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  源氏物語「葉」
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|SUB AGO 11|6.1 x 52|coh-hk|($99/6=$16.5)|重量:+1(14.44g)|算出:+5|香味:+4|

 昨日封緘を解いたからか、匂いがあまりせず。
 さすがに昨日のオヨに比べ旨味強く、ほっこり落ち着く芋がある。通常のP2とどう違うのだろうかわからず、モンテクリストはNo.2を所持していたため外観を比べみるだに巻きもラッパーもセレクションの方が格段に綺麗だった。が、このパルタガスのラッパーは斑黒くあまり綺麗とはいえない、しかし巻きは美しい。
 とにかく芋がおいしく、5ミリも進むと截然と甘味と花が斉しく滲み出す。それがはや強烈な残り香になり、香のトンネルを潜った芋に再びまみえる。芋は依然消えず、潜り抜け、芋の方が明るいという逆転が起こっている。この芋機関車は華やかな香を後ろに棚引かせつつ捨てている。まさに後ろ髪を引かれる形の、それでいていさぎよい香。花は萎れるを俟たずに捨て、甘味は里芋を薩摩に、薩摩を次第に安納芋に変えていく。花は続々吹いては焼けもして香ばしく、また捨てられ、残り香強く、焼け続けて落葉になり新緑になる。新緑も焼け、この汽車は冬を通らない。豆を炒った風味か、それよりも何処と無くもはっきりと石炭のよう。植物は窓風、窓の景色は刻々と変わる。安納芋とて一瞬で終る。しかし素朴で美味しい原風景がずっと続き、芋の根は人類が芋から派生したと思えるほどに根深い。そんな馬鹿な事を思わせるほどこの葉巻がおもしろいという事か、美味しい物ではある。大体この葉巻よりも私の方がおもしろくなくては困る。文章で稼がなければならないとしたら。しかし葉巻とかく敵対する人物の書が万が一にもおもしろい因果はあるか。そのうえ文章を書くのに葉巻の力を借りている人物の。一体全体文筆家は葉巻を吸ってはならない、就中葉巻を書いてはならない。どんなに酔ったように筆が辷るとしても。
 いずれにしてもこれが美味しい。これが美味しいのに、明らかにパルタガスの味である為、パルタガス全部が美味しい気がして来る。芋を基調とする完璧なバランスと変化があり、ただ絶頂が無いのみ。むしろ常に絶頂だったといって良いかも。常に絶頂ならば、絶頂は無く、無い物は無く、評価も一つ下がるのである。それにしても絶頂は無い。屹度、あるはずの絶頂が無いのではなく、トンネルを抜けたら其処はトンネルだったというような、そのトンネルの壁円筒に車窓の景色が写実的に描かれているのである。

 昨日の後半の事、及び今日の残5センチの事、後半が味気無くなる因果には、吸っている途中の乾燥という大敵がいないだろうか。乾燥したって美味しい物は美味しいと思うのだが、今夜はあからさまに乾燥し切った日本の冬だし、しかし冷たい空気の方が葉巻を美味しくするとも思うのだが、何か吸っている最中に葉巻を加湿する良い方法はないものだろうか。珈琲碗から立ちのぼる湯気など、珈琲碗を灰皿のようにしてその淵に葉巻を横たえても、あまりにも湯気の気は短い。
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