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  源氏物語「葉」
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葉巻を操っても少しも筆が動かなくなる時を求めている。
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『Montecristo 520 LE 2012』はLE特有の「外側が香ばしく濃厚」で「内側が水のような味気なさ」なのだろうか。だとしたら買わないのだが、何方かこの微妙な質問の答えを出してくれる人いないのか。
答え以前に「水っぽさ」に共感してもらいたいというのもあるのかもしれない。水っぽさをわかってくれる人しか信用できないというのもあるのか。好悪はともかくLE=水の統一感は凄いと思う。
|OPM NOV 09|184mm x 57|coh-hk|$103.70/10|重量:+2(20.55g)|算出:0|香味:+1|

 昼は気温が冬に戻って冬を懐かしみつつ今日日は夜の方が気温が高いと云う、今年何度目の春かを夜に感じる、クァバを吸ってみよとの声に聞こえた。
 サロモネス最後の一本だったのに、今回は不甲斐無い結果に終る。巨大なので気付き難いが20.55gで重量過多なのかもしれない。吸い込み難い物を吸っているとありがちな舌焼のような感覚に塩気が立つ。
 10本中美味しかったのは2本。今が春だからかもしれないが、全体的に桜のないまろやかな春の味わいだとも思う。春の床屋、それも少しじめじめとした雨上がりの。当りさえすれば大変に風物感のある逸品だと思う。
 三年過ぎの物だが、三年で少し強さが出てきたような気もする。後から強さが出るというのは少し信じ難い話なのだが、往々にして葉巻にはそういう事があるらしい。
|LOE JUN 12|4 3/8 × 40|coh-hk|$176/25|重量:-1(8.85g)|算出:+4|香味:+3|

 重量過多で案の定吸い込みが悪い。一本目同様ややトルペド状に巻かれている。この葉巻はリンゲージが精確に40ならば7g前後が適正だと思う。小さければ小さいほど微妙な重量の差が大きく出るだろう。またトルペドではない物がトルペド状に巻かれるというのはいかにもパツンパツンの証拠で、ヘッドが詰まっているだろうと見当を付け、初めてヘッドに火を点けた。これで後半はスムーズにゆくはず。
 いずれにつけても味自体はかなり安定した葉巻である。ステーキソースのようなこってりした物とパンのような軽い物との組み合わせで、肉はない。それが味覚によってはチョコにもエスプレッソにも感じられる。時々ガラムマサラのように思えなくもない瞬間がある。それにしてもおいしいパンで、菓子パンではないのにカスタードの味がしたりする。そのカスタードの風味にこそコイーバの岩の滋味が染みている。まったくこんなにおいしいパンを誰が何処で焼いたのかわからない、実際にこんなパンは誰も焼いていないのである。
 これは案外朝食に適した葉巻なのかもしれない(日本人がパンを食べるといったら大抵朝食だろうから)。何と深い朝食だろう! まったく夕食のように深い朝で、西洋の夕食が偲ばれる。なんて朝のように軽い夕食なのだろう!
 甘さが加わるとやはり苺ジャムを思い出してくるのである。というより、苺はともかく、甘さが本当にジャムに近いほど甘い。マデューロらしくやや煮詰め過ぎて少し焦げた苺ジャムで、これで草がもう少し乗ってくるといかにも植物性の苺ジャムなのである。苺ジャムに草の味がするわけもないし、苺の蔕までジャムにするわけはないのだが。
 逆さに吸っても逆さに因するような味の違いは感じられない。フットの糊が剥がれるという事もない。但しラッパーはヘッドから多少緩んでくる。ヘッド着火は、確かに吸い込みも段々よくなるし、フィラーをほじくり回すよりはスマートな方法ではないかと思う。しかしながら、終盤に向かうにつれ煙の威力が強くなりすぎるような気もする。葉巻には元々フィルターはないが、ノンフィルター葉巻というような感覚である。もっともこれが逆さに因る現象なのかというと首を傾げざるをえない。そこで突然優しい味わいが訪れたりもする。いずれにしても「葉巻とは美味しい物だなぁ」としみじみ思う新鮮な美味しさなのである。
 この美味しさは不安定の賜物なのかもしれない。不安定をこれまで一度も美味しく思った事はなかったのに、まさに逆さの結果になった。素材が悪ければどうしようもないが、素材が良ければ巻く人の偶然に左右され、(ちゃらんぽらんで気分屋で下手な)それを支配する方法が一つあるという事はたぶん良い事である。原型がトルペドならばもっと違いを楽しめるかもしれない。
|TEB NOV 08|4.3 x 50(52?)|coh-hk|$208/25|重量:0(10.97g)|算出:+6|香味:+4|

