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|NextCigar|$130/10|2019/10/30・arr 11/09|
|—|7.25 x 40|11.54g|香:2.6~3.0 ave2.8|残8|
・着火前、埃と豚とパラジクロロベンゼン
・空吸いするとパラジクロロベンゼンの蜂蜜漬の味
・着火後はパラジクロロベンゼンの苦味
とくに不味くないのが不思議であるものの、これまでのどのダビドフよりも薬臭かった。似たような匂いがしても(いつも似たような匂いがするのだが)、それを薬と捉えたことはこれまではなかった。
「香:2.6~3.0 ave2.8」とした。2.5以下は不味いと捉えて頂いて結構です。
|—|7.25 x 40|11.54g|香:2.6~3.0 ave2.8|残8|
・着火前、埃と豚とパラジクロロベンゼン
・空吸いするとパラジクロロベンゼンの蜂蜜漬の味
・着火後はパラジクロロベンゼンの苦味
とくに不味くないのが不思議であるものの、これまでのどのダビドフよりも薬臭かった。似たような匂いがしても(いつも似たような匂いがするのだが)、それを薬と捉えたことはこれまではなかった。
「香:2.6~3.0 ave2.8」とした。2.5以下は不味いと捉えて頂いて結構です。
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|NextCigar|$740/10|arr 2018/8/9|
|—|5.5” x 55|18.79g|香:3.6~4.0 ave3.8|残7|
「雨の夜の効能」という有益なものがあるかもしれないので(とりわけ最近の長雨は湿度が高い)、大物である『ダビドフ・青ロイヤル』に着火した。
埃や黴にも似た、いわゆる「ダビドフ茸」の風味がする。いつもは白トリュフめく白っぽい茸だが、これは黒トリュフのようで、いわば「ダビドフ黒茸」である。トリュフの場合は白の方が稀少でも、ダビドフ茸は黒の方が稀少らしい。リアルエスペシャル“7”で極まるブレンドの妙の物珍しい香りや、『白ロイヤル』がくゆり上げる特別な芳香などがないのだが、そもそもが高価なダビドフ茸であるし、『青ロイヤル』ゆえ黒いという感じがする。初めてのブラックであるにもかかわらず、どうしてか珍しい感を覚えず、煙に羽が生えていないような、「あの世」への渇仰というより「この世」に未練タラタラでしがみつく類の美味なのである。それにしても、3本目にしてようやく、だいぶはっきりと正体を現してくれたように思う。
序盤、煙は実際の軽さに比してキツさを感じさせる。それでも早々、大変な甘さが乗ってきつつある。微かながらしっかりした甘さが複雑大変な甘さへの期待を高める。
黒茸たちの中央に古びた味わいの大樹があり、樹命の世界、大樹にして未だ若木なのか、樹皮から豊潤な甘さを放ちつつも、矛盾するように、みずみずしく乾いた白木の矢をも放ってくる。老人というほどこなれず、豪奢な若者じみてぷりぷり粋がり海老のようにしゃちこばっているところがあり、(全然関係ないが、人間ではない生物はいつも大変スタイルが良い。たとえば海老はみな尻尾長く脚短い個体などないのに、こと人となればスタイルの良い人は非常に珍しい。海老の目からすれば逆に人こそ皆スタイル良く、かえってダサい海老が海中街中を数多ぷりぷり闊歩しているのであろう。あのヒゲのひょろ長い海老は若海老を剥き海老にしたいと思っているのであろうか。)成金老人のふりをした若者という、この葉巻以外にはほとんど存在しないような、比喩を絶する葉巻である。樹皮を剝いて裸にすると確かに若い白木が見え、ここが不思議なのだが、とくに白くもないのだが、大樹を支えているとは思われないほど質が軽い。矢が刺さってもあまり痛くないような性質がある。異様な光景を目の当たりにしていることを漸く悟るのである。
どうして発砲スチロールのような幹が、上空に聳える大樹を地に叩きつけないか。どうして花のない木の幹から花が匂い立つのか。上空は鬱蒼として暗い。けっして晴れやかな葉の裏でない。そもそも新緑時代から茶色い葉が、常盤木のように紅葉時節にも落ちずにいる。途端に幹が呼気を吐き、南国の、ココナッツか何か、アニスか何かのニュアンスを暖房器具のように吐き出した。ダビドフ黒茸がちょっと騒いで生きたツチノコのように下草に潜り込んだ。剥がした樹皮がアナログレコードを左回転させて幹に戻って張り付いた。
軽いのか重いのかをわからせない芳香に追い詰められて直立不動で彷徨わせる、全くそのような感じなので、この木は重力への反逆を明らかにするなどと誇大解釈してしまう。重力のみならず時間をも玩弄している。
煙に小刻みな膨らみが出てきたことは、明らかな誇大以上に是認するところである。時間の玩弄に次ぐ容積の玩弄で、ヒトの頭大の綿飴をヒトが一口に頬張ったにもかかわらず濃縮はされずほとんどが綿のまま口から逃げていってしまうようなのである。繋がりも意味不明ながら、全ての香味が一体化したということなのかもしれない。
芋の味がしたわけではないものの、ふと芋が恋しくなった。木が芋を呼ぶ、そう私の手足を操ったのかもしれない。
今日の雨の日に植物が水を欲するわけがないのに、ちょうど近くに『萬膳庵』なる庵があったので、私はすぐさま取って来て、木に芋焼酎の湯割りを掛けた。途端、糊塗した樹皮の割目から早回しのごとく金木犀が生えてくるかと思いきや秒を待たずに満開となった。しかし湯割りが木のえぐみを増すようであり、一方、木がお湯のえぐみをも増すようであった。それでも花は知らんぷりで咲き続けた。芋をお呼びでなかったのか、芋を呼ばれたのか、これまた区別に難儀する。
雑味を立たせぬ効果においては、この木に備えて水筒で持参した白ぶどう酒の方が覿面である。(エチエンヌ・ソゼ作の下っ端の2017年、下っ端でも凛々しく美味である。)もちろん白ぶどうは黒木に殺される。アラン・ブリュモンの黒ぶどう酒などの方が合うのかもしれないが、黒ワインは木に呼ばれなかった。木は他者を殺して自分の養分とするみたい。
いつ帰るべきかわからないまま、おもむろに腰を上げるまでくすぶっていると、伽羅に似た香木が漂う。加えてえてして飄々と顔を出すなんらかの味わい深い爽やかな風味がある。樹皮が甘やかにシナモン化し、今になってお菓子をもって別腹をそそるような。ここに至るまで、所期の甘さへの期待は肩透かしを喰らっていたのであった。
最後の部分と序盤の記憶に後ろ髪を引かれつつも、妙に私は冷たいままだった。木を蹴って帰りたい気がする。
後ろ髪を引かれるまま逆らわず木の前に佇む。早々に朽ちそうな気もしていたが、今日の木は蹴っても蹴ってもそそるらしい。でも後ろ髪程度のものであった。後ろ髪を引かれて戻るという行為は、「帰る」理由を思いつかない人の、事務処理に過ぎないのである。そそるものがそそるまま、そそりつづける。
