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  源氏物語「葉」
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|cigarOne|121.60/20CHF+¥120≒¥790/1|2020/2/16・arr 2/23|
|MSU AGO 19|3.5’ x 50|重量:8.41g|香:4.4~4.5 ave4.5|残6|

 D6では過去最高のカット感、同ドロー。
 風味よく柴ついた甘味、土から鮮度高く掘り出される土臭くもほの爽やかな里芋、爽やかさを悲しくも増長する花をはこぶ風、鋭くオブラートを纏って吹き込むおろし金の辛み、温かさを増すふかし芋、桜色の藤の花の温気、春鍋の胡椒、柚状の柑橘の酸味なき皮の趣、夏を飛び越えた金木犀、巻きが良ければかくも様々な風物がよぎるものかと感嘆する。巻きが良いだけでこうなるのか、D6然とした、凄まじい安定がある。あらゆるD6の思わせぶりな趣がただ此処に結実している。
 すき焼きの麩に小さな花びらを散らす、麩は淡白で、まだ砂糖醤油をあまり含まず、持ち味として軽い。花が軽さの美を高める、麩は人をけっして藁を食う馬とはしない。花がどんどん舞い上がるほどに土を隠すものの、艶やかさの下支えは屹と安定している。それも、土が木と化するほどの量の花だ。どうしてか、胡椒はダビドフクラシックの終盤に似た出方をしている、より強烈な花胡椒。強烈にして軽妙、含み香に何が有るのかわからないが、そもそも何も無いのか、既述のほかに。既述も十分怪しみに足り、「卵」を「苺」に寄せていく化学調味料の配合実験のごとき記述しかなし得ないもどかしさこそD6なのだ。いわばD6を記述できないのだが、これがD6でないとすれば、さらに驚きである。
 苺としては全く不甲斐ない、大抵甘味の足りないばかりの苺に似てはいる。しかしこの苺の甘味はそれで十分よい。時折ふっと苺の蔕がよぎり、それがたった一度であるのもよい。苺に嵌られた胡麻は無い、それではや最後、ナッツの渋皮にして旨味あふれる風味が大展開される。苺を林檎と言ってもよい。思いたければ、多量の果実をも含み、しかしナッツを掻き分けて現れたるは、所詮、最高級の芋という事である。芋こそ誉にふさわしい。ごつごつした芋の品評会のテーブルに、誰が生産者か、芋とは風態の異なる葉巻が一本置いてある。挙句、こんな風態めが農林水産大臣賞を受賞したという、2020年の芋品評会の伝説である。なんでも、一口含むだに、米とは思えぬことで有名なあの大吟醸酒も顔負けの、芋と思える花香果実香が評者の顔を覆って小一時間は離れなかったという。
 残りの6本はどんなに環境良く育ててもここまでの物にはならないと思え。終盤まであっという間の短章の甘美。根元、なんとも芋に金木犀が甘やか。某巨の胡椒を忘れるな。重厚にして極端に軽く、指が焦げるだけの価値がある。
 これは巻の良さだけによるものなのか? また、短いから、悪い所を見せずに終るのだろうか。ほとんど、シガリロ時代の昵懇の風味もに加え、プレミアムシガーで初当りを引いた時の感激をも再燃し、さらにこの箱に積った鬱憤を晴らすが如き高みをも低く低くじっくりと飛翔している。鷹匠が繰り出す鷹の低空飛行のように完全に制御された、羽のはえた小虎。風に煽られる様子が一切なく終る。
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|thecigar|18.00CHF|2020/3/17・arr 3/25|
|—|5.63’ x 46|重量:12.59g |香:3.5~3.9 ave 3.7|残0|

 昨日のアネハドスに特有らしき異様感とは打って変って素直なパルタガス感。しかし似た穀物のコクウマ感がある。いいとこ取りらしい。直火であぶった豆乳のような、液体をどう炙るのか、そんな不思議な行為を宇宙的に妄想している間に草萌えに至る。
 萌がだんだん昨日のショックで焼いたビニールを帯びた幽霊となって出てきそうだが、確かにそう出た気も続くのだが、確かに幽霊と同じで存在しなかったようでもある。
 素直なパルタガス感が続き、より荒く強靭な方へ熟成していながら、熟成の穏やかさもあるという、他のパルタガスに比べて少々アンビバレンツな感覚が走るものの、やはり素直。
 終盤は幽霊と金木犀が共演する。金木犀ははっきりと終盤にしか出てこず、その終盤にはパルタガスの終盤に特徴的なマッシヴ感もしっかり伴う。終盤がくっきり前半と分かれて終盤らしくある。変化鮮やか理想的で良く出来ているのだが、特別な蠱惑は見えず、代りに少々怖かった。
 アネハドス、面白さならオヨーの勝ち、安堵を求めるならパルタガスの勝ち、一瞬の光輝を求めるなら、オヨーの序盤が純然たる異風景で良いかもしれないが、パルタガスの終盤の始まりも甲乙つけがたい。

