忍者ブログ

  源氏物語「葉」
++葉巻++シガー++レビュー++個人輸入++ブログ

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

|—|130mm x 49|montefortuna|€20/1|重量:0(11.39g)|算出:+5|香味:+4|計9点|

 〈モンテフォルチュナ〉という怪しげな店で買う。ツイッターでフォローされて知るのだが、葉巻について呟いた覚えがない。店舗サイトの日本語は機械の訳文そのままで、これも怪しい。この店に関する日本語の情報も出回っていない。ただ、英語の情報も少ないながら内容は悪くなさそうだし、商品は適正であろう価格だし、垂涎こそ危険ながらなによりモンテクリストのリネアを置いているし、心配ない店だと判断した。
 後日、好みの梱包で無事送られて来る。
 リネア三種一本ずつ計三本で75€(約1万円)、2セット買う。20€+25€+30€で計算。

 2日午前2時頃着火
 序盤荒くも即刻煎りたてナッツを渋皮ごとながら頬張り、乾藁などのつまらない風味を圧し潰す。抜群の焼きの香ばしさに、芋栗の類の食感も即刻ふんだんに膨らみ、少し花が添う。花はふつう出れば出たで主張が強すぎて煩くもなりそうなところ、花でない何かに感じられていて、香味全体として「ツチノコの大判焼」とでもいうなんとでもいう‘単一のもの’の紐帯となっていた。全てを『弁当』ならぬ一塊に結ぶ紐が花だったのである。花を花と気づいたのは咲いて5分も経てからで。花が木犀に接近して次第に蜂蜜そのもののように甘く濃くなっても紐のまま、はちきれそうになりながら、ひたすら濃密さを膨らますばかり、花に負けじとする香味強く、ものは「膨らむほどに重くなる綿菓子の幻」を安定させている。幻が安定するとはどういう了見だろう。元旦からツチノコを捕まえた正夢を見ている。
 ふむふむと安寧に納得しているところへ草が広がりくると、さっと土も隠見し、さらに加わる極上焙煎の焦風味があからさまに土を晒す。肥沃なコクで、ものは黒土で育つ。終盤の雑味に至りそうな要素がいつまでも雑にならないまま練りこまれている。
 根元の根元まで美味しく啜ったのに香味点+4に落ちつけた。現時点での荒さが引っかかるのかもしれない。そわそわして美味しさに置いてけぼりにされたような気もしつつ、どちらがそわそわしているのか、葉巻の方にも落ち着きのない荒さを感じた。荒くてもずっと美味しいものではあって、本気モードのハバナ感は充溢しているし、濃厚さが貫徹して息をつく暇もない。従来のモンテ風味の有無について、それが濃過ぎて逆に分からなくなりそうで、ある部分では濃くなって、ある部分では消えている。消えているのは青緑色の芳香だった。
 非常に豊かで強くて荒くて滑らかな濃い煙だから、寂しさの要素がまるで無いが、秋の焚火を大いに感じさせるところは強烈に寒くて寂しい。寒さは真冬深夜に窓を開けっぴろげて煙を排出しているからかもしれない。下半身を電気毛布に包めば寒さはほぼ感じないのだが、ワインセラーの温度がどうしても下がってしまう。

ーー
正月なので酒類はなかなかなかなか豪華で、これによりこちら側のそわそわ感も増す。

『五橋 極味伝心』(清酒・純米大吟醸)
葉巻にやられて死亡。酒質が繊細すぎ、葉巻を高めているとも思えない。苦味が少し強く残る水。パイナップル香も弱めなのでトリニダッドにも合わないと思う。おせちに合わせて止めるべき。

『マルク・コラン サントーバン1級』(ワイン白)
葉巻にやられて死亡。こちらも繊細すぎる。葉巻を消した途端美味しさが蘇り、着火前より美味しくなる。ワインが開いたわけではなく、紫煙の分厚い雲が一気に晴れた時の輝きが眩しい。葉巻のほうも高まらないが、喉を潤す液体の効果はある。晴れた途端、嫋嫋たる酸味とまろやかさが液体に静かに漲る。たいそうなワインではないものの、五橋の最高峰と似た価格で、それと並べていたからか、高貴な米でも入っているのではないかと疑わせる透明感を湛える。抜栓直後はどことなく甘ったるくていやなワインだったが、今はそれを感じない。

『シャトー・ディケム 2009』(貴腐ワイン)
葉巻にやられて半死。黄金は綿になっても飛ばないはず。その黄金が飛んでしまう軽さと重たさ、その低い浮遊の趣が死んでしまったが、甘さは生きて葉巻のほうは一方的に高まったかもしれない。
(貴腐ワインにありがちな杏が濃過ぎず、あんずの後に、焦がした糖蜜が素早くよぎる。素早さを酒の若さと思う。重厚な灯油も極力軽快で、ほんの一滴のマスカットとほんの一滴の桃のまろやかさを静音で奏で、マスカットをも拒絶する葡萄感が奇跡的に滞留して、葡萄というしかない比喩を絶する高ぶりがある。余韻はなるほど永遠で、実際にエキスを口腔の隅々に残しながら、浮遊感が忘れがたく歯磨き後にも浮く。)
一生に一度は味わってみたいと思い、一生に一度のものとして納得できない味ではなかったが、一生に二度となれば、もう要らないとは思う。なのに1988と2001を保管中の身は、古いものを味わうよりもまず、若いディケムを知りたかったのであります。

リネアに合わせる飲物は難しい気がした。赤ワインが欲しいような気もしたし、コーヒーに合う葉巻だとも思う。
PR

忍者ブログ [PR]