もう一年、もう二年待てば急成長するとみる。一年に一本のペースに下げようと思う。もうじき新年だけれど、次はまた来年の末頃に着火したい。リリースされて何年か不明(2016年12月20日発売.日本)で、リリース後に巻き続けられているのかも不明ながら、およそこれは現在巻かれておらず、現在既に三年物とみえ、確実に良くなってきてはいると思う。リリース当初の評価の低さ(?)は頷ける、とすればどうして五年寝かせず出したのか。各ご家庭で美味しくなることを見越して出したのか、それともフレッシュロール時点では美味しかったのだろうか。『オロブランコ』をいつ燃やすべきなのかをこの『青ロイヤル』の不遜さから導出できないものだろうか。青ロイヤルの性質からして、オロブランコにも現在あまり期待が持てない。
|—|5.5” x 55|18.79g|香:3.6~4.0 ave3.8|残7|
「雨の夜の効能」という有益なものがあるかもしれないので(とりわけ最近の長雨は湿度が高い)、大物である『ダビドフ・青ロイヤル』に着火した。
埃や黴にも似た、いわゆる「ダビドフ茸」の風味がする。いつもは白トリュフめく白っぽい茸だが、これは黒トリュフのようで、いわば「ダビドフ黒茸」である。トリュフの場合は白の方が稀少でも、ダビドフ茸は黒の方が稀少らしい。リアルエスペシャル“7”で極まるブレンドの妙の物珍しい香りや、『白ロイヤル』がくゆり上げる特別な芳香などがないのだが、そもそもが高価なダビドフ茸であるし、『青ロイヤル』ゆえ黒いという感じがする。初めてのブラックであるにもかかわらず、どうしてか珍しい感を覚えず、煙に羽が生えていないような、「あの世」への渇仰というより「この世」に未練タラタラでしがみつく類の美味なのである。それにしても、3本目にしてようやく、だいぶはっきりと正体を現してくれたように思う。
序盤、煙は実際の軽さに比してキツさを感じさせる。それでも早々、大変な甘さが乗ってきつつある。微かながらしっかりした甘さが複雑大変な甘さへの期待を高める。
黒茸たちの中央に古びた味わいの大樹があり、樹命の世界、大樹にして未だ若木なのか、樹皮から豊潤な甘さを放ちつつも、矛盾するように、みずみずしく乾いた白木の矢をも放ってくる。老人というほどこなれず、豪奢な若者じみてぷりぷり粋がり海老のようにしゃちこばっているところがあり、(全然関係ないが、人間ではない生物はいつも大変スタイルが良い。たとえば海老はみな尻尾長く脚短い個体などないのに、こと人となればスタイルの良い人は非常に珍しい。海老の目からすれば逆に人こそ皆スタイル良く、かえってダサい海老が海中街中を数多ぷりぷり闊歩しているのであろう。あのヒゲのひょろ長い海老は若海老を剥き海老にしたいと思っているのであろうか。)成金老人のふりをした若者という、この葉巻以外にはほとんど存在しないような、比喩を絶する葉巻である。樹皮を剝いて裸にすると確かに若い白木が見え、ここが不思議なのだが、とくに白くもないのだが、大樹を支えているとは思われないほど質が軽い。矢が刺さってもあまり痛くないような性質がある。異様な光景を目の当たりにしていることを漸く悟るのである。
どうして発砲スチロールのような幹が、上空に聳える大樹を地に叩きつけないか。どうして花のない木の幹から花が匂い立つのか。上空は鬱蒼として暗い。けっして晴れやかな葉の裏でない。そもそも新緑時代から茶色い葉が、常盤木のように紅葉時節にも落ちずにいる。途端に幹が呼気を吐き、南国の、ココナッツか何か、アニスか何かのニュアンスを暖房器具のように吐き出した。ダビドフ黒茸がちょっと騒いで生きたツチノコのように下草に潜り込んだ。剥がした樹皮がアナログレコードを左回転させて幹に戻って張り付いた。
軽いのか重いのかをわからせない芳香に追い詰められて直立不動で彷徨わせる、全くそのような感じなので、この木は重力への反逆を明らかにするなどと誇大解釈してしまう。重力のみならず時間をも玩弄している。
煙に小刻みな膨らみが出てきたことは、明らかな誇大以上に是認するところである。時間の玩弄に次ぐ容積の玩弄で、ヒトの頭大の綿飴をヒトが一口に頬張ったにもかかわらず濃縮はされずほとんどが綿のまま口から逃げていってしまうようなのである。繋がりも意味不明ながら、全ての香味が一体化したということなのかもしれない。
芋の味がしたわけではないものの、ふと芋が恋しくなった。木が芋を呼ぶ、そう私の手足を操ったのかもしれない。
今日の雨の日に植物が水を欲するわけがないのに、ちょうど近くに『萬膳庵』なる庵があったので、私はすぐさま取って来て、木に芋焼酎の湯割りを掛けた。途端、糊塗した樹皮の割目から早回しのごとく金木犀が生えてくるかと思いきや秒を待たずに満開となった。しかし湯割りが木のえぐみを増すようであり、一方、木がお湯のえぐみをも増すようであった。それでも花は知らんぷりで咲き続けた。芋をお呼びでなかったのか、芋を呼ばれたのか、これまた区別に難儀する。
雑味を立たせぬ効果においては、この木に備えて水筒で持参した白ぶどう酒の方が覿面である。(エチエンヌ・ソゼ作の下っ端の2017年、下っ端でも凛々しく美味である。)もちろん白ぶどうは黒木に殺される。アラン・ブリュモンの黒ぶどう酒などの方が合うのかもしれないが、黒ワインは木に呼ばれなかった。木は他者を殺して自分の養分とするみたい。
いつ帰るべきかわからないまま、おもむろに腰を上げるまでくすぶっていると、伽羅に似た香木が漂う。加えてえてして飄々と顔を出すなんらかの味わい深い爽やかな風味がある。樹皮が甘やかにシナモン化し、今になってお菓子をもって別腹をそそるような。ここに至るまで、所期の甘さへの期待は肩透かしを喰らっていたのであった。
最後の部分と序盤の記憶に後ろ髪を引かれつつも、妙に私は冷たいままだった。木を蹴って帰りたい気がする。
後ろ髪を引かれるまま逆らわず木の前に佇む。早々に朽ちそうな気もしていたが、今日の木は蹴っても蹴ってもそそるらしい。でも後ろ髪程度のものであった。後ろ髪を引かれて戻るという行為は、「帰る」理由を思いつかない人の、事務処理に過ぎないのである。そそるものがそそるまま、そそりつづける。
もう一年、もう二年待てば急成長するとみる。一年に一本のペースに下げようと思う。もうじき新年だけれど、次はまた来年の末頃に着火したい。リリースされて何年か不明(2016年12月20日発売.日本)で、リリース後に巻き続けられているのかも不明ながら、およそこれは現在巻かれておらず、現在既に三年物とみえ、確実に良くなってきてはいると思う。リリース当初の評価の低さ(?)は頷ける、とすればどうして五年寝かせず出したのか。各ご家庭で美味しくなることを見越して出したのか、それともフレッシュロール時点では美味しかったのだろうか。『オロブランコ』をいつ燃やすべきなのかをこの『青ロイヤル』の不遜さから導出できないものだろうか。青ロイヤルの性質からして、オロブランコにも現在あまり期待が持てない。
|coh-hk|$173/25|arr 2017/11/18|
