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  源氏物語「葉」
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|6 × 52|AtlanticCigar|($99.99/20)|+3|+2|

 アトランティックの『ビルドAボックス』でロッキーパテル4種×5本=20本を詰め合わせて約100ドルで購入。1箱買うとdecadeは180ドル前後するし、1992やオールドワールドでも140ドル前後だから20本で100ドルはかなり安い。安さがどういう事を意味するのかわからないが、箱入りではないので箱が欲しい人には不向き。箱で届く気がしたのだが、そうではなくて少しだけ残念だった。当然なるべく高いモノを詰め合わせた。

1本目
 到着日早々。かなり爆裂な麦の風味で、マデューロの焦げて苦くて塩っぱいようなコクと、木を飴色になるまで煮たような味もする。ボディはミディアムよりも強い。しばらく経つと麦がやや褪せてスパイスとマロミと木犀まで出るが、そういうものが悉く麦臭くて嫌になる。

2本目
 到着後10日も経つと麦臭さが奥まってスパイスが出てきたような、大航海時代の胡椒のような雰囲気がなくはない。ある種の香辛料の甘さがあるけれど、香辛料に詳しくないのでなんなのかわからない。
 ロッキーパテルらしく葉巻という感じがほとんどしない薬膳のような不思議な香味がある。何か変なものを竜宮城か何処かで吸わされているような。鄙びた麦に加え、新鮮な草のようでもある。美味というのとは違う別世界の味がある。煙が多い方が美味しいはずなのだが、煙の量を少なく細く吸いたくなるような香味がある。終盤には揮発性のチョコのようなコクが出てきて、揮発性が内気なのであまり気にならない。
 マデューロで良い思いをした事はないけれど、マデューロっぽい苦味が巧く引き締めているような気もする。引き締めないほうが良かった気もする。
 麦が弱くなった分スパイスを感じるが、わざわざスパイスというほどでもない。何処かの国の主食のようなもので、変な主食があったものだなぁと嫌々ながらに感心している。
 藁とか麦とか干し草とか、そういう枯れた籾殻のような風味が嫌なのである。白米や小麦粉はなく殻なのだから。旨味がなければ香りで済むが、旨味があるのでいっそうそういうものを食している感じがする。それが1本目とは違って少しは穏やかで、少し奥床しい。苦味が燃え疲れた中盤頃に出てくる。

4本目
 今更だが、ラッパーはかなり薄くかなり黒い、やや赤みがかった黒。ヘッドのキャップは漆黒の葉で留めてある。
 フットに巻いてある紙に因るもののような気がしてならないのだが、新宿伊勢丹一階化粧品売場のようないい匂い。
 口当たりの軽い大量の煙が吹き出し、着火しても化粧品売場の香りが残って、大量の煙に紛れている。ラッパーに薄く巻いてあるのみらしくマデューロマデューロしていないが、また黒っぽい苦味などはあるものの、化粧品の中にマデューロが多少閃いている程度。化粧品は一方では洗剤に落ちそうだし、一方では花と舞いそうだが、安定して化粧品っぽさを保っている。
 過日の麦はすっかり何処かへ消えて、チョコなども薫らず、苦い微かな輪郭に華やかな静かなデパートの一階、たぶん閉店後の化粧品売場の、要するに真夜中の芝生に通じる化粧品売場とでもいうような、気分だけが刻々と変化する変化がある。実際に変化しているのは葉巻の方だが、気分だけが変化する落ち着きがある。化粧品売場をいつまでも徘徊していては変態だし、もっとも芝生に近づいて、化粧品が濃く舞う花のようにもなってきて、甘くもなってくる。
 更に進むと化粧品は仄かに薫るだけになり、花も失せるが、チョコのようなほっこりした風味が出てくる。微かに麦の風味も感じられてしまうかもしれない。
 購入から三ヶ月寝かせたからか過去四本中もっとも美味しく、全然香味が違っている。こういうものがあるとハバナのみに止まるわけにはいかなくなる。全体的にキメ細かい粉を吹く感触で、物足りなさはあるし最終盤には疲れてしまうが、春の夜の木陰のような憶えておきたい一品だった。
 消火しようと思っていると野原が焼けて再び大量となった煙とともに水のような化粧品が復帰してくる。火事の荒くれた苦味の所為か、化粧品が粉から化粧水の水に変わっている。
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