 私物の(悪しき)インメンサスと同じ工場の物。同じボリバーなのだから当り前だという気がするが、同じ銘柄の同じビトラが色々な工場で同時期に巻かれたり、製造の仕組がよくわからない。

 かなり明るい赤みを帯びたラッパー。
 乾燥した辛味がある。
 乾いた土、豊富な木、革、どれでもある。これほどあからさまにハバナ味がする葉巻も珍しい。
 序盤から華やかな風合いで、何ともいえない花の香が漂い、花畑が飛んでいるのか鼻が飛んでいるのか、晴れているのか曇っているのかもわからないが、温かい爽やかな一日である。
 金と銀のバンドの色合いも美しい。金のバンドがいつもより輝かしく見える。初めてバンドなどをつくづく眺めてみたが、葉巻が短いので見詰める暇もあまりない。
 草花がどんどんかぐわしくなって晴れ、カスタードの甘さが乗ると荒野で食するケーキのようになってくる。金持ちが荒野にテーブルを立てクロスを敷いて遊んでいる。最近グロリアクバーナを懐かしがっていた為、荒野の風味が出てくれて嬉しい。荒い風趣があるのに、ER特有のオブラートで包むというかオブラートを透かしたような感覚があり、味わいを薄めない柔らかさを感じる。
 何故か荒野に安っぽい売店が建つ。コーンを齧り始めたソフトクリームの味がして来たのだ。変幻自在の花が時々そういう幻視を見せるのである。その色濃い花も霧のように掛かったり去ったりする。しかも乾いた荒野なのだから霧はないはずで、此処は誰、私は何処状態である。
 休日の午後用として買ったのに、何処かそれを躊躇わせるところがある。そんな素晴らしい午後は滅多にやってくるものではない。
 最後は塩味がする。この短さゆえ根元で衰えるわけがもなく、塩が荒野の〆にピシリと決まる。荒野が海から遠く感じられるところも素敵で、此処は昔は海だったのかもしれない。塩を潜り抜けて甘さの余韻も長く残る。

|TEB NOV 08|4.3 x 50(52?)|coh-hk|$208/25|重量:−1(9.70g)|算出:+6|香味:+4|
 やはり一本目は乾いていたようだ。ヒュミドールに5時間も入れておくと外はしっとりとする。これにて荒野感は減衰するかもしれない。
 なんともいえない甘い草が湿った荒野に咲いている。なんだか「アロマティック」という言葉がよく似合う。昔ラファエルゴンサレスで同じ事を書いた気がするが、荒野にスーツ姿で立つ男の香水のような。ボリバーらしさというのは私にはまだ良くわからないのだが、荒野にもどことなく鞣革の落ち着きがある所はボリバーらしいかもしれない。スーツの男は当然革靴を履いている。こんな雑誌の広告写真のような場面は唯一煙で訪れる事が可能な場所であり、当の広告の商品を買っても訪れないだろう。
 折角の昼をハズレ葉巻で台無しにしてはいけないが、これはERなので通常品より安定していると思う。いつもこんなに美味しいのだったら休日の昼は間違いなくこれを選ぶ。それに孤独な人間が昼に大物を薫らせるのは無理である。長閑な焦慮を想定して買ったのだからたぶん正解である。刻々と変わる昼はすぐに終わってしまう。今日の昼が初夏のようだったので感慨に耽ってしまうのかもしれない。二本とも今日の昼ではなく今日の夜に吸っているため余計に。
 残5センチでまた際やかに塩味が来る。二本目はお菓子感が少なかったが、ほぼ同じ味である。