|SLE JUL 16|5 x 48|8.80g|香:3.9~4.3 ave4.1|残4|
初っ端から甘い木造船の味と匂いが充満する。木造船というのは難破した船のようなものであるから、投げ出される海は冷たければ冷たいほどよく、この葉巻は冬や雨や夜に大変合う。そして何故か暖房の風味がある。
今、冬のように寒い秋の、雨の夜である。難破して救われて暖められているような。
木と木をこするような、重心の低いうなりが軋み、船を軽くするために積荷の草花を海に投擲している。人体を海に投げ出しても花に縋れるほど海一面に放ったが、花の色は暗く見えない。不規則な波に阿呆みたいに揺蕩して響く軋み音が船体の木材を粉にし、その粉がまさに音の耳に入るていで忙しく口に入り、驚くほど美味しい。玉蜀黍か、バーボンが染みたような味わいである。
沈没したのは朝鮮由来の船だったろうか、船員が何者であるのかは沈没に際してどうでも構わなかったが、懐かしいような、朝鮮人参の深い苦味が走る。この時、もはや海に投げ出されていたのか、海面に漂うているであろう花が塩味を無にするほど大量に口に飛び込んできた。なんと苦く華やかで甘い災難であろうか。少し甘いのである。塩は代りに若干の酸っぱさとなって感じられる。
……
この箱、21本目にして初めてファモソスに期待していた木造船を味わわせてくれた。少なくとも三年以上の熟成が必要と言えるのかもしれないが、かつてシングル買いで木造船を幾度か体感したとき、あれらは何年物だったのだろう? とりわけファモソスにおいては、木造船に加えて朝鮮人参が出てしかるべきと思っているが、朝鮮人参も今日ようやく掘り出され、そのほか朝鮮人参に気脈を通じるコクも花も何もかもが暗さを甘美に彩った。酸味などの、どちらかといえば雑味のようなものも、此処にあっては正しく難破船の味わいである。
芳醇にして暗色で、割に軽い。重たい味こそ軽くなければならぬ。金木犀の木が、大量の気泡を含んで波に浮く。
最後には夜海の闇に超絶の金木犀がライトアップされる。そのライトアップというものも、エジソン以降の人工の電球でなく炎による。木造船が燃えて海面を照らしていた。木造船が火の勢いで沈まずに浮き上り、それを暖房として寒さ冷たさを凌いでいたのである。未だ救われていなかった。
ファモソスという葉巻の限界はこの辺りだろうと思う。
|SLE JUL 16|5 x 48|8.80g|香:3.9~4.3 ave4.1|残4|
初っ端から甘い木造船の味と匂いが充満する。木造船というのは難破した船のようなものであるから、投げ出される海は冷たければ冷たいほどよく、この葉巻は冬や雨や夜に大変合う。そして何故か暖房の風味がある。
今、冬のように寒い秋の、雨の夜である。難破して救われて暖められているような。
木と木をこするような、重心の低いうなりが軋み、船を軽くするために積荷の草花を海に投擲している。人体を海に投げ出しても花に縋れるほど海一面に放ったが、花の色は暗く見えない。不規則な波に阿呆みたいに揺蕩して響く軋み音が船体の木材を粉にし、その粉がまさに音の耳に入るていで忙しく口に入り、驚くほど美味しい。玉蜀黍か、バーボンが染みたような味わいである。
沈没したのは朝鮮由来の船だったろうか、船員が何者であるのかは沈没に際してどうでも構わなかったが、懐かしいような、朝鮮人参の深い苦味が走る。この時、もはや海に投げ出されていたのか、海面に漂うているであろう花が塩味を無にするほど大量に口に飛び込んできた。なんと苦く華やかで甘い災難であろうか。少し甘いのである。塩は代りに若干の酸っぱさとなって感じられる。
……
この箱、21本目にして初めてファモソスに期待していた木造船を味わわせてくれた。少なくとも三年以上の熟成が必要と言えるのかもしれないが、かつてシングル買いで木造船を幾度か体感したとき、あれらは何年物だったのだろう? とりわけファモソスにおいては、木造船に加えて朝鮮人参が出てしかるべきと思っているが、朝鮮人参も今日ようやく掘り出され、そのほか朝鮮人参に気脈を通じるコクも花も何もかもが暗さを甘美に彩った。酸味などの、どちらかといえば雑味のようなものも、此処にあっては正しく難破船の味わいである。
芳醇にして暗色で、割に軽い。重たい味こそ軽くなければならぬ。金木犀の木が、大量の気泡を含んで波に浮く。
最後には夜海の闇に超絶の金木犀がライトアップされる。そのライトアップというものも、エジソン以降の人工の電球でなく炎による。木造船が燃えて海面を照らしていた。木造船が火の勢いで沈まずに浮き上り、それを暖房として寒さ冷たさを凌いでいたのである。未だ救われていなかった。
ファモソスという葉巻の限界はこの辺りだろうと思う。
|cigarOne|€378.85/12|arr 2018/9/20|
|RAG JUN 18|166mm x 52|18.54g|香:3.6~3.8 ave3.7|残8|
スギスギせずに杉がかなり収まっている。非常におおらかで優しいところから、しばらくすると甘い花の蜜が垂れ、重厚なコクを思わせる炒ったナッツが煮えてくる。そこをさーっと杉の風が過ぎ、あっという間に爽やかになったり、風に潜まった景色が再び華やぐと蝶まで喜んで舞うようである。その杉風もシンプルで芳しい。
それから杉風吹きつのり、おかしな話だが、風がクリームパン専門店を一周めぐってきたらしく、美味しい風に変る。パン屋は遠く離れているものの、風の知らせで何を焼いているのかがわかり、今度はナッツパンも焼き始めたらしい。
パン屋と杉風の絵は、なんとも朗らかで丸っこい絵である。どうも絵具を蜂蜜水で薄めて塗っている。芋焼酎における芋の甘さの出方に似ているような、似ていないような。全体は概ねセピア的に黄色い。ただ、蜂蜜には必ず草の風味がかすかにせよ付き物である。花も草の一部ということかもしれない。
ドローは悪くないがややむっしりしすぎ。こんなところにも杉が現れる。結局至る所でスギスギしている。ひねもす擬態で、一旦見破ればもはや杉にしか見えなくなるというもの。(重量を調べると前回よりも3g近く重い)
終盤はパン・オ・金木犀・オ・スギで、穏やかに金色に高ぶる。森のクマさんの如く蜂蜜をより厚く塗りたくり、パンの表面にあったナッツを剥がしてパンの奥に仕込むなどして夢中になっていると一瞬塩素騒ぎが起る。途端にバターの代りにハッカ油が空から降ってきて、傘をさすも森は焼け野原の美味しい焦げ臭で、一体今度はどんなパンを風が運んでくるのか、それが運ばれることはないだろうなとクマさんは諦念で悦に浸る。
|RAG JUN 18|166mm x 52|18.54g|香:3.6~3.8 ave3.7|残8|
スギスギせずに杉がかなり収まっている。非常におおらかで優しいところから、しばらくすると甘い花の蜜が垂れ、重厚なコクを思わせる炒ったナッツが煮えてくる。そこをさーっと杉の風が過ぎ、あっという間に爽やかになったり、風に潜まった景色が再び華やぐと蝶まで喜んで舞うようである。その杉風もシンプルで芳しい。
