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  源氏物語「葉」
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|NextCigar|$252/10|arr 2023/7/3|
|—|5 15/16” x 54RG|15.33g|香:4.0~4.5 ave4.3|残6?|

 ダビドフのエクアドルに特有の、シナモン風の丸めた樹皮が香高い、よく熟していながら軽やかな香りを放つ。雑味ははるか底、見えないところまで沈殿している。ここまでエクアドルらしさをたっぷり感じたのは初めてかもしれないし、そもそもエクアドルに起因するのかわかりはしない。他の部位はクラシックシリーズに通じる軽さでまとめて、なおスパイシーなものを仕込んでいるように思える。
 クラシックが隆盛するのは序盤すぎ、最大形のところで、金木犀やクリーミーな蜂蜜までさっそく濃厚にして軽やかに吹き出す。すべてがエクアドルの色気の衣を纏う。滑らかで、スパイシーで、色気は湿度と同義の羽衣を見た。ここがあまりにも麗しいので、あとは衰退を感じさせる。冒頭の枕に篭められたスパイスが現実に引き戻す霊薬だったのかもしれない。気づけばスパイスが美味しいメインへと変わり、今度は胡椒の楽園へ連れて行ってくれる。また幻想。エクアドル産の妖しい胡椒。

 スモールバッチは後になってはなかなか買い難いので、わざわざ特定の物を探さずに、別のバッチを買えるときに買っておくと良さそうだと思い、また何か買いたくなる。時々ブレンドの妙に出くわす。
 しばらくあまり葉巻を手にとらなかったけれど、休憩のおかげか最近ずっと美味しい。味覚が白胡椒を感じやすくなっているような。
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|NextCigar|$150/10|arr 2023/7/3|
|—|5” x 43RG|9.52g|香:3.8~4.3 ave4.0|残7|



ラッパーのない部分から甘やかで、煮詰めたにしては軽やかな果実ジャム、杏仁までは行かないアニスの風味がとろけでる。ラッパーに到達するとやや平凡化する。アンカットとしては珍しい進行で、序盤の欠けているはずの風味に美味しさを一際感じる。草パクチーや松茸など一緒に蒸されているものの、透徹したアニス風味。後半はそこへホワイトペッパーの洋風白調理が始まり、終わる。
|NextCigar|$288/10(¥3,600/1)|arr 2021/11/3|
|—|6” x 52|--g|香:3.7~4.2 ave4.0|残3|



 甘やかな樫の糖蜜はこってりせず、菜の花のまろやかな芳しさに変化する。近場に菜の花畑がある気はとうにしていた。どこからかブランデーの色気がよぎる。樫を樫樽に化かす何ものかがいたのだろうか。
 キウイとのその酸味、キウイは嫌いでもキウイ味は嫌いじゃない。あれは酸味を嫌に助長する食感が特に恐ろしいのだ。風向きの加減なのか菜の花が柔らかく盛り返し、蜜ならぬ砂糖をふりかけてくる。すぐさま深煎珈琲の風味。深煎りにも樫が効いているのだろう。菜の花が濃く吹くと金木犀にも思えてくるが、なかなかそんな現実も夢想も殺されて、再びキウイが顔を出す。オスクーロにして青臭いのはこの黒い物のどこから出てくるのか、胡瓜は味も嫌う。胡瓜もまた絶妙な配合によって幻視されもするのだろう、たまに鼻につく。
 序盤の乾いた樫っぽさは丁寧に仕舞われるような貴重品なので、終盤でこそオスクーロらしさはあからさまになる。ここまで燃やし続けなければいけない。そのらしさというわかりやすい濛々とした黒味は、煙が幾度も通り染み付いた根本が燃える事に因るであろうもの、いわば煙に着火したようなもので、そうでもしなければ出てこない風味、先ず荒い。こうした現象はオスクーロではない場合にも起こる。もしこれがコロラドだったなら「コロラドらしさ」というはずだが、黒いほど「らしさ」は説得力を増す。あるいは「パルタガスらしさ」という有名な終盤のラッシュがあるが、この葉巻の終盤はそれと肩を並べる。こちらはやや暗いラッシュである。



 あっという間に残り3本、今回含め記事を3回書いていて、前2回を読み返してみると香味が全然違うのだが、記事にしていない4本を含め「同じにして異なる葉巻」という感覚までは行っていない。ダビドフのオスクーロとしての面白さと希少感がひたすらある。
|NextCigar|$252/10|arr 2023/7/3|
|—|5 15/16” x 54RG|15.33g|香:3.6~4.3 ave4.0|残9|