|TEB NOV 08|4.3 x 50(52?)|coh-hk|$208/25|重量:0(12.48g)|算出:0|香味:+1|
 次の日。重量どおり、さすがに吸い込みがむっちりしている。固いというほどでもないし、吸い込みに因るのかもわからないが、風通しが悪くてくすぶったような木の荒さが出てしまう。まさかこの箱もインメンサス同様に初日だけ美味しいという事になるのではないだろう。最序盤は良かった。
|LOE JUN 12|4 3/8 × 40|coh-hk|$176/25|重量:-2(6.96g)|算出:+4|香味:+3|

 はや4本目、一本目はほとんど吸えない棒だったが、4本ともほぼ同じ味である。ドローはともかく味は安定している。多大であれ多少であれ多大な経験を積んで同じものを連発してみると、シングル買いではわからない事がよくわかる、わかれば良いというものでは全くないという事もよくわかる。
 わからない方が美味しい想い出になるのだからわからないように書いた方が美味しい文章にもなるのではなかろうか。非常に短絡的に説明すると、「苺ジャム」と書くより「苺ジャムなのか?」と書いた方が美味しいかもしれない。……大体ワインの説明文を読んで腹が立つ理由も「苺ジャム」だとかの断定が連発される文体にあるようである。
 それにしても「苺ジャム」と書けば書くほどこの葉巻は苺ジャムに似ている。書かなければそんな味は少しもしないかもしれない。苺ジャム味しかしない赤ワインを合わせるとなおそんな味がする。焦味やカスタードの甘さが巧い具合に苺ジャムの方へ雪崩れるようなイメージである。鍋で煮詰め過ぎた苺ジャムがある家に住んでいるようであり、それは山で赤い雪が崩れる印象ではなさそうで、苺ジャムを入れたロシアンティーのようでもあり、ロシアンルーレットのようでもある。大体私はこの箱を開けた初日に死んでいるのである。
 美味しいのでなんだか少し美味しそうな事を書いていたが、終盤で荒さが出る。そこでちょうどワインが尽き、飲物をしぼりたての生酒に変えると、良く合う。煮詰められてはいたものの新鮮だった苺が窶れ、そこを、つまり苺のフレッシュさを新酒の甘いメロンのような清流が復活させるのである。
 赤いワインには渋味があるので、葉巻が荒れたら渋味のない飲物に変えるのが良さそうである。とりわけ純米吟醸以上のしぼりたての生酒は偶然ながらよく合うようで、少し肌寒い外気と相俟って爽やかにしてぼうっとしてまったりとした春の夜の心地がする。もっとも、酒の味はほとんどわからなくなり、兎に角この葉巻に合うという事ぐらいしか残らない。恐ろしい秘書である。
 しかしどうして秘書を秘書というのだろう。何か秘密の文書でも握っているのだろうか。しかしこの秘書も、葉巻を終えた後はただの秘書だった。単独では春の夜の心地はしない。どうも葉巻の荒さが清酒の雑味を消していたようである。そもそも葉巻が社長で酒が秘書なら私は誰なんだ。
|LOE JUN 12|4 3/8 × 40|coh-hk|$176/25|重量:+1(9.59g)|算出:−7|香味:−5|

