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|5 x 54|seriouscigars|$5.80|重量:+1(14.55g)|算出:+3|香味:+2|
オリヴァ・セリーVはフィギュラドを五本試した事がある。あまり葉巻慣れもしていない頃、約二年前の冬、雪が降っていた。
雪に映えるような斑も油もない乾いた均一焦茶色の綺麗なラッパーで、かちりと重く巻かれて吸い込みが軽い。新鮮なのかアンモニア臭がある。
着火すると驚くほど鮮度を感じる芳香、何物の鮮度か分からないがなんだろう、何処かで嗅いだ花か香水の匂いである。はじめから甘い。二口目からすぐに乾いた芝生や麦のようになってくる。汗臭さというか、疲れてしまうような、安っぽい葉の味である。
火がフット全体に回った途端に途轍もないフルボディになる。辛いというより、重さによって辛味が出ている。味わいが重いのではない。
ハバナにある葉巻独特の深みというものが一切ないが、新世界葉巻の一つの動かし難い結実なのだと思ってしまうようなところがある。ハバナの深みこそないが、ロメオのフルーツなどは序盤から出てくる。紅茶は安いものでも一応紅茶だが、喩えが違うが、葉巻はハバナだけが葉巻で、他は葉巻とは別の物に思えてしまう。どれかといえば紙巻の偉い物のようなものに思える。ハバナと紙巻はまったく別種だが、これはそうではない。
外観から推察するようなほろ苦いカカオの香とコクもなくはない。そして理由は分からないがセリーVにはいつも何か銀色の煌めきみたいなものを感じる(この煌めきを初めて感じたのはダビドフミレニアムトロだった)。燻し銀なのか、確かに小学校でやった酸化銀の実験を思い出しもする。強さによって実験の危うさを感じもする。また危うさが寒い夜に合う。凍死のイメージかもしれない。
中盤までは雑味も特にないし、優しい風味もなくはない。金木犀なども少し咲く。ただハバナのようにハバナ葉による統一感というようなものがない。したがって、それが無いだけで、落ち着きがなく感じられる。
灰は白い銀色で、ラッパーに映えている。
飽きて雑味を感じ易くなってきたところに、序盤のあの甘やかな香水が再びかぐわしく匂ったりする。終盤に突入するとまるでハバナのように全体が濃く激しくなり、かといってフルボディを今更強めるのでもなく、ハバナの風味なくしてハバナを吸っているようだった。おそらくハバナでお馴染みの草が効いてきたのである。
なんだか美味しいのか美味しくないのかよくわからない物だった。微かにハズレではあるらしく、かといって当っても大当たりという事にはならないと思う。
ほぼ二年ぶりに買ってしまったのも独特の燻し銀が忘れ難かったからだった。大当たりするのではないのに、また買ってしまうかもしれない。
オリヴァ・セリーVはフィギュラドを五本試した事がある。あまり葉巻慣れもしていない頃、約二年前の冬、雪が降っていた。
雪に映えるような斑も油もない乾いた均一焦茶色の綺麗なラッパーで、かちりと重く巻かれて吸い込みが軽い。新鮮なのかアンモニア臭がある。
着火すると驚くほど鮮度を感じる芳香、何物の鮮度か分からないがなんだろう、何処かで嗅いだ花か香水の匂いである。はじめから甘い。二口目からすぐに乾いた芝生や麦のようになってくる。汗臭さというか、疲れてしまうような、安っぽい葉の味である。
火がフット全体に回った途端に途轍もないフルボディになる。辛いというより、重さによって辛味が出ている。味わいが重いのではない。
ハバナにある葉巻独特の深みというものが一切ないが、新世界葉巻の一つの動かし難い結実なのだと思ってしまうようなところがある。ハバナの深みこそないが、ロメオのフルーツなどは序盤から出てくる。紅茶は安いものでも一応紅茶だが、喩えが違うが、葉巻はハバナだけが葉巻で、他は葉巻とは別の物に思えてしまう。どれかといえば紙巻の偉い物のようなものに思える。ハバナと紙巻はまったく別種だが、これはそうではない。
