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  源氏物語「葉」
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|6" x 54|seriouscigars|$19.10|重量:+2(20.76g)|算出:+5|香味:+4|

 ダビドフのバンドは白地に金文字で、プーロドーロもそれなのだが、このバンドだけは白地がなく100%金色である。しかもダブルリングであり、物惜しくフットのリングを外してヘッドに付けてみたりする。リングにはあまり執着しない派閥なのだが、実は金箔が貼ってあると思いたい。
 一口目から急激なシナモン、甘い。清流のように、清流のようなのに甘い。火種が全面に行き渡ると香ばしさと甘さが落ちて藁っぽくなる。やや豚臭く、豚のコクがある。大きさに加え、詰め込み過ぎたかのような重量、それから着火前の香からしてなんだかとんでもないものだったが、この豚臭い旨味に重ねて最初のシナモンの甘さが戻ってくると、まさに期待どおりのとんでもないものである。安っぽいはずの藁は邪魔ではなくむしろ気が利いているかのようで、非常に落ち着く風味に感じられる。

 味には非の打ち所がないが、重量に因る密度の為か、最近極太葉巻に馴れてしまった為か、太すぎて硬すぎるのに、所作のバランスも良い。太さの割に煙が少なくしかも味が濃いのがなんだか良いのである。昔は煙量豊富な物ばかりを求めていたのに。
 雑味は皆無で、呑み込んでみると軽いが、軽さを感じさせない蜜の重みを伴う味がする。蜜蜂や豚のいる農家で極上のひとときを過ごしている、何処の豪農だろう。自分の邸でもなく別荘でもないところがよい。そんな友達がいたような気がしてくるのである。豚なんかを飼っているのだから旅館ではない。実家でも祖父の家でもない。架空の友達。
 2センチ進むと鼻につんと花が来る。
 仕方なくも要領を得ない文をこんなに沢山書いてまだ2センチなのだが、もうこれは廃止になる前に箱で買おうと思う。エミネンテスとあまり価格が変わらないが、金色のヒガンテスこそ究極のプーロドーロという気がする。
 何だ、突然馴染みある、しかしとんでもない高級な香味が来た。世界一高い杏仁豆腐の味である。カスタードの風味がする杏仁豆腐、極端に濃密な香気を放つ。楊貴妃の吐息かと思った。しかし杏仁ではないかもしれない、段々味が変わって来たのか、クッキーかもしれない、あの白く細いパラパラが乗ったクッキー。あの細く白いパラパラは何だったろう。アーモンドだったような気がするが、そのアーモンドにはいつも特定の香料が効いていた気がする。それにしてもこの葉巻の煙は焼き立てクッキーの香にもそっくりである。まろやかな小麦とバターの香。この段落を書いている最中に15口は吸っており、うち二口はまことに絶倫であった。15口全て絶倫だったら明日学校を休もうと思うに違いないのである(学生ならば)。そしてその学生は葉巻の研究に勤しんで落第を喰らう。私にとっては音楽がそのようなものだった。学生のくせに毎月8万円分もレコードを買って毎日無理矢理15口の連続を構成していたのだから今思ってもなかなかの者なのである。葉巻は入れ替えが利かない為につらかろう。
 クッキーの恍惚が落ち着かぬ間にまた明らかに変化し、蜂蜜金木犀草が染み出る。
 灰はプーロドーロの特質らしく朝起きて髪の毛が爆発したような状態になるが、さすがに密度が高い為か、落ちない。
 再びクッキー味を取り戻すが、やや酸が立つ。だがもはや+5を点ける予定なのだ、酸には消えてほしい。
 約10分こらえると酸が本当に消える。灰を落としたお陰かもしれない。美味しければ美味しいほど吸う人は灰に敏感になると思うのだが、なお灰は長い方が美味しいというのは確かにそうだと思うのだが、この葉巻はどうも灰が短い方が美味しいようである。実はあまり関係ないかもしれないが。
 此処で木の風味が出る。キューバ産でもないし、これまで木も革も土もなかった。すると紙の風味にもなり、終りを知らせてくる。残7センチぐらい。
 最終盤はあまり美味しくないのに長い。美味しくない物を無理して残3センチまでやると多少気持ち悪くなる。
 いつの間にか葉巻苦学生になっていた。二口の超絶美味はそれだけで嘗ての五指に入るものだったが、全体に+5を与えるのは苦しい。与えないのも苦しい。要するにこの葉巻には音楽が足りない。音楽を同時に聴けば良いというものでもなく。

 今夜(昨夜)は雨が少し降って、寒過ぎるし梅雨にはまだ遠いけれど、春が近づいてどことなく梅雨めいてくるとロッキーパテルを茫洋と試したくなる。夜と海はどちらが広く深いのか。ロッキーパテル(1992)はその影を縫うような梅雨の夕刻の味わいなのである。ダビドフなのに何で突然ロッキーパテルなのだろう。ダビドフには風情が足りない気もする。全く以て食後のデザートのような物で、デザートに豚を使うのも凄く、贅沢である。
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