それから杉風吹きつのり、おかしな話だが、風がクリームパン専門店を一周めぐってきたらしく、美味しい風に変る。パン屋は遠く離れているものの、風の知らせで何を焼いているのかがわかり、今度はナッツパンも焼き始めたらしい。
パン屋と杉風の絵は、なんとも朗らかで丸っこい絵である。どうも絵具を蜂蜜水で薄めて塗っている。芋焼酎における芋の甘さの出方に似ているような、似ていないような。全体は概ねセピア的に黄色い。ただ、蜂蜜には必ず草の風味がかすかにせよ付き物である。花も草の一部ということかもしれない。
ドローは悪くないがややむっしりしすぎ。こんなところにも杉が現れる。結局至る所でスギスギしている。ひねもす擬態で、一旦見破ればもはや杉にしか見えなくなるというもの。(重量を調べると前回よりも3g近く重い)
終盤はパン・オ・金木犀・オ・スギで、穏やかに金色に高ぶる。森のクマさんの如く蜂蜜をより厚く塗りたくり、パンの表面にあったナッツを剥がしてパンの奥に仕込むなどして夢中になっていると一瞬塩素騒ぎが起る。途端にバターの代りにハッカ油が空から降ってきて、傘をさすも森は焼け野原の美味しい焦げ臭で、一体今度はどんなパンを風が運んでくるのか、それが運ばれることはないだろうなとクマさんは諦念で悦に浸る。
Davidoff Oro Blanco
1本のみ購入
|NextCigar|($266.50+¥400)/1|2019/11/9・arr 11/16|
最初から266ドルだったらたぶん購入しなかったのだが、400ドル以上の物が266になったので
安いと思って買ってしまった。よく考えると266でもハバナのグランレゼルバよりはるかに高い。それで金銭感覚がおかしくなり、ルシタニアスのグランレゼルバも購入してしまった。
--
Partagás Lusitanias Gran Reserva Cosecha 2007
1本のみ購入
|cigarOne|181.90CHF/1|2019/11/16・arr 11/24|
日本では13,000円で売られていたから、熟成物とはいえかなり割高だが、オロブランコのせいで安物を買ったような心地がし、たとえ届いた物の状態が悪くても許せる心境である。シガーワンがどういう会社なのかわからないけれど、これまで偽物はなかったし、スイスの業者らしく日本で出回る物よりも良い箱を買い付けていると信じてみたい。昔は日本語対応だったのだが、日本人が退職して(?)潔く日本語非対応になったのはジェラールの日本語サイトの怪しさに比べると良いのではないかと思う。
1本のみ購入
|NextCigar|($266.50+¥400)/1|2019/11/9・arr 11/16|
最初から266ドルだったらたぶん購入しなかったのだが、400ドル以上の物が266になったので
安いと思って買ってしまった。よく考えると266でもハバナのグランレゼルバよりはるかに高い。それで金銭感覚がおかしくなり、ルシタニアスのグランレゼルバも購入してしまった。
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Partagás Lusitanias Gran Reserva Cosecha 2007
1本のみ購入
|cigarOne|181.90CHF/1|2019/11/16・arr 11/24|
日本では13,000円で売られていたから、熟成物とはいえかなり割高だが、オロブランコのせいで安物を買ったような心地がし、たとえ届いた物の状態が悪くても許せる心境である。シガーワンがどういう会社なのかわからないけれど、これまで偽物はなかったし、スイスの業者らしく日本で出回る物よりも良い箱を買い付けていると信じてみたい。昔は日本語対応だったのだが、日本人が退職して(?)潔く日本語非対応になったのはジェラールの日本語サイトの怪しさに比べると良いのではないかと思う。
|NextCigar|$130/10|2019/10/30・arr 11/09|
|—|7.25 x 40|11.47g|香:3.5~3.8 ave3.7|残9|
箱買いではなくバラ×10です。
デモの影響なのか到着がやけに遅かった。
11.7g×10本表記で発送。
褐色がかなり深いものであるのに、じめじめした方へ向わずにからりと味を晴らしている。するとふつう藁っぽくなってつまらなくなるから、むしろじめじめの方が美味しいのだが、ダビドフ・ミレニアムの場合、程よい乾きが「銀味」と言いたくなるような恰好をして脳を昇華してくる。黒い酸化銀を還元していくような感覚に似ている。これはやがて還元されず白銀の夢ばかりを残す。
やはりエスキシトスに夢見るエスキシトスの巨大版という感じもある。こちらの夢は現実化されてこのランセロにもっともよく結実していると思う。
樫の木のえぐみが金木犀らしき香りと相俟って鈍く金色に輝く。この辺りはあまり良くないものの、えぐみが消えると樫の木が花との癒着を剥がし粉挽のコクに変る。花は持ち場に戻って枝先から咲くようになる。
バンドルはダビドフの廃品なのであろうか。倉庫に眠っていたとすれば熟成は長い。それとも単なる箱無し価格での通常流通品なのか。
とうとうオロブランコを買った。
|—|7.25 x 40|11.47g|香:3.5~3.8 ave3.7|残9|
箱買いではなくバラ×10です。
デモの影響なのか到着がやけに遅かった。
11.7g×10本表記で発送。
褐色がかなり深いものであるのに、じめじめした方へ向わずにからりと味を晴らしている。するとふつう藁っぽくなってつまらなくなるから、むしろじめじめの方が美味しいのだが、ダビドフ・ミレニアムの場合、程よい乾きが「銀味」と言いたくなるような恰好をして脳を昇華してくる。黒い酸化銀を還元していくような感覚に似ている。これはやがて還元されず白銀の夢ばかりを残す。
やはりエスキシトスに夢見るエスキシトスの巨大版という感じもある。こちらの夢は現実化されてこのランセロにもっともよく結実していると思う。
樫の木のえぐみが金木犀らしき香りと相俟って鈍く金色に輝く。この辺りはあまり良くないものの、えぐみが消えると樫の木が花との癒着を剥がし粉挽のコクに変る。花は持ち場に戻って枝先から咲くようになる。
バンドルはダビドフの廃品なのであろうか。倉庫に眠っていたとすれば熟成は長い。それとも単なる箱無し価格での通常流通品なのか。
とうとうオロブランコを買った。
|cigarOne|¥24190/24|2018/11/11・arr 11/20|
|RAG ABR 18|5 1/4 x 44|重量:10.54g|香:3.8~4.1 ave4.0|残11|
箱から取り出すと杉の香が密室にむんと籠っていたかのようで、これはもうこの葉巻の確定要素と言って良い。(他、アップマンに近い傾向あり。)箱の中は六本掛け四段で、杉板三枚で杉の香を染ませるように葉巻を挟んでいる。
空吸いすると年季の入った醸造モノを思わせる熟成の、茶色い奥深い旨みが感じられる。