外観から推察するようなほろ苦いカカオの香とコクもなくはない。そして理由は分からないがセリーVにはいつも何か銀色の煌めきみたいなものを感じる(この煌めきを初めて感じたのはダビドフミレニアムトロだった)。燻し銀なのか、確かに小学校でやった酸化銀の実験を思い出しもする。強さによって実験の危うさを感じもする。また危うさが寒い夜に合う。凍死のイメージかもしれない。
中盤までは雑味も特にないし、優しい風味もなくはない。金木犀なども少し咲く。ただハバナのようにハバナ葉による統一感というようなものがない。したがって、それが無いだけで、落ち着きがなく感じられる。
灰は白い銀色で、ラッパーに映えている。
飽きて雑味を感じ易くなってきたところに、序盤のあの甘やかな香水が再びかぐわしく匂ったりする。終盤に突入するとまるでハバナのように全体が濃く激しくなり、かといってフルボディを今更強めるのでもなく、ハバナの風味なくしてハバナを吸っているようだった。おそらくハバナでお馴染みの草が効いてきたのである。
なんだか美味しいのか美味しくないのかよくわからない物だった。微かにハズレではあるらしく、かといって当っても大当たりという事にはならないと思う。
ほぼ二年ぶりに買ってしまったのも独特の燻し銀が忘れ難かったからだった。大当たりするのではないのに、また買ってしまうかもしれない。
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|MES JUL 11|5.6 × 54|coh-hk|$396/10|重量:+1(15.85g)|算出:+2|香味:+3|
初めてBHKを燻らせてからほぼ一年が経っている。半年ぐらいだと思っていた。これを箱で買ったのは約二ヶ月前で、到着日に試したが、身も葉巻も乾いていた。結局BHKを全種箱で買ってしまったのである。高嶺の花で、こんな事になるとは思わなかった。
雑巾までもが甘やかに美味しく香り、腹を満たすナッツの旨味がロメオ風のフルーツバスケットを包んでいる。こんな処にロメオがあるというのが実に嘘くさく甘美である。嘘ではない嘘らしきもの、というものはあらゆる戸惑いのなかでも最も安心できる甘美なものである。
葉巻は空腹を満たしてから、といわれるが、腹が膨れている時にはあまり食指を動かさせない、煙自体が食事であるかのようなコイーバのしつこさがある。(エスプレンディドスにはこのしつこさがないように思う)
副流煙に花混じりの蜂蜜の強い芳香がある。とろりと甘い蜜が草のように香りながら脳髄に染み込む。それが次第に蜜から花に戻って咲き乱れる。次いでやはり逆巻きの映像を見るように莟に収束し、最後は木に戻るらしい。
吸い込みはやや軽すぎる。
炭のような感じはやはりあると思う。イカスミパスタとか、そういうものであるかもしれないが、もっと水墨の、古紙に定着した落ち着きが感じられる。コクのみの珈琲のようでもある。
墨は約一年前の初回ほど濃くはなく、淡い清流の水墨画で、それが岩だけ甘い茶色に塗られ、ロブストっぽさが前面に出ている。
今のところ、52は金木犀が金色で、54は僅かに墨、56は大味ではないものの特異さはない。
初めてBHKを燻らせてからほぼ一年が経っている。半年ぐらいだと思っていた。これを箱で買ったのは約二ヶ月前で、到着日に試したが、身も葉巻も乾いていた。結局BHKを全種箱で買ってしまったのである。高嶺の花で、こんな事になるとは思わなかった。
雑巾までもが甘やかに美味しく香り、腹を満たすナッツの旨味がロメオ風のフルーツバスケットを包んでいる。こんな処にロメオがあるというのが実に嘘くさく甘美である。嘘ではない嘘らしきもの、というものはあらゆる戸惑いのなかでも最も安心できる甘美なものである。
