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  源氏物語「葉」
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|Atlantic Cigar|$15.80/1(+¥500/1)|2019/6/7・arr 6/19|
|—|5 x 50|重量:14.28g(-0.45g)|香:2.1~4.0 ave3.7|残0|

 着火前は退色した畳の香り。空吸いすると甘い物を食べた清潔な人の呼気が流入する。
 巻きは硬いのに、ドローにはまるで難が無い。完璧なトルセドールである。

 一口、高品質である。どうして高品質とわかるかというと、ダビドフに似ているから、としか言いようがない。もしダビドフが安ければこれは低品質な香りなのかもしれない。それにしても元からダビドフに似ていたのだったろうか、このシリーズがダビドフに似せられたのだろうか。プーロドーロもしくはヤマサに近い。
 カスタードに杏仁を混ぜたような甘い香りがカラッとしてべとつかない。杏仁はオーパスXでしばしば感じるフエンテ家の高級ラインの特徴だったのではなかったかと思い出す。ここはダビドフと異なり、特別に美味しい、さすが。
 軽やかに感じもするし、強いと感じさせる要素もある。味は濃くもふわりとして軽く、事実肺喫煙できそうな程の重さだが、時折辛いスパイスが覗いたり、吸いごたえとなる要素も時折感じられる。軽いのか重いのか、不思議な思いがして、軽みが一層軽く、一層濃く感じられる。濃くて重いはずのものが浮いて、この質感に杏仁を絡め、十分官能的なのである。
 灰を見てみると、全くささくれ立たず、ほとんどグレー一色で、肌理細かく規律正しく燃え進んでいる。灰の美しさにまで気を使う完璧なトルセドール。
 杏仁がやや花を含むようになってきただろうか、変化は少なく、序盤は安定して進む。爽やかな香草が加わってきた気もする、これが衰退の予兆でなければ良いのだが。序盤の終盤=灰を一度目に落とす頃=は不思議な食感のお菓子の提供が薄く減っている。
 灰が落ちそうにないのでまだ序盤のつもりだったが、既に中盤に差し掛かっていた。灰は4センチに達しようとしている。どうなのだろう、目安として、一度灰を落とすまでが序盤ぐらいの感覚であったが、これは灰が落ちないのだから依然序盤というべきか。長い灰を付けたまま、コイーバの炭味にも似たまろやかな苦味が来る。苦味に杏仁が絡まる。
 杏仁が色々なものに絡まる話が最後まで続くのだろう。次には何が杏仁に絡まれるのだろう。絡まる杏仁は特異だが、絡まれるものたちはさほど特異ではないのかもしれない。こう明確に主役が決まった葉巻も珍しい。杏仁氏が擬人化されそうである。ちなみにこの杏仁はけっこうミルク質で、淡白な類の杏仁よりもまったりして香り(アニス?)の棘も丸い。かわりに、油ぎった中華料理を流す爽やかさはあまり感じられない。灰はもう5センチに達するところ、まったりした味わいに、辛味と香草が爽やかにくる。いつもより丁重に、灰を落とさぬよう、葉巻を縦に立てて吸っている。それでもいずれはポロリして、床掃除をする羽目になるのだろう、恐ろしい。こういう余計な緊張感を与えてくる完璧なトルセドールである。
 もう間も無く全体の半分が灰になる。横向きに置くと壮観ではないのだが、縦にするとスカイツリーのように痛快である。立てて写真を撮りたいのだが、それはなかなか出来ない。横向きの写真は、縦を見てしまったら、撮る気にならない。長い灰は縦に高く聳えるべきものらしい。たしかに、横に置かれたスカイツリーに長大さを覚えて感動するのは難しそうである。倒れたら倒れたで感動する向きもあるだろうが、初めから横だったら。
 ちょうど5センチほどで折れた。ちょうど灰皿に置こうとした時だったので、灰はホールインワンした。



 折れたらもう終盤である。
 折れた途端イガイガしさが現れるのはどういうわけだろう。これがスモーカー諸氏に「灰は付けたままが良い」と言わしめるものだろうか、単に終盤に差し掛かっただけではなく、灰を落とした所為なのか。序盤の終りに灰を落として味が良くなるという経験は幾度もある。
 以降、シケモクのごとき雑味が増えるまま、良いところなく終った。これほどの葉巻が、どうしてこう変貌するだろう。ドローは通るものの、葉の高い密度に因り、終盤に垢が溜まったのだろうか。とすれば葉巻はスカスカな方が良いということになってしまう。スカスカな葉巻が終盤でこう減衰することもあったかもしれないが、これまでけっこう燃やした経験があるはずなのだが、あまり覚えていない。スカスカなら、途中で三度は灰を落としたかもしれない。三度も灰を落とせば印象は薄まる。今回、一度しか灰が落ちなかったので、印象深く謎に突き当ったのである。

 ドミニカでダビドフと双璧をなすということは簡単にわかる。別格の風味あり、不味い終盤を善かれ悪しかれ帳消しにしてしまう。目指すところハバナにあらず杏仁にありという潔くも不思議な浮遊感に魅惑される。といって腰がないわけでもなく、木でいえば柳の趣がある。下に垂れて風に浮く葉の。

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