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  源氏物語「葉」
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|MGA NOV 10|4 x 48|puro-express|€97.50/12|重量:−1(10.51g)|算出:+4|香味:+3|

コイーバのマデューロに似た感覚のトリニダッド(のマデューロ)。
開封直後の印象があの黒いインヘニオスにそっくり。
香味もコイーバのマデューロとインヘニオスに似た箇所がある。

杉に樫を巻いたような固い味。
樫の皮は濃く香ばしく、中身はさわさわとして爽やか。
中身は通常のトリニダッドのそれとあまり変更点はないらしい。
爽やかさは固い皮が揮発している所為か。
先日のコイーバ1966に引けを取らない香ばしさ。

トリニダッドらしいマイルドな杉の白木と樫の樹皮とが合うのかは微妙なところ。
トリニダッドでELを作るとしたらこのように皮を変えるしかないのかもしれない。
近い印象はあるものの、コイーバの皮は岩なのに、こちらの皮は染み臭い樹皮である。
樹液を啜る感じが美味しいかもしれない。虫は恐い。
夏の昆虫採集を思い出す。思い出すというより、それそのものが香ってきて、きわめて懐かしい。
味わいが麦藁っぽいのは、到着日に於ける変質か。
夏に麦藁帽子は合うが、葉巻の麦藁はあまり良いものではない。
此処までで2センチ。

突然、徐々に、突然徐々に煙量が多くなり味が強くなる。
香味はまったくそのまま、荒くもならない。
強さの直後にトリニダッドらしく滑らかに凪ぐ。
この時点で肺喫煙可能の軽さ。
煙は多いのに、タール16という感じ。煙が少なければタール6である。
終盤、苦みが増して、かなり苦い。
太々しい苦さに、濃厚な小便とともに揮発する木。
花のような小便である。

こうなると樫樽の蒸留酒を飲むしかない。
飲み物を変えたからか葉巻自体が変わったのか、チョコのようなコクが出て揮発性が消える。
ウイスキーは非常に良く合う。はじめからそうすべきだった。
着火前は非常に美味しく感じていた地ビールが台無しであった。
葉巻も小さいので、蒸留酒をストレートでちびるのにちょうど良い。

終盤で火種が虫食いのようにトンネルしてラッパーに穴を開ける。巻きは完璧ではないらしい。
片燃もずっと。
なんだかわからないが、濃厚でバランスが悪くも良くて香ばしくて旨い。何の比喩もなく形容詞の羅列に終わる。
それでも美味しいのだからトリニダッドである。トリニダッドとは思えない濃さと香ばしさなのに。

コイーバに比べると微妙な点が多い。
トリニダッドの微妙さはちょっと変化を付けてもだめ。
トリニダッドの微妙さは小さいビトラでは膨らまない。
ロブストエクストラとフンダドレス以外存在しなくて良さそう。
駄目さほど可愛いものもない。
トリニダッドでなければここまで駄目になりきれない気がする。
駄目駄目といってもなんだか美味しいし、癖になる。へたうまにしては高い。
非常に高い次元で失敗している。
非常に高いヘタウマが成功している。
皮が濃いせいで、中身が不当に味気なく感じられるのかもしれない。

纏まらないので箇条書き。煙にそのまま流されて何も考えないいつもの文体に疲れて、新しい文体を開発しようとしたけれど。
先日の「青い黄砂のような土の綿飴が風船になって虚空に混じる」などというメトニミーなのかエコノミーなのかもわからない『存在しないものへの比喩』は煙でしか成立しない文体なのだが。そんな風船で全編を覆っていたら夜が開けてしまうし、かえって煙たくなくなってしまうかもしれない。葉巻が本業ならそれをやろうと思った暁にはできなければならないけれど。それとも、葉巻が本業ではないからこそできなければならないのか。

関係ないが、いつも重量はバンドを巻いたまま計っている。
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|OUS OCT 09|6 x 50|cigarOne|$198/12|重量:+1(15.20g)|算出:+7|香味:+5|