葉巻は空腹を満たしてから、といわれるが、腹が膨れている時にはあまり食指を動かさせない、煙自体が食事であるかのようなコイーバのしつこさがある。(エスプレンディドスにはこのしつこさがないように思う)
副流煙に花混じりの蜂蜜の強い芳香がある。とろりと甘い蜜が草のように香りながら脳髄に染み込む。それが次第に蜜から花に戻って咲き乱れる。次いでやはり逆巻きの映像を見るように莟に収束し、最後は木に戻るらしい。
吸い込みはやや軽すぎる。
炭のような感じはやはりあると思う。イカスミパスタとか、そういうものであるかもしれないが、もっと水墨の、古紙に定着した落ち着きが感じられる。コクのみの珈琲のようでもある。
墨は約一年前の初回ほど濃くはなく、淡い清流の水墨画で、それが岩だけ甘い茶色に塗られ、ロブストっぽさが前面に出ている。
今のところ、52は金木犀が金色で、54は僅かに墨、56は大味ではないものの特異さはない。
famous-smokeでのopusXの評価の低さ(■)に驚く。特にダブルコロナ(ダブルコロナに限らず全体的にガタ落ちだけれど)。何かの間違いか誰かの悪戯と思わざるをえない(ドローが50点というのがそもそもありえない)けれど、別店舗で三本買った物は確かに不味かった。だが序盤1センチはどれも美味しかった。
LOST CITYはどうなのだろう。
LOST CITYはどうなのだろう。
|MSE JUN 11|6 x 50|coh-hk|$171.90/12|重量:+1(15.05g)|算出:+5|香味:+4|
09年の残った一本は後生大事にとっておき、新しい箱に着手しました。(結論から申し上げて、変わらぬ味です!)
この葉巻は初め薄口で分かり難いものですが、ひとたび分かるというか、一度気に入ると、何物にも代え難い淡白さを帯びてきます。まるで喉黒の刺身(白身)のようだと申しておきましょう。平目が可哀想になるほどです。
先ず葉の香味が若干コイーバに似た醗酵の味、香がし、シグロ6(喉グロと掛けた訳ではございません)ともなるとそれを巧くカフェオレのミルクのマイルドさで纏めていますが、ロブストエクストラはそれ以上に優しい感じがするのに、ミルク成分を感じ難く、ずっと杉っぽいです。印象を色に喩えても、コイーバが優しいカフェオレ色なのに対し、こちらは薄らと透明な黄色です。他にも平凡な葉巻のようにケーキなどが出てきますが、消えよと思えば消えてくれ、基本というかこの葉巻ならではの美質は醗酵葉の香味と杉、この二つの高貴はずっと消えません。もう余計な変化など永遠に要らないと思えるほどなのです。
変化する度に平凡な葉巻に似てしまう。ですが基本を残して変化がスッと消えてくれるのです。まさに忍者のような葉巻と申せましょう。そうです、私の祖父は忍者でした。ですから死に際に咲く金木犀だけは血しぶきのように許せましょう。あなただって人間宜しく血しぶきが大好きでしょう。いやもっともこの金木犀にしても中盤で現れて消えたりするのですが。変わり身の術というのでしょうか。しかもどこにも手裏剣に因る創痍は感じられないのです!
また忘れてはならなりませんが、忍者と掛けて日本酒と解く、その心はどちらも「に」で始まるという不束な事でございまして、この葉巻が唯一日本酒に合う葉巻だという事なのです。日本酒も葉巻も、より一層高め合い美味しくなるという、実に幾重にも不思議な美味しさのある組み合わせです。
明日も、喉黒を釣って帰った釣果ある人のように、シグロ6ではなくこの喉黒をクーラーボックスから一匹取り出してしまいそうになること請け合いなのであります。喉黒を杉で燻したらと思うと爽やかな涎が出て参ります。今味わっている最中であるにもかかわらず、明日の涎が出て参るのでございます。ですが今宵は対岸の火事のような終盤の最終盤が眠らせてくれるでしょう。
09年の残った一本は後生大事にとっておき、新しい箱に着手しました。(結論から申し上げて、変わらぬ味です!)
