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  源氏物語「葉」
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|cigarOne|¥24190/24|2018/11/11・arr 11/20|
|RAG ABR 18|5 1/4 x 44|重量:??g|香:2.7~3.8 ave3.5(飲物補正あり)|残14|

 鶏舎・牛舎・豚小屋・藁置場というより、おしっこ臭い美味しそうな匂いがかぐわしく、半年余りで変貌を遂げている。用に切り出した杉のおしっこ臭さとほぼ似ていて、トリニダッドらしい杉を着火前にも隠しきれないで、滲み出てしまったものらしい。杉を絞ったような。
 購入し到着後すぐ着火した一本は美味しくて、ついでもう8本燃やしてしまった物はあまり美味しくなかったが、この10本目は何かを期待させる。

 空吸いすると杉のほかにシェリー化した葉のような濃密な酸化のコクが感じられる。

 着火すると、以上から導く予期を裏切らずに、それでも何か名状し難い煙らしい複雑さが加味される。名状し難いというだけでは全く書く意味がないので、何とか書きたいとは思う、というよりそもそも、たとえ書かずとも、物は分析心に訴求してのみ美味しさを高めるのかもしれない。換言すれば、「これは何だ?」という疑問を引き出すことが美味しさの秘訣なのではないかと。
 一口目で、予期していない花も既に少し香った気がした。そういう多様さはさておき、予期通りの味が出るというのがまず珍しい。

 時間を経ても、蔵する香味はあまり変わらず、バランスの動きとして花が出しゃばってくる、と同時に滑らかでないえぐみが口に残るようになる。花は金木犀ではないようで、やや白いような。
 しかし花が黄みを帯び、おしっこが急速に煮詰まってくる。煮詰めているのに、鮮やかな黄の色が失われないことに不思議さを、感じようと思えば感じる。この程度の言語遊戯でさえ、美味しさを高める可能性がある。味が濃くなったのだから煮詰まったのだろう、煮詰まったのだから黄は茶になるだろう、でも見える花は黄のままである、感じる味わいも黄のままである、茶色いといえば葉巻の葉っぱがもともと茶色くて、茶色い味わいも発しているのだから、花の茶色は葉の茶色に吸引されてしまったのかもしれない。
 そうこう考えているうちに黄のカスタード、卵の黄身にバニラに、花の汁を混ぜた強粘性のミルクがトロリと出てくるのである。黄と茶の色相関と似たり寄ったりな勾玉巴だが、トロリとして、極めてドライであるから、トダリとしている。トドはト、ロラはダ、リイはリ、音声学的に言っても、まさに「トダリ」としか言い得ないトリニダッドくさい味わいがする。
 さて、えぐみを消去するに、飲み物を変えるほかない。
 極めてドライな「ジン・生ライム・純ソーダ」から「白シメイ」に変更。白シメイは昔から葉巻に合うビールとして記憶していて、ベルギービールとしては割と気軽に購入できる。
 案の定、煙がソフトな膨らみを増す不思議、この不思議はとくに不思議でない。白シメイは白なのに小麦ビールではない(と思う)のだが、小麦感に優しく包まれる。そうして花の黄色がいっそう鮮明さを増して、不思議と白濁せずに鮮明さを増して、なおココナッツ化もするのである。小麦のうまみのおかげであろう、えぐみも鳴りを潜めて静か。えぐみはもう葉巻にきりりと整ったボディを与える良点にすぎない。
 白シメイに頼るところが今回のこの葉巻のダメなところなのだが、白シメイありきで計算された葉の味だと思えば最初から白シメイを指名しなかったほうがダメなのである。
 それにしても、おしっこを忘れがちにはなるが、段々と美味しさを増す葉巻というのはこれのことで、黄色いのに橙色の金木犀が満開を迎える。その橙色というのが、橙というのか、まさに日本の巷に咲く鮮やかな色で、またはマリーゴールドで、くすみが一切ない。えぐみが虫食うこともない。虫は花でなく葉を喰っている。今の主役は花なのである。かと思えばハバナ葉の風味も濃縮されて提示されてくる。なんとも豆な構成である。まめまめしい奴め、と言って親愛を込めて肩や頭を叩きたくなる。葉巻に肩や頭があればだが。
 白シメイがなかったら、どうなっていたのだろう。ここで白シメイを外す、という度胸はない。なのに白シメイは330mlという頼りない分量で、延命を図り、ちびちび含む。
 だんだん美味しくなったのに、終盤は特に変哲なく、えぐみが際立って思わしくなかったり、かと思えば全盛期を彷彿させたりと、病床のおじいちゃんをまことしやかに体現している。病床のおじいちゃんの具合が悪い時は白シメイも効かない。あとは魂がすうぅっと消えていくんだよ。
 根元に近づいて、熱くなってくると、暑い真夏に乗ったおじいちゃんの車の味がする。その車は、工業の鉄と油と畳の匂いがした。そこに若干の花を載せているのは脚色である。

 巻きは良いようでありながら、どことなく蒸し蒸しとつっかえるところもあるような、まあまあ良いものだった。
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