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  源氏物語「葉」
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|7.6 x 49|cigarOne|$20|重量:+1(15.71g)|算出:+1|香味:+2|

 思いのほかナッツが強い。あまりホヨーは試した事がないけれど、このダブルコロナにしか感じないナッツ感。粘り着くキャラメルほどではないものの、葉自体の(というのもおかしな話だが)コクがしっかりした、つまりダブルコロナはいつもこうなのだろうと思わせるほど固くそれがある。やや乾燥した大福の皮のように。餡は取り立てていう点のない葉巻だった。この点こそホヨーらしいと思っているのだが。静かながらふくよかで。
 癒し系というか赤十字っぽい印象がある銘柄なので、夏に合う。夏というよりも、夏の冷房の中、という感じ。いや、葉巻についてもう何も考えたくない、という気分に合わせているだけなのかもしれない。つまり怪我人を怪我人のままにとどめるのか。
 当れば凄い葉巻なのだという感じはひしひしとしている。
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|LOT JUL 10|4 4/5 x 50|coh-hk|$141.10/25|重量:0(13.28g)|算出:+3|香味:+2|

 灰が落ちた、その前に。
 塩の味わいが確実にある。その前に塩というものは結晶となって果実の代わりに実る事は無い。濃い蒸した木の匂い。真夏の松林のような。松林は真夏でも地面に陽が届く。そのまえに広葉樹の葉が天蓋を覆っていないからだろう。目の前の松林は天も風も抜けているのに、あまりにもの湿度の高さがあり、松脂がもだえて枝から氷柱のように滴っている。その前に、松林で拾った葉をその場で丸めて吸っているような、しかし松の葉は丸めるに適さない針型で、この林に他の種の樹木は植わっていない。
 その前に、松脂は表面こそベトついているものの、折ればポキッと折れて、中は乾いている、氷柱が乾きものででもあるかのように。その前に、この林もその前は冬だった。その前に、松林というものは一体に盆栽のようなものでなく、無数の松が凡庸に一律に直立し、赤松の赤が光を蒸して全域が夕焼を待たずに薄赤く染まっている。その前の赤く剥がれた樹皮と赤く枯れた針が地面にも堆積している。その前に、目の前の松林を歩いてもうぐるりと林の中央に立っている。もっとも、中央が何処だかわからないほどの広い松林である。その前からフアンロペスの葉巻はこういう切ないような人工的な自然の景色なのである。その前のと比べると蒸した湿度感と林立具合が違い、時に木が一本しかなかったり、0本だったりする。それぞれハズレではなく、葉巻が何本でも木が何本でもひたすら淋しいのである。その前に赤と錆と淋しいとを掛けたのかもしれない。その前から、赤というより錆朱といった方が色味が正しいかもしれなかった。その前に、風が吹いていないのに風と言ったのは、常に何処かから待つでもなく花が匂ってくるからであった。この前に待つと松とを掛けたのであった。その昔に、藤原定家がこうした待つと松とを掛ける有名な和歌をしたためていた。この前に淋しいは林なので寂しいのではなかった。そしてその前に三水のように涙のように蒸篭で蒸した松脂が蒸して滴ったのである。定家がしたため、松脂が氷柱のように滴ったのである、夏に。
 まさにその前に、着火前のこの葉巻はオーパスⅩに次いで良い匂いで、まるで塩が利いているかのような濃い匂いがする。その前に、次に蒸風呂というか、語感では蒸風呂だが、サウナの香がし、匂いの温度と湿度が高い。その前に、サウナとウナコーワとは似ていて、林にはウナコーワが必須であった。その前に、蚊は松のような針を備えているからである。その前から、まるで塩味までもが匂ってくるような濃さである。その前にこの葉巻は13.29gもあった。その前は13.28gと書いているが。その前に、松葉の針は、13.28gが思わせる吸い込みの悪さへの串刺しの不安であったのかもしれない。不安とフアンとを掛ける計量の前には風呂に入ったのである。風呂の前には死んでいた、という事は無かった。風呂の前にこれは下手な文学ではないからである。計量の後には風呂に入らなかったが。つまりその前に……
|MLO DIC 11 (2022/4000)|7 1/5 (182mm) x 50|cigarOne|$247/10|重量:+1( 17.31g)|算出:+5|香味:+4|