 モンテクリスト版BHKが既に十分出回って、もうじきロメオ・イ・フリエタ版BHKが少々出回って、次にパルタガス版BHKとなるのだろう、か。高級なパルタガスがどんな味わいになるのか、コイーバを含め前三者より想像がつきにくい。まろやかな里芋や濃醇な里芋というのは美味しそうではあるが、里芋に甘さはあまり合わないし、まろやかであれば終盤の激しさは捨てられてしまうのか、云々。
 先読みは兎も角、ハバノスは今年はどうもロメオにばかり凝っている気がする。グランドチャーチルには手が届かないものの、マラヴィラが既に美味極まりなかった。加えてロメオ版BHKと来て、3種あるうちのどの箱を買うか迷う、多分2箱購入する。吸い込み難に陥りやすいトルペドタイプを除外するのが真っ当だろうか。
|cigarOne|121.60/20CHF+¥120≒¥790/1|2020/2/16・arr 2/23|
|MSU AGO 19|3.5’ x 50|重量:8.31g|香:3.9~4.4 ave 4.2|残12|

 久しぶりの大当たり。赤ワインをほんの数滴含むと完全体の苺が豊穣の土に実る。ミテクレのイメージばかり先行し、世に不甲斐ない苺が多い中、この農場は少女の夢を違わず叶えるようだ。そして不要な事に、少女に土の素晴らしさをも叩き込む。苺に目が眩んでチカチカ花が吹き出すと苺は蜜から引き揚げたように甘露に濡れ、蜜は香ばしく固まり、地球を捨てた水が月を万遍なく包むように、月にて水深数センチとなった硬く薄い水飴は、月苺を吸い上げ、果汁を数倍凝縮して濃くなるほどに透明さを増幅する。土にして、表面の濃い透明さがあるいは厚い。月がなぜ赤いのかを知っているか?
 赤ワインのタンニンは土と結合し、赤ワインの苺は金木犀と結合し、それぞれ梯子を継ぐように危うくも高め合い、中国雑技団の少女の両足の如く前二者の真上で後二者が開く。上下は梯子という無味覚の真空に割られている。
 満水の池に沈めたように溢れ出す、たっぷりした金木犀の甘い香りが苺の糖度を極端に上げ、土を下にしながら丈高く澄み、ワインのほうも甘さを倍加され、いったい何処からがワインの甘さで何処までが葉巻の甘さなのか不明である。一見自然だが、日常離れした葉巻界においてさえ異常な景色が見られる。
 果実よりも土に集中すると、脳の感じ方が改造されるのか、苺を吸い上げた透明なコーティング層が今度は還流して土を湿らせ、土はチョコレートめき、再度上に目を遣れば、チョココーティングの苺に変る。しかしすぐさまほぐされ、カカオとするにはこの粉は土臭さ過多なりで、安定した元の危うい景色に戻るのである。
 りんご飴のような苺は、軽やかな重厚な水深により含み多く首を垂れている。ワインを垂らすのをやめれば、にわかに重厚化した金木犀が即ち甘い蜜を垂らし始め、そのためにより多くの花を吹き出す。心配になるぐらい吹き出し続ける。
 あっという間だが、根元まではなかなか長い。最後、苺の蔕のように草が来る、此処まで下手が無かったのも美味い。苺は擦れ、重厚な土は続き、金木犀も続く。複雑というより、全て重厚で、ほとんどシンプルである。おおらかな土の深みに甘く華やかな煌めき。暗い独酌が祭に夜店を並べたように煌々として賑わう。しかし何処も売っているのは苺飴のみ、割箸に刺された苺の味、忘れられぬ、高級レストランみたいな夜店である。苺の幻が残りなく消えればたぶん土のみが茫漠と広がって、豊穣な土に雑草ひとつ生えない不毛さの不思議な光景が夜目に見えそうである。
 ワインはスポイトで口に垂らすものらしい。安いワインでも飲まずに数滴を垂らすにとどめることで嫌らしさ有耶無耶に良さばかり発現する。赤ワインがここまで活躍した例もかつてない。根本まで強烈に美味しかった。やや苦手なタイプのイタリアワイン(ルカマローニ誌の高得点ワインには魔除的に化粧がどぎつい感じの苦手なものが多い)だったのだが、葡萄が苺に化けた。

