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  源氏物語「葉」
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|TAU JUN 11|166mm x 52|シガーオンライン|$490/10|重量:+1( 16.35g)|算出:+4|香味:+4|

 箱の中で六本が濃淡二色に分かれているのだが、黒い方を選ぶ。黒い物二本のうち、細い方。
 見た目の細さに相応しく過去四回の記事と比べても最も軽い、吸い込みは丁度良い。
 出だしふつう、但し丁寧に運ばれて行くよう。通常のコイーバとはでも違う、違いは特別な魅力に結実したりせず、焦げ目が強く、草も強く、雑味やエグミというのではないものの、何故か風邪を引いた時に似た頭の重さを感じてしまう。しばらく。
 中盤、金木犀入り杏仁豆腐にパリリと香ばしいクリームブリュレを合わせたかのようなデザートが供され、風邪がほとんど吹き飛ぶ。これ以降コイーバたるコイーバ感、岩の旨味がこの葉巻の強さにまろやかさを加える。全くもって序盤は単なる布石で、デザートがこれほどテンコと盛られれば不味いはずがないどころか美味しい、なんだか冷静ではあるが美味しすぎる。コイーバ専門カフェでコイーバならではのデザートを戴いたような特別感。無論ただ甘いだけであるはずもなく、約20種類ものヘンテコな、ふつうデザートに使用しないような素材が一纏まりに分ち難くうねりのように盛られている。風に継ぎ目がないように味に継ぎ目がない。その質素ともいえる曼荼羅の中から時々病院の匂いが強く鼻を突いたりする。病院の個室で入院患者が甘いお香を焚いたような。おれはもう退院できない、だから最期にコイーバ1966を、というほどではなく、かえって退院できてしまうような美味しさがある。
 コイーバらしい紅茶感でもなく、一方、コイーバらしいカフェオレ感でもなく、でもそれらも混ぜ合わされていそうである。そういうものが終盤にちょろちょろ目立つようになる。
 変化悠揚として荒れず乱れない。総じて今日(記事を一日寝かせたので昨日)そっくりの、冬の微かな春日のような趣が、それも非常に弱い春日で、味わいはどことなく冬のつらさを忘れていない。
 最終盤でも荒れないまま丁寧にスパイシーになる。どんな葉巻も最終盤まで荒れなければスパイシーになるものだとしても、実に拝みたくなるほど美味しく美味しげなスパイスがピリピリして心地良い。
 ……一本6500円とすればそれに着火している現状に驚くのである。こんな物を箱で買うのは余程の金持ちか、金持ちが案外火を点けないものだとしたら、余程火事の好きな道楽者だが、私は借金を抱えた茶人のような気持ちです。
 思えば不味い飲物では駄目ですが、高い飲物も駄目です、葉巻が美味しいので飲物の美味しさを忘れてしまうかもしれません。不味くない安い飲物がいいと思います。(私はミゲルトーレス・チリの1400円の赤ワインとハーフで2000円以下のクアディー・オレンジマスカット・エッセンシア・カリフォルニアなる甘口白ワインを飲んでいました。ちなみにミゲルトーレスは本家スペインはあまり好きではないのですが、チリの分家は好き。)
 毎回同じ話で恐縮ですが、1966は特異さが美味しさには向かっていないようで、あるいはBHKよりも特異かもしれないが、その特異さがコラージュの域を出ない。BHKの特異さは特異ではない要素の研磨にあるような。ただ破壊力はなんだか凄く、コイーバ・パナテラの巨大化という夢が結実している気もする。黒いと言ってもマデューロシリーズなんかにはあまり似ていない。またただ、パナテラのアタリに感じるようなホットココアもない。こうして他のビトラのアタリと比べるとつまらないようで、あまり比べなければ問答無用に凄く、また確実に当るのかもしれない。
 今二年半だが、吸い頃は三年前後と見る。というか、これはこれで今日の一本で十分で、堪能するどころか本当の堪能について行けなかったのかもしれず、プレミア感に気圧されたのか、気圧したのか、気圧し気圧され後はゆっくりエスプレンディドスを薫らせたい(未所持)。残5本。
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