この葉巻は初め薄口で分かり難いものですが、ひとたび分かるというか、一度気に入ると、何物にも代え難い淡白さを帯びてきます。まるで喉黒の刺身(白身)のようだと申しておきましょう。平目が可哀想になるほどです。
先ず葉の香味が若干コイーバに似た醗酵の味、香がし、シグロ6(喉グロと掛けた訳ではございません)ともなるとそれを巧くカフェオレのミルクのマイルドさで纏めていますが、ロブストエクストラはそれ以上に優しい感じがするのに、ミルク成分を感じ難く、ずっと杉っぽいです。印象を色に喩えても、コイーバが優しいカフェオレ色なのに対し、こちらは薄らと透明な黄色です。他にも平凡な葉巻のようにケーキなどが出てきますが、消えよと思えば消えてくれ、基本というかこの葉巻ならではの美質は醗酵葉の香味と杉、この二つの高貴はずっと消えません。もう余計な変化など永遠に要らないと思えるほどなのです。
変化する度に平凡な葉巻に似てしまう。ですが基本を残して変化がスッと消えてくれるのです。まさに忍者のような葉巻と申せましょう。そうです、私の祖父は忍者でした。ですから死に際に咲く金木犀だけは血しぶきのように許せましょう。あなただって人間宜しく血しぶきが大好きでしょう。いやもっともこの金木犀にしても中盤で現れて消えたりするのですが。変わり身の術というのでしょうか。しかもどこにも手裏剣に因る創痍は感じられないのです!
また忘れてはならなりませんが、忍者と掛けて日本酒と解く、その心はどちらも「に」で始まるという不束な事でございまして、この葉巻が唯一日本酒に合う葉巻だという事なのです。日本酒も葉巻も、より一層高め合い美味しくなるという、実に幾重にも不思議な美味しさのある組み合わせです。
明日も、喉黒を釣って帰った釣果ある人のように、シグロ6ではなくこの喉黒をクーラーボックスから一匹取り出してしまいそうになること請け合いなのであります。喉黒を杉で燻したらと思うと爽やかな涎が出て参ります。今味わっている最中であるにもかかわらず、明日の涎が出て参るのでございます。ですが今宵は対岸の火事のような終盤の最終盤が眠らせてくれるでしょう。
|ZTV MAY 05|5.6 x 46|coh-hk|$121.50/15|重量:--(--g)|算出:+4|香味:+3|
coh-hkが突然ヴィンテージを売り出し、ボックスコードが10種類以上ある中からZTV MAY 05を選ぶ。ZTVがフランスの新幹線(TZV)に似ているという全く香味に関係ない理由であるは兎も角、正月のひとときにアップマンの杉の香味が巧く薫る気がしたのである。No.2とサーウィンストンは別として、普段あまり買う気がしない銘柄なのだが、No.2とサーウィンストンが正月に合う気がしたのではなく、どれかといえばmagnum50が合う気がして、ところが丁度ヴィンテージが売り出され、しかも総額を300ドル強(=10%引き)にするのに頃合いの価格であった(TRINIDADロブストエクストラを先ず買う予定だった為)。あんまり300ドルを越すようだと富豪でもないのに600ドル(=15%引き)買ってしまいたくなる。
15本入りだったのでチューボが届くのかと思っていたが、三本入り紙パックが五個だった。全パック開封検査されており、安心して躊躇なく全箱を開けると、当然虫喰いなどはなく、破れもない。但し葉巻自体、巻きもラッパーも荒く、色も色々、マデューロ風の斑点のあるものから、全身コロラドのようなものまで雑然としている。小豆色の旧バンドが巻かれている。
空吸いするだけで杉の香がする、しかもそれで甘い。着火してすぐ火口から懐かしい匂いが来て、火口ほどではないが、口の中も懐かしい味わい、しかし同時に懐かしくない味わいにも満ちている。一口目からなんだか完成していて、また段々辛味を増してくるぐらいだから、枯れた味わいで歳月を偲ばせるというものではまだない。強い。しかし味わい深い……この味わい深さが熟成に因るものなのかまたしてもわからない。
