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  源氏物語「葉」
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|coh-hk|$38/5(+¥3600/15)|2019/8/1・arr 8/8|
|—|6 x 52|重量:13.74g|香:2.5~3.7 ave3.3|残4|

 5本入りの箱は極めてデザインに疑問がある。ダサいを通り越している箱の姿は、どことなく、どこかしらアレルギーが発症する類である。
 箱はともかく、一本取り出してみると、初見から何か違うなと思ったら、個包装のビニールがオレンジ色だったのである。それだけだが。
 葉巻をビニールで個包装する際、ヘッドからビニールに入れて、フット部分の余ったビニールを折り曲げて、シールで封印するのである。吃驚したのは、ビニールの封印を剥がし、折り曲げられた部分を伸ばした途端、そこは無色透明だったのである。てっきりビニールがオレンジ色だと思っていたのに、オレンジ色はビニールの色ではなかったのである。過加湿状態で保存されたのか、葉巻が芬芬と色素を外に放ったか、かほど濃く着色されたビニールは見たことがない。何れにしても中長期熟成された葉巻であることは確かだろう、短期ではこれほどビニールは色づかない。長期でもこれほどには色づかない。いわば前菜からして特別感があるのである。



 ドローはスカスカで、着火前の空吸の香味は海老煎にそっくりである。海老煎というのは妙を得ている。手前味噌なる文字列ながらこの妙言は珍しく自慢して良い。なにしろバンドもオレンジ色だし、バンドがオレンジだからビニールもオレンジだと思ったわけなのかビニールもオレンジだし、全ては海老に通じている。このエビは、赤ではなくオレンジである。

 ロッキーパテルの最高級品はエビである。しかしながらバンドのオレンジ色は、まるで高級品に見えない。よくよくバンドを触ってみると、ヘビ皮のようなエンボスが施されていて高級らしいが、もっとも実際はヘビでなく単純な格子のエンボスである。

 最初の一口のみ焼海老(殻ごと焼いた)の味がし、二口目からタバコの辛味が海老を消す。晴れた日の高波のように襲いかかり、ハムレットシリーズの強い物よりも強く感じる。それにしても、昨日の丸いグランレゼルバとは違って、スクエアプレスのロッキーには吸う人を落ち着かせる青い効能がある。青だからエビとは正反対の特質である。四角は青い。青いエビも焼けば赤い。此処にはオレンジへと向かわせる黄色が抜けている。
 藁というより麦芽といったほうが良い藁の味。ほんのり甘い麦芽。甘い米のように噛んで嗜む類の甘味。花かと思うもミントのような何かがよぎる。正体不明のそのミントもどきは、かき氷の氷のように半ば無色で色を吸い、宙を浮き、清純にして隠微な香りを楚々と放ち、知る限りこの世の果実ではない果実の香を滴らせもし、無重力の遊びでそっぽを向く、清涼感を伴いつつも甘くふくよかなる感触に、薄く肉付いたわたくし13歳だった少女の、風呂上がりの臍の周りを偲ぶ。正体は、当然のように、平凡な「臍と肉と花」に変わったのである。
 よくある美しい花が見える。黄色い。黄色を獲た画家の喜びよ。
 強さは消え、けろりロッキーパテルらしい軽さが不敵だが、この軽さに優しそうな膨らみがか細いながら添うている。かすかな膨満感は果実が含む乳系の成分で、植物系のみが有する香である。(この葉巻の翌日、夫の朝食がわたくしの母乳であるという幻想を味わいました。夫は毎朝、母乳を飲んで眠気一転となり、出かけてゆくのです。)熟した樹皮と金木犀が軽やか。不思議と旨味の欠如は感じない、旨味がほぼないのに。だんだん湿ってきたようである、湿ったら旨味は要らないか、いつの間にか草が霧雨に湿って、そこへの金木犀の取り合わせは出臍も凹む素晴らしい景色である。舌は凹にホールインワンしようと夢にもがいているようである。いったい凹に何があるというのかね?
 ブツリ。
 終盤は何も良いように変化しない。美味しいような不味いような苦味が増し、減り、増し、減り、増し……増すも減るも減衰の一途を辿る。ほぼ全体が良かれ悪しかれ淡く薄い。最後の最後は猛烈な苦みで「いやや後生ですから」と言ってはっきり死ぬ。葉巻を投げ捨てる。しかし灰皿からの捨てた燻煙が香ばしい。

 総じてプラチナムを箱で買えばよかったという結論である。あと4本あるので、臍をじくじくと経過観察しようと思う。
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