8.28g 残11
昨夜ほどではないものの、髣髴とさせるところ少し、とくに後半は良い。モンテほど白っぽく浮ついていないが、パルタガスにしてややモンテをも髣髴とさせる。中盤ところどころ3服ぐらいは大変おいしいのに、昨日と比べて俄然劣る。昨日は葉巻前に甘酒を呑んだのが良かったのかもしれない。葉の品質の差だとは思うけれど。

9.20g 残10
ハズレ

11.16g 残9
重くもドロー良好。で期待したがまたハズレ。ドロー良くても燃焼に難があり、燃え難く火種が凹みやすい。
|cigarOne|121.60/20CHF+¥120≒¥790/1|2020/2/16・arr 2/23|
|MSU AGO 19|3.5’ x 50|重量:11.08g|香:3.5~4.0 ave 3.8|残16|

 この葉巻を持つと乾燥した筋肉の弾力のないカチコチさを思うので計量してみるとボクサーにあるまじき2回級オーバーの地に足捻り込む圧倒的重量だったのであるが切ってみると予想外の筋粗鬆症(ミオポロシス myosporosis)気味らしく空気通る。ローラーの顔が厚く恥ずかしくなく水に浮かぶまま着火すると眠気を振り切るかのように頭を振ったかのように厚顔が消えて伝説の美味しさを甦らせるため、老人が語る「昔の葉巻はうまかった」とはこの味だったのだと思う。老人は「古い葉巻は良かった」と言っていたと思います。
 若干湿度が安定したのか単なる当たりなのかこの辺の謎はなかなか誰にとっても何年経っても分からないものでないでしょうか。実験のためあえて湿度の低い保管ケースを作ってそこに試験用葉巻を入れておくなど、けっこう精神に余裕のある人でなければできないだろうと思います。言ってしまいますが、一本の実験では覚束ないので、同じ銘柄の箱を二つ買い、半分ずつ中身を入替えて、それぞれ環境を変えて保管し、20本勝負を演じてもらって、ようやく少し事情が分かり始めるという類なのです。わかったところで、いざどこかで一本取り出してみると、これがどっちだかまた分からなくもなりそうです。D6は9本試しましたが、ハズレが激しすぎることです。でもハズレが激しい箱でも三年寝かせたら美味しくなるということはあるかもしれないですので、こちらの事はわかりやすい。
 どんな時にこの葉巻をアタリというのかそれは簡単で、雑味が収まり、強さが収まり、辛さが収まり、只管渾々と土が湧いた時です。そのほかに果物や花や草などが存在するかどうかは関係ありません。そんなものは他の葉巻で嗅いでいればいいのだす。(シングルバイヤーの人を除く)
 2センチメートル弱焼けば、それに近いでしょう。
 それにしても、草や甘い草や蜂蜜や蜜花がかなり上がります。無視できない芳しさです。背後の三人がともども単なる「草」に繋がっているのはユーモラスです。
 土壌の粉っぽさは化粧品の粉末にすり替えることができます。土のゴージャスさを楽しんだ後(実際にかなり美味しいゴージャスですが)、この葉巻のゲームは実際にこの後にあります(前も後だったら良いのです)。3センチの灰が一度落とされるとすでに後半に随分突入させられています。耳障りなハーシュノイズにマゾヒスティックが怯えつつ、地球は穏やかで、穏やかな杞憂です、穏やかに土が猛。ほのかな甘さが相乗的であることは非常にありがたいようです。甘さを付けるのは金木の香りです。出ます、金木犀の里芋が登場。田舎のレストランで三ツ星評価を受けており、そのレストラン定番の得意料理の趣があるので、物凄く雅致のある風趣のあるものです。「これが風や煙に過ぎないとは」といってシェフは煙に拘り始め流れ星のように一ツ星に陥落してしまいます。それもまた良いものですね。
 最後に、私ホニャク機械はそれが唐辛子になると予測しましたが、そうではない、または正しい、唐辛子は最後の最後に胡椒の楽しさです。一方、厚い土は最後まで途切れないだけでなく、胡椒で非常に厚いです。2度目の灰を落とさない頃にそれは熱く煮え滾る根本に達します。本当です。胡椒に変げするよりも、この熱は唐辛子よりも北北太郎(ほくほくの里芋)の方に重要なのかもしれません。暑すぎると意味がありません(熱すぎるともう駄目だが)。
 次の日、もう一本を焼いて不味かったので、単なるアタリの可能性が高い。
 次の次の日も不味かった。