 端から淡さと甘さが来る。とろりと淡く、軽い。この大きさでこの軽さというのは初心に返り「葉巻とはこういうものなのか」と驚くのに適している。「こんな大きいのを吸っていたら死んでしまうよ」と思っていたあの頃である。パンチっぽい円いペッパー入りのスパイスも穏やかに香って銘柄らしい特徴を落とさないでいる。
 着火前に空吸いすると高貴なキャビンの葉の香だったし、着火後も上質な葉の感覚がひたすら続く。と思う。
 一度灰を落とす頃に突如ホクッと芋めかした膨らみが来る。この一撃が大変良いのだが、これ以上は膨らまない。以後、時々、より弱く膨らんだり萎んだりする。そのようにして花の密の甘さが近付いてくる。どのようにして、思えばポリフォニーのよう。もっとも芋までは旋律の感覚がなかったが、花が旋律を誘うらしい。味気なくいえば花が旋律を癒着させるのである。だが葉巻には味がある!
 序盤で円かなスパイスに混じっていた草が終局で目立ち始める。全体の緩徐にあって、この草は刺すもののように漂う。
 更に後、初めて樹木が生え、木と花と草が三つ巴になると勾玉のように丸くなる。こうして足早なワルツになって転ぶのである。転んでは起きる。七転び八起き、七転八倒、7回転ぶのは確かだが、8がどちらなのか、その後も甘く長く続いて片目の達磨に終る。
 心地よい苦味が加わり、香味が先鋭化し、此処にきてカスタードが小気味好いカスタネットのように加わったりと、変化の妙もさることながら、終盤も相当に美味しくなったりする。フルーツなどに至らず、葉の滋味に淡いまま終始するのも良い。通奏低音というか、通奏中音の葉の香り。
 二本中二本が当り、結局は10本中4本は外れる気がするけれど、もう一箱買っておいた方が良い。優等生的なので+5にはならなかったが、優等生が+5になればそら恐ろしい。優等生が当る確率は優等生ではない葉巻が当る確率と同等だろうと思う。優等生だから+5にならないという訳はたぶんないのである。+5の葉巻など普段は+3以下の劣等生なのだから優等生は+7はいくと思う。お前は誰なのだ?
|OUS OCT 09|6 x 50|cigarOne|$198/12|重量:+1(14.34g)|算出:+1|香味:+2|

 夕日に映えたかのように赤みがかったライトカラーラッパ。夕日といってもまだ赤らみはじめたばかりでラッパが燦々と明るく鳴っている。この箱の、残二本のうちのこの一本はこのように赤いがもう一本はこれほど赤くない。思えば今日夕焼が綺麗だった為に赤い方を選んだのかもしれない。ビルの隙間で肥大化した夕焼、林の木立を黒い影絵に変える夕焼、これらの反対側は満月が昇っていた。まったく別の二カ所で夕焼を鑑賞した。ところが夕焼の事はすっかり忘れていた。
 今ではトリニダッドのロブストエクストラが一番の高信頼型の葉巻になっている。味気なく感じるきらいがあるかもしれないが、この当たり障りのない薄味を穿き馴れた靴のようだと思えばこの煙がよく馴染む。もっともその靴が地上を浮き始めるのである。あるいは濃厚化して地に着く事が浮く事にもなる。
 鋸で切り出したばかりの杉の鮮度があるのにそれがまろやか。樹皮のナッツの殻のような香ばしさには焦茶色はもちろん茶色味もほとんど見えず、香ばしいにもかかわらず滑らかなペースト状の白いものである。これまた滑らかな黄色い花が添えられ、そこに緑草がバジリコの風をしっかりと纏い、その緑が粘土と小学生以下の人間の吐息と山椒を噛んだ瞬間の感覚などを混ぜたような感覚、要するによくわからない感覚に至ったりする。なるほど、もうあれから五ヶ月も経つ、前回より断然不味い。
 最序盤を過ぎると急下降して再浮上しなかった。不味くて吸えないというほどではないけれど、紙巻程度になった。私は紙巻は根元まで吸うたちで、これも根元まで吸った、悪いというほど悪くない。
先程、葉巻の重量を量ると10.00という電光表示が出た。しかもピタッと止まって00.01gもぶれず、折から、着地に成功した内村航平のような感覚だった。(トリニダッドEL2010にて)
|XAN JUN 05|7.6 x 49|シガーオンライン|¥1429|重量:+2(19.32g)|算出:+3|香味:+3|

