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  源氏物語「葉」
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5 3/4 × 52|Cigars of Cuba|$164/10|URG JUN 10|+5|+4|

 クリスマスセールで20%引き。09が届くかと思っていたが、JUN 10だった。はっきりと若いモノだとわかりきって吸うのはこれが初めて。しかも今日届いたばかり。さらにはシグロで良い思いをしたことが皆無なのに、「六番だけは別格だ」という噂に乗って購入してしまった。悪い要素をこれだけ並べられる事も滅多にないと思い、一本だけ無駄を覚悟で試す。むろん期待しているのだけれど。どうせなら真空パックを開けた直後に点火した方が良かったはずなのに、開封してから四時間も経ってしまった。

 見目は若さもあって綺麗で、貴熟香は薄く、ただ高級な香りはする。
 着火直後に草系だとわかる。モンテのようにキンキンした感じがあるのだが、キンキンが柔らかい。すぐにあまやかな旨味が柔らかく乗ってきて、キンキンが消え、コイーバらしい岩味が現れてそこに草が生えかわる。草をコイーバらしいというと語弊がありそうだけれど、草がなければコイーバは疲弊してしまう。
 まだ火種も整っていないが、とんでもなく滑らかな葉巻らしい。大きさからして濃密という感じは当然ないなと思っていると、火種が大きくなるにつれパワーが増して、煙っぽくなる。だが煙の感触がなんだかするするしている。
 珈琲でもないしナッツでもないし、やはり「岩」でしかないのだが、ごつごつとしているはずの岩がするすると辷っている。木犀は咲いていないのに、染みた味わいが出てくる。かと思えば珈琲でもあるしナッツでもあるし、とにかく「岩」がある。
 茶も緑もいかにもコイーバなのだが、とにかくシグロ6は優しいらしい。無塩バターのような優しさ。バターのしつこい油っこさはまったく無いし、塩っぱさは勿論ないし、バターの香りはやっぱりあるし、この優しさはなんといったらいいのか難しい。あまりにも優しいので、濃さなんか無用の長物に思えている。なのに密度が増してきているような気がするのである。この優しさのまま密度が増したらどうなるのだろう、と思うだけで嬉しくなってしまう。悠揚迫らぬ桃源郷、茶色い桃源郷。甘さも旨味も薄いのだが、するするした感触の所為か物足りなさを感じない。

 結局密度は増さないらしい。染みた木もミツバチに蜜を奪われたような香りだけの金木犀になってしまう。優しくするするとした金木犀。結局密度が増さないということがわかり始めると物足りなく感じてしまう。密度を増すには熟成が必要なのか。だとしたら前半は若い低密度のものを、後半は熟成させた高密度のモノを接合したくなる。改造葉巻に思いを馳せる。熟成させても優しさは変わらないだろうけれど。
 コイーバの味で特異さはないのだが、優しさは特異で、コイーバの中でもっとも優しいコイーバらしい。灰は黒く、黒いと優しくないような気がするが、灰が白ければ優しいというものでもないらしい。黒い灰はコイーバの薫香に付き物のものなのだろう。この優しさでこの黒さは格別恰好いい。

 コイーバとモンテクリストにしかないハバナ臭さが勿論あって、だからこそモンテクリストとは全然違う。コイーバの岩っぽさは随分老人臭いと思う。モンテクリストが青年にしか思えない。シグロ6はどんなに若くても老人が新品の高級外車に乗っているような感じで、モンテクリストは青年が古びた高級外車に乗っているような感じがする。

 シグロ1よりもエスキシトスの方が断然好みだし、私は多分シグロ6よりもエスプレンディドスの方を美味しく感じると思うのだが、なめらかさを超えたするするが気持ち悪いほど心地好く、早くも忘れ難い一本になっている。巻きはみっちりしているのに、あっという間に灰になる気がする。もっと吸っていたかったのか物足りなかったのかわからない。

 それにしてもフィナーレは凄かった。優しさはそのまま、岩が車を破壊する霰のように降ってきて、地表に当たって砕けた途端、花になる。艶やかさに錯覚していたに違いないが旨味も微かながら増していたと思う。最々終盤では美味しいモノに付き物の粘土っぽさや薔薇の茎っぽさが出てくる。優しさが嫌いでも優しさが好きになってしまう。しかもフィナーレが飽きるほど長く、雑味も出ずに、最後まで平々としている。残香にこそ旨味が乗っている。
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