荒野の夕焼けを思わせる趣向(ケドルセーとレイデルムンドを併せたような)で、アップマン特有の杉はやや弱く、洋菓子風のコクと香を伴う甘さがあるが、甘さ自体はもっと透明でガムシロップを薄めたよう。そこに荒野が覆い被さっている、荒野で食すケーキとはなんて瀟洒なのだろう。砂埃を被ってケーキが雑味だらけで台無しであるところが美味しいのである。
No.2の濃さとも違うし、magnum50の新鮮な杉でもなく、サーウィンストンの枯淡味もない。過去のアップマンの記事を読み返すと、そういえばConnaisseur No.1に感じていたであろう醤油を少し感じもする。また残念ながら、嘗て一本試したmagnum46に感じていたであろう酸味が此処にもあるのである。
十年近いヴィンテージモノを買うのは味が抜けているようで躊躇するのだが、七年半でこの元気さなら、十年弱のサーウィンストンを買ってしまおうかとも思う。それにしてもこんな46が人気商品だというのはなかなか腑に落ちそうもない。不味いわけがないが、アップマン特有の魅力のなさがある。
ところが、終盤になると、アップマン特有の飽きっぽさに飽きっぽくなっていたのに、優良煙草葉の代名詞たる金木犀が、それまで完全に形を潜めていたからこそ鮮やかに現れる。ただ現れるのではなく、まるで綿密に計算されていた脱獄囚のサプライズのように現れるのである。脱獄したからには、あんた、いい人だったんだな。脱獄囚だと気付いた途端、何処かで嗅いだ香水の匂いが芬々としているよ。もう金木犀ではなく、瀟洒なインテリアショップで香っていたアレだよ。まったくあんたが昔使った銃剣から手品で造花が咲いているよ。それにしてもあんた、入獄してから脱獄するまでが酷かったじゃないか。なに、脱獄を手助けしてくれたからには、甘いケーキを焼いてくれるって! うん、これまさにケーキの甘さじゃないか。ああ、わたしゃ荒野から駆けつけたんだよ(涙)。まるで鉄格子がお菓子でできているみたい。
coh-hkが突然ヴィンテージを売り出し、ボックスコードが10種類以上ある中からZTV MAY 05を選ぶ。ZTVがフランスの新幹線(TZV)に似ているという全く香味に関係ない理由であるは兎も角、正月のひとときにアップマンの杉の香味が巧く薫る気がしたのである。No.2とサーウィンストンは別として、普段あまり買う気がしない銘柄なのだが、No.2とサーウィンストンが正月に合う気がしたのではなく、どれかといえばmagnum50が合う気がして、ところが丁度ヴィンテージが売り出され、しかも総額を300ドル強(=10%引き)にするのに頃合いの価格であった(TRINIDADロブストエクストラを先ず買う予定だった為)。あんまり300ドルを越すようだと富豪でもないのに600ドル(=15%引き)買ってしまいたくなる。
15本入りだったのでチューボが届くのかと思っていたが、三本入り紙パックが五個だった。全パック開封検査されており、安心して躊躇なく全箱を開けると、当然虫喰いなどはなく、破れもない。但し葉巻自体、巻きもラッパーも荒く、色も色々、マデューロ風の斑点のあるものから、全身コロラドのようなものまで雑然としている。小豆色の旧バンドが巻かれている。
空吸いするだけで杉の香がする、しかもそれで甘い。着火してすぐ火口から懐かしい匂いが来て、火口ほどではないが、口の中も懐かしい味わい、しかし同時に懐かしくない味わいにも満ちている。一口目からなんだか完成していて、また段々辛味を増してくるぐらいだから、枯れた味わいで歳月を偲ばせるというものではまだない。強い。しかし味わい深い……この味わい深さが熟成に因るものなのかまたしてもわからない。
荒野の夕焼けを思わせる趣向(ケドルセーとレイデルムンドを併せたような)で、アップマン特有の杉はやや弱く、洋菓子風のコクと香を伴う甘さがあるが、甘さ自体はもっと透明でガムシロップを薄めたよう。そこに荒野が覆い被さっている、荒野で食すケーキとはなんて瀟洒なのだろう。砂埃を被ってケーキが雑味だらけで台無しであるところが美味しいのである。
