ところがそのウェハースというよりもそのほのやかなクリームが、スパイスふんだんな高級ショコラそっくりに風味と形姿を整え、なんともおかしな話だが、次には名のあるショコラティエがするように2センチ角のショコラの粒の中に花のガナッシュを仕込んでいる。ショコラは酸味のないタイプで、カカオ分70%程度である。
ざっとチョコを忘れさせるように急激に花が開花し、転瞬の間にもうガナッシュは空気として、ついでにツンとくる山葵胡椒も目覚めたが、それから長く優しく満開の季節がつづきつづける。
シャンパーニュの泡のような心地よい刺激が乗り、花の下の宴が酣になると、ショコラが置かれた現実に戻る。
シャンパーニュ化した経緯に触れるに、山葵の変化後の姿なのか、絶句、全体の香気がシャンパーニュに似た為という他ないのかもしれない。気分は無酒精だったのにシャンパーニュによりたちどころに酒宴化したのである。
花の想い出を慈しませる残香が即ちまた優しい。火に起床してから延々優しいままである。眠りの中でより美化された花がより優化され、またいつの間にか目の前のショコラを忘れてまどろみ始めている。ショコラの境目が消失し、ショコラの中に閉じ込められたのか、ショコラの表が裏返ってガナッシュが辺り一面に露出したのか、そもそもショコラの在処が夢なのか、ガナッシュにはどうやら山葵胡椒はじめアジアンスパイスなどがときどき目覚ましく利いていて、乾いた醤油の染臭い味わいを嗅ぎそうな現実もスパイスのまやかしなのか完熟スパイスの夢にとどまっている。夢がどうも現実臭く、スパイスには熟れると甘くなる果実の一面が少しだけ確実にあるようである。完熟果実などの出番はなかった。
終盤は花に草が混じり始める。「フローラル・グラッシー・オーク」などと、名詞形容詞の単発羅列オンパレードの中に置いておけばさも草さえ美味しそうに見えるが、草など邪魔であることがほとんどで、ただ春が長ければ草もいつの間にか時流の風物と化し、春夢の終りを告げてくれる。夢の終りがまた長く、やや優しい。このまま秋にまで至るのかもしれない。
晩夏になると残暑厳しく雑草も萎れて辛い。まだ優しい。ついには夏バテに処方された漢方の苦みを処方され、最後の最後にシナモンがふりかかる。
終始どことなく見たことのない葉がひらひらしていたのだろう、変化はわかりやすいものの、全体が未確認のお初なお味で一貫されていた気がするような気がする。その淡く不明瞭な一貫性の芯は、常に程々にドライで程々にしっとりし、先日のラ・パリーナ・パシャのような「濃醇物」の対極の「淡麗物」として、存在しないもの特有の存在感を漂わせている。濃醇物が単細胞である一方、軽さに恰も複雑な歴史がこもって、見通しが豊かで、涼やかで、トロの長さであれば晩冬から晩夏までがある。秋は来ない。初冬は訪れない。
Wrapper Type Ecuadorian Habano Oscuro
Color Oscuro
Binder / Filler Mexico / Nicaragua
|—|6 1/2 x 52|重量:17.41g (-0.70g)|香:3.6~4.2 ave4.0|残0|
葉っぱの味という分り難そうなものにして価格どおりの美味曲線を描くとなるとかえって異様にも思うのだが、他のロッキーパテルより明らかに一段美味しい。味が無味なミネラルの鉱物に守られているといおうか、膨らまずにそよ風低く浮遊して、厚いミネラル層を通して幽かに洩れ兆すのか、そもそも味が薄いのか、いずれにしてもその味が美味であり、薄さが美味でもある。それでいて透明な層のようなものが厚い気がする。
藁というお決まりの味も僅かにあるのだが、藁は串かつやフォンデュの要領で味を塗られ、お菓子化して素朴なつまらなさを逃れている。但し完全にお菓子化する前で止まって、ウェハース化のみ始めている。藁をもお菓子をも嫌う、こういう中庸の舌に近すぎず遠すぎず微妙な距離感を保って吸い付くのである。お菓子の美味しさは、お菓子ではない物によって確かめられる。
ウェハースを剥がすと、挟んでいたクリームなどが少しくっ付いてしまう。