 葉っぱらしい香ばしさの類が特等品の豆の香ばしさの二面相で、恰もアーモンドが根付()のように削られていく。洒脱な軽さがこの香ばしさを嘘のようなものにしている。嘘でこそ香ばしさが香ばしいのである。
 削りかすの薫香は衰えずに四囲に散り、女体か何かのように削り出されたアーモンドのなまめかしい白肌に木犀色が塗られる。秒音も俟たぬ間に削りかすが一斉に杉となって林立し、白い芯を有耶無耶に遮蔽するのである。目隠しをする杉の樹立の間から裸のような金木犀が隠見する。杉と木犀の縞がまるで二次元の水彩画のように奥行きなく滲み合っている。これでは杉も嫌いになれない。剰えアーモンドから育った杉である。
 女体にも見えた白い芯が何だったのか、判然としない。この煙には芯が無いというか、隠滅することではじめて芯を在らしめている。旨味の強弱とか、そういうものはない。ひたすら軽妙さの裡で揺られているのである。濃さも軽妙、薄さも軽妙、甘さも濃淡を失っている。
 後半は夢枕が椒椒として葉巻らしい15.20グラムの体躯に戻るのだが、これがまた目覚め一番の料理のようで現実的に美味しい。煙に『邯鄲の枕』()が引けるかどうか。まったく女体らしかったようなものが服をきちんと付けて、用意してくれた朝食が晩餐のようである。これも夢、次第に序盤の朝のアーモンドに戻りゆく。孤独で溌溂とした朝のアーモンド。それがまた木犀色に塗られるのである。少しぞっとする回廊のような変化のある、美味しい、変化のない日常である。また杉が林立し……。
 またしてもきちんとした妻のいる朝に戻る。煙にホウホウとしたどうでもよい亭主に晩餐のような朝食を作ってくれる。案外爽やかな晩餐である。テーブルには春だというのに金木犀が飾られている。これはおかしい。やはり夢なのだろう。私は一人なのだろう。煙は既婚者と独身者を併呑するのだろう。

 小数点第二位まで計測可能な精密量りを買ったのだから、重量を記載する事にした。重量のみをもって、ある程度ドローの良し悪しを判読できるらしい。重くてドロー良好であればこの上ない。
 先日の要領で最終盤をパイプに詰めて吸ってみても、こちらは最後まで美味しく、まあ残ゼロセンチを味わい得た。
 過去9本の想い出から良いところだけを抜き出して……と、こういうものを想像して10本目を着火したら、うまい具合にそのとおりになった。この香ばしさは、就中コイーバを髣髴とさせられはするけれど、比べれば比べるほどコイーバには無いもの(岩よりも食べ易いもの)で、香ばしさ自体に旨味の乗ったアーモンドである。アーモンドそのもののように芯の白味の乗ったアーモンドである。アーモンドそのものは好きではないはずだが、煙となればアーモンドは実に美味しい。ケーキやチョコレートのアーモンドよりも香ばしい。
|AGR MAR 11|4 3/8 x 40|coh-hk|$62.05/12|算出:+1|香味:+1|

 この葉巻は序盤と終盤でかなり辛味が出る。中盤はたいてい真に嘘のように静かになり、滑らかな杉が漂うてロブストエクストラの子供だと納得させられるのである。ただ子供なのでこの中盤もそわそわとして落ち着きがない。
 他のトリニダッドにはあまり感じられない豆まめしい香ばしさがあり、それが珍しく芳しく焙煎されているのだが、序盤と終盤は多く辛味の出しゃばり過ぎに陥る。たいてい辛味にとどまらず雑味と苦い苦味も追加される。しかもこの豆まめしさは中盤に至って辛味が静まると同時に形を潜めてしまう、辛味と一体のものらしいのである。
 何本吸っても尻を隠して頭が残るような滅茶苦茶支離滅裂な葉巻だと思う。
 序盤と終盤が中盤を浸食している事はあるが、中盤が序盤と終盤を浸食する事はない。不安定な天気というか、悪しき台風に覗くお日様に似ている。