No.2の濃さとも違うし、magnum50の新鮮な杉でもなく、サーウィンストンの枯淡味もない。過去のアップマンの記事を読み返すと、そういえばConnaisseur No.1に感じていたであろう醤油を少し感じもする。また残念ながら、嘗て一本試したmagnum46に感じていたであろう酸味が此処にもあるのである。
十年近いヴィンテージモノを買うのは味が抜けているようで躊躇するのだが、七年半でこの元気さなら、十年弱のサーウィンストンを買ってしまおうかとも思う。それにしてもこんな46が人気商品だというのはなかなか腑に落ちそうもない。不味いわけがないが、アップマン特有の魅力のなさがある。
ところが、終盤になると、アップマン特有の飽きっぽさに飽きっぽくなっていたのに、優良煙草葉の代名詞たる金木犀が、それまで完全に形を潜めていたからこそ鮮やかに現れる。ただ現れるのではなく、まるで綿密に計算されていた脱獄囚のサプライズのように現れるのである。脱獄したからには、あんた、いい人だったんだな。脱獄囚だと気付いた途端、何処かで嗅いだ香水の匂いが芬々としているよ。もう金木犀ではなく、瀟洒なインテリアショップで香っていたアレだよ。まったくあんたが昔使った銃剣から手品で造花が咲いているよ。それにしてもあんた、入獄してから脱獄するまでが酷かったじゃないか。なに、脱獄を手助けしてくれたからには、甘いケーキを焼いてくれるって! うん、これまさにケーキの甘さじゃないか。ああ、わたしゃ荒野から駆けつけたんだよ(涙)。まるで鉄格子がお菓子でできているみたい。
先日別の物を買ってしまったが、年末に向けてコイーバ・エスプレンディドスが必要だと最近切に思う。シグロ六やヘニオスは持っているから美味しくないのかもしれないが、しかしおそらくそうではなく、シグロ六やヘニオスでは持っていなくても駄目なのである。ELでもBHKでもエスプレンディドスの代役は果たせまい。兎に角幻想的で、最近エスプレンディドスが異様に美味しそうな物に思えてならない。この幻想は年を越したら忘れてしまうだろう。
「女信心家のミサ書のように開いた両腿」(誰が書いたのかわからない)は確かに珍しい比喩である、煙に応用できるだろうか。(最近大学の研究論文を読んでいる。参照:■)
参照からの引用
<「仰せの通り、あれ[雲]はまさしく酪駝のやうでございます」(『ハムレット』)…しかし、雲はもともと眺める人の想像力次第で何にでも見えるものなので、これがシェークスピアのせりふでなければ、この単一直喩が表現的であるとは考えにくい。雲の変幻自在性が直喩の成立を妨げるのである。単一直喩で、十分に表現的なものを見つけるのは苦労する。>
参照からの引用
<「仰せの通り、あれ[雲]はまさしく酪駝のやうでございます」(『ハムレット』)…しかし、雲はもともと眺める人の想像力次第で何にでも見えるものなので、これがシェークスピアのせりふでなければ、この単一直喩が表現的であるとは考えにくい。雲の変幻自在性が直喩の成立を妨げるのである。単一直喩で、十分に表現的なものを見つけるのは苦労する。>
先日habanexというサイトについて書いた(■)けれど、
Habanex is a scam! という情報。
http://www.cigarinspector.com/1001-cuban-cigars
自分で買ってみたわけではないのでわかりませんが、皆様お気をつけ下さい。
Habanex is a scam! という情報。
http://www.cigarinspector.com/1001-cuban-cigars
自分で買ってみたわけではないのでわかりませんが、皆様お気をつけ下さい。