ところがそのウェハースというよりもそのほのやかなクリームが、スパイスふんだんな高級ショコラそっくりに風味と形姿を整え、なんともおかしな話だが、次には名のあるショコラティエがするように2センチ角のショコラの粒の中に花のガナッシュを仕込んでいる。ショコラは酸味のないタイプで、カカオ分70%程度である。
ざっとチョコを忘れさせるように急激に花が開花し、転瞬の間にもうガナッシュは空気として、ついでにツンとくる山葵胡椒も目覚めたが、それから長く優しく満開の季節がつづきつづける。
シャンパーニュの泡のような心地よい刺激が乗り、花の下の宴が酣になると、ショコラが置かれた現実に戻る。
シャンパーニュ化した経緯に触れるに、山葵の変化後の姿なのか、絶句、全体の香気がシャンパーニュに似た為という他ないのかもしれない。気分は無酒精だったのにシャンパーニュによりたちどころに酒宴化したのである。
花の想い出を慈しませる残香が即ちまた優しい。火に起床してから延々優しいままである。眠りの中でより美化された花がより優化され、またいつの間にか目の前のショコラを忘れてまどろみ始めている。ショコラの境目が消失し、ショコラの中に閉じ込められたのか、ショコラの表が裏返ってガナッシュが辺り一面に露出したのか、そもそもショコラの在処が夢なのか、ガナッシュにはどうやら山葵胡椒はじめアジアンスパイスなどがときどき目覚ましく利いていて、乾いた醤油の染臭い味わいを嗅ぎそうな現実もスパイスのまやかしなのか完熟スパイスの夢にとどまっている。夢がどうも現実臭く、スパイスには熟れると甘くなる果実の一面が少しだけ確実にあるようである。完熟果実などの出番はなかった。
終盤は花に草が混じり始める。「フローラル・グラッシー・オーク」などと、名詞形容詞の単発羅列オンパレードの中に置いておけばさも草さえ美味しそうに見えるが、草など邪魔であることがほとんどで、ただ春が長ければ草もいつの間にか時流の風物と化し、春夢の終りを告げてくれる。夢の終りがまた長く、やや優しい。このまま秋にまで至るのかもしれない。
晩夏になると残暑厳しく雑草も萎れて辛い。まだ優しい。ついには夏バテに処方された漢方の苦みを処方され、最後の最後にシナモンがふりかかる。
終始どことなく見たことのない葉がひらひらしていたのだろう、変化はわかりやすいものの、全体が未確認のお初なお味で一貫されていた気がするような気がする。その淡く不明瞭な一貫性の芯は、常に程々にドライで程々にしっとりし、先日のラ・パリーナ・パシャのような「濃醇物」の対極の「淡麗物」として、存在しないもの特有の存在感を漂わせている。濃醇物が単細胞である一方、軽さに恰も複雑な歴史がこもって、見通しが豊かで、涼やかで、トロの長さであれば晩冬から晩夏までがある。秋は来ない。初冬は訪れない。
Wrapper Type Ecuadorian Habano Oscuro
Color Oscuro
Binder / Filler Mexico / Nicaragua
|Atlantic Cigar|$15.80/1(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|5 x 50|重量:14.28g(-0.45g)|香:2.1~4.0 ave3.7|残0|
着火前は退色した畳の香り。空吸いすると甘い物を食べた清潔な人の呼気が流入する。
巻きは硬いのに、ドローにはまるで難が無い。完璧なトルセドールである。
一口、高品質である。どうして高品質とわかるかというと、ダビドフに似ているから、としか言いようがない。もしダビドフが安ければこれは低品質な香りなのかもしれない。それにしても元からダビドフに似ていたのだったろうか、このシリーズがダビドフに似せられたのだろうか。プーロドーロもしくはヤマサに近い。
カスタードに杏仁を混ぜたような甘い香りがカラッとしてべとつかない。杏仁はオーパスXでしばしば感じるフエンテ家の高級ラインの特徴だったのではなかったかと思い出す。ここはダビドフと異なり、特別に美味しい、さすが。
軽やかに感じもするし、強いと感じさせる要素もある。味は濃くもふわりとして軽く、事実肺喫煙できそうな程の重さだが、時折辛いスパイスが覗いたり、吸いごたえとなる要素も時折感じられる。軽いのか重いのか、不思議な思いがして、軽みが一層軽く、一層濃く感じられる。濃くて重いはずのものが浮いて、この質感に杏仁を絡め、十分官能的なのである。
