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  源氏物語「葉」
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|RAG JUN 18|166mm x 52|cigarOne|€378.85/12|重量:+1(16.16g)|算出:0|香味:+2|計3点|

 届いた箱がロブストエクストラよりぐんと大きい。コイーバ 1966と同じサイズなのに、より大きく感じる。箱が到着してから加える桎梏まる三日以上真空に晒したまま、ようやく開封。
 開けてみると、おめでとう、目に艶な黄色金色の帯、匂いはそう強くなく、臭い連想系もなくて、何故か無着火状態でも甘い。

 序盤辛くない。序盤辛くないのが珍しい。トリニダッドでも珍しい。
 乾いた汗のような不味い風味があるのだが、それでもよく熟した甘みが奥ゆかしく湿ってもいる。乾いた汗のような不味い風味がある。奥ゆかしい甘みもあるが、乾いた汗のような不味い風味が続く。続いて欲しくないものが続く。
 2センチほどで、乾いた汗のような不味い風味があるのだが、薔薇が咲きそうになる。やや緑色の香。緑色が薔薇であるのは少し苦く渋い雑味に刺されるからか。薔薇が咲きそうになっているのだが、乾いた汗のような不味い風味がある。
 ややクリームが加わり、オーソドックスな赤薔薇がクリーム色の薔薇だとわかり始める。オーソドックスなる言葉の所為で、不味さから靴下を連想しないよう気をつけ始める。クリーム色の薔薇が咲き誇りはせず、此処にも乾いた汗のような乾いた不味い風味がある。
 一息に薔薇が退行して別の花が浮び始め、ふと、こびりつきそうな靴下もほぼ居なくなり、先ず緑が濃くなり花の正体を隠す。緑色の靴下珈琲にクリープを入れ匙で回したような渦巻きが見え、緑か青緑か、どうしてかトリニダッドなのにモンテクリストの風味を感じる。青薔薇色の空に金木犀が曇る。青薔薇色の空という遠景に金木犀の近景が映えれば良いのに、近景が曇って、遠景は遠景らしく覚束ない。
 花の芳しさ増す。緑も増す。花の色は緑に潰される。これは葉巻としては珍しい景色で、この景色がどうなるのか非常に気になっている。非常は本当に非常で、頭が痛くなるほどいま集中力を上げている。花はますます芳しい、しかし正体不明、緑はやや退行。緑が花に塗られたかと思いきや、緑の鉄分が迸る。ゼラニウム。
 この景色には、思えばずっと、幽かに何処かの蜂蜜のような、よく熟した枯葉の甘みが奥ゆかしく湿ってもいる。何処の蜂蜜だろう、蜂蜜は花だから、元の木阿弥のような気がしてならない。
 花の幽霊か。茎の幽霊か。
 此処まで清酒を併せていたが、一転しようとワインを抜栓しておると、コルクスクリューの隙に火種が消失する。消失までの間が短すぎる気がしたが、再着火するとシケモクどころか予想以上に色伊吹を返し、いま初めて美味しく、美味しく、美味しく、それでも幽霊に手を伸べて空を切る。
 葉巻の所為でワインの香味がよくわからないのだが、どうやら久しぶりにドンピシャ好みのワインらしい(?)。(Chateau Larmande 2010)
 葉巻がワインを高め、高まったワインが葉巻を少し高めたのかもしれない。
 幽霊に手を伸べて空を切る。花芳しく、クリーミーでありながら、ゼラニウムが効いている。
 ハバナ葉は土や革より明らかに木質で、やや杉を煮る。今になって杉が出始めたのかもしれない。少し酸っぱくなる。焦がし杉の味わい。
 中盤なのか終盤なのか葉巻が大きいのでよくわからないのだが、ますますわかりにくい香気が強まってきて、「樹齢四百年の杉盆栽」という存在しない物を手に取るような感覚を喜ぶ。
 この変テコな杉盆栽は樹皮やや厳しく、それでも爽やかな杉で、杉なのにゼラニウムや木犀や何やかやの花を可笑しく付けている。わらってしまう。
 モンテクリスト風の青緑はとっくに消えている。全貌はトリニダッドの形に纏まりつつはある。
 赤ワイン美味しい。なんだこれ。深く記憶に根ざしながら、浮遊する美味しさ、葉巻の所為で美味しさも不味さもわからない奥ゆかしさがある。
 ワインの奥ゆかしさには美人が隠れ、葉巻の奥ゆかしさには醜女どころか誰も居ない神々しい厳しさを感じ始める。神社に参ったような風味がし始めた。華厳の神社にして、足取りはやや軽い。
 この葉巻は、まさに全盛を序盤でもなく中盤でもなく最終盤にとっておくものなのだろう。最終盤への太く太く長い長い階段を登り詰めつつある。したがって登った先は槍の先っぽのように短くなる、どういうことになるのだろうか。
 ますます近づいていることは確かなのである。ゼラニウムの鉄と血が近づいている。
 登った先に厳かな社殿なく、狭い頂上はこじんまり地蔵、地蔵の背中の階段を下り、見知った杉の列を脇に下り、帰りはヨイヨイ急速に下り、ああカブトムシ、ああカブトガニ。ゼラニウムの自宅のベランダにどこでもドア。
 吸っていて苦はまるでなく、終りには辛味が呆れるほど元気で、かえってココまでの優しさを感じ、新鮮で、花や茎の正体はよくわからないままながらに靄は晴れてヨイトコサ。ヨイトコサの序盤。ヨイトコサの序盤にしてよくわからないが大団円。踊り手はまだ少しの汗。変な映画を見た時の心地を思い出した。そんな映画を見たことはないのかもしれない。見ていなくても、確かに変な映画と変な映画のコラージュ物である。
 難しい香味だった。明日は目覚めて頭が痛いだろう。人に読ませるべきでない頭の痛い文章が出来上がっただろう。全てを真空保管のせいにして、次に期待できなくない味わいだった。

 トリニダッドは10本入りではなくて12本入りなので、計算ミスに違いないものの、ややお得感がある。
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