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  源氏物語「葉」
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|Atlantic Cigar|$270.75/10(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|5 1/2 x 48|重量:13.20g|香:2.9~4.8 ave4.3|残8|

 一口目から本物のダビドフの味がして、滞留の箍が外れている。まだ花も何もなく基準の葉が香るのみのところ、もう美々しく単なる葉に何か加えものをしているような、本当のところ葉を二重三重に用いていても、しかし一塊の味がする。
 二口目で辛味、三口目でかすかに花が乗る。
 一口目でもう十分堪能し終えているのだが、途中、藁っぽくなったりもし、いがらっぽさも出てくる。それでも一口目の風味は持続して、ふんふんふんと燻らせていると、突如金木犀の枝に桃が熟す。瞬殺である。極上とはいえ葉しか無かった景色に金と桃の二つが一緒に咲き実る。「咲き実る」という、秋と夏で、盆と正月が同時に来たのか、別次元の慶賀の感覚である。
 ふわっふわでジューシーな金木桃の八切れに青いスパイスのごとき青い果実がよぎる。麗しい青の正体はわからないが、桃の正体はどうやらカスタードらしく、外貌は極上品としての桃へメタモルフォーシスを遂げている。白桃が青桃へと化したのか。(弊社では、数多の花の名は勿論、果実名や樹木名などの名詞の羅列を忌避し、極力金木犀のバリエーションや土のバリエーションなどに意を注ぐのが常であるのに、)桃はどんなに強調しても嘘にならない優しい濃さで滴り、果汁が上方に滴る。この桃は、既出のカスタードでもココナッツでも化粧パウダーでもない、おそらく成分においてそれらの亜種に他ならないが、奇跡的な分子結合・配合を遂げた桃である。
 やっべ、なんだこれ。
 異常なブーケ。1本目のみ当たるのかと疑っていたところ、一本目と拮抗している。

 一本目にしても、天国へ昇る階段の終点付近に迫ったのはそう長い時間ではなかった、それは今回も同じ。それでも時間は短すぎはしない。扉の前でそう長く佇んではいけない。天国からの階段を降りようではないか、とまるで英断して去る。英断にも見えるが、天国に恐れをなして退散しているのである。ブーケというよりブザーが鳴ったんだもの。
 白い石の味わいがある。白石はコイーバの茶瑪瑙を芯に秘め、完全に白く包んでいる。
 白さが灰色を帯び、羽化するもののごとくひび割れ始めると、茶色が諌めるように溢れ出す。その物体ははっきりすると、茶瑪瑙ではなく最初の一口目の茶なのだと気づかせる。
 葉巻なのに出てくるのが花ばかりではつまらない、何より葉の味が欲しいと思うことがよくある。7は葉らしい葉の味が濃い。

 白バンドのロイヤルサロモネスに比べると、茶色い成分において、高貴さの代わりに親しみやすさ、親しみの根にどうしようもなく盛る記憶の奔流を感じる。忘却の彼方から逆行してくる。白ロイヤルにはこみ上げない懐かしさなのに、どうしてか懐かしさを感じないほど新鮮でもある。たぶん走馬灯なのである。死に瀕して、役に立たない記憶たち。記憶たちが一つに合わさった甘美の塊。ロイヤルに茶色成分でも劣らず、他色成分では7の方が優っている。
 雑味がやや頻繁に邪魔しないではないから(極上であるだけに余計目立ってしまう)、天国は粗い写真の中に仕舞われがちにもなる。それでもこの2本目は終盤前に激しく死ぬこともなく、初回よりやや平均点を上げている。しかし最後、残5センチほどで潔く完全死する。やや早死である。
 灰は2センチ半程度で常にポロリする。不思議と床は綺麗で、いずれも灰皿に安置している状態にて自然落下してくれる。
 
 次回も天国の扉の前まで至るのならば、二箱目を買わなければならなくなる。もうあまり寝かせる暇はなさそうで、売切れ前に3本目に着火しなければ。
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