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  源氏物語「葉」
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|NextCigar|$0/1|arr 2019/9/21|
|—|3.5" x 43|7.77g|香:4.1~4.3 ave4.2|残0|

 註:この葉巻は試供品です。「tasting cigar not for sale」と書かれた封シールあり。

 典型的なダビドフ香。この香からあの香が出るとは夢にも思わなかったものである。と、初めてダビドフのプレミアムシガーを入手した時の感覚が蘇る。蘇った記憶が正しいかは知らないが、加うるに、いつもより甘いべとつく感覚がある。藁を欺く青草の溌剌の香りもして、青草に乗った露が甘い。

 着火すると常よりもの濃味に、また甘い露も蒸発せず焦げもせずに残る。
 ダビドフが甘い、これは初めての体験かもしれない。雨後の葉や花が含む露ぐらい(ビーズ玉ぐらい)の量の甘さで、質は水飴、透明感があり、露を拾って口中に広げる。砂糖系の甘さと言って良いみたいだが、香もあるのでステビアかとも思いうる。
 香は素朴なクラシックシリーズ寄りでも、それそのままか濃く、かなり甘いし、味に重さがある。松茸等の繊細な風味などよりもあからさまな濃さと甘露を感じる。松茸はあるもののこれは濃縮されないようで、ダビドフ茸とは薄さにのみ宿りうる菌糸なのかもしれない。繊細な風味自体が濃くなると、風味というより旨味となって腑に落ちる。ダビドフ茸の高貴さを維持しつつ「うまい」という言葉が似合う。「うまい」としばしうなり続ける(結局最後までうなり続けた)。
 旨味化した茸に花や卵の豊潤さがねっとりと加わる。ダビドフに「ねっとり」という言葉を使うのも初めてかもしれない。ねっとりした次には白胡椒が効き、すると粉挽きの胡椒の浮揚に連れられて花が枝を離れて舞う。ここでも砂糖の透明感は不変である。
 ふとエントレアクトだったかショートパーフェクトだったかがバターっぽかったという記憶に当たる。そう思うと今日もバターの通奏低音が効いていた気もする。独特の甘い透明感が、常にバターのしつこさを浮かしていたのかと思い至る。旨味の正体であったバターは依然浮きながら、舞う花が空中でバターにまみれて遊泳する。
 それで、さして天国的な香味ではないものの、天国に居たことも無論ある人のような、見事な地上系ダビドフで、地上の穴のひそかな楽園を訪れる。こんなところに池があり、藻で濁らないのはどうしてか、透明度と糖度の高い池がある。池を飲み干したくなる。穴の中は何処からか光が差して明るい。
 そういえば昔、水道水から砂糖水が出ると噂される家が近所にあった。

 小サイズダビドフはウインストンチャーチルで失敗しているが、今日をもってエントレアクトが箱買い筆頭となった。(試供品と実際の箱物とに品質差がないことを願って)
 異様な軽さに異常な芳醇さが宿る『7』のタイプでなく、それよりは重くそれでも少し浮くような軽やかさがある。バターの芳醇さも『7』の桃に比べると基本的な香味のように思えてしまうが、特異な美質である。
 終始突出した美味が完璧に貫かれ、変化もコンパクトながら見事だし、名の通り幕間の15分でこれをゆっくり堪能できるのか、急いで15分で堪能して火傷してみるのもありなのかもしれない。美味しい素質の物ならば、30分クラスの物でも15分で焼尽して不味いわけがない。
 黒ダビドフの味比べをしている場合ではないような。昔はもっと木の質感が五月蝿かったと思うのだが、アニベルサリオの品質は上昇したらしい。となると702やシグネチャーも旧弊な記憶で扱ってはいけなくて、各々試したくなる。
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