着火すると煙柔らかく、柔らかさも確定要素のようなものだが、トリニダッドは侮れず強さを出すこともよくある、とりわけレイジェスやコロニアレスのような小型の場合は強い傾向が強い。
この頃の季節、鬱蒼と茂りつつも間も無く秋めく森の中、総杉板張の旅館で憩い、中庭で薫らせればさぞ美味しかろうという感じがする。杉の爽やかな薫香のみならず熟成の旨味ある香ばしさがそこに美味しさを添えている。日本化した雰囲気に幽かなハバナ豆の懐かしさが絡む。やや寒く森林に浴する心地がし、秋の花も咲いている。
森林と醸造と秋の花が見事に融合して、また見事にハバナが日本化して感じられた。爽やかにしてしんみりとする。
旅館というのはおそらく一人旅であった。森の中に佇む旅館で、そぞろで、幽霊が夕食を運んできたかのような、まだ明るい午後四時ぐらいの夕食で、曇り空であった。葉巻が夕食だったのかもしれない。
自宅での熟成等に成功したとしか思えない。特別なことはしていず、たまたま今日、ヒュミドールと部屋と曇った秋空が邂逅しただけかもしれない。
|RAG ABR 18|5 1/4 x 44|重量:10.54g|香:3.8~4.1 ave4.0|残11|
箱から取り出すと杉の香が密室にむんと籠っていたかのようで、これはもうこの葉巻の確定要素と言って良い。(他、アップマンに近い傾向あり。)箱の中は六本掛け四段で、杉板三枚で杉の香を染ませるように葉巻を挟んでいる。
空吸いすると年季の入った醸造モノを思わせる熟成の、茶色い奥深い旨みが感じられる。
着火すると煙柔らかく、柔らかさも確定要素のようなものだが、トリニダッドは侮れず強さを出すこともよくある、とりわけレイジェスやコロニアレスのような小型の場合は強い傾向が強い。
この頃の季節、鬱蒼と茂りつつも間も無く秋めく森の中、総杉板張の旅館で憩い、中庭で薫らせればさぞ美味しかろうという感じがする。杉の爽やかな薫香のみならず熟成の旨味ある香ばしさがそこに美味しさを添えている。日本化した雰囲気に幽かなハバナ豆の懐かしさが絡む。やや寒く森林に浴する心地がし、秋の花も咲いている。
森林と醸造と秋の花が見事に融合して、また見事にハバナが日本化して感じられた。爽やかにしてしんみりとする。
旅館というのはおそらく一人旅であった。森の中に佇む旅館で、そぞろで、幽霊が夕食を運んできたかのような、まだ明るい午後四時ぐらいの夕食で、曇り空であった。葉巻が夕食だったのかもしれない。
自宅での熟成等に成功したとしか思えない。特別なことはしていず、たまたま今日、ヒュミドールと部屋と曇った秋空が邂逅しただけかもしれない。
|gestocigars|152CHF/10(24CHF/10+¥2200/10)|arr 2019/9/4|
|GAT AGO 12|5.12’ x 55|14.27g |香:3.6~4.4 ave4.2|残5|
この熟成葉巻は購入当初からもう力強さが乏しいが、今日は力強さが改めて湧いて出てくるようなところがある。中盤で微かにその力強さを感じた途端、金木犀が噴き出し、金木犀は以後まったく枯れぬまま、金木犀に何らかの甘美を差したり引いたりし、金木犀主体として続く。力強い辛味がまた現れたり(辛味はキレが良く、いつも瞬時に消える)、洋酒や上出来な醸造酒のエステル香にも通じるアルコールを髣髴とさせる芳香が現れたり、カスタード状の滑らかさが湖底に透かし見えたり、雑味はすっかり洗い落とされ、延々美味しいものである。どことなく静けさを纏い続けているのも熟成物らしいというよりロメオらしい。そのうち湖底にポポーが実るかもしれないが、現在この葉巻に森や緑の感覚があるかというと皆無に等しい。思えば藁などの風味も感じ難く、土や木の風味こそ戦ぐものの、ひたすら静かで華やかである。絵画でいえば全面モネの花っぽく思われ優しさで覆われ、同じく顔に泥を塗るような隠れた刺激を持ち合わせている。
この一本でまざまざと現れた「金木犀と辛味との関係」に興味が湧いてくる。焼いて甘味を増す葱のような関係があるのかもしれない。兎も角味覚上、素晴らしい煙で、辛味は終盤で頻出し間断なく連続するようになり、葱や大根に通じる辛味が黄色の花々で塗り込められ、最終盤に至ってなお抜群に美味しい(辛い大根おろしを食べた後の紙巻煙草の美味しさにも近しい)。終盤で吸い急がせるようなところもなく、忘れ得ぬ一本となりそうである。
全然関係ないけれど、ハンマースホイの展覧会が来年年初にある。忘れないように此処にも記す。
|GAT AGO 12|5.12’ x 55|14.27g |香:3.6~4.4 ave4.2|残5|
この熟成葉巻は購入当初からもう力強さが乏しいが、今日は力強さが改めて湧いて出てくるようなところがある。中盤で微かにその力強さを感じた途端、金木犀が噴き出し、金木犀は以後まったく枯れぬまま、金木犀に何らかの甘美を差したり引いたりし、金木犀主体として続く。力強い辛味がまた現れたり(辛味はキレが良く、いつも瞬時に消える)、洋酒や上出来な醸造酒のエステル香にも通じるアルコールを髣髴とさせる芳香が現れたり、カスタード状の滑らかさが湖底に透かし見えたり、雑味はすっかり洗い落とされ、延々美味しいものである。どことなく静けさを纏い続けているのも熟成物らしいというよりロメオらしい。そのうち湖底にポポーが実るかもしれないが、現在この葉巻に森や緑の感覚があるかというと皆無に等しい。思えば藁などの風味も感じ難く、土や木の風味こそ戦ぐものの、ひたすら静かで華やかである。絵画でいえば全面モネの花っぽく思われ優しさで覆われ、同じく顔に泥を塗るような隠れた刺激を持ち合わせている。
この一本でまざまざと現れた「金木犀と辛味との関係」に興味が湧いてくる。焼いて甘味を増す葱のような関係があるのかもしれない。兎も角味覚上、素晴らしい煙で、辛味は終盤で頻出し間断なく連続するようになり、葱や大根に通じる辛味が黄色の花々で塗り込められ、最終盤に至ってなお抜群に美味しい(辛い大根おろしを食べた後の紙巻煙草の美味しさにも近しい)。終盤で吸い急がせるようなところもなく、忘れ得ぬ一本となりそうである。
全然関係ないけれど、ハンマースホイの展覧会が来年年初にある。忘れないように此処にも記す。
|NextCigar|$0/1|arr 2019/9/21|
|—|5.5” x 54|16.87g|香:3.2~3.8 ave3.5|残0|
註:この葉巻は試供品です。封シールに「tasting cigar not for sale」の記述あり。試供品であることから、発売当初に巻かれた可能性が高く、個包装のビニールにやや色が付いています。発売当初の物でなくとも、ビニールの色から三年ぐらいは放置されていたであろう個体に見える。なお、湿度によって着色差があり、過加湿の環境ではビニールが着色されやすいかもしれず、色のみでは正しく判断できない。またもちろん、ラッパーが濃いほど着色も早まる。
10月19日 曇り