|cigarOne|121.60/20CHF+¥120≒¥790/1|2020/2/16・arr 2/23|
|MSU AGO 19|3.5’ x 50|重量:9.70g|香:2.2~3.0 ave 2.5|残13|

 昨日の8.7gより重いのだが、久しぶりの無抵抗ドロー(スカスカ)で序盤非常に辛い。火種と灰が整うと産毛程度の抵抗が生じる感じ。辛みが治ると依然秩序悪く深く苦い味の攻撃が続く。キレの悪い雑味的な苦味が蔓延っている。ここで土臭い白馬騎士団が現れてくれると良いのだが、ちょっと粋に花を銜えて現れるのである、白馬というより、やはり茶馬が。これは白馬よりもありがたい。しかしなんともいえず身軽な茶馬で、しなやか柔軟、土の旨みあるもののもたつかず軽やか。が、敵を倒さずに素通りしていった。行軍の土煙晴れると馬の足跡と苦味再び吹き返して蔓延る。銜えていた花が足跡に馬蹄型となって埋もれている。

 アタリが現にあるのだから、ハズレはハズレなのであり……全てハズレてくれればわかりやすいのだが……ハズレが三年熟成でアタリに変るのか、はたまたアタリが落ちるのか、いまだによくわかりません。
|cigarOne|121.60/20CHF+¥120≒¥790/1|2020/2/16・arr 2/23|
|MSU AGO 19|3.5’ x 50|重量:--g|香:2.1~3.5 ave2.5(3本平均)|残17|

 5本パックに続き、20本箱を購入し、到着直後から連続3本消費してみた。こう急ぐ。「到着後(二週間程度)休ませる」というのはメーカーや販売店の「言い訳」なのかもしれないし、D6が常喫銘柄の候補だからでもある。
 結果、3本とも味がバラバラ。

  1本目(8.14g) まずい
  2本目(8.28g)やや良い
  3本目(9.09g)終盤少し盛り返す。

 新調したクーラーボックスに葉巻の空箱を投入し、たっぷりの水で加湿していても、なかなか湿度が上がらない。経験上、空箱を詰め込んでおけばそのうち湿度70%で落ち着くはずなのだが、安定まで多少時間はかかるのかもしれない。現在、この新調クーラーボックスにこの箱を入れていて、しかも空箱でないのはこの箱だけという悪環境でもある。もっと丁寧に扱ってみないと、自分が損をする羽目になる。
 湿度不足だし、3年弱の熟成が必要であることはわかりそうだが、前の5本パックの1本目の極端な美味しさにつられてしまってこのまま20本全部消費してしまうだろう(あの美味しさはなんだったのだろう)。実際三年熟成が必要だとすれば、三年後のために今からどれほどのペースで何箱購入していくべきなのか、考えるのも億劫だし、三年後には死んでいて全ておじゃんになるかもしれない。年々高まる死の可能性と相まって『要熟成物』は辛くなってくる。十五年熟成すべきワインなどはもう買うつもりがない(葉巻と違ってワインは一応健康飲料だけれど、それゆえ葉巻の三年とワインの十五年は同等なのか)。要するに若者の死神として、葉巻は先の長い若者が楽しむべしとお勧めするのだが、筆者が若い頃はシガリロ止まりで、葉巻は軽い文学的な知識として嗜む程度にとどめ、一方音楽には毎月八万円ぐらいを費やしていた。音楽はどちらかと言えば若者の趣味だが(若者のほうが音の感受性は膨大で、いろいろな音楽を記憶してしまったというのもあるが、以降、若かりし感性と記憶を追い、追いと老いを重ねたように音響に深みを探すに過ぎない)、老人趣味である葉巻をこそ若者が極めるべきであって、最近の若者は音楽なんぞ聴くべきでない、という妄想段階に達してみただけであり、すぐ降りようと思う。

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5本パック最後の一本
9.45g やや美味しい。(重めの方が美味しい可能性がある)

