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  源氏物語「葉」
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|MUR OCT 13|6 2/5 x 54|coh-hk|$156/10|重量:+2(19.05g)|算出:+5|香味:+4|計11点|

 優しさに懐かしい味わい。何を懐かしむのかはよくわからない。
 葉巻を使って居ながら葉巻を懐かしむ、これは普通の懐かしみ方で、久しければ起る。久しくもない藁置場が懐かしいとかいう方がやや普通でないのだが、たしかに此処には前者の懐かしさがあって、ただ、それがどの種の葉巻なのか、ぼやけている。そこがあまり普通でない。音楽が聞こえて、これ誰の曲だったっけ? というもどかしさぐらいのものだろうか。
 それより、購入時からだいぶ経って、すっかり広大な荒野が消えている。穏やか。やや土。初めてボリバーを試した頃の靴屋の風味を懐かしんでいるとしても、いまいちピンとこないが、広がっているのは広大な靴屋かもしれない。
 味が濃くなると、美味しさも華やかだが、同時に安っぽい風味も含まれてしまう。緑豆もやしとか、胡瓜とか、そういったもの。しかし丁寧に漉したような滑らかな土が、土自体が、連綿たる風景を示唆するように、軽く舞い上がって、目隠しする。軽い土を浮き上がらせた軽い風が止むと艶やかな金木犀が立つ、と木は粉化して土と花の粉のみ。粉に隠れた鮮やかな景色は自室である。
 モンテに似て(胡瓜等)、土の質感もそっくりなようで、青いような空色も見えるが、ナッツキャラメルが無いのか、相違ありと思う。モンテを懐かしむのだろうか。相違が懐かしみを濃くするのが葉巻なのだろうか。これを美味な事とするなら、この葉巻の塩梅は絶妙の精妙で、しかし煙のこと、この言っていることはそもそも奇妙で、あっけらかんと正しさを欠く気が充満している。
 箱で購入した物が残一本となるとなかなか着火し難くて、残一本の葉巻ばかりを集めて並べた箱がある。ちょうど隣にモンテのスブリメが眠っていた。スブリメの夢が乗り移ったような気はやはりする。しかしスブリメの味は夏のココナッツの思い出であるしなおリミターダらしく水っぽい無味感のあるものだから、結局当て嵌まらない。スブリメが失いがちな記憶が此処にあるとしたら面白い。
 5年弱で荒野が消えて面白さが半減した気もする。落ち着くということも負けず面白いが、葉巻の自宅熟成というのは、醤油の発酵や、シェリー酒のような経年変化は起こらない、これは少しつまらない。軽くて、落ち着いて、葉巻とはかくあるべきというふうな、普通の、良い葉巻にはなっている。
 終盤、揮発性物質が香る。すると一気に土が革にへんげし、靴屋が蘇る。靴屋には靴墨の類など何かしら揮発性の物が置かれているからか。前段を踏襲して景色遠景まで広大ながら、なんとも身近な足元である。
 靴も束の間、終盤らしく燃え、ホットで、灰化し、なお花の色が乗る。素晴らしく儚い。
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