巻き固し、だけど悪くなし。
七年の長きに、枯れた趣、いとわろし、の反対。
納屋の懐かしきに今日もまたサンルイレイは納屋っ照る。
幽かな蜂蜜の甘さが白い甘味に木の揮発と競ってる。
照るハ太陽、夜っ照ル。南半球よルッテル。
花咲くは中頃、がらり変わって咲くはいとおかし。あたまおかし。いとわろし。
太陽くるる。テルッテル。
淡き味、香ばしき。渋き味、薄し。
枯木なる水々しい花咲く。緑色の茎っぽき。
常に余韻のごとき蕭々。
本体なき煙、焚火からも遠し。
冷房器具を止め、熱帯夜に遊ぶ。遊んで転ぶ。葉に転ぶ。
小枝ぽきぽき。葉に転ぶは夏夜。朧な霧もなし。
夏に秋、秋に冬、冬に春、秋に夏は夏に夏。
最中の衣剥がし、アイスなし。
椅子の脚の如キ堅キ乾キ棒状の、淡き趣の塊。
木椅子の部品を外して趣くが如し熟れた風体。
椅子にて眠る。火事起こる。火事起こらない。アイスなし。
ほの見えるほの字型、葉にホ・色ハニほ、葉火付剥炎ッホ。
ハニは蜂蜜、ホは衣。夜風暑くも、アイスなし。夜にアイスなし。南半球夜昼し。
昼しあたま、もやしなし、ナツメヤシもなし。
湿度にうだって喉乾き、乾いて雑味すずし、いとよろし。夜風なし。

なんだこれ これなんだこれ サンラリル 太陽狂う サンルイレイ
ラリルレハニホ サンルイレイ
|TAU JUN 11|166mm x 52|シガーオンライン|$490/10|重量:+1( 16.69g)|算出:+2|香味:+3|

 底知れぬ雑味のように思います、多分、違うかもしれませんけれど、底知れぬ雑味ってなんだか良い気がしますけれど、よくわかりません、すみません。ええ、製造後1年、購入後3ヶ月が経ちはしたのです、多分、よくわかりませんが、箱にはそう書いてあります、私には信じられませんが、ええ。私がこれを買った事も信じられない状態です、すみません。あいすみません。
 軽いです、昔たった1本だけ吸わせていただいた時には、たった1本で誠に恐縮の限りですが、あれは重い印象だったと思います、私の記憶が確かならば、私の不確かな記憶がですけれど。軽率かもしれない私が軽すぎたかもしれないので重く感じたのかもしれません。すみません不確かで。でも今回は軽いようだったのです、私自身が前回の反省で重くなったのでしょうか、私は重すぎやしないでしょうか、でも今回は最後まで吸い疲れしないというか。私は神経症で疲れています、多分、葉巻が疲れているのではなく、私が疲れています、おそらくですが。よくわかませんが、いつもあいすみませぬ。
 そうだと思います、まろやかだったと思います。濃い物がまろやかだったような気がするのです、気がするだけですけれど。はい、疲れているかもしれないので間違えている可能性が大です。可能性って何なのでしょう。
 そういえば吸い込みはかなりスカスカの部類だったと記憶しています、やはりまったくの記憶違いかもしれませんが、それで吸い疲れなかったかもしれないのです。なんといったって信憑性に欠けますが、本当に申し訳ないです。
 ココナッツ、そうかもしれません、もっと華やかだったと記憶していますが、もっと焦茶色だったかも、記憶など私に限っては無いでしょう。私には感覚さえないのかもしれません、すみません不甲斐無く。あれがコイーバ、そんなはずはないでしょう、私がコイーバなんて吸うはずがありません。円い感じはあったと思います、思うだけですけれど、ええ、すみませんが私が思っただけなのです。私だけが思ったみたいで恐縮です、すみません。信じて下さい。私には私が信じられません。
 終盤に辛味が? そんな事もあるかもしれませんね世の中には。私にはよくわかりませんが。
 煙ですか? 煙の事などわかりません、あいすみませんが、まったく私にわかるはずがないのです、煙の事など恐れ多くて。
 ああ! この指は火傷です、確かに! しかし何時火傷したのかわかりません、多分わかりません私には。葉巻と間違えて指に着火したのかも、もしかすると、もしといったってそんな事はありえないかと思いますが、根元まで吸ったのかもしれません。まったくもって疑わしい話ですが。火傷などまったくもってしていないかもしれません。私の指が私の指かもわかりません。これ、勝手に動いていますけど。
 こんなに大きいもの、私が吸うはずがないかもしれません、まったくもう、そんなに大きいものだとは思わなかったです。すみません。小さいもののように濃いものがふやけた感触はまったくもってありました。かといってふやけ過ぎてはいなかったと思うのです、多分、おそらく私ごときがですが。一言でいえば厚顔無恥だったと思います、勿論私がです。葉巻の皮が厚かった、そんな事は断じてありますまい、多分、おそらくですが、誠にあいすみませんで御座います。
|5 1/2 x 52|uptowncigar|$175.95/10|重量:+2(18.66g)|算出:+3|香味:+3|

