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  源氏物語「葉」
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|MSE JUN 11|6 x 50|coh-hk|$171.90/12|重量:+1(16.66g)|算出:+3|香味:+3|

 特に書き足す事がなく、大体いつも同じように美味しい、高信頼型の葉巻で、ともあれ久しぶりに大物に着火した。
 出だしはクリーニング屋に始まったが、3分で落ち着く。ナッツ感が他のどの銘柄よりも美味しい。このナッツ感はやはりコイーバに似ているが岩味までは行かず、とりわけ瑪瑙などは出現せず、杉の爽やかさにナッツが香ばしく映えている。それがしばらくすると何故か緑豆もやしになってしまう……「緑豆もやし」だの「小学生の口臭」だのの言葉の差こそあれこういう風味は多くの葉巻で出るので、これが嫌なら葉巻全体の根源的な欠陥、要するに私は葉巻嫌いなのだが。……清酒のように米を削るというわけにはいくまい。
 後半は甘い花が咲いてくる。この葉巻にしてはけっこう大仰に咲き誇り、大仰に甘い。でもこれぐらいでは驚かなくなっている。驚きは必要だが、この手の驚きには慣れていて、特別らしい言葉が出ない。勿論言葉なんかよりは美味しいのである。それで葉巻を語らない言葉(要するに純粋な読書)よりも美味しいかというとそうではない。つまらない書物のような、ありきたりな展開なのである。全く、小一時間葉巻を吸って一読書の体験を得られるかというと、書物の内容を忘れてしまう限りに於いては得られる葉巻だが、全く、葉巻の内容を憶えてしまったのだ。
 なので飲物との相性の検査をした。
 この葉巻はワインよりも清酒(但し香り高い吟醸酒)が、ウイスキー(クライヌリッシュ14年)よりも華やかなブランデー(マーテル・ノブレジ)が合う。香が喧嘩しそうで喧嘩せず、西風と東風がそれぞれ勝手に吹いて、竜巻にもならないのである。散漫に擦れ違う香と香が心地よい。ワインやウイスキーでコクを足そうなどと考えてはいけない。それぞれの勝手な香こそがそれぞれの香を勝手に引き立てる。清酒よりもワインのほうが香り高いじゃないか、などと考えるには及ばない。ワインは葉巻もワインも殺しやすく、ただ葉巻で疲れる咽を潤すにはアルコール濃度が適当だというぐらいである。又、土臭い葉巻なら土臭いピートの効いた煙っぽいウイスキーが良いのかもしれないが、この葉巻は特別にブランデーだけが葉巻の土臭さを際立ててくれる。そうでもしなければこの葉巻は心地よく土の香を放ってくれない。他の葉巻はけっしてこのような相性ではない為、飲物がこの葉巻の資質を語るように思えてならない。勿論、水しか飲まないという人でも美味しい葉っぱであるに違いない。
 (ちなみに、本当にどうでも良い事なので括弧の中で叫んでいるのだが、マーテルノブレジは若干ウイスキーに近い感じが無くはないブランデーで、アラン・ローワンツリーに似ている。というのもその直前に開封したアランはピートの煙が約2秒後に出てくるという不思議な遅延の妙技のある酒で、要するに口に入れた瞬間はスコッチっぽくないのである。当のアランは遅延があまりにも面白い為、葉巻と併せずに単体で愉しみたい。他、モンバッチョラム・10年ソーテルヌフィニッシュを試し、合う合わないといったら合うのだが、もはや相性を超えて意味不明に戯れていた。ソーテルヌフィニッシュの樽の所為なのか、酒自体、美味しい不味いというよりも色々いわしめる要素がありすぎる。)
 相性ばかりに気を取られて結局葉巻の味がよくわからなかった。水がおすすめという落ちなのか。
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