 毎日吸ってやろうと思って購入したのだが、外箱や蓋の厳重な緘を解き幾重ものヴェールを晒し取り最後にピシリと並んだ葉巻を見てしまうと大変貴重な宝石のようにも思えて後生大事にしたくなってしまう。よく見ると不揃いな葉巻だが、開けたての印象は良い。
 ど真ん中の一本を取り出す。上段13本で下段は12本であり、ど真ん中は上段にしかない。ど真ん中が一番美味しいに決まっている。
 取り出してみると棒のような硬さに吃驚である。重量を量るとラギート1同等の重さで、噂どおりの吸い込みの悪さが期待される(こういうの、何と云う文法か、書いていてあまり心地よくはない。たぶんこの葉巻が着火前から心地よくない文章を書かせたのだ)。カットして空吸いしてみると本当に棒で、タトゥアへのVictoriasを思い出すが、「セクレトスは吸い込み固し」と云う噂を拡大解釈すればそれはこのとおりなので何の躊躇する所もない。いくら棒といったって、ほんの少しぐらいの煙は入ってくるだろう。
  若干トルペド状に巻かれているので詰まっているのはヘッド部分だと思われる。こういう場合、ヘッドに着火したほうが良いのかもしれなかった。もう遅い。
 しばらくプーペコ状態が続く。(プーペコとは小顔を作る器具です)
 私もキレる若者の血を引いているのだが、10本ぐらい脳の血管がプツリとキレたところで思い切って吸い口を1センチ以上カットした。年の功もあり100本ぐらいキレても大丈夫なので余裕でリカットしたわけだが無意味であった。するとさすがに50本ぐらいキレ、再度1センチ以上カットしたら少し煙を味わえるようになった。元々短い葉巻が更に三センチも短くなって、ラッパーも当然ペラペラと剥がれてしまう。終了。更にキレたわけではないが、キレた血管が繋がらずに終了だった。
 こういう物はなるべく早めに消火したほうが良い。久しぶりのマイナス5点。一口吸えばもうシケモクに過ぎないと思うが、できればこれはまだシケモクとすらいえない状態であってほしい、後日別の処理方法を考えようと思う。
 箱で買う人はこういう事を覚悟しているわけだが、シングルで大事に買った人がこれを引いたらさすがに販売店に怒鳴り込むかもしれません。私が店員だったら交換してあげますが、おそらく交換してもらえないでしょう。しかし一応証拠を残す為にもなるべく早めに消火する事をお勧めしたい。
 熟成でドローが改善されるという話を聞くものの、信憑性が高い話ではなく、またこれほどの堅物になるとそれではあまりにも気長すぎ、湿度0%の乾燥室に入れてもこの個体は改善しないだろう。

|LOE JUN 12|4 3/8 × 40|coh-hk|$176/25|重量:--(--g)|算出:+4|香味:+3|
 すぐ二本目。怒りの波に乗っているし、元々デイリー用だったし、まだ24本も残っているので何の躊躇もない。怒り心頭に発するというより、これはまさに怒り心頭に達しているのかもしれない。私は間違えている。50本キレただけで人はおかしくなるのかもしれない。ダイヤモンドに火を点けてみたいぐらいなのである。
 ダイヤモンドの代わりに火を点けると、ハバナ味でもあるしコイーバ味でもあるが、ダビドフプーロドーロやリットーゴメススモールバッチを思わせる。血管が30本ぐらい繋がる。マデューロである事に因するのか、クッキーの感覚までもが似ている。だがクッキー以上の旨味があるのはやはりコイーバ味である。味わいが纏まっていて何もかも摘出し難いが、カスタードと花がはじめから細く入り交じってもいる。珈琲タイプのビター味もある。豆一粒に豆百粒を凝縮させて爆発させるとか、そういう事はない。そんな話は怪しい店舗の怪しいあんちゃんのものであるし、仮にそのような表現をしたくなる物に当る事があろうとも、このマデューロシリーズには過剰な期待は禁物である。どちらかといえば燻し銀である為。
 初めてこれをシングルで買った時の事を思い出したいのだが、ふつうに懐かしさもなく美味しい。確かあれは「強い煙」という感覚ばかりで咽がチョコを食べ続けたように疲れてしまい、「葉巻という物は美味しいのか否か」と迷った記憶があり、美味しい方に傾いたと思うのだが、これほど芳醇ではなかった気がする。
 中盤、草が薄荷めいて爽やかさを増す。これはあまり悪い意味ではない。
 間もなく煙はいかにも煙っぽくなる。「純粋な煙」のようですらあり、初めて感じたのはこの純粋な煙っぽさだったような気がする。白い紙っぽさとも少し違う、茶色い紙のような味わい。
 煙っぽさを若干残しつつ、序盤の纏まりを復帰させ、花を目立たせて終りへ向かう。
 一本目に怒って続けざまなので計量を忘れてしまったが、これも吸い込みはなかなか硬かった。
 仕事から早く帰る為の一本、というのに最適かもしれない。夕食前にこれを吸う為にのみ早く帰りたくなるような魅力がある。