 購入して20ヶ月経つ。残り二本のうちの一本。少し慎重になる。
 ダビドフでずっと良い事がなかったが、「今夜ダビドフを吸ったら美味しいよ」という無性に美味しそうな啓示があった。啓示というか心の声。
 この葉巻の重量をこれまで量らなかったが、量ってみると吃驚で、18.66gもある。購入当初からぱつんぱつんで着火後にラッパーが破けたりしたものだったが、まさかこの小ささでここまで重いものだとは思わなかった。串を刺す余裕など全くなさそうなのに、当然串を刺す必要はなく、ドロー固でも吸い込めない事は全くないのである。超重量級というか、大袈裟ながらヘビー級がモスキート級に参戦するかのような反則的な重さにこの葉巻の秘密があるのかもしれない。秘密といったって、今までこれを秘密というほど美味しく感じた事はないけれど。だが啓示があっただけに今日はなかなか美味しい。
 ダビドフ特有の松茸の香は基調にある。その、このむちむちでカチカチの頑丈な葉巻から、金木犀が果実化したかのようなメロディーが啜れば啜っただけ出てくるのである。啜っても啜っても無くならないような無尽蔵の美味しさを感じる。さすがに煙量は少ないが、味が薄い事はない。白粉のような柔らかさも、白粉のように濃い。ラッパーも破けず、全く以て良い巻きである。銜え心地が全然違う。こういう固い物から固くない煙が欲しただけいつまでも流れ出てくる。煙量は少ないが。
 松茸、金木犀の果実、白粉、主原料はこれだけなのに、良くも悪くも巻きが大きな珍しさを齎してくれる。時々胡椒少々の精妙なスパイスを感じもする。
 後半になるとやはりラッパーが裂け始める。「やはり」などと馴れた事を言っているが、「着火後にラッパーが徐々に破け始める」という現象はこの箱以外では見た事がない。
 また後半には酸味が立ち始める気がする。気がする程度だが、酸味は柔らかさを著しく減衰させる。変化は良い方へは向かない。序盤が一番美味しい。

 あまり関係ないのかもしれないが、ダビドフこそ十年ぐらい寝かせた方が良い気がする。キューバンダビドフというのは既にして十年経過しているが、キューバンだから美味しいというよりは十年だから美味しいのではあるまいか。兎に角何方かキューバンダビドフを五本下さい。
 それにしても初めて吸ったドミニカンダビドフNo.2の美味しさは何だったのだろう。舌が肥えたとか、その程度の物ではなかった気がする。同じような物なら、彷彿とぐらいはするはずなのに、泡一つ立たない。今やダビドフでずっと良い事がない。啓示があったにもかかわらず特別良いものではなかった。松茸の香に時々高貴な印象を受けるだけで。
|TUR JUN 08|6 2/5 x 42|cigarOne|$215/25|重量:−1(9.63g)|算出:+6|香味:+4|