 まだ一本残っているが、価格なりにおもしろい箱だった。
 シングル買いした2本とこの箱の11本いずれも同じようなもの。経験がないけれど、一円パチンコに似ている気がする。
|AGR MAR 11|4 3/8 x 40|coh-hk|$62.05/12|算出:−1|香味:0|

 この箱の物をもう三本試してみたけれど、トリニダッドらしい優しげな杉の風情こそあるものの、やはり駄目な葉巻だ。小柄らしいといえばそうかもしれないのだが、トリニダッドだからこそこのサイズでこそ静かであってほしかった。レイジェスは喧しいだけで凝縮感もさらさらないトリニダッドであり、寝かせて静かになるタイプでもなさそうである。枯れるまで待てば静かになるはずだが、フンダドレス一本を三本に切ってしまえば済む話かもしれない。実際には二本にしかならないが、何故か三本という気がする。
 小柄らしさが似合わない香味である為、小柄らしからぬ調合を待つ。十二本に一本はそんな調合に当るはず。
|AGR MAR 11|4 3/8 x 40|coh-hk|$62.05/12|算出:−1|香味:0|

 正月は長い物が適しそうでそうでもないのでこんなちびっこを正月用に買った。これで来年の正月は気楽だろう。長い物を用意したりするとかえって気が重くなる。寝かせる気は毛頭ない。
 何故か出だしはダビドフのような松茸か下駄箱が香り、味がないのに強烈に辛くて強い。これまで二本シングル買いしているが、レイジェスはいつも荒々しい。シグロⅠも当たったためしがないし、毎回このサイズには見放されている。それでも中盤辺りでトリニダッドらしい健やかな凪を感じさせてくれるはず。
 ……ダビドフっぽかった松茸臭さがハバナ葉の香ばしさに変わっている。ついでに花も染み出ているが、依然辛くて強い。いつもこうだが、この葉巻はこういうものなのだろうか。
 やはり、バターと杉が覗き始めると辛味が減って煙が辷るような感触に変わる。花が鼻に沁みる。鼻が木になってしまったようである。辛味が消えて完全に辷る煙に変わっても、強さは減らない。
 美味しくなったのは中盤のほんの僅かの期間で、中盤から終盤に掛けてまた味気なくなり、辛味が復帰したまま終わる。松茸も復活した。トリニダッドのコクの薄さでこれだと、確かにトリニダッドではあるものの、何も良いところが無い。
 こういうものなのだろう。何なのだろう、あまり好きな葉巻ではないが、他に正月用として丁度良い物も無い。こういう事もあろうかと思い、ダビドフの各種プチコロナサイズを三本買っておいた。正月への執着は毎年ただならぬ。
|PUB OCT 07|6.4 x 42|cigarOne|$202/12|重量:+1|算出:+3|香味:+3|

 吸い込みが悪いのでなんともいえないが、五味の欠如が欠如し始めたらしい。滑らかさというか、没個性が最高の個性となるトリニダッドらしさが基調ではあるのだが、香りが随分跳ねている。ここまで跳ねた香りは聞いたことがない。特殊なチョコとも特殊な草とも、特殊に深く煎ったか特殊に深く熟れさせたか、兎に角「特殊」と附しておけば良いような。その黒い香りがトリニダッドの高級らしい豆乳の滑らかさにふしぎと繋がれている。半面没個性でありながら半面個性そのものであるのだから変な繋がれ方である。
 吸い込みが悪い所為か木にアルコールのような揮発性があるものの、それもサンクリストバルのような嫌なものには感じられず、花柄も克明さを増して、なかなか化けてきた気がする。花も花ではなく花柄で、造花や口紅のようなエレガンがあるが、ともするとどぎつくなる濃色の半面には淡い素肌が生きているのである。こんな煙たい喩えは濾過すればインヘニオスこそ女性にオススメという事になるものである。あえてどぎつい化粧をする気分ですいすい吸える。どことなくサラダの爽やかさも秘めているし。焙煎した大豆に直接花が生えているような不格好さであるのに。
 残り物らしく未だに市場に出回っていて買うか買うまいか迷っている人も多そうだが(そんな人誰もいないかもしれないけれど)、この吸い込みの悪い1本にして買っても損はないと思う。好悪の分かれる珍味らしくはあるが、底からして竹以上のものだとは簡単に判る。