|LOE JUN 12|4 3/8 × 40|coh-hk|$176/25|重量:−2(6.98g)|算出:+4|香味:+3|
 次の日、三本目
 これぐらいが適正重量なのかもしれない。太さにもバラツキがあるのでなんともいえない。これはやや細い個体だった。吸い込みは通るが、なんだか歪な空気の流れを感じ、けっしてスムーズな吸い込みではない。難よりはスカスカの方が良く、スカスカよりはこの歪な流れの方が良い。
 山椒の利いた焦げのある旨味、新世界葉巻っぽいと云えばそうかもしれないが、この旨味はやはりコイーバでしかない。5ミリほど進んで落ち着きクリーミーになる。パナテラに似て、シガリロの延長のような小気味好さと激しい香ばしさがある。さすがにパナテラと比べても悠々としているのだが。1センチで草。コイーバらしい。
 他に、カカオといえばカカオだし、珈琲といえば珈琲だし、佃煮といえば佃煮で、花や草やカスタードやパン(更にパン籠、苺ジャム、紅茶の渋味、パンの焦げ)などが常に混じって、結局は「焦がした岩」なのだと思う。

 なんだか書くのも面倒臭い葉巻だ。毎日じゃんじゃん吸ってしまおうと思う。最初の一本が不味かった所為で拍車がかかる。残5本ぐらいになれば歯止めがかかるはず。
|POL ENE 11|7.2 x 57|cigarOne|$178/10|重量:+1(16.47g)|算出:+3|香味:+3|

 898ばかり書いてサロもネスは全然追記していなかった。8本目。
 ハズレた記憶がなくもアタった記憶もない。クァバと違って、パルタガスに大らかさを要求する事がないからか、大らかに終ってしまう事が多い。それが今回、スカスカな吸い込みの所為か、ぴりぴりとした刺激の辛味が出ている。香は薇のような小学生の口臭のような草だが、段々旨味が乗ってくるとピリ辛と相俟ってパルタガスの強面が顔をのぞかせる。最大口径の部分にさしかかると、残念なのか辛味が消え、良い意味で裏切られ、これ以上はないというほどの太い旨味が来る、来そうである。最大口径を越えるとすぐに花が乗る。一瞬の太い旨味だったが、消えてしまうほど痩せはしない。煙は薄くなり、膨らみは痩せるが、柔らかさはより多く感じられるようになる。ただ、これだけだ。緑色のピスタチオのようだといえば褒めすぎの感がある。なんだか熟成にも期待できないような大らかさであり、今後大らかさに輪をかけるしかなさそうで、手をつけない箱のまま十年ぐらい放っておかなければならないのかもしれない。手入れの行き届いた広大な公園、たぶんゴルフ場のようなもの。この点、モンテクリストのオープンほどにも洗練されていないかもしれず、芝ではなく、芝を嗅ぐギャラリーが踏み締める土の味がする。少し金木犀が咲いているが、何故か其処は春である。まるで雨上がりの晴れのようなじめじめとして爽やかな温かい香がする。悪いはずがなく、どちらかといえば美味しい。
 こうしていつもの調子で終盤の纏めにかかっていると、なんとまだ中盤に差し掛かったばかりだったのである。ビクリと味が荒くなって、それでいま中盤だと気付かされた。荒さにまみれて甘味や花などが噴出する。辛いのか甘いのかよくわからず、兎に角芋を喰っているような気にもなる。そのまごうかたなきパルタガスに、花が滾滾と咲き尽きぬのである。
 荒さを維持したまま膨らみをも取り戻す。口の中で煙がどかんと爆発するような感触である。それにしても吸い込みがスカスカである。もう少し粘り着くような凝縮感が欲しい。紛れもなく美味しいだけに惜しい。大体私はゴルフ場に行った事はないのだから、ゴルフ場を爆破してもらわなければ困る。
 やや強烈なのに全くニコチン酔いにならないという、懐の深さを感じる。鮪となって海を泳ぎたいぐらいのところ、何処を逍遙しているのかわからないもどかしさも残る。
|7" x 52|seriouscigars|$18.57|重量:+2(22.86g)|算出:+5|香味:+4|

