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  源氏物語「葉」
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|SMO JUN 11|4 4/5 x 50|coh-hk|$258.40/25|重量:0(12.50g)|算出:+4|香味:+3|

 三年経ったコイーバのロブストとは如何なる物なのか、黄色いような赤いような斑の無い独特なカフェオレ色のようなミルキーな色が恰好良くも見えます。まるで夕焼けを見ているつもりが何も見ていないようです。
 三年で枯れるような事もないでしょうけれど、ビオフェルミンをともなう薄口に始まり、もう花やか。ほどなくお約束の、岩を挽き砕いたようなコクが出てきます。
 吸い急ぎすぎたのでしょうか、火種はちゃんと点いているのに、剣のつく赤い峠は見なかったはずですが、気づけば溶岩はもう冷えて黒々とした剣のつく峠が葉巻の先っぽに残り、風に風穴が開いたように風景が荒くぼやけます。そこで丁度咽が渇いてきたのでカクテルを作って戻りますと、嶮しい岩に花が咲きます、大量大輪です。岩もがっしりとしました。嶮しい岩です。
 甘くなります。まろやかになります。花がミルクに融けてしまったようです。岩もキャラメルみたいに平べったく融けてしまいました。
 でぶでぶ 百貫でぶ 車に轢かれて ぺっちゃんこ
 こんな唄を思い出します。本当はもっと詩情の豊かな唄を思い出したいふうですが、私の頭には記憶力というものがありません。カラカラと鶏の風車のように未来に尻を向けて回転するばかりです。風の向って来る方が未来でしょうし、そんな風車が何処にあったかはわかりません。比喩なんて空っぽなものではないでしょうか。好んで空っぽな比喩を作っているのでしょうか。
 今度は火種が消えて、また点火すると、岩に咲いた花にまた戻ります。記憶しないのに、また戻ると言って、良いのでしょうか。定規のように、棒に時間のメモリが付いているとしたら、曲がった定規です。これでは葉巻のような葉巻というのと変わりありません。定規のような葉巻ではないようですが、私は戻った先の葉巻の味をもう忘れているのに、また戻ると言っているのです。
 私はまたカクテルを作って戻りました。と一口、金木犀が咲いたのです。少し、二口三口で金木犀を飲み干してしまいました。カクテルが金木犀の風味だったのでしょうか。葉巻を休める、口と鼻も休めて、口をカクテルの液で爽やかにします、すると本当に少しですが、全く新鮮な秋風の煙が立ちます。カクテルの味は、変わらないレシピで出来ています。
 でも、こうして見てみますと、景色に煙っぽさが出たのは、剣のつく峠の時だけでした。風に風穴が開いたようにという比喩がもし奇を衒わずに上手ならば、美味しい時ばかりが美味しいのでもないようです。
 記憶にありませんが、百貫といったような、ぺっちゃんこな唄ははっきりと憶えているようです。でも
 ぺったんこは煎餅 煎餅は甘い 甘いは煎餅 煎餅は辛い 辛いは……
 こんな唄を思い出します。
 三年物がどういう事なのか調べるのも忘れて、最初がちょっとビオフェルミンだったのを思い出して、二十五本目がいつの間にか終ってしまいました。
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