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  源氏物語「葉」
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 漸く購入に踏み切ろうと思った途端に日本発送可の店舗で一斉に売り切れになって、仕方なく転送業者を挟むなどして手こずって入手した(カードが日本のものだった事で店舗に怪しまれ、それはむしろいいのかもしれないが、転送業者がかなりのろま且つ胡散臭く、税関でも開封され、到着まで三週間かかった。)。購入した店舗でも最後の一箱だったらしく購入直後に売り切れ。最後の一箱というのはあまり良さそうなものではない。その悪印象とは関係ないが、荷を解いて吃驚、葉巻が乾ききっていた。手書きの手紙が入っているぐらいなので気のいい店舗ではあるらしい。そもそも店舗出発時点では真空パックされていた可能性だってなくはない。
 残6本だが、渇きが癒えたのかどんどん美味しくなっている。面倒臭いが転送業者を挟めばまだ入手できるし、かなり美味しいのでもう一箱どこかで買いたいぐらい。

 4本目
 どれも素朴な藁の香りで巻きは硬く吸い込みはスカスカ。あまり期待させない感じなのだが、4本目は火を点けると葉が膨張してラッパーがパンパンになって裂けた。良くも悪くも期待が膨らんでしまう。売り物にならないぐらいのかなりの亀裂だが、問題は無さそう。
 着火するとダビドフの高級感だけを残してしまったような、ジノにも通じるような気軽さがある。軽い木というか、まん丸く鑢をかけた木というか。色々な意味で軽いのだが、吸い進めるにつれ結局惹き込まれてしまう。もう、軽すぎて軽すぎて、羽が生えてしまいそうになる。No.2よりもNo.2らしいというか、初めてNo.2を燻らせた時の事をNo.2以上に髣髴とさせる。太いクラシックシリーズというか、ジノっぽさがこれをダビドフよりもワンランク上げるカラクリというか。
 先日のアニベルサリオのような黄金味は無く、木の感じもずっと軽くて、肌理が細かく、花も薄化粧をしたように軽やか。この化粧の感じが茶色い木を白っぽく薄めている。白さにつられて木も粉のようになる。中盤でスパイシーになるのもNo.2に似ている。ジノに似ていたのは序盤だけだった。以降紛れもなくダビドフで、限定品だからといって羽目を外した覚束無さはあまりなく、「クラシック以上にクラシック」という感じが濃くなる。クラシックはクラシックそのものだからクラシックを髣髴させないが、だとしたらこれはクラシックを超えたクラシックなのかとも思える。呑み込んだ時の咽越しは「強めの煙草」程度。終盤は木犀が甘い。木がより白く霞み、白い粉のような旨味も加わる。木は、白木ではなく、しっかりと土や革のように茶色いまろやかなコクのある木なのである。根元では滑らかになり、他の葉巻では薄気味悪くなりそうなところを、有難いほど軽やかになる。ニコチン酔いしないのが不思議なぐらいだった。

 1本目
 固い。弾力というものがまるで無い。こんなに固いものは他にないのだが、吸い込みは良好。固さによって吸い込みが通ったようにも思える。ダビドフらしい下駄箱松茸臭がダビドフらしからぬ藁に覆われている。
 着火すると始めは金属製の下駄箱。
 クラシックシリーズなどよりもむしろバンドルやジノに近い質感(ともするとエグ味が出そうな質感)があるが、軽やかさがまったく違う。大木を凝縮してなおかつ軽くしたような不思議さ。
 ダビドフにしてはけっこう甘く、1センチほど進むと木犀が香り始める。香味はけっこう違うけれど、ナンバー2を初めて吸った時の事が思い出される。最近中毒患者のようにどうしてもダビドフを吸いたくなっていたから、余計に美味しく感じるのかもしれない。かといって中毒を満たすものではないらしい。何かが違う。その何かが、やはりバンドルやジノに近い。それらよりも遥かに美味しいのだけれど。木が酸味のようなエグ味を帯びそうなのか、帯びてはいないが、どことなく、柔らかいのにキンキンとした感触がある。甘さは次第にバターのようなまろやかな香りを帯びてくるが、しつこいというところまではいっていない、しかし羽を毟る要素ではあるかもしれない。この金属は、ミレニアムにも通じるようなスパイス感に因るのかもしれない。スパイスといってもミレニアムよりはずっとおとなしい。
 松茸の中で木と木犀とバターと砂糖とが薄らと呼吸をしているような感じだった。それ以上の事はとくにない。雑味は結局出そうで出なかった。ダビドフなら、出ないのは当然で、出そうであってもならないだろう。とにかく湿り気を与えて寝かせるしかない。
 終盤で美味しくなったのかもしれないが、途中で酒も変えていて、シメイブルーよりは日本酒の方が合う。あの類稀なナンバー2の時も日本酒だった。ダビドフは日本酒に合うのかもしれない。
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