 臭いはほぼ消えている。黒ずみに閉ざされていると云った方が良いようだ。
 ナチュラルとオスクーロを買ったが、このスモールバッチと名付けられた葉巻はナチュラルにしてマデューロよりも黒い。もう一つのオスクーロの方は更に黒くほとんど漆黒である。このナチュラルは黒みの底から赤みが兆しているラッパーが美しい。大きさもかなりの物だが、密度が高く、重量がAよりも重い、過去最高だと思う。
 こんな外観だから当然びびっていたものの、最初は優しい、懐かしい良い味がする。ダビドフプーロドーロにかなり似ている。甘く、お菓子のようで、シナモンの風味がしっかりしている。
 安っぽい藁ではないが、そのような朗らかな風味がチョコに巻かれたようにあり、朗らかなのに、リットーゴメスらしい高尚な強烈さを其処に潜ませているようで怖い。それにしてもとんでもなく美味しい物である。ダビドフよりも安定しているし、最後まで吸い切れれば非の打ち所がない銘柄で、他に類を見ない味わいがある。というか、他のリットーゴメスと異なり、これはダビドフのプーロドーロに似ているのだが。
 チョコは、何となくベネズエラ産(語感で選んだ)の、香高い、それでいて酸味の幽かな、珈琲でいえばマンデリンのような苦いチョコである。もっともチョコの香というより、この葉巻を吸っていると咽の状態がチョコを食べた後のような感じになってくる。チョコっぽく淹れた珈琲を飲んでいる所為もあるか。
 こんな事を書いているとやっぱりクッキーが出てくるのである。中身は明るく、通常のリットーゴメスよりも柔らかくふわふわしている。マデューロの染み臭い感じもほぼ無く、絶品の甘いマデューロである。
 何処が葉巻で何処が珈琲なのか境界線がぼやけたような、珈琲と同化してしまうような相性の良さがある。クッキーも珈琲に合う。
 巻きも良く、火種が安定している為、灰の縞模様までもが美しい。
 おそるおそる吸っている為か、煙量は少なく、少なくても十分濃い。静かで高貴、甘くふわふわして、懐かしくないポルトガル時代のスパイシーさをも感じる。
 箱は105本入りなので買いたい気も起こらないが、5本ぐらいは購入して秘蔵にしたい。……
 中盤に入ると甘いままに金木犀が匂い立つ。それがまた濃くもささやかである。すぐに木と紙の風味になる。それから間もなく衰えが兆し始める。
 早くもニコチン酔いとなり、酔いと重なって衰えを早く感じてしまったが、また美味しさが復活するよう。
 中盤までは安定感が高すぎて、ほとんど味の変化もなく美味しい。灰を落とした直後に茨味を幽かに感じると云う、お手本のような葉巻である。
 今回のリットーゴメスでもまた身体が葉巻に負けた。類稀な美味だが、やはり強者向けなのだろう。
|6" x 54|seriouscigars|$19.10|重量:+2(20.76g)|算出:+5|香味:+4|

 ダビドフのバンドは白地に金文字で、プーロドーロもそれなのだが、このバンドだけは白地がなく100%金色である。しかもダブルリングであり、物惜しくフットのリングを外してヘッドに付けてみたりする。リングにはあまり執着しない派閥なのだが、実は金箔が貼ってあると思いたい。
 一口目から急激なシナモン、甘い。清流のように、清流のようなのに甘い。火種が全面に行き渡ると香ばしさと甘さが落ちて藁っぽくなる。やや豚臭く、豚のコクがある。大きさに加え、詰め込み過ぎたかのような重量、それから着火前の香からしてなんだかとんでもないものだったが、この豚臭い旨味に重ねて最初のシナモンの甘さが戻ってくると、まさに期待どおりのとんでもないものである。安っぽいはずの藁は邪魔ではなくむしろ気が利いているかのようで、非常に落ち着く風味に感じられる。

