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  源氏物語「葉」
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|URG JUN 10|5 3/4 × 52|Cigars of Cuba|$164/10|重量:0( 13.37g)|算出:+5|香味:+4|

 鉄分が叫ぶが、叫びの背景に鉄分が溶けて叫びは届かず、非常に柔らかいコイーバの箔のある芳香にまみれる。ほぼ間違いなくシグロⅥはコイーバの中で一番柔らかいと思う。8本目だが、過去7本よりもしっかりとコイーバらしさが乗っているのは寝かせたからなのか、多分違う。コイーバの強面の感が沸々としているが水面上は柔らかい。
 鉄分がはっきりとした草に変わり、花も咲く。こういう変化は葉巻全体が備えるものなので、むしろ最初のコイーバらしさのみの味わいのままの方が有り難かった気もする。
 小姑のようだが、僅かに酸味があるのが煩い。それにしても今回は岩が濃く、岩を石臼で挽いたキメ細かさと夏の海のようなぬるい低温が心地よい。
 チョコを噛むと良く合うが、葉巻自体にもカカオに近いコクがありそうで、増幅しあうが、チョコはどこまでいっても穏やかである。
 灰が黒ければ味が黒いというものでもないけれど、優しさの影に、なかなか喉に丹念にこびりつく黒い重厚さがある。黒ずむまでに煎った豆か、珈琲豆か、それら全てが岩香を染み込ませ纏ってもいる。岩に掘った家のような、まるごと岩の燻製なのである。岩を何かで燻製したのか将又何かを岩で燻製したのかはわからない。
 最初は変化を嫌ったが、変化が濃くなるにつれ好感に変わる。岩の粉から咲いた花がなんというか岩の妖精のようで蠱惑的メルヘンチックである。
 その奥深い花を消し、鮮やかに木犀が見える事がある。鼻につんと来るほど鮮烈に。
 このようにして岩が全然関係ない粘土の風味に丸め込まれていくのである。
 粘土は衰えではなく、油臭い粘土からまた新緑が芽ぐんだりする。新緑も芽ぐむ前から岩の粉をかぶって、涙ぐんでも粉に吸着されてしまう。
 置く暇もなくどんどん吸ってしまうのに、火種が凸になる事もない。強制的に阿吽の呼吸となるようである。(この辺りは13.37gらしさなのかもしれない)
 終盤になると赤ワインにミルクを感じる時のようなミルクが絹層雲のように浮遊する。随分身近な雲である。その空に山椒を噛んだような爽快なスパイス。但し爽快なものも爽快ではない。
 中盤で優しいままに一旦重厚極まるが、最後は爽やかさも混じって軽くなる。重心は低いのに、綿を踏む感触なのである。木も土も岩の粉に丸め込まれる。
 最後に辛みが出るのが本当に最後らしい。辛みが出ても質が衰えない。辛みの対照でビロードの質も再度目立ったのである。その岩のビロードには草花は生えず描かれている。押花のように岩に押し潰したというか。苦みが苦みらしくなったのも心地よい。さらには何故かこれからお出かけのような化粧品のパウダーの芳香を放つのである。この後に何処に出かけよう。
 ロブストに比べると草が強く酸味が煩いが、毎日ロブストとシグロ6を交互に吸ったりしないので比較に信憑性もなにもない。そもそもこのシグロ6は今までのそれとは違う。カフェオレ感が希薄で、コイーバ感が濃厚で、あるいは凡庸かもしれない。
 甘さは香に乗る程度で、とって付けたような甘味はない。
 コイーバでどれを選ぶかといわれたらもっとスマートに美味しいロブストを選ぶし掴み所がない中にも気品を漂わすエスプレンディドスを選ぶが、BHKや1966を選ばないほどこれは美味しい。全部選べば済む話だが。
 煙に巻かれても、極彩色にならず、景色全体が葉巻の色だった。徹底的な一色の葉巻である。

 結局一本目の『するする」とした奇妙な感覚はなかったが、一本目に近い好感触。
 海に行きそうな事を書いているが、鉄分とわかめを掛けたわけではなく、何処かに行きそうで何処へ行くにも中途半端に折り返すような感覚があった。

 2010年11月のセールで買ったので今思うと随分割安感がある。コイーバの偽物らしきモノ(そもそもexquisitosには偽物がありそうもないのだが、味は偽物級で、バンドの山吹色()や橙色()がオレンジ色()すぎる)を掴まされて以来使っていない店だが。
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