 ペルフェクト型の臍までは巻の達人でも神経が届かないのだろう。序盤ほとんど吸い込みえない。かろうじて燃え進むとどんどん完璧なまでに改善される。
 香木めいた樫。それが甘く煮詰められ、水飴にからめられて重くも軽く浮いている。かすかに白木質を残した部位はバニラを幽と放ち、木目の黒褐色の部分は洋酒なのか発酵系の調味料なのか、奥深く、濃くもバニラ等に混じて淡く広がる。
 いかにもダビドフでありながら、ダビドフ茸の香はほとんどせず、代わりになにか稀有な香りを放つのがロイヤルサロモネスのように独特である。花が混じるとますます特異にして鮮明にそそる。鮮明なのに正体不明で朧でどうしようもない。葉巻の芸術とはこういわしめるものなのだろう。何かに似ているが何であるかを思い出せないというのとは違う。何か記憶の奥底の審美眼を納得させるのだと思うのだが、「初めての香り」というのが関の山になってしまう。
 ミディアムフルのボディの下に軽やかな足取りが息づいている。雑味や荒めく味が少ないらしい。要するに胸が足で歩いているわけである。腹や腰や腿や脛無しにして。この葉巻は面妖だ。
|NextCigar|$150/10|arr 2023/7/3|
|—|5” x 43RG|9.52g|香:3.8~3.9 ave3.9|残9|



 急激にキウイ感のある煙、食感ややキンと来るフルーツはいつも急なのだ。それと、こんなダビドフもあったかなという懐かしさ。たしかに懐かしいダビドフが欲しくてこれを買った。アンカットにしては端からよく燃えて、ラッパー無しでも煙が空に漏れない。だからなのか火がラッパーに差し掛かってもとくに変化なく(702シリーズだというのにわからない)、ラッパーによる変化なのかもわからないぐらいの調子で花が綻び始める。もう少し進むと辛味などが増すとわかる。
 美味しい。日本人にとっての味噌汁のようなものなのか、自分の葉巻の原点の味を感じる。
 テラスでお茶というのに合いそうで、テラスでバーベキューというのには合わなさそう。肉も野菜も噛むことなく、脱力放心のていで燻らせたい煙心地。何かを噛むにしてもケーキのスポンジを噛むぐらいしか力がないだろう。この葉巻が力を奪っていくのかもしれない。ふわふわとした軽さが覚醒しているのでカクテルなども立派すぎる。雲を吸って吐き出すように昼の長閑さが無為に流れる。草刈りでもして、草いきれの匂いを混ぜるのも一興かもしれない。
 美味しすぎないところも見事と言える日がある。
|next cigar|$192.24/10|arr 2022/11/26|
|―|6 x 50|19.88g|香:3.5~3.9 ave 3.7|残9|

 ドミニカーナ・ロブストに惚れ込んでトロも買う。ロブストの大きさはやや変則的ながらトロは正統の6 x 50となっている。ふしぎなことに手持ちのロブストをずっとトロだと思い込んでいたので、トロの実物を見ると改めて正統感が溢れ、やっぱりロブストよりも大きいと思う。
 到着日早々にカットするとピリッと裂ける音がしたのでまだ乾燥している(乾燥した保管状態だったのだろう)。とはいえ十分も燻らせたあとには、つまりは充分に通気すれば、乾燥した物としっかり加湿した物とで内部湿度において大差がなくなるような気がしなくもない。
 味わいはわりと安定して、明らかに「旨味の葉巻」で、これに比べるとどのダビドフも旨味が足りない。果たして「メンマ」というもののどこが深いのかそもそも竹に旨みがあるのか不思議に思うのだが、メンマに似た深みを旨味に感じるのはロブスト同様である。乾燥に起因するであろうパサついた味わいにも、回復した時のおいしさをしのばせる。
 但しロブストを持っている人はとくにトロを追加せずともという気がする、基本的に同じ味だとわかるため。ラギート1やペテコロだったら話は異なるところ、ロブストとトロは大雑把に言わずともかなり似ている。おおよそトロがロブストよりも前半落ち着いていて後半しょぼくれやすいぐらいのものだろう。(ロメオのリネアなんて全部同じだろう……?)
 ドミニカーナは現行「2014」の年号バンドが巻かれていて、2014が無くなる前にと暫くヒヤヒヤしながら漸く購入した。2015になってもバンド表記は2014のままなのかもしれない。
 後半は乾燥感が確かに消えていた。予測どおりであるのか、トロにありがちな残念感に倣い、残7センチぐらいで不味くなり消火する。

 マデューロは外側に醤油を塗りたくって中身に味がなかったりする。この中庸色の綺麗なラッパーに包まれたドミニカーナは、ラッパーカラーが明るい物にある軽やかな香味のほうへも寄らず。すべての中間の、ありそうでなかった芯として、無いはずのものがありえたものとして屹立なり凝縮なりしているようで、ブレンドの妙だとかを超えた単純な葉の存在を感じる(これがブレンドの妙なのかもしれないが)。孤高にして中間、なかったものがあったのだから奇妙だ。中間とはなんなのだろう……。
 比べると、元より歪な黒ダビドフは勿論、クラシックな白ダビドフも歪なバランスに感じてしまいそう。途中といわず最初から咲いていた幾つかの花を無かった事にしてしまうぐらいその中間味が濃い。
 ロブストのアタリを思い出しながら書いているので香味の点数に比べてコメントが大袈裟になっているらしい。ただ、ハズレではなかった。
|NextCigar|$130/10|2019/10/30・arr 11/9|
|—|7.25 x 40|11.99g|香:3.0~4.2 ave4.0|残1|