灰を見てみると、全くささくれ立たず、ほとんどグレー一色で、肌理細かく規律正しく燃え進んでいる。灰の美しさにまで気を使う完璧なトルセドール。
杏仁がやや花を含むようになってきただろうか、変化は少なく、序盤は安定して進む。爽やかな香草が加わってきた気もする、これが衰退の予兆でなければ良いのだが。序盤の終盤=灰を一度目に落とす頃=は不思議な食感のお菓子の提供が薄く減っている。
灰が落ちそうにないのでまだ序盤のつもりだったが、既に中盤に差し掛かっていた。灰は4センチに達しようとしている。どうなのだろう、目安として、一度灰を落とすまでが序盤ぐらいの感覚であったが、これは灰が落ちないのだから依然序盤というべきか。長い灰を付けたまま、コイーバの炭味にも似たまろやかな苦味が来る。苦味に杏仁が絡まる。
杏仁が色々なものに絡まる話が最後まで続くのだろう。次には何が杏仁に絡まれるのだろう。絡まる杏仁は特異だが、絡まれるものたちはさほど特異ではないのかもしれない。こう明確に主役が決まった葉巻も珍しい。杏仁氏が擬人化されそうである。ちなみにこの杏仁はけっこうミルク質で、淡白な類の杏仁よりもまったりして香り(アニス?)の棘も丸い。かわりに、油ぎった中華料理を流す爽やかさはあまり感じられない。灰はもう5センチに達するところ、まったりした味わいに、辛味と香草が爽やかにくる。いつもより丁重に、灰を落とさぬよう、葉巻を縦に立てて吸っている。それでもいずれはポロリして、床掃除をする羽目になるのだろう、恐ろしい。こういう余計な緊張感を与えてくる完璧なトルセドールである。
もう間も無く全体の半分が灰になる。横向きに置くと壮観ではないのだが、縦にするとスカイツリーのように痛快である。立てて写真を撮りたいのだが、それはなかなか出来ない。横向きの写真は、縦を見てしまったら、撮る気にならない。長い灰は縦に高く聳えるべきものらしい。たしかに、横に置かれたスカイツリーに長大さを覚えて感動するのは難しそうである。倒れたら倒れたで感動する向きもあるだろうが、初めから横だったら。
ちょうど5センチほどで折れた。ちょうど灰皿に置こうとした時だったので、灰はホールインワンした。
折れたらもう終盤である。
折れた途端イガイガしさが現れるのはどういうわけだろう。これがスモーカー諸氏に「灰は付けたままが良い」と言わしめるものだろうか、単に終盤に差し掛かっただけではなく、灰を落とした所為なのか。序盤の終りに灰を落として味が良くなるという経験は幾度もある。
以降、シケモクのごとき雑味が増えるまま、良いところなく終った。これほどの葉巻が、どうしてこう変貌するだろう。ドローは通るものの、葉の高い密度に因り、終盤に垢が溜まったのだろうか。とすれば葉巻はスカスカな方が良いということになってしまう。スカスカな葉巻が終盤でこう減衰することもあったかもしれないが、これまでけっこう燃やした経験があるはずなのだが、あまり覚えていない。スカスカなら、途中で三度は灰を落としたかもしれない。三度も灰を落とせば印象は薄まる。今回、一度しか灰が落ちなかったので、印象深く謎に突き当ったのである。
ドミニカでダビドフと双璧をなすということは簡単にわかる。別格の風味あり、不味い終盤を善かれ悪しかれ帳消しにしてしまう。目指すところハバナにあらず杏仁にありという潔くも不思議な浮遊感に魅惑される。といって腰がないわけでもなく、木でいえば柳の趣がある。下に垂れて風に浮く葉の。
|—|5 x 50|重量:14.28g(-0.45g)|香:2.1~4.0 ave3.7|残0|
着火前は退色した畳の香り。空吸いすると甘い物を食べた清潔な人の呼気が流入する。
巻きは硬いのに、ドローにはまるで難が無い。完璧なトルセドールである。
一口、高品質である。どうして高品質とわかるかというと、ダビドフに似ているから、としか言いようがない。もしダビドフが安ければこれは低品質な香りなのかもしれない。それにしても元からダビドフに似ていたのだったろうか、このシリーズがダビドフに似せられたのだろうか。プーロドーロもしくはヤマサに近い。