雲が地を灰色の絵具で塗り潰したかのような、天地の境が曖昧なほどの曇天で、延々と雨粒一つ落ちないのが不思議なぐらい、人も日がな一日廃人と化していた。灰色は室内にも忍び込み、室内の色も灰色で、風もないのに部屋の空気や温度までもが境を消失して空と融合していた。分厚く頭上付近に落ちてきている雲に遮られた陽が落ちそうであろう頃に融合は度を超して全てを均質化させたようで、前述のように脳も灰化し、ベランダの地べたに転がっても、室内のベッドと変りがなくなる。かねて吹き上がっていた砂埃はぎりぎり乾いている感触であった。
曇天らしい曇天に静かに感動していたわけであるが、陽が落ちると、かえって明るく、灰一色であった目前の空が白と青のコントラストを取り戻して遠のいてしまった。膨大な水蒸気と光との至芸があったこと、それが果てたのだとわかり、目が醒めた。
10月19日 26時過ぎ
着火前の乾いた佃煮の風味が燃焼するとどうなるか、煙に化けるより煙が化けるのか、煙がカムリを謎として隠し煙に巻くのか、序盤はそんな美味しげな話だが、5ミリも燃えると辛味やえぐみや渋みがカミソリを巻き込んだ竜巻のように威風堂々と道無き道を進んで外道に外れて正しい佇まいの味覚嗅覚を事も無げに破壊する。パドロンを崇めるアメリカ人向けのやり方で、横暴極まる暴風にはしかし当然花などもが吸い込まれていると見え、木々は根元付近から目茶苦茶にもぎ取られ棘立って旋回して危ないことこの上ない。まろやかなものなども旋回し始めた。それはちょうど珈琲にクリープをかき混ぜた宣材写真のようであり、思えば珈琲はずいぶん雑味が多くて下手な淹れ方だが回っている。回って誤魔化している。竜巻は端から見れば文字通り竜のようでこの世のものとも思えぬ美しさがあるが、竜の咽喉の中である竜巻内部は実に酷い有様だ。美味しげな物も飲み込んでいるのだが、ほとんど音速で飛び回り、砂嵐ばかりが口を満たす心地がする、それでこの体もけっこうなことに浮いて飛び回っているのだが、体を巧い具合にくねらせたり、口を歪めたりして、今美味しいものばかりを吸い込む術を会得しようと忙しいところである。竜巻游泳も上達しようというところである。竜巻上部の灰色の頭が今ぽろりと首を落とした。首無し竜の勢も弱まってきたのかもしれない、ところで物の理から察するに、風が弱体すれば浮いていた体は一緒くたに落下する手痛い態である。恐る恐る竜巻の首から竜巻の足の方へ目をでんぐり返してみると、なんとも比重のおかしな光景が狭く奥行をもって広がっている。竜巻の下部には、なんと落下しても痛くないかのように、花びらたちが幾千重の饅頭布団でもあるかのように重なって、無数の黄色がほとんどキラキラと輝き、竜の喉たるトンネルを照らす光源じみて明るく満ち満ちているのである。それでもまだ落下するには早いようで、見え隠れする図太い木の棘の上をば避けねば刺さるだろう。それならまだくるくると狂おしく旋回したまま跳ね上げられた上空を転がっていたい気持ちである。そうやって竜巻の中、破れた翼めかせた両腕をそのじつ巧みに操り平泳ぎしていると、花が一層密度高く堆積して来て依然回るままであるからか花がまるで乳化遊びを始めたのだ。竜巻の力と料理の力とは似ているところがあるとわかり始める。竜巻内部にて、竜巻は壮大な料理を繰り広げていたのである。なんたる美食家たること、町を縦横無尽に食べ歩いた上、とうに不要となった舌のある頭部を落とし(頭で食べたのかは不明だが)、長い咽喉の奥処の細き胃袋にて緻密な料理を完成させるとは。「料理は舌で完成する」とはささやかな人間の話に過ぎないのである。竜の食事は胃袋で完成するのである。
落ちてゆく、落ちてゆく、どこまでも落ちてゆきたいのに、なかなか体は胃袋の方へ落ちてゆかない。それとももう落ちているのか。遠目の雲が近くで霧に変るように、近づけば近づくほど堆積は味気なく薄れるもの、この道理なのであろうか。懐かしい地の匂いが近づいている。旋回しながら落ちれば道長く、痛手も無いものだと閃く。上空には金の布団が柔らかく分厚く見えている。胸の谷間めいたヘルメットのように、それが迫り落ちてくる。
最後にはランディングに失敗し痛く尻餅をつき、十五回転半の後、すくりと立ち上がった。崩れた竜巻が頭の直ぐ上を燻したウイスキーのように只管スモーキーに漂っている。旨味と甘味を削いだ滑らかな燻煙である。
|—|5.5” x 54|16.87g|香:3.2~3.8 ave3.5|残0|
註:この葉巻は試供品です。封シールに「tasting cigar not for sale」の記述あり。試供品であることから、発売当初に巻かれた可能性が高く、個包装のビニールにやや色が付いています。発売当初の物でなくとも、ビニールの色から三年ぐらいは放置されていたであろう個体に見える。なお、湿度によって着色差があり、過加湿の環境ではビニールが着色されやすいかもしれず、色のみでは正しく判断できない。またもちろん、ラッパーが濃いほど着色も早まる。
10月19日 曇り
雲が地を灰色の絵具で塗り潰したかのような、天地の境が曖昧なほどの曇天で、延々と雨粒一つ落ちないのが不思議なぐらい、人も日がな一日廃人と化していた。灰色は室内にも忍び込み、室内の色も灰色で、風もないのに部屋の空気や温度までもが境を消失して空と融合していた。分厚く頭上付近に落ちてきている雲に遮られた陽が落ちそうであろう頃に融合は度を超して全てを均質化させたようで、前述のように脳も灰化し、ベランダの地べたに転がっても、室内のベッドと変りがなくなる。かねて吹き上がっていた砂埃はぎりぎり乾いている感触であった。
曇天らしい曇天に静かに感動していたわけであるが、陽が落ちると、かえって明るく、灰一色であった目前の空が白と青のコントラストを取り戻して遠のいてしまった。膨大な水蒸気と光との至芸があったこと、それが果てたのだとわかり、目が醒めた。
10月19日 26時過ぎ
着火前の乾いた佃煮の風味が燃焼するとどうなるか、煙に化けるより煙が化けるのか、煙がカムリを謎として隠し煙に巻くのか、序盤はそんな美味しげな話だが、5ミリも燃えると辛味やえぐみや渋みがカミソリを巻き込んだ竜巻のように威風堂々と道無き道を進んで外道に外れて正しい佇まいの味覚嗅覚を事も無げに破壊する。パドロンを崇めるアメリカ人向けのやり方で、横暴極まる暴風にはしかし当然花などもが吸い込まれていると見え、木々は根元付近から目茶苦茶にもぎ取られ棘立って旋回して危ないことこの上ない。まろやかなものなども旋回し始めた。それはちょうど珈琲にクリープをかき混ぜた宣材写真のようであり、思えば珈琲はずいぶん雑味が多くて下手な淹れ方だが回っている。回って誤魔化している。竜巻は端から見れば文字通り竜のようでこの世のものとも思えぬ美しさがあるが、竜の咽喉の中である竜巻内部は実に酷い有様だ。美味しげな物も飲み込んでいるのだが、ほとんど音速で飛び回り、砂嵐ばかりが口を満たす心地がする、それでこの体もけっこうなことに浮いて飛び回っているのだが、体を巧い具合にくねらせたり、口を歪めたりして、今美味しいものばかりを吸い込む術を会得しようと忙しいところである。