 今は値上げしてしまったが、シガーワンが今年の父の日セールで$202の20%(?)引きをしていた時にはあまりにもの安さに驚いた。

 今年の2月18日()に二本目を吸って、次は夏まで待つと言いながら、これでもう五本目なのだった。あれから半年で三本消費したのだが、今日日に吸頃を迎えたと思う。どんな飲み物が合うのかは非常に不明。
 これほど意味不明にして美味な葉巻は他にないと思う。終盤に衰える事も無い。葉巻はあまり面白いとは思わないが、これは面白い。
|OUS OCT 09|6 x 50|cigarOne|$198/12|重量:+1|算出:+7|香味:+5|

 最近つまらない物ばかり吸っていたから、そんなものを一箱買うぐらいならこれを五本買った方が良いのだとひしと納得させられる。ドアを開けるとからんと鳴る喫茶店の鈴のような、期待が常に美味しい。その音のような、軽やかな甘味。加えてえも言われぬ黄色い芳香と優しいスパイスがずっと続く。これは喫茶店を丸ごと食すよりも美味しい。+5にするには地味だが、地味という言葉が似合わなくもある。

 無論、御供は清酒だった。これ(白鴻 純米吟醸 沙羅双樹)は池袋の西武デパートでよくよく吟味して手に入れたもの。

 あまりの贅沢に、内田百閒が残り少ない一升瓶を片手に空襲避難した話を思い出した。
|OUS OCT 09|6 x 50|cigarOne|$198/12|重量:+1|算出:+5|香味:+4|
 
 先日のルシタニアスほどの感動は無いものの、初めて吸ったダビドフNo.2をひしと懐かしませるシルクの感触。吸い込み絶妙だが、リンゲージ50のはずがちょっと太すぎて吸引力と煙量との乖離に難がある。しかしこれまでの四本の中でもっとも品質安定感がある。四月だからか、最近葉巻の調子が良いような。バラツキが本領である葉巻には安定感の中にさえ本領は無さそうだけれど、この葉巻は吸い込みさえ良ければ+4より下がることはないと思う。煙にもっとまみれたくなるほどの優しい美味しさがあるのだが、一歩引いている感じは否めない。この膨らみを指して満足感が欠けているといっては贅沢すぎる。序盤で引いている感じが奥床しいはずなのに。
 基調は土や革ではなく木で、とくに杉だと思うのだが、優しくて煩くない。木を思わせない杉の香というか。パルタガスでは茶色くなってしまったが、シャルトリューズ酒の黄色そのもののような、えもいわれぬ香りもある。トリニダッドの中にはコイーバの岩っぽい熟成感を感じるものもあるが、今回はない。特別な材料を使わず、物足りなくなりそうだが、軽いバターのような旨味があって、味が薄いとかは感じない。味の薄さよりも上質感が遥かに勝っている。
 終盤では煙量も増し引いていた膨らみが出てくる。シナモンと胡椒の中間のような香り高い刺激も加わる。雑味は皆無。軽くて穏やかな序盤の賜物か、根本まで限りなく美味しい。
 
 飲み物の相性は、『清酒 陸奥八仙 特別純米 赤ラベル 無濾過生原酒』が◎、『ラム エルドラド15年』が×、『スコッチ スプリングバンク CV』が×、『テキーラ カサドーレス アネホ』が×、『米焼酎 威 十二年 碧』が◎で、○や△のない極端な相性の好悪だった。スコッチに限らず、洋酒は互いのスモーキーさが鼻につき、どちらも香りを失って粘土のようになる。こんな話聞いたことがないが、トリニダッドのような繊細な葉巻は日本の米の飲み物が断然合うらしい。葉巻が優しいので吟醸香を潰すことも米の旨味を潰すこともなく、それぞれの香りも旨味も別様に際立つ。世界二大マイケル・ジャクソンの一人に言わせれば「相互補完的ではなく似たもの同士の対照的な相性の良さ」だと思う。香りは双頭のようだが、甘味は補完的かもしれない。
 ちなみに一時期馬鹿みたいに焼酎を買い漁っていた事があるのだが、『米焼酎 威 十二年 碧』は自称焼酎通の人に贈っても喜ばれる品物で、球磨焼酎ではないだけにたぶん焼酎通も知らない逸品。
|PUB OCT 07|6.4 x 42|cigarOne|$202/12|+1|+2|