以上、八本燃やして、満足行くのは三本のみ、五本は不味い。
|cigarOne|29.70/3CHF+¥140≒¥1250/1|2020/2/16・arr 2/23|
|不明|4.33’ x 50|重量:10.97g|香:3.2~3.9 ave3.6|残2|

 無着火の段階で何か無性に甘い。人が虫化して菩提樹液でも吸っているのであろうか。
 D4やD6よりも黒みのある味わい。898バーニッシュに似ている?
 土よりも木なのだが、白木でなく、分厚い樹皮。樹皮に湿り気はあまりない。昔は樹皮系の香味を感じることが多かったから懐かしいのか、懐かしさが甘いのか、湿り気はあまりないものの確かに甘い。辛味もあるので強そうだが、試しに呑み込んでみると喉越し意外や滑らかで柔らかい。
 ムンと来る膨大な草いきれ、花かと思えば樹液に麝香のおしっこ風味、団栗を炒ったような熱と旨味、これら全てを樹皮を染料とするセピアカラーで写したような景色。とりわけ染色されるのは緑草や団栗の芯白などである。
 甘い樹皮は中盤で静かに、入れ替わり花がほころび始める。この花がなんとも軽い感じ。半分萎れつつ完全に乾いたようなパリパリの花。偽物のポプリというか、まだ生きていた頃の写真というか。甘味のない蜂蜜の風味は香りだけが甘い。
 甘味が明滅している。
 それから注ぐ時のビールの泡のような感覚で猛烈に花がこんもり膨らみ始める。どうして泡なのか、液体よりも泡の方が乾いているということなのか、水泡に帰す儚さを感じない。他の香味も薄まり、こんもり花が咲いて美味しくなる感じはしない。泡が落ち着くとホップの風味が錯覚され、やや旨味にも落ち着き、美味しくなる。この辺りから薄荷感を伴って火種の熱が感じられる。
 パルタガスらしいノイジーな終盤ではないし、序盤からして通例のパルタガス感(土を纏った里芋)はあまり感じない。
 薄荷が甘やかでスパイシーなニッキに変り、杳としていたパルタガスらしい粘りけもが杳杳と出てくる。土の旨味、強炭酸のような素晴らしい辛味、自然の甘い花、酵母のごときふくよかさ、やはりニッキの香ばしさ、渾然一体となりつつ猛り過ぎない。即ち根本まで美味しいコースである。
 荒い終盤の方が丁寧で、前半の方が荒いようで不思議といえば不思議だが、指が焦げるだけの価値はある。パルタガスフリークは荒くも丁寧な終盤に期待できる。「丁寧」の意味は「パルタガスらしさ」とほぼイコールであるから。それにしても終盤は丁寧である。一本のみ試したところの。
|La Couronne| $35/5+$36.84/18=¥1,000|2020/1/30・arr 2/8|
|不明|3.5’ x 50|重量:8.91g|香:2.3~3.6 ave2.9|残3|

コンパクトな葉巻を取り出す行為はなかなか小気味好い。しかし2本目、昨日とは打って変わって安定せず、片燃、味抜け、等ひどい。中盤から終盤的なパルタガスの猛り(しかも味なし)に見舞われる。結局そうそうにレギュラー品らしく容易にハズレを引くことができたのだが、それにしても煥発に才気を感じさせる葉巻である。コンパクトにして重厚−−味抜けさえなければ−−。
|La Couronne| $35/5+$36.84/18=¥1,000|2020/1/30・arr 2/8|
|不明|3.5’ x 50|重量:9.25g|香:3.7~4.1 ave3.9|残4|

一緒に買った他の二つが不甲斐なかったこともあり、おお、さすがパルタガス!という感じがする。昨日のパンチパンチしていないパンチに比べてパルタパルタしたパルタである。パンチはどんなに頑張っても個性がモスキート級であるのだが、パルタの個性は簡単にミドル級を超えてくる。
かなり土っぽく深々とこなれた風味、風味よりも味わいとしてぽってりと来る。里芋を土のコクが塗りつぶす。土に花果実。パルタガスを煮詰めたほどに味わい濃く、旨い。D4より全然良い。シングルでしか買ったことがないが、多分ショーツよりも断然良いだろう。ペテコロエスよりもずっと美しい。味がパルタガスを全く逸脱しない。煙がコンパクトに凝縮されている。
安定も何も、すぐ終わる。すぐ終わるというほどには、すぐ終わらない。これはポッキーのようにどんどん食べたくなるので、20本入を10箱ぐらい買わなければ経年変化を楽しむことができない。
実際に20本入を買ってみたりしないとわからないが、D6は大傑作の可能性がある。