 緑色の深い海を覗くようなおどろおどろしい美味しさ。モンテクリスト(No.1)というものはやっぱり他の銘柄とは根本的に違う。海に存在する気の遠くなる溺れるような深さがフルボディへの怖れに変わるとかえって軽くなる。だが濃い。白味までもが濃い。辛みが出ても濃さに掻き消されている。それが「濃いのに強くはない」という全音音階のようなまどろみに収まっている。鼻を突く胡蝶蘭の気高い香が濃さと鬩ぎ合う。恐ろしいのに海女のように軽い。中型遊覧船のすぐ脇で海女が潜っているのである。スクリューに巻き込まれてしまわないか。
 全く以てこの美味しさが何なのかわからない。緑色の海を覗くようなおどろおどろしい美味しさ、という一文で限界だった。中盤でスパイシーになったのは憶えている。茶色い葉巻がこうも深緑だという事に禁じえない驚きを禁じる次第である。かくしてよちよちと遠浅の海岸で泳ぐのだった。けっして青い海ではない。
 この箱はモンテ・エスペシャルの2011年の箱とは次元が違う。久しぶりに葉巻が葉っぱの最高峰だと疑わなかった。「深い深い」といったって大抵その言葉自体が浅さを満載しているものだが。一言でいえば何だって「何がなんだかわからない」ものなのかと思ってしまう。浅いものも不可解であれば簡単に深くなる。もっとも簡単なものがもっとも不可解らしい。
 濃厚ながら、葉巻の不甲斐無さを払拭する一服の清涼剤だった。後半は落ちるが、落ち過ぎはせず、前半のみで後半を挽回するほどの物。全く時空が歪んでいる。
 後半の後半になるとあの口臭のような甘くて刺激的な香草が伸びる。それが金木犀に燻されている。
 木か革か土かというのもまったくモンテ風で、もはやまったく木や土や革を感じない。
 全体に雑味の暗雲を覆うほどの分厚い暗雲が支配している。雨は降らず、雨の降る間際の暗雲こそが美に気付かせるのだとしたら、これほど美味しい暗雲はない。全く以て緑色の海と同じ話だが。

 三ヶ月前のこの物より3gも軽くてスカスカだが、軽さなりの良さがあった気がする。とりわけ序盤は海としかいえない。
|6 1/10 x 52|cigarOne|$13|重量:0( 13.72g)|算出:+4|香味:+3|

 5ミリほどの口径に切ったが、吸い込みは良い。
 一口で「旨いハバナだ」と思った。ピーナッツペーストの最高級品でも舐めたかのような滑らかさのある葉の香ばしさ。酸味や着火時の焦げや諸々の雑味や不完全感がまったくなかった。今までで一番美味しい一口目である。
 その香ばしさと入れ替わるように優しい柔らかい花がすぐさまカスタードのように薫ってくる。此処できつい草が目立ったりせず、全体がなんだか「マイルド」である。葉の香ばしさも消えてはしまわず、今度は全体を引き締めつつも大らかに全体を覆っているのである。頑固で強面のNo.2の印象だったからかなり意外な進行である。
 地元の人でも近寄り難い古臭くて黴臭いような洋食屋に入ったら中身は全然違ってとんでもなく美味しかったというふうな感じである。そういう店はテレビや漫画でしか見ないけれど。
 ……序盤こそ葉巻の最大値だったが、段々と日常の庶務のような感覚になってくる。変化の巾が薄いのか不味い方へ変化したのかわからないが、何か日常の特定のアレに似ている。アレがなんなのか思い出せない。似ているというか、それそのものなのに思い出せないとはどういう事だろう、それそのものだから思い出せないのか。こういう場合、比喩の方が簡単である。
 序盤の意外さがいつまでも続くか、或いは着火前の期待どおりの頑固な荒さが出てくればもっと良かったのかもしれない。優しいまま、雑味も出ないのである。普通に考えればこれは非常に美味しい。どうして序盤のみに高評価を与えるのか、その方が不思議なのである。でもなんだか、種のバレた手品をずっと見ているような気持ち悪さがある。
 最終盤ではロッテの黄色いフルーツガムのような風味も加わる(まだ製造しているのだろうか)。この思い出になると心地よく荒い辛みが加わる。
 最々終盤に至って、ずっとライトボディだったものが見事に心地よいフルボィに変わっている。それも強すぎず、アレを見事に克明に体現し始める。アレがなんなのか、依然わからないが、ふと一般的な人間の口臭ではないかと感知した。臭い口臭ではないが、あるいはすこうし大蒜を昨夜食べたのかもしれない。第一のアレと第二のあれとが同じかどうか早くもまるで忘れてしまったけれど(アレはもっと草っぽい口臭だった気がする)、思えば葉巻にはこういう口臭的要素が昔からあった気がする。あるいはそれがこの葉巻にどことなく練りすぎた練り物のようなのんべんだらりとした気持ち悪さを加味しているのかもしれない。それでも、練りすぎても練りすぎないマイルドな葉の香ばしさなのだが。
 落ち着いているが、変化がないわけではなく、根元まで色々と衰えなかった。序盤の美味は終わる頃にはほとんど忘れてしまったが。

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