 味には非の打ち所がないが、重量に因る密度の為か、最近極太葉巻に馴れてしまった為か、太すぎて硬すぎるのに、所作のバランスも良い。太さの割に煙が少なくしかも味が濃いのがなんだか良いのである。昔は煙量豊富な物ばかりを求めていたのに。
 雑味は皆無で、呑み込んでみると軽いが、軽さを感じさせない蜜の重みを伴う味がする。蜜蜂や豚のいる農家で極上のひとときを過ごしている、何処の豪農だろう。自分の邸でもなく別荘でもないところがよい。そんな友達がいたような気がしてくるのである。豚なんかを飼っているのだから旅館ではない。実家でも祖父の家でもない。架空の友達。
 2センチ進むと鼻につんと花が来る。
 仕方なくも要領を得ない文をこんなに沢山書いてまだ2センチなのだが、もうこれは廃止になる前に箱で買おうと思う。エミネンテスとあまり価格が変わらないが、金色のヒガンテスこそ究極のプーロドーロという気がする。
 何だ、突然馴染みある、しかしとんでもない高級な香味が来た。世界一高い杏仁豆腐の味である。カスタードの風味がする杏仁豆腐、極端に濃密な香気を放つ。楊貴妃の吐息かと思った。しかし杏仁ではないかもしれない、段々味が変わって来たのか、クッキーかもしれない、あの白く細いパラパラが乗ったクッキー。あの細く白いパラパラは何だったろう。アーモンドだったような気がするが、そのアーモンドにはいつも特定の香料が効いていた気がする。それにしてもこの葉巻の煙は焼き立てクッキーの香にもそっくりである。まろやかな小麦とバターの香。この段落を書いている最中に15口は吸っており、うち二口はまことに絶倫であった。15口全て絶倫だったら明日学校を休もうと思うに違いないのである(学生ならば)。そしてその学生は葉巻の研究に勤しんで落第を喰らう。私にとっては音楽がそのようなものだった。学生のくせに毎月8万円分もレコードを買って毎日無理矢理15口の連続を構成していたのだから今思ってもなかなかの者なのである。葉巻は入れ替えが利かない為につらかろう。
 クッキーの恍惚が落ち着かぬ間にまた明らかに変化し、蜂蜜金木犀草が染み出る。
 灰はプーロドーロの特質らしく朝起きて髪の毛が爆発したような状態になるが、さすがに密度が高い為か、落ちない。
 再びクッキー味を取り戻すが、やや酸が立つ。だがもはや+5を点ける予定なのだ、酸には消えてほしい。
 約10分こらえると酸が本当に消える。灰を落としたお陰かもしれない。美味しければ美味しいほど吸う人は灰に敏感になると思うのだが、なお灰は長い方が美味しいというのは確かにそうだと思うのだが、この葉巻はどうも灰が短い方が美味しいようである。実はあまり関係ないかもしれないが。
 此処で木の風味が出る。キューバ産でもないし、これまで木も革も土もなかった。すると紙の風味にもなり、終りを知らせてくる。残7センチぐらい。
 最終盤はあまり美味しくないのに長い。美味しくない物を無理して残3センチまでやると多少気持ち悪くなる。
 いつの間にか葉巻苦学生になっていた。二口の超絶美味はそれだけで嘗ての五指に入るものだったが、全体に+5を与えるのは苦しい。与えないのも苦しい。要するにこの葉巻には音楽が足りない。音楽を同時に聴けば良いというものでもなく。

 今夜(昨夜)は雨が少し降って、寒過ぎるし梅雨にはまだ遠いけれど、春が近づいてどことなく梅雨めいてくるとロッキーパテルを茫洋と試したくなる。夜と海はどちらが広く深いのか。ロッキーパテル(1992)はその影を縫うような梅雨の夕刻の味わいなのである。ダビドフなのに何で突然ロッキーパテルなのだろう。ダビドフには風情が足りない気もする。全く以て食後のデザートのような物で、デザートに豚を使うのも凄く、贅沢である。

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