カスタードに杏仁を混ぜたような甘い香りがカラッとしてべとつかない。杏仁はオーパスXでしばしば感じるフエンテ家の高級ラインの特徴だったのではなかったかと思い出す。ここはダビドフと異なり、特別に美味しい、さすが。
軽やかに感じもするし、強いと感じさせる要素もある。味は濃くもふわりとして軽く、事実肺喫煙できそうな程の重さだが、時折辛いスパイスが覗いたり、吸いごたえとなる要素も時折感じられる。軽いのか重いのか、不思議な思いがして、軽みが一層軽く、一層濃く感じられる。濃くて重いはずのものが浮いて、この質感に杏仁を絡め、十分官能的なのである。
灰を見てみると、全くささくれ立たず、ほとんどグレー一色で、肌理細かく規律正しく燃え進んでいる。灰の美しさにまで気を使う完璧なトルセドール。
杏仁がやや花を含むようになってきただろうか、変化は少なく、序盤は安定して進む。爽やかな香草が加わってきた気もする、これが衰退の予兆でなければ良いのだが。序盤の終盤=灰を一度目に落とす頃=は不思議な食感のお菓子の提供が薄く減っている。
灰が落ちそうにないのでまだ序盤のつもりだったが、既に中盤に差し掛かっていた。灰は4センチに達しようとしている。どうなのだろう、目安として、一度灰を落とすまでが序盤ぐらいの感覚であったが、これは灰が落ちないのだから依然序盤というべきか。長い灰を付けたまま、コイーバの炭味にも似たまろやかな苦味が来る。苦味に杏仁が絡まる。
杏仁が色々なものに絡まる話が最後まで続くのだろう。次には何が杏仁に絡まれるのだろう。絡まる杏仁は特異だが、絡まれるものたちはさほど特異ではないのかもしれない。こう明確に主役が決まった葉巻も珍しい。杏仁氏が擬人化されそうである。ちなみにこの杏仁はけっこうミルク質で、淡白な類の杏仁よりもまったりして香り(アニス?)の棘も丸い。かわりに、油ぎった中華料理を流す爽やかさはあまり感じられない。灰はもう5センチに達するところ、まったりした味わいに、辛味と香草が爽やかにくる。いつもより丁重に、灰を落とさぬよう、葉巻を縦に立てて吸っている。それでもいずれはポロリして、床掃除をする羽目になるのだろう、恐ろしい。こういう余計な緊張感を与えてくる完璧なトルセドールである。
もう間も無く全体の半分が灰になる。横向きに置くと壮観ではないのだが、縦にするとスカイツリーのように痛快である。立てて写真を撮りたいのだが、それはなかなか出来ない。横向きの写真は、縦を見てしまったら、撮る気にならない。長い灰は縦に高く聳えるべきものらしい。たしかに、横に置かれたスカイツリーに長大さを覚えて感動するのは難しそうである。倒れたら倒れたで感動する向きもあるだろうが、初めから横だったら。
ちょうど5センチほどで折れた。ちょうど灰皿に置こうとした時だったので、灰はホールインワンした。
折れたらもう終盤である。
折れた途端イガイガしさが現れるのはどういうわけだろう。これがスモーカー諸氏に「灰は付けたままが良い」と言わしめるものだろうか、単に終盤に差し掛かっただけではなく、灰を落とした所為なのか。序盤の終りに灰を落として味が良くなるという経験は幾度もある。
以降、シケモクのごとき雑味が増えるまま、良いところなく終った。これほどの葉巻が、どうしてこう変貌するだろう。ドローは通るものの、葉の高い密度に因り、終盤に垢が溜まったのだろうか。とすれば葉巻はスカスカな方が良いということになってしまう。スカスカな葉巻が終盤でこう減衰することもあったかもしれないが、これまでけっこう燃やした経験があるはずなのだが、あまり覚えていない。スカスカなら、途中で三度は灰を落としたかもしれない。三度も灰を落とせば印象は薄まる。今回、一度しか灰が落ちなかったので、印象深く謎に突き当ったのである。
ドミニカでダビドフと双璧をなすということは簡単にわかる。別格の風味あり、不味い終盤を善かれ悪しかれ帳消しにしてしまう。目指すところハバナにあらず杏仁にありという潔くも不思議な浮遊感に魅惑される。といって腰がないわけでもなく、木でいえば柳の趣がある。下に垂れて風に浮く葉の。
銘
囹
月