 いにしえ感がふつふつとしている。複雑な土の匂い。牛蒡のエステル漬け。果実味の無いアルコールのようなエステル、除光液。
 序盤、牛蒡のせいなのか、よくわからない苦味が軽さの中に立って、よくわからなかった。5センチも進んだ頃からこれを葉巻だと判断できるような香味が整う。
 それは主に花だった。葉巻とは主に花だったのか、しかしこうなると牛蒡の残滓も光り始めている。不味そうな表現になってしまうが、一度死んだものを復活させた、リサイクル的な美味しさ。
 辛味が強まる。辛味が治ると、いにしえの香味が戻りくる。さすがミレニアム、さすがランセロ、さすが牛蒡。時、形、全てがこの変な美味しさにバランスよく寄与している。
 最初の牛蒡とはこの事だったのか!と驚くべきプロットを見せられるようで、苦味は穏やかに練られて自然な土に返り、深々と土に埋まる根菜の生気のみが花を咲かせる。燻銀の渋さを還元していく。この土壌には初期ダビドフの高貴な羽に煽られる松茸の胞子も感じられる。
 ここからますます花盛りを迎え、まさに葉巻に他ならぬものを燻らせていて、葉巻の味のみがして、まさに当たりを引いた心地がする。葉巻に初めて感動した日を思い出させる。
|next cigar|$118/5+¥2400/10=¥2700/1|2021/1/5・arr 1/17|
|―|5 1/8 x 52|16.22g|香:3.5~4.2 ave4.0|残2?|

 『スモールバッチ・オスクーロ』よりも『インテンソ』の方が黒いかもしれない。
 黒い見た目に、緑刺す香りがくる。熟した緑。紅茶とマデューロは製法的に似ているかもしれないが、紅茶ではなくマデューロ的な何か、しかも緑。刺しものから、穏やかな膨らみを開始する様が美しい。強面だったのに。
 革バッグを丸ごと煮詰めた花スープの味わい。革バッグのスープにマデューロの外側をカリッと焦がしたパンを添えて。膨らみが小麦そっくり。
 この感覚をなんと言っていいかわからなかったが、ふと葡萄で合点した。ときどきキウイのようにキンとするところのある葡萄。熟れきっていないが芳醇な甘い香り。それでいて一口ごとに完熟度を増す葡萄。一度葡萄だと思うとますます葡萄らしくなってくる。
|NextCigar|$159/10|2017/10/12・arr 10/19|
|—|6" x 54|20.43g|--|残?|

 黴臭いようなダビドフタケのキノコ節が炸裂する。最近の黒ダビドフ以降の新作(新作の白ダビドフ含む)に慣れてしまうとプーロドーロまでもがクラシックに思える。味が濃いという意味でなく、キノコが濃い。しかし、他も濃い。クラシック系の場合、濃い場合には煙にバターを覚えるが、これは湿った焼き菓子、レーズンの雰囲気。乾いたところもある。シナモン。食用花。素朴な小麦の旨み、焦げ。クリームはない、ここが特徴か。
 昔日の白バンドから昨今の黒バンドへの架橋の上にまんま佇む味わい。おそらく最近もこの架橋は再建されていない。あの頃はプーロドーロがダビドフで一番濃かったというか、プーロドーロを黒と感じた。
|next cigar|$132/10+¥2400/10|2022/2/4・arr 2/15|
|―|6 x 50|--g|香:3.9~4.3 ave4.2|残6|

 三月半を経て再挑戦。これまでと同様の始まりに不安を覚える。軽やかさからダビドフクラシックを思うものの、香味はまるで異なり、松茸香は極めて微量で、代わりにココアパウダーが筒の中をたっぷり分子運動している。
 ここからなだらかに落ちていくか、無変化で飽きさせるかするのがこれまでのこの葉巻だったのだが、不思議な美味しさを感じ始める。これがまた、これまで同様あまり変化なく長く、なだらかに恍惚に誘うのである。急峻に美味しくなったり、そうでなくなったり、そういう呼吸がなくて、延々と、遅々と上昇し始めていたのである。変わらぬ軽やかさはまさに羽で、ココアパウダーが天上に誘う不思議さ。これまでのダビドフで似た傾向の物が全くないだけに、知った花が加わっても、花が加わったと言い得ないような珍かな感触を覚える。それが果てしなく長い。
 パンチこそないものの、軽めのダビドフが好きで、その軽めのダビドフに飽きた人にはこれ以上の物はないかもしれない。安売り店舗の限定品ゆえ如何わしいと思う人も多いかもしれないが、侮れない。同じ価格で買えるなら、10本追加してしまいそう。

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