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  源氏物語「葉」
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 箱を開けると葉巻に穴が開いている。吃驚してすぐさま箱の中に煙草死番虫の死骸を一匹発見した。初めてである。
 葉巻を始める前は我が家は煙草死番虫を飼っていた。いつからか夏になると黄金虫のような胡麻粒大の虫が頻繁に家の中を飛ぶようになった。幼少の頃はそんな虫は見なかったのに、黄金虫に似ているし、特に目立つ害もなく、それを夏の風物詩と思うようになっていた。ある日、使われない香辛料(パプリカ)の壜の中にその虫の巣を発見したのである。その香辛料を捨て、また別の乾物にてそれを発見して捨て、それからは夏になっても風物詩は現れなくなった。その虫が煙草死番虫だったと知ったのは葉巻を始めてからである。葉巻を始めて以降にも痕跡は発見した事がある。旅行中のポルトガルで常喫していた紙巻煙草を記念に一本だけ後生大事に箱の中に取っておき、箱を部屋に飾っていたのが、久しぶりに蓋を開けると巻紙に20個ぐらいの穴が開けられ、中身の葉はすっかり蛻の殻になっていた。其処には虫の死骸もなかった。おそらく葉巻を始める前、頻繁に飛び交っていた時代の痕跡である。
 今回は調べた限りどうも一匹だけらしい。たまたまダビドフ・リミテッド2008の箱に入れておいたため被害が二本ですんだ。というのは、リミテッド2008は残一本でビニールに包まれ、同じ箱に纏めて入れておいたクラシックNo.1の残二本もビニールに包まれ、そこに最近購入したプーロドーロを纏めて入れておいたのである。EminentesとSublimesは四本パックを購入していたため箱の中に入れず無事だった(しかもパックの場合一本一本ビニールに包まれている)。プーロドーロは箱で買うとビニール梱包されていないようで、一本だけ買うと箱から裸で出てしまう事になるらしいが、Giganteだけはシングルでもビニールに包まれていて助かった。Magnificosは被害が出る前に吸ってしまったようである。つまりNotablesとDeliciososの二本に被害が出て、Notablesには穴が二つ、Deliciososには穴が一つ開いている。冬には家の中で虫を見た事がないから、どうも初めからNotablesかDeliciososのどちらかに虫が仕込まれていたらしい。何処で仕込んだかはわからない。他の箱も開けてみたが被害は今のところなかった。どうも一匹だけらしい。穴を叩いても二匹目の虫は出ない。

 着火時が怖かった。虫が暴れて出てきそうで。味も、虫の味はしない。むしろ美味しいようだ。火種が穴まで到達しても虫は焼け出されて来ず、虫の気配は味にもない。穴はフット付近だった為、其処を通り越せば普通と変わりないと思われる。
 味の変化は特にない。初めから濃厚で、後も僅かずつ只管濃厚になり続ける。
 怖いのに、一口目から美味しく、カレーレベルの濃密なスパイシー感。概ねシナモンゆえお菓子の甘さでもある。ぎりぎりマデューロくさくない味の濃さがある。
 変化の妙こそないが、あるいはそれが微妙だが、最初から最後まで美味である事は確か。他のプーロドーロと基本は同じ、ただ酸味への怖れがなく、他より落ち着いている感じがする。
 灰はほぼ真っ白。一度落とすまで灰はしっかりしていたのに、やはり脆く、ポロリと来るのが、灰の付け根から来るのでなく、灰を縦に削ぐように来る。灰の脆さはもはやほぼ完全にプーロドーロ全体の特性である。
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