 二本目。
 一本目の時に面食らった香草は治まり、トリニダッドらしいクリーミーな辷り具合とコイーバの岩味に通じる香味が美味しいのだが、依然五味が欠如している。ナッツを黒いまでに煎ったような香ばしさと花の芳しさは申し分ないけれど、ナッツの旨味や甘味が完全に宙に浮いていて舌に当たらない。ほんの微かな苦みだけは宙に浮かし切れないらしい。樽熟フルボディの酸味を消した白ワインのような気難しさを感じる。切れが悪いというか。
 香は極上で、鼻だけで花の蜜の甘味を感じる。これに比べるとロブストエクストラはずいぶん舌に美味しく思う。
 とにかく嗅覚にはまたとなく美味しい。思えばフンダドレスの旧バンドもこんな感じだったような。あるいはこれこそが良いのかもしれず、こういうものを作ろうと思って作っているのだと思うと納得できなくはないのだが、これだとトリニダッドは糖尿病患者と高血圧症の為の最高級品になってしまいそう。
 これが優しいかというとそうではなく、吸い込んでみるとなかなか強烈な喉ごしがあるし、吸い終える頃にはニコチン酔いになる。

 昨日のネストールミランダの不味さを払拭する思いで手に取ったのだが、昨日の驚怖を引き摺っているらしく最終盤はネストールミランダに似た石鹸のような味がして気持ち悪さを増した。
 高温状態で寝かせてみたい気もするし、旨味が乗ることを願って次は夏まで待つ。
|PUB OCT 07|6.4 x 42|cigarOne|$202/12|+3|+3|

 無点火で銜えていると染み臭いコーヒーチョコ。10本入りボックスにありがちなスクエアプレスっぽさはなく、ちゃんと丸い。他のロンズデールよりも細く感じる。
 着火すると思わず仰け反るほどに、パクチーや春菊のような癖のある香草の香りがガツンと来て頭がふらつく。
 甘味を排斥したようにビターでフルで滑らか。他に類を見ない特殊な味がする。
 奇妙な香草の他に、皮の部位にコイーバ(アップマンNo.2かもしれない)に似たハバナらしい深みを感じる。コイーバとはまあ違うが、凄みはコイーバ並のもの。
 1センチぐらい進むと柔らかいバターのような煙が出てくる。まろやかだが甘味は絶無。塩も無。
 あんまり香草っぽくて面食らったが、特級のハバナだということはわかってしまう。砂糖を入れ忘れた最高級のシガーで、木造の王宮か王宮の穀物庫か、ともあれ王宮のような古びた建造物の中で振舞われる食事の香りに似ている。印度の王宮なのか、供されるのは豆料理なのでけっして香木に似ているわけではないのだが、伽羅を焚きたい気分にもなる。
 滑らかさはあるが、強く吸うと辛味が出る。他のトリニダッドにはあまり似ていない。外観からして黒い。

 2007のリミターダとして安価な残り物に思えなくない。それなのに高尚さを匂わせているし、あまりにもの個性にたじろいだ。
 まだ到着日で一本しか試していないけれど、旨味ではなく香りのみを楽しむものなのか、五味がとことん欠如しているような、逆説的な美味しさだった。(苦味はあった気がする。)むろん五味が出てくれた方が美味しいのであって、三年寝かせてこれだと先が思いやられもする。と同時に三年の風格のようなものも感じたのかもしれない。
 美味しさはともかく、品位と面白さは別格だと思う。

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