「初心者お断り」…初心者に味がわからない葉巻はないと思うが、こういう反骨も恥ずかしく、思えば「初心者お断り」というのはもともと、葉巻を恐ろしく思わせた方が初心者の購買意欲が増すと見越しての販売者の戦略だったのではないかとも思う。或いは貴族趣味の古典的文体にも思えて好ましく思えるようにもなった。しかし購入者がそれを反芻するのはやはり恥ずかしい。
|6 1/4 x 50|seriouscigars|$71.95/4|重量:+1(15.47g)|算出:+3|香味:+3|
空吸いしていると、甘く臭くスパイシーな匂い。これは葉巻の匂いとしては極上である。
一口で非常に強くダビドフ感(松茸感)が滲み寄せる。ラッパーの色味からも連想すると単純に火で炙って香ばしさを増した松茸である。茸らしい淡い味まである。火で松茸から水分が炙り出されて、そのしずくがほの甘い。
二口三口で飛ばされそうになったが、スパイスや辛味がひとまず引き止める。
そもそもこの世の葉巻を愉しんでいるのだから、飛翔というものは厭世のようでいて何処も厭世ではないのである。むしろハズレた葉巻に厭世を感じる。
今までのダビドフでは感じなかった強度と濃度がある。しかもあからさまに高級食材。突然「バタートースト」だとか、いえば何でも出てきそうだが、言うは易し、また食材の見分けがつかなくとも最高級の小麦とバターであるに違いなく、またなんであれ焦がす寸前まで焼かれた香ばしさがある。難しい行いの何ものもない。
1センチも進むとケーキが出る。スポンジのまろやかな軽さに、カスタードに近い風味、シナモンなんかはこれこそ別次元のシナモンである。ふわふわしたクラシックシリーズの恍惚感とややスペシャルシリーズを思わせるどっしりとした味わいを併せ持ち、太く香ばしい重量感のある木の皮で巻かれている。
2センチも進むと松茸は甘い膨らみの中でほとんど密かに隠れてしまい、酸味なども立ってくるが、美味しさというものは崩れず、やはり松茸は土の中で効いているのだと思う。
灰はかなり乱れて割れて崩れる。灰が良ければ良いというものではないと思うが、味にも少し翳がかかってくる。翳は兆しの表裏の対だが、翳が兆すのではなく、翳も兆しももやもやとしているのである。
ミレニアムシリーズは黒い外観に比して白や銀が目立って映えていたが、こちらはシナモンなどの香に茶色をとどめている。その中にクラシックの薄茶が混じっている。
欠点は酸味である。後半は辛味が無くなり旨味も消えつつ全体が軽くなって、軽いのに羽毛の軽さに非ず、松茸も消えて特に酸味が立つ。この酸味を和らげてくれる飲物といったら、酸味の多い珈琲にミルクを入れるような物だろうか。珈琲でもミルクでもないそのような飲物はあるのだろうか。アイリッシュクリームやカルーアミルクでは釣り合わないと思ってしかるべきである感じがする。葉巻にミルクを入れるような飲物が欲しい。
終盤で新鮮すぎてえぐいような木の風味を伴いながらも松茸がまた生えたりし、松茸がややゼンマイに落ちてはいるが、アニベルサリオの金色をも思わせないでもなかった。しかし嘗てたった1本試したアニベルサリオは金色のおがくずの如き木のエグミが始終煩かったし、特に金色を求めたいのではない。プーロドーロにはその木のエグミの雑味はない。ただ酸味が渋みを引き出す事はあるのである。
無責任な思いつきだが、細いサイズなら酸味の欠点は無くなるかもしれない。
これはダビドフなのだから他のダビドフが其処彼処に懐かしい顔を出すのは当り前で、これのみの特徴といえば不思議なシナモンにしかないのかもしれない。それはヤマサラッパーのみに因るのではないと思うが、もしそれだけだとしたら、細い物の方がよりそれを特徴とするはずである。太ければ太いほどラッパーの比率は低くなり、また、フィラーにダビドフ印ではあるが古く平凡な葉を投入する余地は大きくなる。
はじめて吸ったミレニアム・トロには遠く及ばないが、それ以降に試したミレニアムに比べるとプーロドーロの方が全体的に好きだという実感はある。