竜巻游泳も上達しようというところである。竜巻上部の灰色の頭が今ぽろりと首を落とした。首無し竜の勢も弱まってきたのかもしれない、ところで物の理から察するに、風が弱体すれば浮いていた体は一緒くたに落下する手痛い態である。恐る恐る竜巻の首から竜巻の足の方へ目をでんぐり返してみると、なんとも比重のおかしな光景が狭く奥行をもって広がっている。竜巻の下部には、なんと落下しても痛くないかのように、花びらたちが幾千重の饅頭布団でもあるかのように重なって、無数の黄色がほとんどキラキラと輝き、竜の喉たるトンネルを照らす光源じみて明るく満ち満ちているのである。それでもまだ落下するには早いようで、見え隠れする図太い木の棘の上をば避けねば刺さるだろう。それならまだくるくると狂おしく旋回したまま跳ね上げられた上空を転がっていたい気持ちである。そうやって竜巻の中、破れた翼めかせた両腕をそのじつ巧みに操り平泳ぎしていると、花が一層密度高く堆積して来て依然回るままであるからか花がまるで乳化遊びを始めたのだ。竜巻の力と料理の力とは似ているところがあるとわかり始める。竜巻内部にて、竜巻は壮大な料理を繰り広げていたのである。なんたる美食家たること、町を縦横無尽に食べ歩いた上、とうに不要となった舌のある頭部を落とし(頭で食べたのかは不明だが)、長い咽喉の奥処の細き胃袋にて緻密な料理を完成させるとは。「料理は舌で完成する」とはささやかな人間の話に過ぎないのである。竜の食事は胃袋で完成するのである。
落ちてゆく、落ちてゆく、どこまでも落ちてゆきたいのに、なかなか体は胃袋の方へ落ちてゆかない。それとももう落ちているのか。遠目の雲が近くで霧に変るように、近づけば近づくほど堆積は味気なく薄れるもの、この道理なのであろうか。懐かしい地の匂いが近づいている。旋回しながら落ちれば道長く、痛手も無いものだと閃く。上空には金の布団が柔らかく分厚く見えている。胸の谷間めいたヘルメットのように、それが迫り落ちてくる。
最後にはランディングに失敗し痛く尻餅をつき、十五回転半の後、すくりと立ち上がった。崩れた竜巻が頭の直ぐ上を燻したウイスキーのように只管スモーキーに漂っている。旨味と甘味を削いだ滑らかな燻煙である。
|gestocigars|(467CHF+ship36CHF+tax¥13600)/20≒¥3500|2019/3/18・arr 3/25|
|UER NOV 18|165mm x 55|19.35g(-0.31g)|香:4.2~4.5 ave4.4|残17|
レイエンダは2本買った後に20本買ったから、これで22本中4本目。当箱の3本目。残18本。
今日は金木犀が香ったので、木の方へ誘われて蕾を見た。例年以上に盛んだった蝉は前台風の後にすっかり消滅したものの、鈴虫は昨日の台風一過直後に鳴き始め、金木犀も鈴虫に倣ってほころびそうだった。
金木犀ということでモンテクリストの上品を取り出す。
リネア1935にして19.35g。これこそがレイエンダの最良の一本であると思わない人がいるだろうか。19.34のものと19.35のものがあって、どちらかを選べと言われて19.34を選ぶ人だけが「だからどうした」と言いうる。だからどうした。
外貌はやや酸っぱい匂い。空吸いすると味噌漬けの藁のようで、味の濃さが伝わってくる。
むっしりした吸い込み。これより少しでも詰まると固いと言いたくなるぎりぎりのラインで、葉巻をつまむと弾力あり、その指の感覚がドローにも通じているようである。
着火すると味はすぐに濃く甘く整う。モンテ風味のコイーバというような重厚さ。それも調子が良い時のコイーバ。茶色い葉の味わいの厚みが桁違いである。あくまでもモンテクリスト風味が厚い。その中で、夜明けのように、これもやはりモンテらしく白みがかってくるものがある。
しかし白みに襲いかかる黒みがある。夜に引き戻そうとする時間の重力がある。ものすごい煤煙の旨味、文字通り焦げたように香ばしくも澄んだ炭の味わいがし、なんなのかよく考えていると炭を擂鉢で三年間も回し続けたものらしい。それが乳化なのか幽かに油のようなねっとりした質感が出る。
むっしりとして煙の量も豊富である。
悠揚迫らぬ調子でココナッツが顔を出す。鮮明な変化にして、かつて現れていたものは消えず静まり、新たなものが顔を出しては、また消えずに静まる。静かなものたちが薄い横顔を現しつづけ、複雑というにはあまりにもおおらかに悠然と重なり、懐の深さにまだまだ余裕があるであろう貫禄をわからしめる。懐がもしやこれ以上深くなく、すでにして極上であるもこの様に止まっては、もしやつまらないかもしれない。余裕がありすぎてつまらない、それとも余裕が嘘か、すでに極上であるのに。
懐を信じて構わない。なんとも濃くミルキーな、純白のキャラメルの味がする。真っ白の乳製品のままであるのにどうして香ばしいキャラメルの味がするのか。
この葉巻の序盤から主題として芽が出ていた金木犀が大人しくもほころび始める。存分に副流煙を鼻で吸い込む。それが金木犀を満開にする手法なのである。金木犀を潰すほどの茶色と黒の香ばしい旨味が持続する。色以外の下手な物に喩えるのは気が引ける。そこへ黄金に光る蜂蜜一滴。くすんだ色が美しかったのに、ひとしずくの透明感が光り、くすみが鈍色に光り始める。
草か。この葉巻で漸く緑を見た。こんなところに緑が生えているのか。茶と黒と白と金に揉まれて緑が潜む。茶と黒と白と金と緑。モンテクリストの下級品に通じる、下級品から想像できる、延長線上の極上品にすぎない。ココナッツなど、モンテクリストの中級品の持味をも極上に昇華している。これも延長線上に過ぎない。だからこそ素晴らしいのか。でもどことなく想像を絶しているところもある。夢が現実化した際の現実はあっけなく、その現実の方が夢より強いということはないはずだが、ここには夢のような現実がある。もともと現実化しやすい夢を見ていたのであるから。そろそろ終盤である。雑味が萌した。
雑味を旨味に転化するかのように、炭鉱のカナリアのごときココナッツが見事鈍色の光を発してくれる。甘さはとくにたるくなく、最序盤が一番甘く、一瞬蜂蜜の一滴に結実したとしても、序盤のあとは薄っすら透明に隠し味のように広がっている。ココナッツ本来の甘さも、味より香りがとくに甘い。金木犀とキャラメルを混ぜた甘やかな香ばしさの重厚さがとりわけ太々しく持続している。副流煙を鼻で全て吸い込みたいぐらいの、もう一歩で羽が生えるぐらいの刺激的な陶酔感である。飛ぶために重さを掻き集めているようである。
終盤の荒さも静かで。
これだけ巨大で美味となればもう身がもたない。身の逼迫が葉巻の香味に反映されてしまう。巨大さ徒然で酔いも回ってきたし、もう駄目だが、葉巻は衰えないようである。下戸は優しい酒を選ぶべしで、葉巻が美味しすぎ酒の味がほとんど関係ないほど煙が濃い。糖度の低い蒸留酒よりも醸造酒の方が適確ではありそうである。ラム(トロワリビエール2000、上品、お気に入り、マスクメロンのエステル)も試したが、山田錦の大吟醸酒のパイナップル香のほうが喉を潤し甘さを補い別途の香りを加えて麗しく逞しい。