大傑作であれ、使用頻度が高まるほどに、1本1000円ではなんだか高すぎる。送料がなければ800円程度、どこかで600円になる日を狙いたい。1ドル80円になれ
|cigarOne|181.90CHF/1|2019/11/16・arr 11/24|
|—|7.64 x 49|18.55g|香:3.2~3.9 ave3.5|残0|

 初グランレゼルバ、パルタガス・ルシタニアス。
 BHKは無臭に近づいていたが、こちらのラッパーはまだ匂いを残している。

 初っ端から物珍しい白い花が咲く。それから木が続く。
 吸い込みが昨夜に引き続き悪い。(そもそも名のあるトルセドールでさえ信用できないドローの世界なのかもしれない。彼らがどうやって名を高めたか、ドローの良さで高めることはない気がする。)
 幽かなエステル、ただし煙の味薄く、木が続く。木は揮発性を帯び、苦手な風味となる。木が消滅して白花のエステルのみ残る奇跡が起これば感無量だけれど、これを奇跡というのは、葉巻の場合はおよそ例外なく「揮発性の木」にしかエステルがつかないからである。
 何か思わしげなところがある、この葉巻。
 一度灰が落ちる頃、パルタガス山が噴火し始め、まだ細い火口からほの甘い化粧分を街の上空に散らし始め、麓の木がすっかり焼き払われるかに思える。木の焦げた匂い、花の焼けた香りが殊のほか天国行きか。焼けて天国。やはりこの花は新種で、滴る蜜も凛とする。カスタードを白粉化したかのような、純白の不思議なケーキを活火山の近場で味わう。ケーキの中には白花の蜜が点在するも、あまり数多くなく勿体ぶって、今に火口から甘さがふつふつ滾りそうである。
 パルタガスに木は珍しく、でもなんとなくパルタガスの味があるし、どうやら高級な手法でパルタガスを木化させたらしい。ただし木である。
 BHKやリネアの重厚な方向というよりER物の軽妙な方向へグランレゼルバは向っているように見える。火山不甲斐なく木が復帰して栄え、とうとう期待外れに終る。楚々としすぎているが、白い未見の花が強烈にして儚い印象の幻となった。

 久しぶりのダブルコロナ、意外や小さく見えるのは最近のずんぐり傾向と比べると細身だからか、それでも結局火持は長く、いつも以上に夜更かしさせられてしまう。「堪能」という言葉にちょうど良い長さ。ハズレが多いビトラである気もするけれど、当たった時の凄さは代え難いし、ダブルコロナを少々集めておきたくなる。価格からして今日のせこい香味は痛いはずであるのに、ダブルコロナを集めたいと思わせるほどの魅力があったのか、単に夜が明けるほどの長さを気に入っただけなのか……。

 実に謎である、白い花。もう存在しないかもしれないが、完璧な状態の物を燻らせたい。
|coh-hk|$194/25|arr 2017/9/27|
|ALO OCT 16|6 1/5 x 47|--g|香:3.7~4.3 ave4.0|残0|

 この箱の最後の一本が終了した。25本を振り返ってみて、結局のところ傑作と感じる。

 とりわけ三年を経る頃になると、どっしりしつつも何処か枯淡であるような、歴然とするや否やのハバナの滋味深さを感じさせる。滋味を維持したまま中盤から終盤にかけて非常に安定した花が乗り、華やかさが長々つづき、しかもじくじくとクレッシェンドしつづけて花量を増やす。滋味枯淡でありながら分厚く密度も上がる。最終盤では潜伏していた豪傑のごとき強さ−−パルタガスを「パルタガスらしい」と言わしめるところの強さ−−が出て加勢し、その荒く覆い被さる波濤と飛沫が花を「波の花」に変えて終了する。花から波の花への変化は是非ご体感頂きたい。

 最後の5本ぐらいはほとんど以上のような感じであったと記憶している。過去の記事に違う香味が書かれていても( )、精髄を抽出すれば同上といおうか、記憶に残っているのは以上のような感じで、記憶が改変されているか否かは不明である。

 最後の一本、箱の中に寂しくとり残された為、良かれ悪しかれ枯淡が加速したのかもしれない。

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