今日は到着日なので滅茶苦茶かもしれないが、この酸味が熟成でどうなるのか、綺麗さっぱり酸味が消える気もするし、根強く残りそうでもある。10本箱で買おうと思ったが、4本パックで、残り3本しかなく、熟成の暇(忙しさ)はたぶんない。私に買われた葉巻には暇がない。
空吸いしていると、甘く臭くスパイシーな匂い。これは葉巻の匂いとしては極上である。
一口で非常に強くダビドフ感(松茸感)が滲み寄せる。ラッパーの色味からも連想すると単純に火で炙って香ばしさを増した松茸である。茸らしい淡い味まである。火で松茸から水分が炙り出されて、そのしずくがほの甘い。
二口三口で飛ばされそうになったが、スパイスや辛味がひとまず引き止める。
そもそもこの世の葉巻を愉しんでいるのだから、飛翔というものは厭世のようでいて何処も厭世ではないのである。むしろハズレた葉巻に厭世を感じる。
今までのダビドフでは感じなかった強度と濃度がある。しかもあからさまに高級食材。突然「バタートースト」だとか、いえば何でも出てきそうだが、言うは易し、また食材の見分けがつかなくとも最高級の小麦とバターであるに違いなく、またなんであれ焦がす寸前まで焼かれた香ばしさがある。難しい行いの何ものもない。
1センチも進むとケーキが出る。スポンジのまろやかな軽さに、カスタードに近い風味、シナモンなんかはこれこそ別次元のシナモンである。ふわふわしたクラシックシリーズの恍惚感とややスペシャルシリーズを思わせるどっしりとした味わいを併せ持ち、太く香ばしい重量感のある木の皮で巻かれている。
2センチも進むと松茸は甘い膨らみの中でほとんど密かに隠れてしまい、酸味なども立ってくるが、美味しさというものは崩れず、やはり松茸は土の中で効いているのだと思う。
灰はかなり乱れて割れて崩れる。灰が良ければ良いというものではないと思うが、味にも少し翳がかかってくる。翳は兆しの表裏の対だが、翳が兆すのではなく、翳も兆しももやもやとしているのである。
ミレニアムシリーズは黒い外観に比して白や銀が目立って映えていたが、こちらはシナモンなどの香に茶色をとどめている。その中にクラシックの薄茶が混じっている。
欠点は酸味である。後半は辛味が無くなり旨味も消えつつ全体が軽くなって、軽いのに羽毛の軽さに非ず、松茸も消えて特に酸味が立つ。この酸味を和らげてくれる飲物といったら、酸味の多い珈琲にミルクを入れるような物だろうか。珈琲でもミルクでもないそのような飲物はあるのだろうか。アイリッシュクリームやカルーアミルクでは釣り合わないと思ってしかるべきである感じがする。葉巻にミルクを入れるような飲物が欲しい。
終盤で新鮮すぎてえぐいような木の風味を伴いながらも松茸がまた生えたりし、松茸がややゼンマイに落ちてはいるが、アニベルサリオの金色をも思わせないでもなかった。しかし嘗てたった1本試したアニベルサリオは金色のおがくずの如き木のエグミが始終煩かったし、特に金色を求めたいのではない。プーロドーロにはその木のエグミの雑味はない。ただ酸味が渋みを引き出す事はあるのである。
無責任な思いつきだが、細いサイズなら酸味の欠点は無くなるかもしれない。
これはダビドフなのだから他のダビドフが其処彼処に懐かしい顔を出すのは当り前で、これのみの特徴といえば不思議なシナモンにしかないのかもしれない。それはヤマサラッパーのみに因るのではないと思うが、もしそれだけだとしたら、細い物の方がよりそれを特徴とするはずである。太ければ太いほどラッパーの比率は低くなり、また、フィラーにダビドフ印ではあるが古く平凡な葉を投入する余地は大きくなる。
はじめて吸ったミレニアム・トロには遠く及ばないが、それ以降に試したミレニアムに比べるとプーロドーロの方が全体的に好きだという実感はある。
今日は到着日なので滅茶苦茶かもしれないが、この酸味が熟成でどうなるのか、綺麗さっぱり酸味が消える気もするし、根強く残りそうでもある。10本箱で買おうと思ったが、4本パックで、残り3本しかなく、熟成の暇(忙しさ)はたぶんない。私に買われた葉巻には暇がない。
銘
囹
月