レゼルバや特別なヒュミドールに入ったモンテクリストなどはひとつも試したことがないが、重厚なモンテクリストは此処にある。なかなか19.35gのものには出会えないかもしれないものの、4本中1本は極上で、1本は優品、2本はやや外れといったことに均せるのかもしれない。経験上のみで葉巻界を俯瞰してみると、4本14000円程度なら、これはかなりお勧めできる。ただ、「悠揚迫らぬ」というところが評価を分けるポイントかもしれない。現に、コンパクトで卑小なコイーバエスキシトスに点数上、一歩及んでいないのである(●)。それにしても、なんと美味しげな分水嶺だろう。モンブラン(リネア1935)とマッターホルン(エスキシトス)のコラージュのようである。あっちのみーずはかー……
※コイーバエスキシトスは初日の一本以降、てんで駄目なので、信頼性ではレイエンダが断然上です。
マルテスとデュマスには要熟成の感覚があったものの、レイエンダは若くして一時完成されている。
|UER NOV 18|165mm x 55|19.35g(-0.31g)|香:4.2~4.5 ave4.4|残17|
レイエンダは2本買った後に20本買ったから、これで22本中4本目。当箱の3本目。残18本。
今日は金木犀が香ったので、木の方へ誘われて蕾を見た。例年以上に盛んだった蝉は前台風の後にすっかり消滅したものの、鈴虫は昨日の台風一過直後に鳴き始め、金木犀も鈴虫に倣ってほころびそうだった。
金木犀ということでモンテクリストの上品を取り出す。
リネア1935にして19.35g。これこそがレイエンダの最良の一本であると思わない人がいるだろうか。19.34のものと19.35のものがあって、どちらかを選べと言われて19.34を選ぶ人だけが「だからどうした」と言いうる。だからどうした。
外貌はやや酸っぱい匂い。空吸いすると味噌漬けの藁のようで、味の濃さが伝わってくる。
むっしりした吸い込み。これより少しでも詰まると固いと言いたくなるぎりぎりのラインで、葉巻をつまむと弾力あり、その指の感覚がドローにも通じているようである。
着火すると味はすぐに濃く甘く整う。モンテ風味のコイーバというような重厚さ。それも調子が良い時のコイーバ。茶色い葉の味わいの厚みが桁違いである。あくまでもモンテクリスト風味が厚い。その中で、夜明けのように、これもやはりモンテらしく白みがかってくるものがある。
しかし白みに襲いかかる黒みがある。夜に引き戻そうとする時間の重力がある。ものすごい煤煙の旨味、文字通り焦げたように香ばしくも澄んだ炭の味わいがし、なんなのかよく考えていると炭を擂鉢で三年間も回し続けたものらしい。それが乳化なのか幽かに油のようなねっとりした質感が出る。
むっしりとして煙の量も豊富である。
悠揚迫らぬ調子でココナッツが顔を出す。鮮明な変化にして、かつて現れていたものは消えず静まり、新たなものが顔を出しては、また消えずに静まる。静かなものたちが薄い横顔を現しつづけ、複雑というにはあまりにもおおらかに悠然と重なり、懐の深さにまだまだ余裕があるであろう貫禄をわからしめる。懐がもしやこれ以上深くなく、すでにして極上であるもこの様に止まっては、もしやつまらないかもしれない。余裕がありすぎてつまらない、それとも余裕が嘘か、すでに極上であるのに。
懐を信じて構わない。なんとも濃くミルキーな、純白のキャラメルの味がする。真っ白の乳製品のままであるのにどうして香ばしいキャラメルの味がするのか。
この葉巻の序盤から主題として芽が出ていた金木犀が大人しくもほころび始める。存分に副流煙を鼻で吸い込む。それが金木犀を満開にする手法なのである。金木犀を潰すほどの茶色と黒の香ばしい旨味が持続する。色以外の下手な物に喩えるのは気が引ける。そこへ黄金に光る蜂蜜一滴。くすんだ色が美しかったのに、ひとしずくの透明感が光り、くすみが鈍色に光り始める。
草か。この葉巻で漸く緑を見た。こんなところに緑が生えているのか。茶と黒と白と金に揉まれて緑が潜む。茶と黒と白と金と緑。モンテクリストの下級品に通じる、下級品から想像できる、延長線上の極上品にすぎない。ココナッツなど、モンテクリストの中級品の持味をも極上に昇華している。これも延長線上に過ぎない。だからこそ素晴らしいのか。でもどことなく想像を絶しているところもある。夢が現実化した際の現実はあっけなく、その現実の方が夢より強いということはないはずだが、ここには夢のような現実がある。もともと現実化しやすい夢を見ていたのであるから。そろそろ終盤である。雑味が萌した。
雑味を旨味に転化するかのように、炭鉱のカナリアのごときココナッツが見事鈍色の光を発してくれる。甘さはとくにたるくなく、最序盤が一番甘く、一瞬蜂蜜の一滴に結実したとしても、序盤のあとは薄っすら透明に隠し味のように広がっている。ココナッツ本来の甘さも、味より香りがとくに甘い。金木犀とキャラメルを混ぜた甘やかな香ばしさの重厚さがとりわけ太々しく持続している。副流煙を鼻で全て吸い込みたいぐらいの、もう一歩で羽が生えるぐらいの刺激的な陶酔感である。飛ぶために重さを掻き集めているようである。
終盤の荒さも静かで。
これだけ巨大で美味となればもう身がもたない。身の逼迫が葉巻の香味に反映されてしまう。巨大さ徒然で酔いも回ってきたし、もう駄目だが、葉巻は衰えないようである。下戸は優しい酒を選ぶべしで、葉巻が美味しすぎ酒の味がほとんど関係ないほど煙が濃い。糖度の低い蒸留酒よりも醸造酒の方が適確ではありそうである。ラム(トロワリビエール2000、上品、お気に入り、マスクメロンのエステル)も試したが、山田錦の大吟醸酒のパイナップル香のほうが喉を潤し甘さを補い別途の香りを加えて麗しく逞しい。
レゼルバや特別なヒュミドールに入ったモンテクリストなどはひとつも試したことがないが、重厚なモンテクリストは此処にある。なかなか19.35gのものには出会えないかもしれないものの、4本中1本は極上で、1本は優品、2本はやや外れといったことに均せるのかもしれない。経験上のみで葉巻界を俯瞰してみると、4本14000円程度なら、これはかなりお勧めできる。ただ、「悠揚迫らぬ」というところが評価を分けるポイントかもしれない。現に、コンパクトで卑小なコイーバエスキシトスに点数上、一歩及んでいないのである(●)。それにしても、なんと美味しげな分水嶺だろう。モンブラン(リネア1935)とマッターホルン(エスキシトス)のコラージュのようである。あっちのみーずはかー……
※コイーバエスキシトスは初日の一本以降、てんで駄目なので、信頼性ではレイエンダが断然上です。
マルテスとデュマスには要熟成の感覚があったものの、レイエンダは若くして一時完成されている。
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